八日、さはる事ありて猶同じ所なり。今宵、月は海にぞ入る。これを見て業平の君の「やまのはにげて入れずもあらなむ」といふ歌なむおもほゆる。もし海邊にてよまゝしかば「波たちさへて入れずもあらなむ」とも詠みてましや。今、この歌を思ひ出でゝある人のよめりける、
「てる月のながるゝ見ればあまの川いづるみなとは海にざりける」
とや。
八日。都合の悪いことがあって、まだ同じ所です。今夜の月は海に沈みます。これを見て、在原業平さまの「山の端よ、逃げて月を入れないでくれ」という歌が思い出されます。もし、海辺で詠んでいたら、「波よ、立ってさえぎって月を入れないでくれ」とでも詠んだのかしら。今、この歌を思い出して、ある人(といいつつ紀貫之)が詠んだ歌。
照る月が海に流れていくのを見た 天の川が流れ出る河口も海なんだね
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