アンパサンド

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2008年5月19日 (月) 01:52時点における松永英明 (トーク | 投稿記録)による版
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アンパサンド(&、&、アンパーサンド、ampersand)は、「and」を意味する表語文字である。英語では「'and' sign(アンド記号)」「short and(短いアンド)」ともいう。

ラテン語の「et」の合字であり、これは「and」を意味する。

http://kotonoha.main.jp/2004/image/Ampersand.jpg

この記号の起源は右側の字形を見れば一目瞭然である。左側の方が現在一般的だが、これは後に発達したものである。

アンパサンドの名称の由来

「アンパサンド」という呼び方は「and per se and」というフレーズから生まれた。これは「この記号はそれ自体がandを意味する」という意味である。スコットランドでの呼び方は「epershand」つまり「et per se and」である。

「per se」はラテン語由来で、「それ自体は」「それ自体で」「本来」といった意味を持つ。

英国の生徒がアルファベットを暗唱するとき、「A, per se, ah; B, per se, buh...」(すなわち「Aそのものがアー、Bそのものがブー」)から始まり、X、Y、Z and &まで続けた。当時、&はすべてのアルファベットの最後に置かれ、第27番目のアルファベットとして認識されていたのである。子供たちは&を発音させられると「And, per se, and」(andそれ自体がandを意味する」)と言った。nはpの前ではmに変わるため、この4語がampersand(アンパサンド)に変化し、&とはもともとアンパサンドという名前の文字であったかのように認識されるようになったものである。

ampersandという綴りは1837年以降に見られる。

アンパサンドの歴史

&は紀元前63年、マルクス・トゥリウス・ティロ(Marcus Tullius Tiro)によって発明されたもので、「ティロ書法(notae Tironianae)」と呼ばれた速記法の一部であったとされることが多い。

しかし、Online Etymology Dictionaryによると、これはティロ書法由来ではなく、ポンペイ人の文字に由来することが明らかとなっているという。ティロ書法では形が異なり、Γ(ガンマ)の逆のような形でetを表わしている。この7のような記号は、アングロサクソンの年代記編者など中世の記法でandを表わしている。

&の形はラテン語et(=andの意味)をペンを持ち上げずに続けて書く方法に由来している。

古代ローマの時期、この記号は大文字のETを組み合わせた角張った合字だった。長い間に、この文字は丸まって流れ、ついには下図の右側の「イタリック」アンパサンドと呼ばれるような形になっていった。これは見るからに「et」と似ている。

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 8世紀には西洋のカリグラフィーが発展した。一語を一文字に圧縮することによって仕事が少し楽になるため、書家たちはアンパサンドを大々的に使うようになった。この期間にアンパサンドはさらに圧縮され、上図の左に見られるような形となった。これは「ローマン」アンパサンドと呼ばれることがある。

1011年ごろのByrhtferthのリストなどで、ラテン文字アルファベットの最後の文字としてアンパサンドが置かれるようになっている。

1455年にヨーロッパに印刷術が登場した後、印刷屋はイタリックとローマンの双方のアンパサンドを大いに使うようになった。すべての新しい活字書体やフォントは独自の&書体を含むようになった。アンパサンドの起源は古代ローマにさかのぼるため、ラテン語アルファベットの変形を用いる多くの言語で使われている。

歴史的には、&は英語のアルファベットの27番目の文字とみなされていた。近年まで、子供たちの使っていたアルファベットはZで終わらず、&で終わっていた。M. B. Mooreの1863年の書籍"The Dixie Primer, for the Little Folks"がその一例である[1]

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Adobeによる解説より

The ampersand

 新しい書体を作るとき、デザイナーはアンパサンドの文字に最も芸術的なセンスを注ぎ込むものである。アンパサンドという呼び方は、ジェフリー・グライスターが『本の用語集』で書いたとおり、「and (&) per se and」の転化であり、それは文字通りには「&(という文字)はそれ自体がand(という単語)」という意味である。&記号はETまたはetの合字であり、これはラテン語の「and」に由来する。

 アンパサンドの最初の例は、西暦45年のパピルス上に見られる。ローマ字の大文字で書かれているので(というのも当時はそれで書くのが普通だった)、これはETの合字となっている。西暦79年からのポンペイの彫り文字の例(図1)でも、大文字のEとTの組み合わせとなっており、それは初期のローマの文献にも出てくる。

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その後の文書では文字は流れ、あまり正式ではないローマの小文字体がイタリックに変化し、etという形がよく見られるようになった(図2=4世紀ごろ)。

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大文字のEとTの間のつながりは最初すばやく書かれていたが、後のカリグラフィー的な文書では、半円形となっているEの中心部がTと交わって、故意に水平の線となっている。やがて、この密接な組み合わせは一つの記号のように見えるようになった(図3=9世紀スコットランド)。

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西暦775年ごろにカロリング小文字体が発達するころまでには、この合字は文字目録に普通に組み込まれていた(図4=カロリング小文字体、810年)。

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書く速さや書家が完璧を目指したことから、8世紀以来、EとTの組み合わせは、15世紀初めの印刷の発見で採用された合字と似たような形になっていった(図5=人文主義者の小文字、1453年)。

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アンパサンドの左側の部分は小文字のeまたは二つの半円でできた大文字のEである。斜めに下から上へ伸びるラインは、ときに終端がくるりと回っているが(図6=ウィリアム・カズロン体、ロンドン、1728年)、Eまたはeの水平線からの名残かもしれない。あるいは、これは次の文字とつながったものかもしれない。それは、書き方の流れを増やそうとする書家が好んだ技法である。

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イタリック形と比べると、アンパサンドのローマン形はtの線が少しだけ残っているようである(図7=イタリア人文主義者小文字、1500年)。

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 現在、&記号はすべての新しいフォントのデザインに取り入れられており、それはローマ字アルファベットの中に組み込まれている。(以下略)

アンパサンドの書き方

通常のアンパーサンドは、普通の文字が始まるところよりも少し右側の交わったところを書き、ペンをこのストロークの中心に移して、それから周りのループを書けば、簡単に書ける。

日常的な手書きでは、εに縦棒を重ねて書いて$に似た形に単純化されている。これもラテン語のetの短縮のようである。ときどきこれは「+」記号だけに見える場合もあり、「t」に小さい輪(小文字のeの残滓)がついているもののように見えることもある。このタイプのアンパーサンドは実際には「+」記号の略またはティロ書法の 「et」かもしれない。これらの形式はすべて一般には受け入れられ、認識されているが、場合によってはいい加減とかおざなりなように見えるかもしれない。手書きのアンパーサンドは無声歯茎側音摩擦音の文字である「ɬ」のように見えることもある。

この文字はすでに使われなくなっているはずだが、場所が狭いときはこれを使える。

日本での現状

多くの日本人は&という活字の形をそのまま書いているようである。アンケートでは右下から左上に書き始める人が多いようである。

筆者の場合、εを書いて、筆記体のエルを上下縮めたような形を書く。下の図の、右から二列目の一番下とかその上の形である。

http://www.dokidoki.ne.jp/home2/kazetyas/HTML/%89%E6%91%9C/ampersand.gif

用法

アンパサンドが特によく使われるのは、企業の正式名称である(特に商会や合名会社、その中でも特に法律事務所、建築会社、株式仲買会社)。アンパサンドが登記上の名称の一部となるとき(たとえば、Brown & Watson)、それはandと置き換えてはならない。日本では「株式会社paperboy&co.」などがある。

携帯電話の利用とメールが増えるにつれて、アンパサンドはSMS語において「and」の意味や組み合わせ表記で使われている。たとえば「pla&」は「planned」であり、「L&N」は「Landing」のことである。

夫婦宛の宛名でアンパサンドが使われることもある。「Mr. & Mrs. Jones」「John & Silvia」。本や映画のタイトルにも使われる。「Harry & Tonto」など。これらの場合、&はandと書いてもいい。その区別は、多くは見た目の問題である。

しかし、映画のクレジット、映画シナリオなどでは、&はandよりも近い関係を示す。

正式に書かれた文書では、テキスト本文でこの記号を書くことは避けた方がいいということになっている。多くの作家はandと書く。

et cetera(「など」)は「etc.」と書かれるのが通常だが、「&c.」と書かれることもある。これはet+c(etera)だからである。この用法は18~19世紀によく見られるが、現在はあまり使われない。

外部リンク

  • Marinda Branson Moore, 1829-1864. The Dixie Primer, for the Little Folks.