「悪徳商法」の版間の差分

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== 「悪徳商法」という言葉の問題 ==
 
== 「悪徳商法」という言葉の問題 ==
  
「悪徳」という言葉自体は「同義に外れた行為や精神」というのが辞書的な意味であり、「悪徳商人」という用語が用いられてきた。この場合、業種を問わず、不正な利益を得るために手段を選ばない商人(阿漕な商人)というニュアンスが強く、いわゆる「悪徳商法」(厳密には「悪質商法」「問題商法」)のイメージとは異なる。そのため、「悪徳商法」の関係者と「悪徳商人」はイコールではない。一般的に金の亡者と呼ばれるような人物は「悪徳商人」かもしれないが、悪質商法に該当するような商法を行なっている場合はむしろ少ないだろう。一方、悪質商法に分類されるマルチ(まがい)商法の場合、巻き込まれてそれが世の中のためになると思っている人たちの場合は、悪質ではあっても悪徳とは言い切れないことになる(これが悪質/問題商法の厄介なところでもある)。
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「悪徳」という言葉自体は「同義に外れた行為や精神」というのが辞書的な意味であり、「悪徳商人」という用語が用いられてきた。この場合、業種を問わず、不正な利益を得るために手段を選ばない商人(阿漕な商人)というニュアンスが強く、いわゆる「悪徳商法」(厳密には「悪質商法」「問題商法」)のイメージとは異なる。そのため、「悪徳商法」の関係者と「悪徳商人」はイコールではない。
  
つまり、「悪質/問題商法」を行なっている者(特に仕切っている者)は多くの場合「悪徳商人」でもあるかもしれないが、悪徳商人の行なっている商売のシステム自体は悪質/問題商法であるとは限らない。つまり、「悪質/問題商法を行なう者」⊂「悪徳商人」であって、イコールではない。
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一般的に金の亡者と呼ばれるような人物は「悪徳商人」かもしれないが、悪質商法に該当するような商法を行なっているとは限らない。時代劇に登場する悪徳商人越後屋が「黄金色のお菓子」を悪徳代官に賄賂として差し出して便宜を図ってもらい、公共事業の受注や商圏での独占を行なうような場合が考えられるが、この例では商法のシステムそのもの問題は見られない。したがって、「悪徳商人が行なう商売を悪徳商法という」という定義は決して成り立たない。
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一方、「悪質/問題商法」を行なっている者(特に仕切っている者)は多くの場合「悪徳商人」でもあるかもしれないが、悪質商法に分類されるマルチ(まがい)商法の場合、巻き込まれてそれが世の中のためになると思っている人たちの場合は、悪質ではあっても悪徳とは言い切れないことになる(これが悪質/問題商法の厄介なところでもある)。
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つまり、「悪質/問題商法を行なう者」と「悪徳商人」とは別の概念であって、重なる者がいるとしても決してイコールではない。
  
 
また、以上の語義からも導かれるが、「悪徳」という言葉は人物の「精神性・意図」を表現したものである。したがって、この言葉そのものは商法のスタイルではなく「関係者の精神性」を批判・非難する意味合いが強い。一方で「問題商法」「悪質商法」という言葉は、商法のシステムそのものに問題があるという意味をダイレクトに伝えている。
 
また、以上の語義からも導かれるが、「悪徳」という言葉は人物の「精神性・意図」を表現したものである。したがって、この言葉そのものは商法のスタイルではなく「関係者の精神性」を批判・非難する意味合いが強い。一方で「問題商法」「悪質商法」という言葉は、商法のシステムそのものに問題があるという意味をダイレクトに伝えている。

2011年7月4日 (月) 09:11時点における最新版

悪徳商法(あくとくしょうほう)は、警察や消費生活センターなどで「問題商法」もしくは「悪質商法」と呼ばれている商売方法を指す俗語。

ネットでは主にMLM(マルチレベル・マーケティング)/マルチ(まがい)商法などを指すことが多いが、この用語は曖昧かつ問題点の本質を見失う可能性があるので、「問題商法」もしくは「悪質商法」という用語を用いることが推奨される。

「悪徳商法」という言葉の問題

「悪徳」という言葉自体は「同義に外れた行為や精神」というのが辞書的な意味であり、「悪徳商人」という用語が用いられてきた。この場合、業種を問わず、不正な利益を得るために手段を選ばない商人(阿漕な商人)というニュアンスが強く、いわゆる「悪徳商法」(厳密には「悪質商法」「問題商法」)のイメージとは異なる。そのため、「悪徳商法」の関係者と「悪徳商人」はイコールではない。

一般的に金の亡者と呼ばれるような人物は「悪徳商人」かもしれないが、悪質商法に該当するような商法を行なっているとは限らない。時代劇に登場する悪徳商人越後屋が「黄金色のお菓子」を悪徳代官に賄賂として差し出して便宜を図ってもらい、公共事業の受注や商圏での独占を行なうような場合が考えられるが、この例では商法のシステムそのもの問題は見られない。したがって、「悪徳商人が行なう商売を悪徳商法という」という定義は決して成り立たない。

一方、「悪質/問題商法」を行なっている者(特に仕切っている者)は多くの場合「悪徳商人」でもあるかもしれないが、悪質商法に分類されるマルチ(まがい)商法の場合、巻き込まれてそれが世の中のためになると思っている人たちの場合は、悪質ではあっても悪徳とは言い切れないことになる(これが悪質/問題商法の厄介なところでもある)。

つまり、「悪質/問題商法を行なう者」と「悪徳商人」とは別の概念であって、重なる者がいるとしても決してイコールではない。

また、以上の語義からも導かれるが、「悪徳」という言葉は人物の「精神性・意図」を表現したものである。したがって、この言葉そのものは商法のスタイルではなく「関係者の精神性」を批判・非難する意味合いが強い。一方で「問題商法」「悪質商法」という言葉は、商法のシステムそのものに問題があるという意味をダイレクトに伝えている。

ネット上で「悪徳商法告発サイト」に集まる人たちはそれらの商法の「被害者」であるため、システムの問題を指摘する一方で、関係者の人格をも否定して当然という心理が働くのは仕方のないことであるが、もし問題商法/悪質商法のシステムそのものを批判・根絶する意図があるのであれば、曖昧語なるがゆえに特定の人物・集団への人格攻撃となりがちな「悪徳商法」という言葉ではなく、「悪質商法/問題商法」という、警察や消費生活センターで用いられている用語を採用すべきだということになる。