2004年「ことのは」は……新年の抱負

 新年明けましておめでとうございます
 昨年はいろいろとありがとうございました。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、このサイトも2004年に入り、少々方向性を明確にしていきたいと思います。

2004年1月 1日04:23| 記事内容分類:更新・お知らせ| by 松永英明
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 昨年は独立してライター・編集者としてやっていくこととなり、いろいろな人の応援によって少しずつ波に乗ってきました。皆さんにお礼申し上げます。

 それに伴って開設したこのウェブログ主体のサイトですが、4カ月ほどMovableTypeをいじってみて、大体、どんな風に使えるかがわかってきました。

 今までの日本のウェブログ界の主体は、やはりIT関係者やプログラマーであり、はじめにツールありきで、どのような機能を持たせるかということが主な関心事だったのではないかと思います。

 しかし、2003年後半の日本ウェブロ界の一大ニュースとしては、やはりココログでNiftyユーザーの参入が最も象徴的だった、と感じています。
 それは、表現が第一にくる人たちがウェブログを手にしたということです。
 まず、自分がどういうことをどういう風に表現したいか、それを他の人にどう伝えたいか、という発想があり、そして、それに役立つツールはどれなのか、あるいはそのツールのどの機能をどう使えばそれが実現できるのか……つまり、プログラマーとは発想の方向性がまったく逆向きといえます。
 そして、私自身は、自分がやりたいことがまず最初にあって、そしてそれに合ったツールを探し、多少改造する、というところにいます。しかし、完全な改造や、一からツールを生み出す技能はありません。したがって、自分に合えばカスタマイズしつつ使い続けるし、もしそれよりいいツールがあれば平気で乗り換えるでしょう。実際、この間設置したばかりの女子十二楽坊掲示板スクリプトをあっさり乗り換えました。1カ月も経ってないです。

 私がなぜウェブログを使うのか。それは、自分のやりたいことに合っているから、という以外に理由はありません。自分のほしかった機能がウェブログツールに入っていた。それだけのことです。
 だから、「ウェブログというものが流行っているから始めてみたけど、一体何を書いたらいいのかわからない」「続くかどうかわからない」という人たちと、私は動機がまったく逆だということになります。

 さて、ウェブログを公開してから数カ月、このウェブログの方向性はやや曖昧でした。いや、あえて曖昧なままにしてきた部分もあります。自分のフリーライター/編集者としてのプロモーション的に使いたい、ということが第一の目的でありましたが、その中でどういう部分を見せていくか、ということは固まっていなかったのです。それはウェブログにおいてだけではなく、自分自身の仕事の売り込み方においてもまだ試行錯誤が続いていたわけです。

 しかし、ようやく、このウェブログで何をやるべきか、が見えてきました。それは、「情報を編集する」という実例を見せることだ、ということです。(なお、以下の記述は私の個人的な定義で言葉を使っている部分がありますので、ご了承ください)

 私はフリーのライターでもあり、そしてフリーの編集者(あるいは書籍の企画を立てる人)でもあります。実は、この二つの人種はまるで頭の方向性が違います。私自身、ライターの頭のときと、エディターの頭のときではまるで別人のようになって情報を扱います。

 ライターは与えられたテーマについてひたすら文章を積み重ねていきます。いかに大量の情報を盛り込むかがライターとしての腕の見せ所です。
 一方、エディターは、与えられたテーマをよりよく伝えるために、どこをそぎ落とし、どこを強調するか、を考えます。つまり、いかに情報を集約していくか、ということがエディターの頭脳です。何を見せないか、ということも必要なのです。

 「ウェブログ@ことのは」は実質、ほとんど一人でやっています(最初はもう少し、仕事を手伝ってくれている人とかが書いてくれるかと思っていたのですが……結局一人で書いてます。フォトログにたまに写真を載せてくれますけどね)。その記事を読んだ方から、「情報が編集されていますね」と何度か言っていただけました。特に編集者・ライターの方にはわかるようです。
 ライターなら、ただひたすら書けばいい。しかし、エディターは書く前に構成を決め、同じネタをどのように料理するかを考えます。もちろん、料理しないで丸かじりがいいと思えば、あえてそうするでしょう。
 そして、書くだけでなく、どのように見せるか、どのようなメディアを使って表現したいことを効果的に表わすか、あるいはBGMはどうするのか、といったこともすべて「情報の編集」作業に含まれてきます。ただ単に文章だけで勝負するのもありですが、例えば本の場合はどのような装丁で、どのような書体を使い、どのような紙を使うか、ということも含めてすべて、伝えたい情報の加工の領域に含まれてきます(その意味で、『ウェブログ・ハンドブック』の装丁は、内容を損なうもの、自己主張の激しいデザイナーの単なるワガママだと思います)。

 情報を編集する。それは、同じ情報であっても、どういう切り口で見せるか、ということになるでしょう。もちろん、そこには編集者の意図が含まれます。意図のない情報などありえません(事実を淡々と伝える、ということは、実際には不可能に近いことです)。しかし、自分はこういう意図がある、と明言しつつ表現することは、決して不親切なことではなく、考える余地を与えるものともなるでしょう。
 また、メインストリームのメディアに対して、ウェブログは別の視点からの情報を与えたり、メディアの不備を指摘したりして補完機能を持つようになる、と主張する人も多くいます。そうなるかどうかはわかりませんが、編集的な発想を持つことで、独自の情報を発信できるのではないか、とも思います。
 それは独自取材をしろという意味ではありません。独自の視点によって情報を集め、整理し、公開するだけでも面白いことになります。かつて「ムーノーローカル」というサイトがありました。いろいろなニュースを独自の文章で紹介していただけでも面白かったのですが、特に「公務員による痴漢」や「学校のガラスが割られた」というような事件は必ず押さえられており、「次はどこで何枚割られたんだろう」というような興味をかき立ててくれたのです(もちろんガラスだけじゃありませんが)。

 情報を編集する。あるいは加工する。それは、ウソをつくことではなく、むしろ、余計なものをそぎ落として必要な部分を見せることによって、よくわからなかったものをわかりやすくすることにもなるでしょう。
 また、時期やタイミングも計算する必要があります。場合によっては、中途半端でもいいからとにかく今出すことが大切だ、ということもあります。逆に、すでに仕上がっているけれども、まだ出す時期ではない、と判断することもあります。また、まだすぐに取りかからなくてもいい、と考えて寝かせておくこともあります。
 人から聞いたことをそのまま垂れ流すようでは、ライターもエディターもつとまりません。効果的なときに効果的に出す。それが情報編集の妙味でもあります。

 Google AdSense情報ページは、AdSenseが日本で開始されるのは来年以降だろう、とアフィリエイト・ポータルネットの石川さんがおっしゃっていたこともあって、少しのんびり構えていましたが、どの情報を載せるということはもう頭の中で決めていました。そうしていたら、突然の日本上陸。サイト構築はとりあえずpukiwikiで簡単にできるようにし、デザインなどはほとんどいじらないことにして、目をつけていた資料を二つ、2日ほどで取り急ぎ訳すこととしたわけです。一通り目は通してあったので、そんなに時間もかかりませんでした。それより、一日も早く公開することが必要だったのです。

 一方、少し時期を見計らって、内容が充実するのを待っていたのが、女子十二楽坊ファンサイトです。こちらのウェブログでも記事を少しずつ出していましたが、メンバー一人ひとりのページを作ったり、楽器を調べたりして、それなりの形が整った段階で一気に公開しました。これは、人気が出ることが予想されるコンテンツだっただけに、最初に「ショボいサイトだ」と思われたくなかった、ということもあります。情報が乏しいサイトを中途半端に出して役に立たないと思われてしまったらどうしようもないわけです。

 ここまでお読みになれば、気付く方もいらっしゃるかもしれません。ライターや作家は何を伝えるか、どれだけの情報を盛り込むか、という意味において、やはり書き手の比重が非常に大きくなります。一方、エディターは、提示した情報がどのように受け止められるのか、ということを考える比率が高くなります。
 たまに「編集者はわかってくれない」とこぼすライターさんがいます。もちろん、わかっていない編集者もいます。しかし、ライターの側に余計なこだわりがありすぎる、という場合だってあるのです。自分の好きなとおりに表現すればそれでいい、というものでもありません。あえて当初想定したものと違う出し方をすることで、かえって意図がよく伝わることもあります(もちろん、大きく損ねることだってあるわけですが)。

 この「情報を編集する」という発想は、あまり馴染みのないものでしょう。ある程度の表現活動をやっていないと理解できないかもしれません。そこで、このブログは「情報を編集する工房」としての打ち出しをしていこうと考えました。どのように情報をまとめるか、どのように情報を加工するか、というのは、一種の職人技なのかもしれません。素材は何でもあり。それこそ「書き手が興味を持ったことがら」になるでしょう。しかし、それを刺身として出すのか、タタキにするのか、煮るのか、焼くのか、天ぷらにするのか、それはその時々に応じて考えることになります。いつもいつも塩焼きではなく、こんな料理法があるのだよ、ということを見せていければ、と思います。

 一方で、はてなダイアリーはライターとしての頭で、草稿的に書いていくことになると思います。自分の感覚としては、キーワードでつながるというのは加工されていない文章にふさわしい。むしろ、編集を効かせた文章には、キーワードは少々奔放にすぎるような気がするのです。

 そのほかにも、ブログとwikiの組み合わせとか、メールマガジンを使うならこういうことをやりたいとか、ネットで小説公開するならやっぱりサウンドノベル方式だよな、とか、アイデアだけはいくらでもあります。はっきり言って、手が足りない。それを実現できる場が与えていただけるなら、面白いことをやってみせる自信はあります。
 もちろん、カネにはならないかもしれないね。せいぜい、アクセスが増えてアマゾンの収益でサーバー代をカバーする程度かな。かけた労力と比較すれば、はっきり言って赤字でしょう。でも、それはそれでかまわない。面白いものを作り出して、見てくれた人の参考になったり、楽しんでもらえたりすれば、それが一番の「報酬」です。
 そして、ある意味自分の創作をプロモートする場だと割り切り、それ自体で金儲けとかいうことは考えずに楽しげにやっていたら、「あなたはものを作ることに最も関心のある人なんだね」とわかってくださっている方とも知り合うことができた、というのが昨年の流れでした。カネを増やすことより、価値のあるものを作り出すこと。そこに興味のある方は、ぜひ一緒に面白いことができれば、と思います。まあそれやってると貧乏暇なしなんだけどさ(苦笑)。

 というわけで、2004年のことのは編集室は、「情報を編集する工房」としてスタートしたいと思います。1年後、どう変わっているかわかりませんけどね。


追記。
2003年はこのブログの解説としてこんな風に書いていましたが、もう少し明確になるように書き換えることにしました。
ここでいうWeblogとは「蜘蛛の巣丸太」ではなく「ウェブ上の日誌」ですが、接頭語の「log」には 「ことば」「話」「思考」の意味もあります。
「ウェブログ@ことのは」は、表現活動に携わる編集者兼ライター、DTPオペレーター、デザイナー、ウェブ制作者たちによる落書き帳です。
無断リンク・無断コメント・無断トラックバック推奨。ただしSPAMは瞬殺。

追記その2。はてなダイアリー - 《陸這記》 crawlin’on the ground1月1日記事より。
このサイトはフリーランスの編集者や物書きがオンラインでなにができるか、という実験でもあるので、状況がかわれば運用の仕方もどんどん変えて行きます。
こちらも楽しみ。関心のあるかたはブックマークしておきましょう。

追記その3。1/2未明。
 金儲けにならないことばかりやるというわけではありません。

 たとえば、書籍の企画を持ち込む時には、何よりもまず「売れる」ことも必要です。これなら売れる、そしてそこにこんなことも盛り込めるよ、という発想ですね。もちろん、いいものを作ることが売れるための条件ですが、マーケティング・リサーチ的な発想もなければ、「質がいいのはわかるが、客層が狭すぎる」「ものはよくても買い手が少ない」というような企画になりかねません。だから、そこにマーケティング・リサーチャーとしての頭も必要になるのは確かです。
 そこで「面白くて、売れる」ネタはもちろん、どんどん売り込んでいきます。生活もかかってますし(笑)。また、何が売れるか、という「目の付け所」については、今まで作ってきたサイトのテーマなどを見ていただければしかし、その一方で、「面白いけど、売れない」ネタは、もうばんばんネットで公開して、それなりの客層の人に喜んでもらえたらいいよな、という頭があります。

 また、自分が独占しようとすると大変なことになりますが、他の人が活用してもらったら儲かるんじゃないかな、と思ったアイデアは平然と放出します。たとえばDoblogさんには一つ提案をしてあります。もちろん、採用されるかどうか、あるいは、どのように実装されるかはDoblogさん次第。アイデアを現実化するところでお手並み拝見というわけです。逆に言うと、提供したアイデアを活用できるかどうかは、その受け手次第なわけで、もし自分が思っていたよりいいものができればそれはそれですごいことですしね。

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2004年1月 1日04:23| 記事内容分類:更新・お知らせ| by 松永英明
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明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします

昨年の初め頃に掲示板以外の場が欲しいと切に願っていました。
1対多数ではなく1対1で話したい事をじっくり話せて、フローとストックの両方を兼ねた場が欲しい。
そんな漠然としたイメージがウェブログという形になった事に喜びを感じています。
「必要」だったから、その一言に尽きると思います。

それにしても皆さん本当に仕事が早い!!
この調子で今年もガンガン飛ばすとしたら、ウェブログからもう目が離せません(笑

あけましておめでとうございます。
松永さんの抱負を読み終えて、「知の編集工学」を再読したくなりました。
昨年同様、今年もことのはの発信を楽しみにしております。

そうそう、そうなんです、new-yearさん。
『知の編集工学』をはじめとする松岡正剛氏の著作や考え方には、私も非常に影響を受けています。「工房」なんて用語を使ったのも、「編集工学」というワードが念頭にありました。といっても、松岡氏の講座の受講生ではないのですが。

参考リンク:松岡正剛氏の編集工学研究所サイト「いとへん」
http://www.eel.co.jp/

私も著書を読んだりWebサイトへたまにアクセスするだけですが、松永さんは受講生でいらっしゃると思っていました。
雑誌「遊」(既に廃刊)を知る人は少ないかもしれませんね。
ますますウェブログ@ことのはが楽しみになりました。

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