三谷幸喜「新選組!」黒船シーンは「アリ」だ!

NHK大河ドラマ「新選組!」で、史実ではありえない「近藤勇・土方歳三・坂本龍馬・桂小五郎の四人が連れ立って黒船を見に行く」という場面が一部で批判されている。

しかし、宝島刊『新選組の謎を斬る!』の記事のための取材として、時代考証担当の新選組研究家・山村竜也さんに直接インタビューしてお聞きした内容から言えば、「それはアリだ」ということになる。

2004年1月23日05:43| 記事内容分類:日本史, 映画, 編集・出版| by 松永英明
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詳細は上記の本にもしっかり書いてあるので読んでいただくのが一番早いが、まず山村氏というのは「青い空に白い雲を見ると、新選組のあの制服を思い出す」というほどの熱狂的新選組ファンであり、同時に史実の考証には厳しい研究家でもある。その山村氏が、なぜ「新選組と龍馬・桂が知り合いだったという架空の設定」にOKを出したのか。

まず、黒船来航のとき、四人とも江戸近辺にいたという史実がある。もし龍馬が土佐にいたり、桂が長州で引きこもっていたりしたらだめだが、一応史実的にも「見に行こうと行けば見に行けた」のは事実なのである。というわけで「史実ではないが、ありえないわけではない設定」というギリギリのラインをクリアしていると判断して、山村氏もOKすることにしたようだ。

また、今までの大河ドラマと違って、今回の三谷ドラマは「歴史のお勉強ではなく、近藤勇を中心とした青春群像を描く」ことに主眼が置かれているという。今までの幕末ものがつまらなかったのは、複雑かつ変化の激しい幕末の情勢を一生懸命説明しようとしていたために、教科書的な説明番組になってしまいがちだったからだ、ともいえる。しかし、三谷シナリオはその辺をばっさり切り捨て、ひたすら青春群像を描こうとしている。

だからこそ、近藤には若めの香取慎吾が選ばれた。新年度になった後にようやく京都に行くくらいのペースであるから、それまでの多摩や市ヶ谷試衛館時代がじっくり描かれることになるようだ。だからこそ、池田屋事件で龍馬の仲間を殺してしまったり(このとき桂はうまく逃げおおせたわけだが)、内部分裂で以前の仲間たちと殺し合いをしなければならないという話に人間的な重みが出てくる。そして、最後のクライマックス、近藤勇の斬首で新選組は終わるのである。近藤を中心とした人間ドラマ、それに対して「史実と違う」ことがちょっとエッセンスとして加えられたからと言って批判するのは、木を見て森を見ないと言わざるを得ない。

三谷氏が新選組について非常に詳しく研究していることは、山村氏も驚くほどだったという。非常にマイナーな隊士についても見せ場を設けるという心配りをしている三谷シナリオが、適当な思いつきだけで「四人で黒船を見に行った」というようなシーンを盛り込むわけはないのである。それは、近藤を中心とした新選組を描きつつ、幕末全体を押さえるのに不可欠なキーパーソン、龍馬と桂を巧妙に伏線として配置するための絶妙なエピソードだと思う。

などという話は『新選組の謎を斬る!』にもっといろいろ書いてあるのでそちらを参照していただくとして、正直なところ「四人で黒船見物」という設定を初めて聞いたとき、個人的には「それ、面白い!」と思った。しかも、よくよく聞いてみると「四人ともそのとき江戸にいたのは史実」というのだから、してやられたという感覚である。

もちろん、大河ドラマはノンフィクションドキュメンタリー番組であるべきだ、とかいうのであれば、三谷アレンジは不可だろう。だが、正直いって、それで大河ドラマはどんどんつまらなくなったのではないのかね? そう大河「ドラマ」はドラマチックでなければならない。それを忘れたドラマは再現フィルムにすぎないではないか。

というわけで、松永は三谷版「新選組!」を応援しています!

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松永さん、白牡丹です。やっと表に出したばかりのblogにリンクを貼っていただきまして、ありがとうございます(*^_^*)。

『新選組の謎を斬る!』、放映前にしっかり読んで予習しておりましたが、歴史エンターテインメントとしての『新選組!』滑り出しは上々だと思います。

そうそう、第2回に登場した「ひも爺」、大笑いしました。あれ、佐藤家の『聞き書き新選組』ではなかったかな、土方さんが行商に出る時に近所のお爺さんをお供に連れたという語り残しを元にした設定ですね。この辺りに三谷さんの史実に対する忠実さとエンターテインメントとしての面白さを両立させようとする姿勢が見られますね(^^)。

今後も楽しみです。

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