雑誌の責任はどこまで及ぶのか?(付:ポエム)

ソフトバンクBB、恐喝未遂事件容疑者逮捕を受け発表会開催
~「PC JAPAN」休刊へ。容疑者の1人は「PC JAPAN」に執筆するライター~

という記事が出ている。例のソフトバンクBB顧客データ流出・恐喝未遂事件について、

ソフトバンクグループであるソフトバンク・パブリッシングの月刊誌「PC JAPAN」でフリーライターとして執筆していた。ソフトバンクグループではこれを受けてPC JAPANを当面の間休刊とする。

というのだが、PC JAPANという雑誌の責任がこの件でどのくらいあるのか、私には理解できない。
 PC JAPAN編集部からアクセス権が与えられたというのならともかく、あくまでも「容疑者」個人の問題ではなかろうか。雑誌の休刊がこれだけを理由としているのなら行きすぎだと思う。

2004年6月 1日14:08| 記事内容分類:編集・出版| by 松永英明
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 もちろん、事情の特異性はわかる。系列の会社の雑誌だったこと、「Passion For The Future: 雑誌PC Japan付録のハッカー用語辞典は秀逸」というような記事も出るくらいハッカー(=PC上級者)を対象とした雑誌だったこと(しかし、広義のハッカーであって、クラッカー対象雑誌ではない)。そこによく執筆していたライターが、本当にデータ流出に関わったというのだから、一定の責任感を感じるのはわからないではない。

 しかし、休刊に及ぶのはいかがなものか。PC JAPANもそういった犯罪行為を「推奨」していたわけではない。

「内容そのものはセキュリティ対策に力を入れた上級PCユーザー向けの雑誌だが、タイトル等が刺激的であり、適切なタイトルではないな、と本日議論をしていた」とコメント。「ソフトバンク・パブリッシングの目的は、IT業界の健全な発展のための出版であったが、今回このような事件があり、出版物にそのような誤解を受けるタイトルや記事が出ていたのではないかと反省した。……」

というのだが、はっきり言わせてもらうと「ソフトバンクの限界」というか、アングラ系ハッカー雑誌のブラックさには到底及ばない「上品なハッカー」記事という印象がある。
 なので、どうしてもPC JAPANは「とばっちり」を受けたように感じてしまう(もしこれだけが休刊の理由だとすれば)。むしろ、このライターの件を含め事件の全貌をきっちりと再検証するといったことをやる方が「雑誌としての責任」を全うするのではないかと思う。

 何でもかんでも辞めればいい、というものではない。むしろ「辞任しただけか」というような辞め方を見ることが多いような昨今、本当に実のあることをやっていただいたほうがよかったのに、と思う。

 なお、同記事にはこういう部分がある。

PC JAPAN以外の媒体についても「どのような雑誌や単行本が発行されているのか、再度議論をしてみたいと思う」とした。

「今回の事件の温床となるような雑誌、書籍等は認識できたので、それについては何がしかの処置をしたい」とした。

 こう聞けば多くの人が想起するであろう某誌の関係者と今朝メッセンジャーで話していたのだが(笑)ここまでくると「ソフトバンク・パブリッシング内浄化計画」が進められつつあるように感じてしまう。
 まあ、私が同社のお仕事を受けたのは今のところ「Yahoo! Internet Guide」だけであり、同誌に問題となるところはまったくない。だから関係ないといえば関係ないのだが、「清潔すぎる」のもちょっと面白くないかな、と感じたのが正直なところである。

 で、話はここからちょっとずれる。その某誌は例のファイル共有ソフトwinnyについて扱っていたりするわけだが、編集上はかなり気を使っていたようだ。たとえば、アップロード方法については紹介しない。共有されているデータとしては、完全合法なものに限定なのだそうだ。

 最近の共有ブームは、なんと「ポエム」と「自主製作映画『ジャッカル』」らしい。
「ポエムって、本当に詩のポエム?」
と確認してみたが、隠語ではなく、まさにポエムを共有しているらしい。印象のズレに思わず吹いてしまった。
 結局、ツールや技術やノウハウは、そこまでのものなのである。どんなものだって悪用できるし、どんなものだって素晴らしい使い方ができるのだ。
 で、それに対して、著作権という「強制力を持った法律」(つまり違反者を逮捕勾留できる)を使って権益を守ろうという流れは、この国の文化を衰退させる方向へと導きかねないと思う。それよりも最初にすべきことは、著作権違反を促すような「悪質・高価な商品」を出さない企業努力であり、決してコピーガードの強化ではない。また、著作権を守ることがいかに大切かということをユーザーにも理解できるように伝えていくことではないだろうか。ああ、こういう製品ならぜひ作者の方にお金を出したいと思わせるような努力こそが必要なはずだ。
 と最後はなぜか著作権話になってしまったが、まあそういうことである。

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