Livedoorホリエモンは現代のトリックスターであり、「既成秩序の破壊」がその役割である。

 経済のことは全然わからないので、Livedoorがこれで終わりなのかどうか、よくわからない。だが、ホリエモンこと堀江貴文氏の行動を人文科学的に見てみると、これは「トリックスター」そのものではないかと思えてきた。

 トリックスター・ホリエモンの使命は、既成秩序の破壊である。壊すだけしかできないのではなく、壊すことだけが使命なのだ。新しい秩序を生み出すかどうかは別として、壊して壊して壊しまくれ。それがホリエモンの存在意義なのである――と思う。

 だからもっとシッチャカメッチャカに暴れてもらえれば面白いな、と。もっとも一緒に仕事をしたいとは思わないので、擁護でもなければ批判でもなく、単に「与えられた役を演じていただきたい」という程度の考えなのだが。

2005年2月24日15:49| 記事内容分類:宗教・神話学, 日本時事ネタ, 民俗学・都市伝説| by 松永英明
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トリックスターとは

http://www.tabiken.com/history/doc/N/N149C200.HTM

 民話や神話のなかに登場するいたずら者のこと。物語のなかのトリックスターは,人間であったり動物であったりするが,いつでも既成の秩序に反発し,権威をからかい,奇想天外な策略で人をだましたりする。しかしトリックスターはまったくの悪者ではなく,むしろその破天荒で茶目っ気にみちた行動によって笑いを誘う道化的キャラクターでもある。

http://i-otter.hp.infoseek.co.jp/archetype/trickster.html

 いたずら者、ペテン師、…しかし、硬直化した価値観を壊して人々に笑いと創造をもたらす者。低俗なトリックスターは破壊のみをもたらし、高尚なトリックスターは破壊の後に新しい秩序をもたらす。

1.反秩序
 トリックスターは無秩序の精神、境界を無視する精神を持ち、秩序を壊す者、文化的な約束事を破る者として現われ、法や慣習の限界から離れた所で活躍する。……(略)
2.狡猾なトリックで騙す
 トリックスターは自分が欲しいものを、狡猾なトリックを使って相手を騙して手に入れる。……(略)
3.愚鈍
 トリックスターの意識は究めて幼児的で初歩的であり、愚かな者たちをトリックで騙す事しか出来ない。また、必要なルール・規範を守ることが出来ない。……(略)
4.セックスと飢え
 トリックスターの行動は全て、露骨な性欲と食欲とを動機としており、これはトリックスターが生物的、本能的次元にいる事を示している。また、セックスを【男根的】と表現する事もある。また、これらの欲望の他に、金銭欲や所有欲を加えてもよいかもしれない。……(略)

 この二つの引用を見ていただければ、ホリエモン=トリックスター説は突拍子もないものではないことが理解していただけるだろう。

 既成秩序に反発し、権威をからかい、奇想天外な策略でだまし取る。老人たちから強い反発を受ける「反秩序」、欲しいものはトリック的な手法を使っても手に入れる、ルール破りと言われる手法、そして「金銭欲・所有欲」。すべての要素を満たしているではないか。

 そして、これだけの秩序破壊者でありながら、完全に悪人扱いされているわけではない。それどころか、「できるだけごまかさないで考えてみる:ブロガーの受けた印象を分析する<21日の「きょうの出来事」」によればブロゴスフィアでのホリエモン評価は擁護2:批判1という割合。もちろん、ネット内では「笑いの対象」であったり、「ネタ」であったりするが、それはまさに「道化」ではないだろうか。

マネーゲーマーとクリエイター

 さて、ホリエモンという人を考えるために、世の中の人を2つの軸で分類してみる。

 一つは「実務的能力(=金を作る能力)を働かせようとする・しない」という軸。もう一つは「創造性(芸術性)を働かせようとする・しない」という軸。これは相反することが多いような気もするが、そうでない人たちもいるし、程度の差というものもある。ただ、4つの空間に分けるとこういう感じになる(本当は9つくらいに分けた方がいいのだが)。

  • 創造性と金儲けを両立させている:【勝ち組】
  • 実務優先、創造性は二の次:【マネーゲーマー】「とにかく儲からなきゃ」
  • 創造性優先、金儲けは二の次:【クリエイター】「儲からないかもしれないけど面白い」
  • 創造性も金儲けもだめ:【負け組】

 自分の場合は、さほど儲からないような仕事であっても面白そうだとか創造性が発揮できるとかやりがいがあるという場合は、それでいいと思ってしまうタイプであって、そういうわけで金持ちにはなれない芸術型体質に近いと思う。敢えて言わせてもらえば、はてなの近藤社長もこちらのタイプに近いのではないだろうか。

 だが、実務能力が敵というわけではなくて、むしろいくら面白いことであっても金儲けに結びつけられなければ消えていってしまう、という真実もある。とにかく儲かるか儲からないかを重視することも必要だし、「飯のため」と割り切る部分があって悪いわけではない。

 たとえば、出版社においては、伝統的に編集部門と営業部門の仲が悪いところが多い。端的に言えば「内容のいい本を出したい」と「売れる本を作ってくれ」のせめぎ合いなのだが、これは双方のアタマが必要なのであって、どちらか一方では「いい本を作るがまるで売れない零細出版社」か「アコギな本であざとく商売」になってしまうのである。

 要するに、両方のバランスが必要だという無難な話になってしまうのだが(アイデアマンの社長と実務的な副社長の組み合わせとか)、ホリエモンという人は典型的な「金儲けの人」である。

 もっとも、「資産を生み出す」というビジネスゲームや株取引については、もの書きが著作を書き、ミュージシャンが曲や演奏を磨くのと同じ感覚の人がいるかもしれない。ただ、カネを手段と考えるか(=クリエイター)目的に近いものとしてとらえるか(=マネーゲーマー)は大きな違いになってくると思う。

ホリエモンに「ジャーナリズム」まで破壊されるなら御免こうむる

 これがメディアということでいえば、「メディアを使って儲けようとする経営者」と「ジャーナリスト」の感覚のズレを感じる。

 江川紹子のインタビュー「「新聞・テレビを殺します」 ~ライブドアのメディア戦略」のやりとりにはそれが顕著に表われている。以下の引用では、誤字等あるので字面は一部修正したことをお断りしておく。

 まず、ホリエモンは「このような報道をしたい」というものがあってメディアに手を出すのではなく、将来はインターネットが取って代わるのだから、自分で所有して殺した方が効率がいい、と言う。効率性と収益性をまず考える実務家の発想だ。それがいいとか悪いとか言うつもりはないし、実際そうなのだろうけれど、「夢も希望もない」という印象はぬぐえない。

(江川)今までにないものを作るからこそ意味があるのでは?

(堀江)別に意味なんてなくてもいいんですよ(笑)。意味なんてどうでもいいんですよ。我々の目的は、意味あることじゃないんですよ。新しいものを作ること、意味のあることが重要なんじゃない、我々にとっては。

 このやりとりは非常に重要だ。自分の理念とするジャーナリズムを実現するためにメディアを所有するという発想は全くない。ただ、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどを収益の源としてのみみなしている。

(江川)市民記者を募集するのは、新しいやり方では?

(堀江)それも単なるコスト削減策なんですけどね(笑)。

(江川)でも信頼度を上げようというのなら、それなりの質の人を集めないと。

(堀江)紙(=新聞)を出してりゃ、みんな信用しますよ。そんなもんですよ。

 この発言は、消費者に対するアピールならびに経営者的発想としては、非常に正しい。だが、ただ安い記者を集めてウケる記事を書けばカネは回る、という発想に「いや、それだけじゃないでしょ」と言いたくなるところもある。江川氏の質問はまさにその点を突いているのだが、ホリエモンとの意識のズレはますます鮮明になっていく。

(江川)出すからには、こういうモノを出していきたいというのはないのか。

(堀江)そういうのは、おせっかいですよ。読者は別にそんなもの求めていない。そんなもの押しつけたくもないし。

(江川)ある程度の方向性がないと、何でも載せますというわけにはいかない。

(堀江)いいんじゃないですか。自分で判断して下さい、と。それで、世の中の意向はアクセスランキングという形で出てくるんですから、その通りに順番並べればいいだけでしょ。

(江川)みんなが注目すると大きく扱われるが、埋もれている話を発掘できないのでは?

(堀江)埋もれていることを発掘しようなんて、これっぽっちも思ってないんですってば。そういうのは情報の受け手、興味を示す人が少ないわけですから。ニッチな情報なわけですから、いいじゃないですか。一応ネットには載せておきますから、(興味のある人が)勝手にアクセスして下さい、と。

(江川)例えば、イラクのこととか、新聞ではもうあまり載らない。でも……

(堀江)いいんですよ、(そういうことは)みんな興味ないんですから。興味ないことをわざわざ大きく扱おうとすること自体が思い上がりだと思うんです。

 伝えたいことがあるから伝えるのがジャーナリズムだ、と考える江川氏と、売れるものを売るのが商売だ、というホリエモンの発想の違いはここに鮮明に現われている。

 もちろん、「新聞は偏向している」とホリエモンは憤るが、そもそも報道に中立などはありえない。報道は偏っていてナンボ、それを鵜呑みにする受け手のメディアリテラシーの欠如が最大の問題なのだ――という考え方は、ホリエモンには通用しないのだろう。

 お客様は神様、そのお客様がほしい商品を提供すればそれでいい、ということなのか。それは確かに正しい商売人なのだが、報道・表現・主張という点についてマーチャントの論理だけで片付けられると、ちょっとライブドアニュースは応援できないなあという気になるのも正直なところだ。

 それに、livedoorニュースの動画欄は(まあ確かに人気コンテンツかもしれないが)ホリエモンのプロパガンダで埋められているというあたり、「商売うまいなあ」という印象である。

 ちなみに、2/24 15:00現在のlivedoorニュースのランキングは以下のとおり。

  1. あびる優の悲惨なタレント人生
  2. 堀江社長 仮処分申し立てか
  3. 堀江社長、緊急声明
  4. フジドラマ ホリエモンから藤田晋に変更という情報
  5. ニッポン放送株、510円安
  6. 50を過ぎてからの「ラブ」花盛り 元気な団塊の世代
  7. 差し止め申請を準備 ライブ、フジの対抗策に
  8. ニッポン放送株が反落 フジ、ライブも値下がり
  9. 差し止めの仮処分申請へ ライブ、株主権侵害と主張
  10. 官邸サイトにサイバー攻撃

 livedoor型報道をよしとするならば、ワイドショー型低俗愚民迎合報道という悪貨によって良貨が駆逐されるのは目に見えている。

といいつつまだ潰れないでほしい破壊王ホリエモン

 といろいろ書いてきたが、それでも、フジテレビに負けずにニッポン放送を手に入れてぐちゃぐちゃにかき回してもらえれば面白いことになる、と思っているのだから我ながらタチが悪い。どっちにしても、デジタル放送対応の設備投資などの波の中でいずれ放送界は再編されねばならないのだから、やるならさっさと今のうちにかき回してくれたらいい、と思う。それに、今のマスメディアに「ジャーナリズム」は望むべくもない、というのは明らかな事実なのだから(だからといってブログ草の根メディアがジャーナリズムを担えるかといえば、それも過大評価だと思うのだが)。

 ただし、その後の「再建」「新興」メディアは、絶対にホリエモンの手によってやってほしくはない。ジャーナリズム魂を持った健全なジャーナリストがマーチャントの論理を抑えこむくらいのものが出てきてほしいものである。

 それに、ホリエモンはプロ野球を掻き乱し、放送業界に衝撃を与えたわけだが、そこで終わってもらったら困るのだ。日販・トーハンという2大取次企業の一方または両方を買い取って、出版流通にも衝撃を与えてほしい(笑)。今の出版業界の硬直化を救うのは、ホリエモンの乱入しかないかもしれない。頼むからそこまでやってから潰れるなら潰れてください。

 書いてて思ったが、ホリエモンはゴジラみたいだねえ。いきなり東京に出現して破壊の限りを尽くす巨大怪獣。

 以上、実業家だと渋沢栄一に強いシンパシーを感じる一ライターの感想である。

関連ブログ記事

 トリックスター ホリエモンでググってみたらいくつかそういうことをすでに書いているブログがあった。

 最後に念のため。こちらにコメントやトラックバックいただくとしても、ホリエモンが好きとか嫌いとか擁護派とか批判派とかの派閥レッテル貼りについては一切無視しますのでご了承ください。

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2005年2月24日15:49| 記事内容分類:宗教・神話学, 日本時事ネタ, 民俗学・都市伝説| by 松永英明
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最近、日経がおなじようなコラムを
載せましたね。

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このブログ記事について

このページは、松永英明が2005年2月24日 15:49に書いたブログ記事です。
同じジャンルの記事は、宗教・神話学日本時事ネタ民俗学・都市伝説をご参照ください。

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