中国「愛国者同盟網」サイトまでもが過激な行為を厳しく非難、デモにも疑問の声

 今回の中国「反日」行動の高まりは、若い中国ネットワーカーの一部が主導している(つまり愛国厨房中心の動き)であって、国を挙げてのものではない、ということはすでにわかっているだろうが、その「愛国厨房」たちの間でも、過激な行為を慎むようにという見解が主流となっている。また、デモそのものに対する疑問も提示されるようになった。

 中国のネットにおける「愛国者」のたまり場(つまり2ちゃんねるの極東板みたいなところ)である「愛国者同盟網」でも、今回のデモが過激化していることについては激しい非難が運営側から出た。日本に対する抗議はあるが、だからといって感情的になってはいけない、という主張が憤青(中国愛国厨房)たちの間から出てきたという事実には目を向けておく必要があるだろう。暴走している暴徒は、まさに「厨房の中の厨房」、極めて少数派ということだ。

2005年4月13日17:12| 記事内容分類:中国ネット事情, 中国時事ネタ, 政治学| by 松永英明
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中国、新たなデモ計画次々:NIKKEI NET:国際 ニュースでは、「上海市や西安市などで今週末にも新たな反日デモを行う呼びかけがインターネット上に続々と書き込まれている。中国の反日グループが運営するサイトに掲載された文章が次々と別のサイトに転載され、情報が広がっている」と書かれているが、これだけ見るとネット上ではどんどんデモが盛り上がっていて、これからも危険な状況が高まりそうな印象を受ける。

 ところが、この日経記事で紹介された「代表的な愛国主義的サイト「愛国者同盟網」の掲示板」を見てみると、むしろデモでの暴走を激しく非難する内容がサイト主催者側から提示されていることがわかる。ある意味、この日経の記事は一面的で誤解を生むものともいえる。

 というわけで、いくつかの投稿を訳してみたい。もちろん日本に対する意見自体は「中国愛国青年」すなわち憤青の主張となっているし、訳した私がこの意見に賛同するわけではない。ただ、憤青たちも過激な行為には反対という事実を伝えるものである。

【追記】産経新聞の以下の記事ではこのページと同趣旨のことが報じられている(徳保さんの指摘により追加)

[公告]愛国者同盟網から近頃の活動についての声明と呼びかけ

 《日本の安全保障理事会常任理事国入りに反対》のネット上署名活動が展開して以来、全国各地の民衆が自発的にネット署名活動や各種の愛国宣伝活動を行っているが、よい結果を生んでいる。平和的な方法で全世界に対して、中国人民が日本入常問題について鮮明かつ強烈な反対の態度を示してきた。4月7日、国連事務総長アナンは、アジア国家のこのような声に気付き、日本がアジアの隣国に対して謝罪することをはっきりと要求した。

このことは、この正しく平和的な活動がすでに国際社会から広く関心を引き起し、良い効果を上げているということである。

 しかし、最近北京・広州・深圳において、反日入常・日本の新教科書批准への譴責・日本製品不買運動を目的としたデモの中で、ごく一部に、日本商店を打ち壊す過激な行為があった。日本はこれを口実にして中国政府を非難し、中国の国際的イメージを大いに損なってしまった。愛国者同盟網はここに呼びかける。

  1. いかに目標が正しくても、正しくない手段を取れば、この目標はもはや正義を有さない。民衆が自発的に、日本入常反対・日本製品不買などを呼びかけるデモをすること自体は完全に正義・正当である。ごく一部の者による過激な行為は、国家のイメージと利益を損なっている。その他のデモ参加者の正当な権利を損なっている。デモの正義を損なっている。このような行為は激しい非難を受けるべきだ。
  2. デモの最中には警戒心を高め、何か企んでいる者の身分を見抜き、盲目的に従ってはいけない。打ち壊しなどの過激な行為には意識的に逆らおう。またこのような行為があったときには積極的に制止し、国家のイメージと利益を守り、自分のデモの権利を守り、デモの正義を守ろう。

 また、深圳のデモでは、我々は何人かの不審人物を見つけた。愛国者同盟網をかたって警察と民衆の衝突を煽り、日本商店打ち壊しを煽動した。また、最近はひどいことに、愛国者同盟網がさらに大規模で激烈なデモを組織しようとしているというデマを飛ばして、愛国者同盟網が不義に陥ることを愚かにも企んでいる。注意してほしい。これに対して我々の声明は以下のとおりである。

  1. 愛国者同盟網は愛国デモ中、打ち壊しなどのいかなる過激な行為についても反対・非難する。
  2. 愛国者同盟網は北京・広州・深圳などの場所でのデモ活動を組織したことはないし、類似の計画を立てたこともない。
  3. 愛国者同盟網の名義で組織された活動は、すべて愛国者同盟網総編集室の名義で発表された公告のみが正確なものである。
  4. 愛国者同盟網は、愛国者同盟網の名義をかたって社会混乱を引き起すような行為をなす者を厳しく非難し、断固としてこのような行為と闘う。

 我々とともに、あらゆる平和的・非暴力的方法を用い、断固としてじっくりと日本の右翼と日本の軍国主義に反対していこう。この活動の中では、中国の国家イメージと利益を損なうような一切の行為に抵抗していこう。

愛国者同盟網 2005-4-12

附:いくつかの写真をよく見てほしい(4月10日深圳デモで撮影)

道路を越えて、日本商店に行って商品を破壊した者。

200541304950140.jpg

「壊せ」と叫んで突進した者。

200541304357834.jpg

警察側を挑発し、それからこの機会に「警官が人を打った」と叫んで、警察と民衆の衝突という状況があるかのように見せかけようとした者。

20054130468213.jpg

理性を保とう!少数の下心のある連中が広大な愛国青年のイメージを破壊してしまわないように!

 まず広大な愛国青年に対してこう言いたい。みなさんお疲れさま! 警察同志に対してこう言いたい。お疲れさま!

 我々のデモの目的は、世界と、あの鳥獣にも劣った島国に、中国人の怒りを見せることだ! 我々の日本製品不買は、彼らに中国人がどのように思っているかを思い知らせるためのものだ! 今回、政府は広大な愛国青年の行為に理解を示したといえよう。しかし心配なのは、ごく一部の少数の者が引き続き政府を叩き続けるならどういうことになるだろうか? 国外の民衆はどのように見るだろうか? 小日本は、中国の脅威を大いに宣伝してしまわないだろうか? 日本商品不買は長期のつとめであり、道は非常に長い! 日本が中国に対して心から謝罪する日までずっと堅持しとおすのみ! 日本が心から過ちを悔い改めるまで! 道は長いため、我々は冷静な心理状態を維持する必要がある。国家の法律の許す範囲で、我々の声を表現し続ける必要がある。絶対に、少数の過激な行為によって我々の目的を破壊させてはならない。我々の正義の行動を、少数の下心のある連中の人に言えないような目的を達成するために使わせてはならない! 理性と熱意のバランスを取ろう。

 最後に、今日の鳳凰衛星テレビで阮次山の語った忠告を聞いていただきたい。「少数の者がデモで中国民衆のイメージを破壊しようとすることを日本が利用し、それによって中国政府がデモを阻止するよう威嚇しようとしているので、注意せよ!」みなさん、くれぐれも注意しよう~

反日デモ(游行示威)について少し考えて!

 最初に述べておくが、私は絶対に日本常任理事国入り(日本入常)に反対だし、釣魚島問題と日本が歴史問題を正視せず教科書改悪した事件に対して最も強烈な憤慨をしている。またあ、日本製品不買運動もずっと実施していて、家の中の電気製品には一つも日本製のものはない。しかし、だからといって「日本に反対するには街頭デモに参加すべきだ」という意見に賛成というわけではない。

 9日、私はちょうど中関村に行っており、人大東門に来たのだが、歩いていけず、車で塞がれていた。しかし私はデモ隊に参加せず、一緒に行った友人も参加しなかった。

交通が影響を受けていたり、商店に突撃する人がいたり、はなはだしきに至っては聞き苦しい下品な言葉で罵っているのを見て、私は呆然としてしまった。翌日、深圳・広州でも似たようなデモが発生したが、最初の考えと同じように思った。

 日本のすることなすことは確かに腹立たしいが、我々は中日関係の本質をはっきり見きわめたい。もしひたすら感情的になってしまえば、問題を解決できないだけではなく、かえって敵を利する危険がある。愛国はいいが、よくバランスを取らなければ「誤国」になってしまう。

 中日関係の根本的な問題、一つは日本がその侵略の歴史を正視できないこと、二つは中国経済が急速に発展していることが日本の「アジアの長男」という神経を逆なでしていることである。

 第一の問題については皆さんよくわかっているだろうから、繰り返さない。第二の問題について、当事者には見えず傍観者にはよく見えるという諺どおり。我々はいつも不満をこぼしているが、他の人たちが見ればはっきりしていて、特に日本が我が国の経済発展について極めて大きな心配を示している。これこそ、中国経済がかなり成功している証拠だ。中国と日本は同じアジアにあって、日本では100年間ずっとアジアの経済的長男であった。現在、中国に席を譲ろうとしていることを目の当たりにして心中穏やかではない。私は、これが日本がどこでも悪巧みをしている原因だと思う。中国の発展を邪魔したいのだ。国内には早急な解決を待つ多くの問題があるが、中国が巨大な経済的成功を収めるだろうと評価することには差し障りない。国内には問題がまだある。だから我々はさらに困難な安定・団結をしていくのだ。我々はまたさらに急速に経済を発展させねばならない。そうすれば根本的に問題が解決されるだろう。もしちょっとしたことで街頭へデモをしに行き、交通を妨げたり、ましてや社会の安定に影響を与えたりするならば、それこそ敵が見たいと思っているものだ。彼らは中国が乱れていないことだけを恐れている。我々がデモをしても、問題を解決できないだけではなく、かえって中国の敵の思うツボで、敵が中国脅威論を唱える口実となる。知らず知らずに我々はなんと敵を助けてしまっているのだ。だから私は、こんなものは愛国ではない、誤国だ、と言うのである。

 我々はこの言葉をしっかりと深く心に刻んでおかねばならない。「よい愛国の動機だからといって、結果がいいとは限らない」。ガラスを割り、小石を投げるのは上策ではない。我々は親しい人ならよくし、仇なら痛めつけて喜ぶ、といった馬鹿なことをやってはならない。日本製品不買運動を実行するのはいいが、大局を見ればデモは必要ない。自分のやるべき仕事をちゃんとやることが敵に対する最もよい回答である。敵が攪乱してきても我々は乱れてはならない。我々は党と政府が中日関係をうまく解決できる能力を有することを信じなければならない。国家利益に関わる問題について、中国政府は決して手心を加えることはない。きっと最も肝心なところで根本的に中国式の智慧を働かせて問題を解決するはずだ!

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2005年4月13日17:12| 記事内容分類:中国ネット事情, 中国時事ネタ, 政治学| by 松永英明
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このページは、松永英明が2005年4月13日 17:12に書いたブログ記事です。
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