灰皿を投げたFC東京サポーターはmixiで日記を書いていた

 7月9日、東京・味の素スタジアムで、JリーグFC東京 VS 東京ヴェルディの試合前に、FC東京の無職男性サポーターN・D(24)がスタジアム備え付けのアルミ製灰皿のふたを投げ、ヴェルディクラブ社員、一般客、警察官の3人に負傷させた事件があった。

 翌10日にはFC東京公式サイトに「すべてのJリーグファンのみなさまへ(お詫び)」というメッセージが公開された。

 ところが、このN容疑者(加害者)がmixi(ミクシィ)に入っていたことが判明。FC東京の説明には一部誤りがあることもわかった。mixiからわかった事件の裏側をまとめてみる。

2005年7月12日13:47| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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事件についての報道と公式な「お詫び」

上記報道とお詫びからまとめた事実関係

  • 東京都調布市・味の素スタジアム
  • Jリーグ FC東京・東京ヴェルディ戦の開始前
  • 9日午後6時20分ごろ
  1. FC東京サポーターが大挙してメインスタンド側コンコースをヴェルディゴール裏方向へ応援をしながら行進。
  2. ヴェルディゴール裏との境界に設置された柵の手前に集結し示威行動(警察官と警備係員がいた)
  3. ヴェルディサポーターが集まり、FC東京サポーターと柵をはさんで対峙。
  4. 退散開始中に、FC東京側の加害者Nが、スタジアム設置灰皿のふた(アルミ製)をヴェルディ側に投げ入れ、3名が受傷。
    • どちらのサポーターでもない一般観客
    • ヴェルディクラブ社員
    • 調布署警察官
  1. 加害者Nはその場で現行犯逮捕。

今回の加害者は、これまで調べた範囲ではクラブと交流のある人に友人知人がおりません。FC東京ファンのみなさまが増え、すべての方とコミュニケーションをとることは不可能となっております。警備体制にも限界があります。ならば、今回の事件はその“引き金”となる行動を許容したことに原因があるといわざるをえません。事件の予兆を察知し、未然に防ぐべく対処することがクラブの責任であることを認識いたします。

 ちなみに、3人を負傷させた「灰皿のふた」の写真がここにある。

被害者のブログ

加害者N・Dはmixiに入っていた

 airoplane.netのひとがmixiで書いていたのだが、加害者N・Dはmixiに入っていて、その「マイミク」(知り合いとして登録されている人)は一人で、実はその人は「クラブと交流のある人」と考えられる(つまりFC東京の説明は間違い)ということである。

 そこで実際に調べてみると、加害者N・Dは確かにmixiに入っていた。名前は本名である。

  • 現住所 東京都調布市
  • 年 齢 24歳
  • 誕生日 03月20日
  • 血液型 O型
  • 出身地 山口県周南市
  • 趣 味 スポーツ観戦
  • 職 業 技術系
  • 所 属 FC東京
  • 好きな有名人 阿部
  • 好きな言葉 弱気は最大の敵
  • 好きな休日の過ごし方 跳ねる

加害者N・Dの日記

 最初の日記は5月23日。「普通に仕事でした」とあるし、技術系ともあるので、完全な無職ではなく、フリーで請け負うような感じなのかもしれない。以下、「全体に公開」されている日記のタイトルだけを列挙すると(☆は写真の数を当方でつけた)

  • 05月23日20:55 5月23日
  • 05月28日00:47 キリンカップ ☆☆☆
  • 05月29日00:32 ナビスコカップ ☆☆☆
  • 05月29日17:11 ダービー ☆
  • 05月29日17:16 道に迷った ☆
  • 06月04日13:45 きたろうデー ☆
  • 06月12日01:16 VSジェフ千葉 ☆☆☆
  • 06月12日01:22 VSジェフ千葉アルバム ☆☆☆
  • 06月16日19:30 ダニーロ~
  • 06月18日17:40 ユース
  • 06月19日19:57 佐川東京対三菱水島@駒沢 ☆☆☆
  • 06月19日20:20 その後 ☆☆☆
  • 06月25日23:29 横浜対札幌@日産 ☆☆☆
  • 06月29日22:22 早慶戦 ☆☆☆
  • 07月05日03:48 米オークス
  • 07月05日23:51 日ハムvsロッテ@東京ドーム
  • 07月07日19:20 川崎vs東京@等々力 ☆☆☆

となっていて、けっこうこまめに写真をアップしている。日記を読む限り、それほど荒々しい性格にはみえない。で、事件当日9日の日記は公開されないままになっている(当たり前だが)。

加害者N・Dが入っていたコミュニティ

  • 東京電力女子サッカー部『マリーゼ』を応援するコミュニティ
  • 横河武蔵野フットボールクラブ

 企業系サッカーのファンのようである。

FC東京とのつながり

 FC東京のお詫びでは「今回の加害者は、これまで調べた範囲ではクラブと交流のある人に友人知人がおりません」と書かれているが、それは事実だろうか。

 加害者Nの「マイミク」は一人。つまり、加害者Nをmixiに誘った一人だけが知人として登録されているのか、または加害者Nをmixiに誘っただれか別の人がいて、その人はすでにmixiをやめてしまい、現在のmixiでの知人は一人だけなのか、どちらかである。加害者Nの現在の唯一の「マイミク」Fさん(仮名)は、熱心なFC東京のファンの一人のようだ。

 Fさんの日記は2004年12月から2005年7月まで書かれていたようだが、現在は4月と5月分しか残っていない。事件のせいで削除されたのかどうかは不明である。

 Fさんが入っているコミュニティはいくつかあるが、サッカー関連は「FC東京」「FC東京ペーニャ総合案内所」と、もう一つ、彼自身が管理するFC東京 PENYA「L」のコミュニティである(具体的な名称は頭文字だけにしておく)。

  • FC東京ペーニャによると、ペーニャ(penya)とは以下のようなものらしい。

FC東京ペーニャは、FC東京を愛する同好の士が寄り合う「社交クラブ」です。FCバルセロナのペーニャを手本としながら独自のFC東京ペーニャを創っていきたいと思います。

 ペーニャとは、スペイン語で“集まり”“サークル”という意味があり、スペインでは、非常にポピュラーな存在として確立されています。 とくに、FCバルセロナでは海外も含め1,600以上ものペーニャがあるといわれています。

 この、ペーニャは“社交場”“ファンクラブ”的な要素があり、FCバルセロナでは、ある酒場にペーニャの会員が集まり、そこでチームの話を語り合いながらお酒を飲んでいます。FC東京ペーニャも特定の酒場やお店で集い、お酒を飲み、食事を食べながらチームのことを語り合うことを想像しています。

 最後は「想定」じゃないのかとも思うがまあいいだろう。要するに店を中心として集うファングループである。F氏は都内L店を拠点とするペーニャの代表だ(mixi外に告知ページがある)。そして、このペーニャの運営そのものにFC東京は直接関わっていないものの、関連組織であるFC東京ペーニャ事務局に申請して登録するシステムである。したがって、その運営者は「クラブと交流」があると言わざるを得ない。(※この「交流」については下記追記を参照してください)

 FC東京ペーニャの一つを運営し「クラブと交流」があると認められるF氏が唯一のマイミクだった加害者N・D。「今回の加害者は、これまで調べた範囲ではクラブと交流のある人に友人知人がおりません」というお詫びの文章は結果的に誤りであるということになる。

加害者N・Dと植田朝日氏の関係についての追記(16:30)

 加害者Nの「2005年06月29日 22:22 早慶戦」の日記に、2005年07月02日01:15につけられた本人のコメントがある。

行ってきました。

徳永は別格でしたよ。

ニットをかぶったカブさんが朝日の隣で騒いでました

 これをもって、植田朝日氏の知り合いとする説もあるようだが、これだけだと一方的に加害者Nが朝日氏を知っているようにも見える。このコメントのみをもって「朝日氏の友人知人」であるということはできないだろう。

 また、「あさひまんドットCOMブログ:ラッパ返還(大分戦)」の記事に出てくる「デン」氏は、今回の加害者N・Dとは別人らしい。したがって、現時点では、加害者N・Dが植田朝日氏と知り合いであるといえる証拠はない。

結論

 FC東京フロントのお詫びには、事実関係に誤りがあった――ということがわかったので、それで自分としては終わりである。別にサッカーには興味もないし、サポーター同士の対抗意識にも興味がない。この「事実関係」をどう解釈するかは読者諸氏に完全にお任せする。

追記(13日07:00)

 上記でペーニャ運営者が「クラブと交流」があると書いたが、一般的な受け取り方と実情には差があるようである。各ペーニャの運営者は事務局にFAXで申請書を出すだけで、実際にはペーニャ運営者といっても「関係者」とは言い難い。したがって、「クラブと交流のある人に友人知人がおりません」という表現は、実質的に「植田朝日氏とその周辺の人たちの友人知人ではない」という意味になる、というのがFC東京サポーターの共通した受け取り方のようである。加害者N・Dは植田朝日氏を一方的に見知ってはいたが(かなり有名な人物なので)、植田朝日氏からは知られていなかった、というのは確かに事実だろう。

 植田朝日氏の責任問題等については、いくつかのブログで意見が述べられているので、それを参照してもらえればいいだろう。私が口を挟む問題ではない。

 また、ペーニャ運営者とFC東京フロント、FC東京ぺーニャ事務局の関係がかなり希薄であることから、この「お詫び」が出された時点で、加害者N・Dがペーニャとつながりがあることなどを実際に把握していなかった可能性が高いように思われる(さらに、ペーニャの中には、名簿などを作成していないゆるやかなものも多いようなので、ますます把握は難しくなるだろう)。

 したがって、FC東京は意図的に隠蔽してウソをついたわけではないかもしれない。もっとも、このお詫び文の意図が、植田朝日氏に累が及ぶことを恐れて出されたものであるように読めることは、いくつかのブログで指摘されているとおりであろう。

 なお、加害者N・Dは、決して、いわゆるフーリガンのようにすぐにケンカを売るタイプではなかったとの情報も入ってきた。だとすると、そういう人が異常な行動に出てしまった現場の雰囲はどのようなものだったのか、ということがむしろ気になるところである。

mixiの広がり

 日本国内でトップの規模となっているソーシャル・ネットワーキング・システム(SNS)「mixi」は、かなり普及していることが実感できる。

 このプレスリリースにmixiユーザー数の急増具合が記されている。「悲劇的なgooリサーチ結果--SNSは認知も利用もされていない - CNET Japan(2005/07/11)」という記事もあるが、SNSなんて誰も知らないとしても、mixiを知っている人は急増しているように思う。

 先日、mixiコミュニティ「豆乳組」のオフを開いたのだが、パソコンがよくわからないという人もmixiを使いこなしていたりすることがよくわかった。また、西新宿のもうやんカレーで食っていたら近くでmixiの話題をしゃべっている人がいた、というような話も聞いた(もうやんコミュもあるし)。

 そういうわけで、mixiは一般にも広がりつつあることが感じられる。事件の当事者がmixiで日記を書いていた、というような話題はこれからもどんどん増えそうだ。

最後に念のため補記

 加害者N・Dが所属しているコミュニティにも、あるいは彼をmixiに誘ったFさんにも、もちろんFさんの運営するペーニャにも、この事件に関する責任はない。もちろんmixiにも何ら責任はない。単に彼が所属していたとか、知り合いだったというだけで連座させてはならないことを強調しておく。人は自分のなしたことにのみ責任を負うべきである。もちろん、その縁のある人の中に、現場で彼を煽っていたような人がいたら、それはそれで別個に非難されるべきであろうが、現時点でそのような事実は確認されていない。

 さらに追記(13日7:00)。今回は加害者N・Dと匿名にし、mixiへの直リンクを避けた。理由は以下のとおり。

  • 日記を見る限り、加害者N・Dに凶悪性は感じられなかったため、吊し上げて将来に至るまで社会的に罰し続けるようなことはしたくない、と思った。司法による処罰は適切に下るだろうし、リーグやFC東京からもペナルティが課されるかもしれない。それで充分だ。私は彼を裁く立場にはない。
  • mixiの彼の日記やその周辺の人たちに対して大量の野次馬的アクセスが集まりすぎるのは本意ではない。自分だって野次馬といえばそのとおりだが、荒らすような連中まで呼び込んでしまう可能性がある。ただ、どうしても知りたければmixiで検索すれば簡単に(mixi参加者ならば)たどりつけるから、情報源を秘匿するわけでもない。実際、自分より前にもけっこうな数の人が日記を読んでいたようだ。
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2005年7月12日13:47| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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「クラブと交流のある人に知り合いがいない」っていうのは植田くんたちとその仲間じゃありませんよっていう意味でしょ。昨日今日ペーニャに登録した人なんて、どんな人物かまだ把握しきれてないんだし。クラブとしては今の時点で交流があるっていわれても困るんじゃないの。
交流ってもうちょっとつきあいのある状態をさしてほしいんだけど。

すいません、記事とは関係ないのですが、「コメント(ご意見・ご感想)を投稿する」の上に書いてある4行目の「コメントならびにトラックバックについては~~~~」と書いてある部分の最後の「以外の理由なく断りなく削除することがあります。」という文章が何度読んでも理解できません。文章に慣れてない人でも理解できるような表現に修正して頂けないでしょうか。宜しくお願い致します。

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