[老鼠愛大米](3)「ネット流行曲」の著作権をめぐるもめごと

 一体誰がネット流行曲「老鼠愛大米」のもとの歌い手なのか。だれに功績があるのか。CDではなくネットで最初に公開されたこの曲は、著作権問題でも揺れている。ネット流行曲の抱える著作権問題について詳しく書かれた記事を訳してみた。

2005年8月 1日08:09| 記事内容分類:中国ネット事情, 著作権, 音楽| by 松永英明
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「老鼠愛大米」の著作権の真相調査 誰が「わたしの大米」を有名にしたのか?

 「我爱你,爱着你,就像老鼠爱大米……」もし、このネットを通して流行した「老鼠愛大米」を聞いたことがないとしたら、去年上半期に「刀郎を聞いたことがない」というのと同じくらい時代に取り残されている。

 この歌の人気が出ると、自然とブームを呼び起こし、著作権は40万元まで高騰していた。しかし「老鼠愛大米」は従来のレコードルートを通して発売・流布されていなかったため、その版権の帰属が複雑なものとなっている。

 この「大米」戦争の中で、楊臣剛と王虎はかつて互いに兄弟と呼び合う仲だったのに、今は反目してしまっている。また、王啓文は楊臣剛の友人で、もともとは楊臣剛が王啓文を王虎に紹介したのだった。楊臣剛の話によれば、彼ら三人はかつて、心おきなく話せて、何でも言い合える戦友であったが、今はこの一つの歌によって、友人でも兄弟でもなくなってしまったという。

 一体誰がこの「大米」を動かしたのか。一体何がこの大戦争を招いたのか。晨報記者は当事者に取材して、この謎を解明しようと試みた。

第一の謎:歌曲の著作権は一体誰に帰属するのか?

 飛楽唱片は2004年12月28日、40万元の価格で、音楽家・田伝鈞の手中から楊臣剛創作の「这样爱你」(「老鼠愛大米」の別名)の永久版権を購入した。その後、北京太格印象文化伝播公司は、この歌はもともとその公司が所有しているものであり、訴訟も起こすと述べ、同時に楊臣剛がこの歌を4人に転売していたという事実を暴いた。

 楊臣剛は2002年11月、2000元で「老鼠愛大米」の「永久版権」を北京の音楽家・田伝鈞に切り売りした。2003年3月1日、この歌を無償で永久に北京太格のトップの王虎に譲った。2004年6月には武漢の歌手・誓言に譲った。2004年8月、8000元の価格で飛楽唱片の歌手・香香に譲った。

 以上の事実は多くのメディアで掲載され、楊臣剛本人は取材の中でこの話を認めている。

 しかし、この歌の版権を堅持している王虎は晨報記者に述べた。

「わたしと楊臣剛は2002年には知り合っていました。当初彼はギターでこの歌を歌い、いいと思ったので契約を署名しました。しかし、契約上ではこの歌の交換条件だけが書かれていました。楊臣剛は歌を太格に与え、太格は公演出演と編曲を提供し、二次創作を行なう、と。2003年の契約は、契約を補完したものであり、条項を改善するために調印したのです」

 王虎の話に対して、楊臣剛は非常に憤慨する。晨報記者が電話したとき、受話器に向かって叫んだ。

「2002年に王虎とサインしていたら、俺は死んだっていい」

 その後で失態に気付いたのだろう、口調を押さえて言った。

「実際、老鼠愛大米は2001年に書いたもので、当時わたしは田伝均と知り合いでした。彼はわたしの歌を聴いて、2000元の価格で「好夢初醒」と「老鼠愛大米」を彼に売ったんです。その後、友人から紹介されて、王虎と知り合いました。わたしはギターを背負って王虎の家に行って歌いました。彼はMDを使って7~8曲を録音し、北京に戻ってから盧中強・黄小茂に聞かせたところ、彼らは「这样爱你」はヒットすると言ったんです。王虎はまたわたしに会いに来てこの歌を出したいと言いましたが、わたしには千元そこそこのお金しかないといいます。そこで、前にすでにほかの人にあげたのだからということで、彼には無償であげることにしました。2004年6月、わたしはまた演唱権を武漢の誓言に売りました。それから、今契約している会社である飛楽で、合計4人が「老鼠愛大米」の版権を持っているわけです」

第二の謎:オリジナルの歌手は王か楊か?

 事件の中には一つの問題が焦点になっている――王虎は、オリジナルの歌手は彼らの会社の王啓文であって楊臣剛ではないというのだ。全国の数多くのウェブサイトの弁護士への手紙の中で、以前誤って楊臣剛を歌手としてサインしてしまったことの「混乱を静めて正常にもどす」ことを希望している。そのほか、「芸術人生」司会者の朱軍・白岩松に対して厳正抗議を送付した。というのも特別番組で観衆に誤りを伝え、観衆にネット上で広まっている「老鼠愛大米」の歌い手が楊臣剛だと誤って認識させたからだという。

 王虎は現在、王啓文のプロデューサーである。王虎は言う。

「誰が本当のネット歌王だろうか? 楊臣剛ではない。王啓文だ。ネット上で現在広く伝えられた「老鼠愛大米」の声は王啓文のものだ。歌を聞いても歌い手の声が聞こえないというのだろうか? 歌を聴いたら、作者が歌っているということになるのだろうか? 簡単な例を挙げれば、林夕の作詞がよかったとしても、王菲(フェイ・ウォン)の歌を歌うわけではないし、王菲の歌は自分で歌ったと言ったりするだろうか?」

 王虎は楊臣剛の個人歌唱版は今になってやっと出たと思っている。王啓文の歌った「老鼠愛大米」に先に火がついて、楊臣剛はようやく自分の歌ったものを出してきた。これは、王啓文の功績を奪い、故意に作者と歌い手の概念を混同させるものだという。

「今簡単にネットを検索すると、実に多くの「老鼠愛大米・楊臣剛」という歌曲があるが、その実はすべて王啓文編曲・歌唱バージョンだ」

 王虎は、楊臣剛の「他人名義詐称」は意識的なもので、誤解を黙認して利益を得ようとした、と考えている。また、朱軍と白岩松は「芸術人生――温暖2004」という番組で楊臣剛に言及したとき、また重大な間違いを全国の観衆に伝えてしまった。事実に対してはっきり調べることなく、楊臣剛を作品の歌手とし、全国の観衆の面前でこの誤りを広めてしまった。「老鼠愛大米」は楊臣剛の歌ったものだと思わせた。そのため、朱軍と白岩松は事実を尊重してこの件について発表すべきだ、と王虎は考えているのである。

 これに対して、楊臣剛は記者取材時にこう述べた。

「王虎がやったのは単なる投機であって、現在は飛楽唱片だけが唯一の合法的な版権所有者です。王啓文は確かにこの歌を歌ったことがありました。しかし、だれもネット歌王だと自称することはできません。今、無数の人がこの歌を歌っています。わたしも自分だけがこの歌を歌えるなんてことは言いません。しかし、わたしはこの歌の原作者であって、これはまぎれもない事実。だれが歌ったかには意味がないですし、聴き手がどの歌い手を選ぶかの権利があります。だれのを聞いて選ぶかは聴き手なのです」

 また《芸術人生》のプロデューサー王崢はこう述べる。版権問題と番組は関係がない。ただ普通に取材しただけである、と。

第3の謎:“大米”は結局香しいか?

 この「大米」にどれほどの魔力があったのか。多くの人がここに殺到した。レコード会社が版権を得ようとしただけではなく、ネット上の広がり方も軽視できない。このように、一つの問題について両派の人たちは異なった意見を述べている。

  • 盧中強(ミュージシャン、かつて「老鼠愛大米」を編曲した):ごみの中のごみ、音楽的素養は小さく、歌った功績もない。こんな人がどうして人気となるかわからない。こんなふうに音楽ができるのならメチャクチャだ。
  • 王虎:最初に楊臣剛と契約に署名した後、ずっと彼のためにアルバムを作らなかった。その主な原因は、彼が根本的に音楽の「材料」を作っていないと思ったからだ。アルバムを出したり公演に出たりするには実力が必要だが、彼には根本的にこういった実力はないと思っていたので、当然、それ以上協力しなかったのだ。
  • 楊臣剛:王啓文と比較しようとは思わない。彼の歌い方はわたしと違っているし、年齢もずっと上で、声はずっと成熟かつ雄渾だ。実際のところ、彼の歌はいいと思う。わたしは若く、声も子供っぽいので、若い人に合っているだろう。歌手ごとにみんな特徴が違うのだから比べようがない。

【専門家の観点】李双竜(復旦大学新聞学院伝播系主任)

 「老鼠愛大米」は、奪い合いのために訴訟も辞さないほどの影響力がある。楊臣剛自身も、この事に対して大きな責任を負うべきだ。彼の不注意のために、一つの歌を多くの人に譲ってしまい、後の結果を前もって考えなかった結果、法廷で決めてもらうしかなくなったのだ。

 全体の状況を総合してみて、忌憚なく言うならば、当事者間に法律意識がなかったということ、みんな「法盲」だったということだ。まず、彼らは法律を使って自分の利益を固めようとは思わず、人の隙に乗じようとした。実際のところ、彼らの裁判は経済的な利益を得ようとしているのだが、そんなに巨大な肉を食べずにボロボロこぼしているのだ。

 この事件の中で、実際には知識所有権についての理論に及ぶことになる。社会の発展と進歩に従って、この理論の知識は必ず理解しておかなければならないものとなっている。もし以前からこれをよく理解していたのなら、こんな厄介なことにはならなかっただろう。

【出生の問題】“大米”はどこを経て

 実のところ「老鼠愛大米」という歌が流行った理由を探るなら、ネットがカギだというのはすぐにわかる。ネットで伝わるのは素早く、この歌も急激に人気が出た。もし今サーチエンジンを使うならば、この歌の7~8つのバージョンを見つけ出せるが、それはみんな違った人の歌うものだ。

 ネット歌手の出現と存在によって、レコード会社や伝統的メディアは、新たな視野を持つことになるだけでなく、その作品の質や歌唱者の実力を再検討しなければならなくなる。しかしネット由来であるから、ネット歌曲の版権は切実に解決を迫られた問題となっている。

 楊臣剛は取材の中で自分の考えをこう述べた。

「ネットを通して有名になった歌手は、一層注意しなければならない。版権が保護されない状況で、気まぐれに自ら創作した歌曲をネット上に置けば、わたしと同じ失敗を繰り返すことになる。しかし、それで立ち止まることはできない。理想を抱き、勇気をもって進むべきだ」

(新聞晨報)

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