Dr.コパは風水ではない!「九星気学+家相占い=コパ風水」の公式

 自分はかなりの風水マニアである。いろいろな本を読み、中国に行けば必ず風水をテーマにした本を買ってくる。

 というと、うちの本棚にはDr.コパこと小林祥晃氏の本が並んでいるように思われがちだが、「インテリア風水」系の本は一冊もない。それどころか、Dr.コパの言う「風水」は「風水」なんかじゃないというのが私の結論だ。だから、地脈・龍脈といった「大地の気」を扱ったものしか風水として認めていない。部屋の西側に黄色い飾り……ってそれ単なる陰陽五行説だから。

 というような「歴史的地理風水原理主義派」の自分なのだが、別冊宝島の本を見ようと思って渋谷の書店に行ったら、こんな本を発見。次の瞬間には迷わずレジに向かっていた。

風水講義
文藝春秋
三浦 國雄(著)
発売日:2006-01

 学術的に風水を研究し続け、良書を送り出している三浦先生の著書である。この本の帯にはこう書いてあった。

「本書を熱心に読んでも幸せにはなれません」

 言ってくれます、三浦先生!

2006年1月27日09:19| 記事内容分類:宗教・神話学, 日本史, 民俗学・都市伝説| by 松永英明
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「インテリア風水」は風水ではない

 この『風水講義』は堅苦しい本なので、一般のインテリア風水ファンにはまったく読む気がしないだろう。しかし、この本に載っていないものは風水じゃないと言ってもそれほど過言ではないようなものなので、本当は風水好きを自称する人には必ず読んでもらいたいものだ。

 実は「本当の風水」というサイトを立ち上げようとも思っていたのだが、この『風水講義』を読んでもらえれば話は終わる。それくらい絶賛したくなる内容だ。

 もともと、風水には2つの要素がある。もともとの風水は、巒頭(らんとう)風水で、実際の山や川といった地形から、大地のエネルギーの流れとそのエネルギーの集まるところ、散るところを見ていくものだ。

 ところが、中国南部の山あり谷ありの地域で生まれた風水が北上するにつれて、何もない大平原では風水を見ることができなくなった。そこで生まれたのが理気(りき)風水で、建物の向いている方角や、住む人の生年月日から求めた星による吉方位・凶方位などを見つける手法が生まれたのである。というか、それは四柱推命などの算命の応用でしかない。だから、理気風水だけだともともとの風水とは全然関係なくなって、ごく普通の家相占いになってしまう。

 まとめると、風水師とは、巒頭のみ、または巒頭+理気を扱う必要があり、理気だけだったら風水師と呼ぶ必要はない。単なる占い師だ。という観点で見ると、Dr.コパはどう好意的に解釈しても「理気風水師」、あるいは単なる九星気学の家相見じゃん、ということになるわけである。嘘だと思うなら、一度「九星気学」の占い師のところに行って、開運のインテリアをきいてみるといい。コパと同じアドバイスしてくれるから。

 で、私は「Dr.コパは九星気学だから当たらない」と言ってるのじゃない。九星気学というのは日本で大正時代ごろに出来上がった占いだが、十二星座占いなんかとは比べものにならない緻密さがあるので好きである(……占いの話はまたいずれやると思う)。そうじゃなくて、「Dr.コパが風水って言ってるものは、実は風水じゃなくて九星気学・家相占い」っていうことを言いたいのだ。

 おそらく、こういう記事を書くとファンの人がこう反論してくると思われる。

「名前が何であろうと、Dr.コパの風水は当たるんだから、開運するんだから、細かいことはどうでもいいじゃない」

と。しかし、マーケティングのことも考えた上で言うが、「風水」とは関係のないものを「風水」と呼ぶのではなく、新しい占術名をつけるなりなんなりすればいいのに、と思ってしまう。ちなみに細木数子の「六星占術」の実態は御射山宇彦の「0学」をアレンジしたもので(ほとんど変わらない)、実際には四柱推命の空亡に着目した「万象学」の流れを汲むものだ、というのはすでによく知られていることだろう。でも独自の名前を付けているから、まあそれはそれでいいんじゃない?と思う。さらに脱線すると、どうぶつ占いも四柱推命を単純化したものだ。

風水は本来、もっとスケールが大きい

 まあ簡単に言うと、今流行の「インテリア風水」なるものは「室内」をちょこちょこといじることばかりやっているが、本来の風水はそもそも「どこに家や墓を建てるか」という非常にスケールの大きなものだった。

 「蔵風得水」という基本原則があって、土地の四方を山や丘が囲み、風をおさめ、水を得られる地形が最高だというものだ。そのためには、どういう地形がいいとか悪いとかいう話になって、それを選定するために「龍・穴・砂・水」を看る方法がある。その結果、「都を置くならここですよ」とか、「このポイントに家を建てれば大地のエネルギーを受けて幸福になれますよ」といった判断が出てくるわけだ。

 それを応用するなら、現代ならたとえば道路のカーブの内側と外側、どちらのマンションを買うべきか、というようなのが「巒頭風水」といえるだろう。

 ここに生年月日は出てこない。方角さえもあまり関係ない。日本にも風水が伝来していた!という根拠としてよく使われる「四神相応」(東=青龍、南=朱雀、西=白虎、北=玄武)も、中国の風水での四神は方角と対応しない。実際のところ、日本の陰陽道で使われた方位学には「蔵風得水」「龍・穴・砂・水」も残っていないので、これを「日本の風水」と呼ぶのは酷だろう。

 西=金気=金色(黄色)というので、「西に黄色で財運アップ!」というスローガンはわかりやすいが、これは単なる陰陽五行説を持ち出しただけの話で、風水でも何でもない。それがわかっていて黄色いインテリアを室内において金運を願うのはかまわないが、知らずに振り回されているのならば、あまりにもうかつに信じすぎだろう。

荒俣宏の功罪

 前世紀後半から風水というものについての学術的研究はじわじわと始まっていたが、この言葉を一気に広めたのはなんと言っても荒俣宏の「帝都物語」だろう。映画では桂三枝の演じた風水師・黒田重丸という登場人物が「風水」の名を日本に知らしめたといえる。それからだ、陰陽五行術や九星占術をやる占い師たちの肩書きに「風水」が入り始めたのは。そして、わかりやすいDr.コパのブームを経て、風水と言えば「西に黄色」のインテリア風水ということになってしまった。開運風水術というから引っ越しをするのか、それとも土木工事をして山や川を作り替えるのかと思ったら、そうじゃなくて、部屋の模様替えだったり、何かグッズを買ったりすることしか載っていない。

 まあそれはともかく、荒俣宏自身は地理風水的な話しか書いていないので、その点は良心的。しかし、この人は「どこかの本に書いてある」というようなことを何でもかんでも事実であるかのように言ったりするので、いつの間にか「江戸は天海僧正が霊的バリアを構築した風水都市」ということになってしまっていたりする。加門七海さんもそうだけど、もう少しテキスト・クリティークという要素はほしいものだ。文献の取捨選択がいい加減だからこそ、ぶっ飛んだ楽しい解釈も生まれてくるのだろうけれど。

 世の中に受け入れられていく過程でだんだんと解釈が曖昧になり、やがてもととは似ても似つかないものになる。そして、また世間の不純なもの、間違ったものに対して「純粋なもの」が登場し、またそれが消費されていく……。世の中はそういうサイクルばかりだけれど、「風水」の場合はあまりにもひどすぎる。

 『風水講義』を読んで、一度「本来の風水」に触れてみてほしい。その上で「インテリア風水」で開運を狙うというなら、それはその人の趣味の問題だ。

毛綱毅曠の夢

 実は、大好きな建築家がいる。というか、いた。毛綱毅曠(もづな・きこう)氏という。奇妙な建築物を建てる人で(作品の写真など)、川崎の都市計画に七福神+川崎大師のそれぞれの要素を持ち込んで高度情報都市国際コンペ第一席を受賞した「KAWASAKI発見伝」などの存在を知って興味を持ったのだが、まあ簡単に言えば神道や仏教じみたことを建築の理論武装に使う変な人である。が、惜しくも2001年に亡くなった。

 で、『風水講義』のあとがきで、三浦氏と毛綱さんが対談したことがあるということが書いてあった。もしかしたらこの対談記事は読んだことがあるかもしれないが、忘れた。まあそれはともかく、本当の意味での「風水建築」を建てられる人といえば(そういうものを平然と作れる頭のおかしさも含めて)毛綱さんくらいしかいないだろうから、本当に惜しい人を亡くしたものである。あとがきにも、風水の発想を取り入れた毛綱氏の作品として釧路市立博物館(日本建築学会賞受賞)が挙げられているが、一度は行ってみたいとずっと思っている。

 まあ、ずいぶんと話が遠回りになったが、要は「Dr.コパの言ってる風水は風水じゃない」ということが常識として広まればいいなあ、という話だった。

 そうそう、このブログの下の方では、ページのキーワードを自動的に取得してAmazon商品を紹介するようになっているのだが、そこには多分Dr.コパのインテリア風水関連の本が出てくると思う。ただし、これは私のお薦めというわけじゃないので、念のため。

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2006年1月27日09:19| 記事内容分類:宗教・神話学, 日本史, 民俗学・都市伝説| by 松永英明
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参考までに、三浦氏と毛綱氏の対談は、この本に収録されてます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582761054/

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