中国の「ブログの女王」徐静蕾と「ブログの利益」問題

2006年3月27日付け中国民航報に「博客熟了 “果子”誰摘」(ブログは熟した。「果実」は誰が摘む?)という特別記事が載っていたので、訳して紹介してみたい。記事の著者は「唐 突」氏。中国のブログの女王こと女優・映画監督の徐静蕾(シュー・ジンレイ)の例などが取り上げられ、ブログによる利益をどこが手にすることになるのかを検証している。

 なお、例によって例のごとく、訳文には訳者の責任があるが、原文の内容は訳者の見解というわけではないことをご留意いただきたい。

2006年3月29日18:34| 記事内容分類:ブログ/ウェブログ, 中国ネット事情| by 松永英明
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ブログは熟した。「果実」は誰が摘む?

 徐静蕾(シュー・ジンレイ)は先日テレビのインタビューで、「自分の博客(ブログ)を使って多くの人に歓迎されるきっかけができ、ブログでの広告を通して販売利益を上げている」と答えた。ブログの価値を作り上げたというこの徐静蕾の番組内での発言は、ネットでの大きな議論の「導火線」となった。これまでに彼女の個人ブログは112日分投稿され、ページビューは1000万に及び、めざとい広告業者が虎視眈々とうかがっている……。

 2004年の「ブログ商業化元年」から、去年、三大ブログ専門サイトが二期にわたってこの種の商業化モデルに対するベンチャー投資を受けるに至ったわけだが、ブログの書き手が商業化に加わり始めたということは、商業化の過程がさらに一段階進んだことを意味していると言えよう。

 徐静蕾のブログは新浪網にある。もし彼女のブログで本当に広告効果があったのだとしたら、広告の収益はいったい誰に帰すのだろうか?

ブログは商機に火をつける

 最初の「web log」から現在の「we blog」に変えたという言葉遊びから生まれた「博客」(blogの中国語訳名)は中国全土で流行している。

 著名人はこぞって自分のブログサイトを開設し、毎日生活の一部を記録している。

 徐静蕾が新浪網でやっている「老徐博客」は日ごとに人気が上がっているのを目にして、広告業者がぞろぞろとやってきて、有名人効果で宣伝しようと考えている。しかし、「爆棚(※客の殺到する商品棚)」のような有名人ブログであっても、ネットサービスを提供しているのは「大本営」新浪網であり、つまるところ広告料は誰が手にすることになるのか? 広告業者はどちらかわからず途方に暮れている。

 筆者は『新浪網絡服務使用協議(新浪網ネットワークサービス利用規定)』を精読した。これはネットワークサービスの内容、使用規則、知識産権(=知的財産権)についていちいち規定しているものだが、広告掲載についての内容は載っていなかった。

 あるIT関係者はこう語る。

「少なからぬ“有名人ブログ(名人博客)”“アイドルブログ(明星博客)”の人気は極めて高く、巨大な商機をはらんだ新しい広告発表プラットフォームであるといえます。しかし、現在の個人ブログに載っている広告は、規定されていない“想定外のもの”であって、もしはっきりと明文化された規定がなければ、トラブルは必至となるでしょう」

 あるメディアが徐静蕾ブログの商業価値について討論したことがある。新浪網ブログ業務総責任者・陳彤は、ウェブサイトでは大量の人力・財力をブログサービスに提供しているため、ブログ上の広告は当然ウェブサイトに属する、と考えている。

 一方、徐静蕾は「以前からこういう問題については考えたことがありませんでした」と述べたが、広告業者は直接、自分の会社に連絡を取ってきて、担当者と相談するのが適切なやり方だと考えている。

広告掲載の権利を誰が持っているのか

 これについて、筆者は上海専家論案法律網の首席コンサルタントで法律専門家の朱偉氏に話を聞いた。それによれば、徐静蕾が新浪ブログに登録完了したということは、二者の間で無償使用契約が成立したということになり、徐静蕾はこの「私有地」の使用権を取得したが、所有権は新浪網に残っているという。

 三年間ブログを続けてきた書き手・李小によれば、ウェブサイトはすでに使用権を提供したのだから、自分のウェブページ上に広告を載せるのも使用方法の一部だと考えている。そのため、この権利は自分にある、と李小は堅く信じているのである。自動車について特別の興味があるので、機会があれば、自分のウェブページにも車の広告を載せてみたいと李小は言う。

 実際、ITコンサルタントにして評論家、かつ業界内で著名な書き手である洪波(ネット名Keso)はすでにこのようにしている――自分のメインページで和訊網の広告を載せ始めているのだ。

 これに対して朱偉は「広告掲載には特別な問題があり、中国の広告法の制約を受ける」という。新浪と徐静蕾の広告問題については、広告掲載権と広告掲載場所が分離しているという特殊な状況がある。この場合、徐静蕾本人は広告の掲載権を持っておらず、新浪網だけがこの権利を持っているのである。

「ですから、もし徐静蕾が自分のブログ上で広告を載せることに同意するならば、掲載権利者である新浪の同意を得ていないので、違法広告ということになってしまいます」

だれもが「果実を摘む」ことができる

 多くの傍観者と同じく、和訊網の編集長・劉峻は、「広告掲載権がどこに属するかをはっきりさせた後の当面の急務は、ブログとウェブサイトを分ける問題を解決することだ」と考えている。

 今のところ、徐静蕾と掲載権利者=新浪網の間には、広告収益についての明確な契約はない。では、広告業者が諸手を挙げて差し出そうとする「黄金・白銀」はいったい誰のものとなるべきなのだろうか?

 朱偉の分析によれば、ブログの所有権は新浪に属し、広告の収益も新浪に属すべきだということになる。しかし、広告主と掲載権利者が契約を締結するには、必ず広告を掲載する場所の同意を得なければならない。このため、もちろん、徐静蕾・新浪・広告主は、広告掲載前にまず三者で協議しなければならず、誰かが欠けてはならないのである。

「そういうわけで、広告利益が誰のものになるのかという問題は、新浪と徐静蕾が話し合いを繰り返し、協議した後にようやく円満解決となるでしょう」

 たとえば、もし『新浪網絡服務使用協議』に最初に同意したとき、新浪網と徐静蕾が広告掲載問題について話し合うことができていたならば、その意向に沿って、すぐにでも商業的運営に入ることができるのである。

 専門家によれば、現在、個人ブログは中国で迅速に発展しているが、商業的意識と商業的運営はいまだ強くない、ということである。

ゲームのルールはもっと早く制定すべし

 検索サイト百度の統計によれば、2005年11月末までに中国ブログサイトサービスプロバイダーは600カ所を超え、ブロガー人口は1600万人を超えた。2006年、業界は中国ブログの「噴出する年」だと考えている。幾何級数的に利用者は増え、常に海のように大量の情報が更新され、ブログは世界に瞬間的にあまねく伝わる可能性を持つようになった。

 「ブログ商業化」の一つの実例は、現在運営されている有名なSlashdotウェブサイトである。その商業化モデルは、文章とコメントの間にオンライン広告が載っており、このような広告形式はサイト全体にある。マーケットを研究すれば、さらに関連するネットワーク企業と取引をして戦略的に収入を増やすこともできるのである。

 ブログサイトの強大な吸引力のため、多くの関連領域の新しい企業が機運に乗じて生まれている。ブログサイトの広告収益の潜在性も驚くべきほどだ。たとえば、Blogads.com社はもっぱらウェブサイトにコンテンツマッチング広告を提供している。ここ数ヶ月だけで、Weblogs.Inc.は数十万ドルの広告料を手にした。ソニーとアウディは、顧客のブログコンテストを成功させている。

 中国国外では比較的成熟している「ブログ商業化」モデルに対して、中国はこの分野ではまだ初歩的段階にある。業界関係者は、ブログ広告が特に優れているのは対象の細分化ができるからだと指摘する。たとえば、徐静蕾ブログ上でファッション類の広告を掲載するなら、たやすく興味を惹くことができるだろう。

「現在直面しているいろいろな紛争は、中国のブログ市場がまだ熟していないということを示しています。しかし、中国のこのように巨大なマーケットでは、ブログが商業化の時代に入る勢いは激しく、阻止することはできないだろう、ということもまた、容易に予見できます」

 ブログ市場の未来の発展のためには、関係する「ゲームの規則」をできるだけ早く制定することが当面の急務だ、と朱偉は語る。

訳者見解

 日本では、すでにアフィリエイトやGoogle AdSenseをレンタルブログで許可する・しないの問題はほぼ解決しており、多くのブログサービスで規約に明記されるようになっている。多くの場合は無料版には制約があり、有料版ではユーザーの自由という傾向がある。したがって、この記事の主要部分、つまり「広告収入はだれが手にするか」という問題についてはすでに解決しており、(実際に収入があるか否かは別にして)アフィリエイトブームを招く一因ともなっているといえよう。

 したがって、今後の中国は、オンライン広告掲載に関する規約が制定され、それから「でも広告を貼ったからといって簡単に儲かるわけじゃないんだね」ということに気づき始めるというプロセスをたどることになるのだろう。

 さて、こういう内容よりもおもしろいのが、中国のブログの女王・徐静蕾である。3月20日のエントリー「《老徐的博客》自序」によると、2005年10月25日から2006年3月までのブログ記事をまとめたブログ本が早速出るらしい。そのブログ本のまえがきで、学生のころに一年間日記を書いて以来の日記だとか、日々忙しいのにもう100日以上、合計55000字も書いたとか述べている。「リアルな日記は書けないのにブログだといろいろ書いてしまう」現象が徐静蕾にも起こっているようで興味深い。

 アクセス制限も厳しくなる一方で、個人ブログも大流行の兆しを見せる中国。果たして規制とブログはどちらが勝利を収めるだろうか。

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