ブログ文章術:一つのネタをむやみやたらにふくらます

ブログ文章術 米光一成|Excite エキサイト ブックス : 一文を短くって言うけどさ1」が話題になっている。今回のお題は、以下の文の一文を短く書いてみようというものだ。

お皿ひとつひとつに、それぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう、お台所に残って在るもの一切合切、いろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出すのであって、手数は要らず、経済だし、ちっとも、おいしくはないけれども、でも食卓は、ずいぶん賑やかに華麗になって、何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見えるのだ。

(太宰治「女生徒」)

 これが実は悪文ではなくて、太宰の引用であることは「小林?:2006.4.5」や「断片部 - 絶望中止+理由消失 - あ、そうだ。ロココ料理にしよう。」などで指摘されている。

 さて、ここで普通に短く書いてみてもおもしろくないので、パスティーシュ(文体模写)で一つのネタをむやみやたらにふくらませてみることにした。

2006年4月 5日21:01| 記事内容分類:執筆・書き方・文章| by 松永英明
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きっこの日記風

 お皿ひとつひとつに、それぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう、それからまだまだ追加するんだけど、お台所に残ってるもの一切合切、いろとりどりに美しく配合させて、手際よく並べて出すのだ。そうすると、手数は要らないし、経済的だし、だけどちっともおいしくはないので、そのまずさに思わずビックルを飲み干したりしてしまうのだけど、でも食卓はずいぶん賑やかに華麗になって、何だかたいへん贅沢な御馳走のように見えるというワケなのだ。

(※finalventの日記 - ブログ文章術?とはかぶらないようにしてみた)

ESPIO野田風

 皿一つ一つに載せるものは下記の通り。

・ハム
・卵
・パセリ
・キャベツ
・ほうれんそう
・その他台所に残っているもの一切合切

 上記素材を配合するに、色とりどりかつ美しく、手際よく並べて出す必要がある。その結果、同人の主張するところによれば<手数は要らず、経済だし、ちっとも、おいしくはないけれども、でも食卓は、ずいぶん賑やかに華麗になって、何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見える>と強弁する。

サイバッチ!風

 とんでもないスキャンダルが発覚した。例によってウラを取っていないが、読者の皆さまには速報をお伝えする。

 たった今、暴力デブがICレコーダー付フォークを突きつけながら「吐け、吐け、吐け」と叫んで、いたいけな女生徒に自白させたところによると、まったくおいしくもない料理を贅沢な御馳走に見せかける裏技が女生徒の間で駆使されているのだという。まったく、年収17万5000円、東池袋の三国人アパートに生息し、一度でいいから、牛丼を卵と味噌汁付きで食ってみたいと思っている俺にとっては腹立たしい情報である。

「なんでも、皿の一つ一つにそれぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう、お台所に残って在るもの一切合切、いろとりどりに美しく配合させて、手際よく並べて出すのだそうです。手数は要らず、経済的。ちっとも、おいしくはないけれども、食卓はずいぶん賑やかに華麗になって、何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見えるというのです」(暴力デブに同行した蛆虫77号)

 くくくくく(笑っているのではありません)。まさかいたいけな女生徒が俺たち蛆虫のような食卓偽装法を駆使していたとは。許せませんねえ。本誌では女生徒を徹底的に追及するのでお楽しみに。うけけけけ。

男性週刊誌風

《男の食卓・盛りつけ編》

 皿の一つ一つにそれぞれ、ハム、卵、パセリ、キャベツ、ほうれんそう、その他台所に残っているもの一切合切を手際よく並べる。ポイントは、色とりどりに、美しく配合させること。これなら手数は要らず経済的。残り物であるから当然、少しもおいしくはないが、食卓はずいぶん賑やか、華麗になる。場合によってはたいへん贅沢な御馳走のように見えるもの。ぜひお試しあれ。

女性週刊誌風

《残り物を豪華に!》

 お皿ひとつひとつに、それぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう……お台所に残っているもの一切合切、いろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出しましょう。手数は要りませんし、経済的です。もちろん、ちっともおいしくはないのですが、食卓はずいぶん賑やかに、華麗に。何だかたいへん贅沢な御馳走のように見えるので、旦那様の目をくらますには最適!

DEATH NOTE風

■月「どうやって俺が食卓を偽装したというんだ?」

■ニア「お皿ひとつひとつに、

それぞれ、

ハムや卵や、

パセリや、

キャベツ、

ほうれんそう、

台所に残ってるもの一切合切……」

■リューク「リンゴはないのか?」

■ニア「いろとりどりに、美しく配合させたのです。

ここでポイントは、

手際よく並べて出すこと。」

■月「確かにこれなら手数は要らず、

経済的だ」

■ニア「ちっともおいしくはないけれども、

でも食卓は、ずいぶん賑やかに華麗になって、

何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見えるというわけです。

これがキラ……L……夜神月の偽装工作の詳細です。

間違いありませんね。」

■月「ニア……

その推理はよくできているが、

根本的な間違いがある!」

■リューク「ククク…人間って面白。それよりリンゴくれ。」

『指輪物語』指輪の詩句風

三つの皿は、空の下なるハムや卵、

 七つの皿は、岩の館のパセリやキャベツ、

九つの皿は、死すべき定めのほうれんそうに。

 一つの皿は、台所に残って在るもの一切合切のため、

いろとりどりに美しく配合させる食卓に。

 一つの皿は、手際よく並べて出し、

 一つの皿は、手数は要らず経済で、

 一つの皿は、ちっともおいしくはないけれども、

  食卓をずいぶんにぎやかに、華麗にする。

たいへん贅沢な御馳走のように見せかけるために。

よくある文庫版実用書風

★食卓を豪華に見せかける法

・用意するもの:皿、台所の残り物一切合切(ハム、卵、パセリ、キャベツ、ほうれんそうなど何でもよい)

 残り物を皿の上に一品ずつ、いろとりどりに、美しく配合させます。できるだけ手際よく並べて出すこと。これなら手数は要らず、経済的です。もちろん残り物ですから、決しておいしいというわけではありませんが、食卓はずいぶん賑やか、華麗になって、たいへん贅沢な御馳走のように見えること請け合いです。

 玉川上水大学太宰教授(心理学)によれば、食卓の視覚的効果は実際の食物の味覚に対して30%の影響を与えるとの調査結果が出ています。つまり、見た目がおいしければ三割おいしく見えるということ。早速、今日の残り物から試してみましょう。

ノストラダムス予言詩風

ハム、卵、パセリ、キャベツ、ほうれんそう、台所に残って在るもの一切合切が

皿の一つ一つに、いろとりどりに、美しく配合される

ちっともおいしくはないにもかかわらず、

食卓は賑やかに華麗に、たいへん贅沢な御馳走のように。

(※民主党結成を予言した詩と解釈されている)

「できる盛りつけ」

1. 皿を多数用意します。

2. ハム、卵、パセリ、キャベツ、ほうれんそう、その他、お台所に残っているもの一切合切を用意します。

3. 1.で用意した皿の一枚一枚に、2.の食材を並べます。

ここがポイント! いろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出すことが重要です。

※この方法の利点と効果

 手数も要らず、経済的です。ちっともおいしくはない素材ですが、食卓はずいぶん賑やか、華麗になって、たいへん贅沢な御馳走のように見える効果を発揮します。

(図版省略)

ギャル社長shifow風

こんにちはぁぁ~☆

今日はぁたしの毎日の盛りつけの裏技を教えちゃぃまっす♪

まずお皿ひとつ②にハムとか卵とかパセリとかキャベツとかほうれんそうとか・・・

ょーするにお台所に残ってるもの一切合切!!ぃろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出すんですっρ(≧ω≦)ρ

手数もぃらなぃし、経済てきだしね(☆∀☆)

ちっともおぃしくなぃけど( ゚Д゚)

でも食卓は、ずぃぶん賑やか&華麗ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノになって、何だかすごーく贅沢な御馳走のように見えるんです☆

現行日本国憲法風

ハム、卵、パセリ、キャベツ、ほうれんそう、その他台所に残るもの一切合切は、これを皿一つ一つに、それぞれいろとりどりに、美しく配合する。

2 前項の目的を達するため、食材は手際よく並べて出し、手数をかけず経済にする。

3 おいしさは、これを否定する。食卓は、これを賑やか・華麗・贅沢な御馳走に見えるものとする。

ダウンタウンのだらだらしたしゃべり風

浜「それでどないすんねん、残りもんあったら」

松「お皿何枚か用意すんねん」

浜「ほんで?」

松「残りもん用意すんねん。ハムとか卵とか、パセリとか、キャベツとか、ほうれんそうとか」

浜「冷蔵庫に残ってそうなもんばっかりやな」

松「せやろ。そういう、台所に残ってるもん一切合切をやな、いろとりどりに、美し~~~く配合させたるんや」

浜「お前が言うと似合わんなぁ」

松「何を言う! 俺がやるからええのんにきまっとるやろ。でな、ここで、手際よく並べて出さなあかんねん」

浜「なんで?」

松「もたもたしとったら賞味期限終わってしまうやろ!」

浜「それ、もたもたしすぎや!」

松「うわ、このハム、最初から賞味期限おわっとったわ」

浜「それくさっとるし」

松「うわー、マジでくさいで。お前かいでみ」

浜「いらんわ!向こう持っていかんかい!」

松「お前がいらん口挟むから腐ってしもたやんけ!」

浜「最初から腐ってたってお前言うとるやんか!」

松「そうやったっけ? まあこうすると、手数は要らず、経済的やしな」

浜「ハム皿に戻すなよ! それ、けちくさいだけとちゃうん?」

松「しかも、全然おいしぃあれへんねん」

浜「あかんやん」

松「せやけど、食卓がな、ごっつー賑やか~に、華麗~になるんや。どや、何かごっつ贅沢な御馳走のように見えてこうへんか?」

浜「あー、何かそんな気がしてきたわ(笑)」

松「せやろせやろ、ほな、一口食うてみ」

浜「いや、やっぱりお前から食えや」

松「まあまあ遠慮せんと」

浜「……ほな、遠慮せんともらうわ……」

松「待たんかい!」

浜「どないしてん!」

松「やっぱり、ごっつうまそうやから、俺から食う!」

浜「……好きにせえや」

松「……(もぐもぐ)……ぐわ、やっぱごっつまずいわ。お前、何でこんなもん食わすねん!腹壊したらどないすんねん!」

浜「作ったんお前やろ! しかもわざわざ腐ったハム食うてるし!」

松「……これ捨てんのもったいないなぁ」

浜「捨てろや! 何考えてんねん」

松「あとでイマダに食わしたろ~」

浜「あー、俺知らんからな」

残り物を淡々と記録するよ

foods.jpg

ごちそうさま……ってそのまま食えるかい! 卵とほうれんそうと皿しか合ってないし!

偽清少納言風

残りものはいろどり。

蒸したる肉、卵、おらんだせり、甘藍(かんらん)、菠薐草(はうれんさう)など、厨(くりや)に残りたる一切合切、いろとりどりに、をかしく組み合わせ、手早に並ぶる、いとをかし。手間のかからず、安くあがりたる。いとうまからざることいふにあらず、されど卓うるはしく華やかならんも、いとよろしき塩梅に見ゆる、いとをかし。

おまけ

これが限界でした。

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2006年4月 5日21:01| 記事内容分類:執筆・書き方・文章| by 松永英明
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