【絵文録ことのは】HOME > [地理・地誌] > 「代官山」の範囲ってどこからどこまで?地図で示す「街の範囲」
東京には数多くの「街」がある。大きなところでは、たとえば新宿、渋谷、池袋、六本木、上野、浅草、お台場といった街があり、たとえば巣鴨、錦糸町、高円寺、吉祥寺、馬込、芝浦といった街にはそれぞれの特色がある。
この街の特色や雰囲気を、歴史と絡めて考えるのが「ゲニウス・ロキ」という概念で、メールマガジン【「場所の記憶」「都市の歴史」で社会を読み解く――松永英明のゲニウス・ロキ探索】で書いている文章も、そういう意識が根底にある。
さて、今回気になったのは「街の範囲」というものだ。たとえば「代官山」というのはどこからどこまでなのか。それを地図上に可視化してみることにした。
東京の街は、広い。下手すると田舎の県庁所在地の市街地よりも一つの街が大きかったりする。そして、大きな街、小さな街がつながって、どこまでも続いていくように感じたりもする。
たとえば新宿といっても、非常に広い。駅の出口を目安にすれば、東口方面(新宿三丁目方面)~東南口方面、歌舞伎町方面(西武新宿の方向)、西口方面(新宿副都心方面)、南口・新南口(サザンテラス、高島屋方面)と分けることができるだろう。新南口の紀伊国屋は、実は代々木駅からの方が近いぐらいである。
新宿の街も時代によって膨張・拡大を続けてきた。今は南へ延びつつあるところだ。
では、新宿とはどこからどこまでなのか。どこからが代々木なのか、どこからが大久保なのか――そんなものは厳密な定義はないけれども、大体この辺からこの辺まで、というのが新宿というイメージはあったりする。それは、行政区画名ともあまり関係がない。新宿駅の新南口は渋谷区だし(目黒駅が品川区にあるのも有名な話)、一方で同じ新宿区だからといって下落合や高田馬場や神楽坂を「新宿」と呼ぶ人はいない。
その「街の範囲」を客観的に可視化できないか。そう考えて試行してみた。

今回はその最初のターゲットとして「代官山」を選んだ。以下、その調査方法を示す。ただし、あくまでも今回やった作業は暫定的なものである。しかし、それはある程度実感と一致しているのではないかと思う。
Googleマップ(=ゼンリン地図)では、建物名(ビル、マンション、アパート名など)が記されている。ここに「代官山」「Daikanyama」といった名称が含まれている建物をマッピングした。これによって、代官山の範囲を可視化できるのではないかと考えた。
もちろん、代官山という名称が含まれないが代官山のランドマークとして認識される建物もありえる。また、この方法では店名に「代官山」が含まれる店や、ショップの「代官山店」や事務所の「代官山事務所」「代官山支部」などを網羅できない。しかし、実際にマッピングしてみたところ、大きな食い違いはないように思われる。
もう一つの問題点として、この方法では「ショッピングの代官山」と「居住地としての代官山」が一体化してしまうことが挙げられる。駅に近いところに代官山名称商店が多く、駅から離れるにつれて代官山名称のアパートやマンションが多くなるということは、容易に推測できることである。しかし、実際には厳密に切り分けることができない。住宅街にも「代官山」名称の店が潜み、駅前にも居住区がある。外から遊びに行く場所としての代官山、住む場所としての代官山、その二つは確かに両面の存在だが、特に代官山のようなタイプの街の場合、ここからここまでと厳密に切り分けることはできない(住宅区域と商業区域が厳密に分けられるというのは、一部の街を除いて、幻想である)。
結果として、「代官山」を可視化する方法としては、これは現実的かつ効果的な方法であったと思われる。
今回、「代官山」を選んだのは、以下の理由によるものである。
Googleマップの「マイマップ」でスポットを選んで配置してみたが、一度失敗した。それは、一定数(おそらく100地点)以上マッピングするとページが分割されてしまい、すべてのポイントを同時に見ることができないのである。
しかし、マップを分割して、それらのマップを同時に重ね合わせて表示させることは可能である。そのため、地名(行政区域)ごとにマップを分割し、合計8枚とした。
以下、上記方法による「代官山」範囲である。なお、Googleマップではマップ一枚ずつしかページに表示されないので、全体キャプチャと合わせて9枚となる。
厳密に線を引いたりはしない。上記のとおり、概略を示すものであるからだ。

極めておおざっぱに言えば、皇居ぐらいの広さの地域が代官山ということになる。
では行政区画ごとに見ていこう。興味のある方はこれらのマップをマイマップに登録して重ね合わせてもらえばよい。
渋谷区代官山町にある代官山名称建物は、黄色い家のマークでマッピングした。これぞ代官山の中の代官山。代官山駅から北へ延びる一帯である。住所的にも地域的にも、代官山と書く以外にない。
駅近くにあった同潤会代官山アパートは、現在、代官山アドレスという高層ビルになっている。
代官山町の西側に延びるのが猿楽町である。地図ではオレンジの太陽マークでマッピングした。
代官山町と合わせて代官山地域の中枢と言える。南の端を旧山手通りが通っているが、その通りの向かいも猿楽町に含まれていて、ここに代官山ヒルサイドテラスの一群の建物がある(厳密には「ヒルサイドテラス」だが、代官山のランドマークとして40年の歴史があるため、ここに含めた。なお、一部は目黒区に食い込んでいる)。「代官山交番」も厳密には猿楽町にある。
これだけ代官山ブランドの強いところであるにもかかわらず、案外「猿楽」地名も健闘しているのが興味深い。
猿楽町よりさらに北西には、鶯谷町と鉢山町がある。
鶯谷町の代官山名称ビルは、猿楽町との境の道路に面したところに数軒見られる程度。ほとんど代官山ではないといえる。
一方、鉢山町は「鉢山」と混在して「代官山」名称物件が多い。特に西端、山手通りに近いところに代官山の飛び地のようなものができている。
ギニア大使館の手前が代官山の「西端」と考えてもよさそうだ。
なお、東急線より北側の代官山については、山手線が明確な東の境界線となっている。
山手線~恵比寿駅の西側、駒沢通りの北側、東急線の東側の三角形が恵比寿西一丁目と二丁目である。恵比寿西一丁目(テントマーク)・二丁目(木のマーク)で区別した。
駅前の一画に一丁目の一部が食い込んでいて、そこから線路沿いの地域が代官山である。しかし、すぐ東側に恵比寿駅があることもあって、「代官山」と「恵比寿(恵比寿西)」の勢力圏に二分されている。もちろん、厳密には双方の勢力が入り組んでいるのだが、少なくとも「恵比寿西一丁目交差点」より東には代官山は及んでいない。
軒数は少ないが、恵比寿南を独立した地図とした(恵比寿西に組み込むにはポイント数オーバー)。恵比寿南は基本的に恵比寿勢力圏で、わずかに駅に近い「鎗ヶ崎交差点(旧山手通りと駒沢通りの合流点)」の近くに数軒あるだけである。
しかし、ここを経由して、目黒区中目黒に代官山圏が延びていく。
Googleマップの行政区画のラインはずれているようで、mapionで正確な住所を調べた。目黒区は水色、中目黒はヨットマークである。
さて、「鎗ヶ崎交差点」から南東に向かう道と、駒沢通りに沿って中目黒駅方面に向かうあたりに、意外と代官山名称の建物が続いている。「スタジオ代官山」もここである。
鎗ヶ崎交差点の周辺は代官山と認識されているように思われる。しかし、さすがに目黒川を超えて代官山勢力が及ぶことはないようだ。
代官山の最南端は、中目黒駅を含む「上目黒」マップである。ここは碇マークである。
駒沢通りに面して数軒。もう一つ、北西部の固まりはヒルサイドテラスの向かいに当たる。旧山手通りから目黒川に下る斜面(ヒルサイド)の途中までが代官山という感じだ。そして、ここでも代官山勢力が目黒川を超えることはない。
目黒区青葉台は雪印で示した。代官山の南西の端は、この旧山手通りの南側の一画である。ヒルサイドテラスの一部もここに含まれるため、青葉台の端は代官山を構成する重要な地域といえる。ここには「産業能率大学代官山キャンパス」も含まれる。しかし、地域全体としては「青葉台」ブランドもなかなか強いようだ。
西の端、青葉台2丁目には2軒、プラネアール代官山スタジオがある(波印)。これは西郷山公園の手前ということになるが、これが面している道路は北に延びて、渋谷区鉢山町でも代官山の西の境界となっている。おおよそこのあたりが代官山の西の端として明確に認識されているようだ。
というわけで、実際の風景との対比などは3月中にメルマガ【「場所の記憶」「都市の歴史」で社会を読み解く――松永英明のゲニウス・ロキ探索】にて紹介する。
はてなブックマークコメント by id:qinmuより、「@nifty:デイリーポータルZ:どこまでが田園調布か」というページがあるとの情報。こちらは、住所表記の「田園調布」(田園調布、田園調布本町、田園調布南、多摩川田園調布)からの「はみ出し物件」を探そうというもの。結論として「田園調布Z(仮)」の地図を作成している。このページは読んでいなかったが、同様の手法であったといえようか。
田園調布は高級住宅街なので、中心部では今回の手法は使いにくいと思われるが、逆に周辺にどこまで広がっているかを調べ直してみてもいいかもしれない。ただ、これだけ広域の住所表記に使われていると、いわゆる「田園調布」のイメージと実感とのズレも大きいと思われる。
田園調布と比べると、代官山はむしろ「はみ出し物件」の方が広い。
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