「さくらんぼ小学校」名称問題についてのネット時代の「落としどころ」

山形県東根市に新設される「市立さくらんぼ小学校」について、同名の「私立さくらんぼ小学校」というアダルト系のサイトがあるため、名称についての是非が出ている、と報道されている。

東根市側は当初、変更を検討しないと主張していたが、一転して名称を白紙に戻すと発表された。一方、アダルトサイトというのは正確には「18禁同人ゲームソフト制作サークル」であるが、このサークル側は「サークル名の変更も視野に入れている」と述べている。

どちらが悪いというような話でもない。最近ではツイッターのハッシュタグ#oooをめぐって、有名なフリーのオフィスソフトOpenOffice.orgと、新放送の仮面ライダーOOO(オーズ)がかぶってややこしいことになるという小さな騒動もあった。

こういうときにどういう力学が働くのだろうか。ネーミングの共存は不可能なのか。「御所の細道」現象も含めて少し考えてみた。

2010年9月10日21:45| 記事内容分類:ウェブ社会, 日本時事ネタ| by 松永英明
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「さくらんぼ小学校」関連報道

サクランボの生産量日本一の東根市に来年4月、新設される市立さくらんぼ小学校の校歌を山形市出身の作曲家、服部公一さん(77)が作詞・作曲した。ポップ調のメロディーの校歌「ひかる六つのさくらんぼ」で、服部さんは「明るいサクランボのように、子供たちが未来に夢を持てる歌にした」と言う。

 生産量日本一のサクランボにあやかって山形県東根市が来年4月に新設する「さくらんぼ小学校」と同名のアダルトサイトが存在することが分かり、同市に校名再考などを求める声が寄せられている。

……市は似た校名がないか、インターネットではチェックしていなかった。

 土田正剛市長は「校名を変えれば、かえってアダルトの世界を正当化することになる」などとし、校名変更の考えはないとしている。

市教委は8日「市民からの公募を元に命名した。変更するつもりはない」としていたが、9日になり「児童の安心安全を第一に考えた」と校名変更を決めた。さくらんぼ小に子供を通わせる予定の親からは「ネットのうわさは最初だけですぐに沈静化する。ネットに振り回されるのはどうか」「せっかく名前に愛着が出てきたのに」などと変更を疑問視する声もある。

心配する気持ちもわからないではないが、それほど気にすることではないだろうとも思う。

「アダルトサイト」と呼ばれた同人サイト側の主張

さて、ここで問題になった「アダルトサイト」こと18禁同人ゲームサークル「私立さくらんぼ小学校」だが、アクセスが集まって接続が困難になっている。やっと開いたと思ったらこんな文面が掲載されていた。重要な告知なのに表示が困難という事情が事情だけにこちらにその文面を引用させていただく(アクセス可能ならリンクだけで済ますところだ)。

※現在、アクセス過多により転送量が増大し、サーバ運営会社より帯域調整がかけられております。
 それにともないサイトが見づらい状態が続いております。
 平素よりご愛顧くださるお客様にはご迷惑をおかけいたします。申し訳ございません。

この度はサークルサイトに御アクセスいただき誠にありがとうございます。

ここにいらっしゃった多くの方はおそらく件のニュースをごらんになってのことかと存じます。

ニュースなどでは『アダルトサイト』などと報道されているようですが、正しくはアダルトサイトではございません。

私どもは『同人18禁美少女ゲームソフト制作サークル』であり、同人サークルという形で、エッチなゲームを制作しております。

サークル『私立さくらんぼ小学校』は2002年12月にデビューして以来、ファンの皆様よりご支援を賜り、8年間の活動の中で、19タイトルの作品をリリースしてまいりました。
平素よりご愛顧くださるファンの皆様にはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
今回の件につきましては、実在の児童が関わる問題でございますゆえ、慎重に対応していきたい所存です。
それにともないまして、インタビューの類はすべてお断りさせていただいております。
ご要望に応じられず誠に申し訳ございません。

なお、今後の対応といたしまして、先方様の学校のご意志が変わらぬようでございましたら、児童の安全を配慮し、サークル名の変更を視野に入れることも考慮しております。
(子供や保護者の方々を不安にしてまで、名称を貫こうとは思っておりません)

願わくば、私どもおよびファンの方々を、そっとしておいていただければ幸甚でございます。
何卒ご容赦のほどお願い申し上げます。
サークル私立さくらんぼ小学校 2010.9.9

代表作は【少女と世界とお菓子の剣 ~Route of AYANO~】だと書いてあるのだが、適当に検索すれば見つかると思われる。まあ「18禁同人ソフト」の紹介サイトにおいて、「同人サークルだからアダルトサイトではない」というのはかなり苦しいと思うが、そこはまあどうでもいいことだ。

ともあれ、「先方様の学校のご意志が変わらぬようでございましたら、児童の安全を配慮し、サークル名の変更を視野に入れることも考慮しております。(子供や保護者の方々を不安にしてまで、名称を貫こうとは思っておりません)」というのは誠実な対応だと思う。(アダルトサイト側が名前を変えて当然、という意味ではない。両者ともに譲り合っていることに安心したのである)

いずれにせよ、両者ともに名称変更を検討するという事態になった。

ここでこそSEO業者の出番ではないのか

こういう事態のときこそ、SEO業者の出番である。つまり、「さくらんぼ小学校で検索したときに、同人サイトの方の検索順位をずっと下の方に落とし、市立さくらんぼ小学校がトップに表示されるようにする」ということは、SEO業者の売り文句が正しければ朝飯前のはずである。会社に対して批判的なサイトの順位を落とすことを事業にしている会社からのDMを受け取ったこともある(当然無視したが)。

もし自信のあるSEO業者が名乗り出て、無料でこの案件を請け負って成功させたら、その名は全国にとどろき、事業規模を拡大するくらい依頼が殺到するに違いない。

……と煽ってみたが、こういう問題は善悪ではなくて、結局は「強い方が勝ち、弱い方が退く」という状況で落ち着くことになりがちである。

京都での思い出

話があちこち飛ぶようで申し訳ないが、私が京都に住んでいたころ、近所に「二代目いろは会」という名前の任侠系事務所があった。当時バイトしていた居酒屋の板前の田中さんから聴いた話だが、京都三条大橋にある「いろは旅館」に対して「二代目いろは会」が「勝手に名前を使ってどういう了見か。名前の使用料を払ってもらおう」と難癖をつけたことがあるという。ただ、いろは旅館は突っぱねたそうだ。

名前が同じくらいで騒ぐのはどうなのか、と思う。当初の市長の判断は正しく、撤回したのは「事なかれ主義」だろうと思う。

ハッシュタグ#ooo問題

さて、つい先日「名前がかぶる」ということで問題になったのが、ツイッターのハッシュタグ#ooo問題だ。ツイッターでは「#」マークの後にアルファベットを並べるとそれが「ハッシュタグ」と呼ばれ、同じハッシュタグを含むつぶやきを表示できるようになっている。たとえば「#kindlejp」では日々Kindleに関する日本語のつぶやきが投稿されている。

ただし、そのハッシュタグは誰でも勝手に書けば使えてしまう。そのため、時々複数の意味を持つことがある。たとえば、ツイッター上で「たほいや」をやる「ついったほいや」には私も参加しているが、このハッシュタグが「#taho」である。ところが、たまにたほいやではない発言が混じる。それもフィリピンから……。実はタホというスイーツがあったのだ。ではどっちの意味で使うべきか。今のところ、共存していて特に問題はない。

先日問題になったハッシュタグ#oooは、これまでフリーのオフィスソフトOpenOffice.orgのために使われていた。ところが、新番組・仮面ライダーOOO(オーズ)の放送に合わせて、Avexの公式サイトではなぜか「ツイッターのハッシュタグは#OOO」と設定してしまったのだ(大文字・小文字は区別されない)。おかげでハッシュタグ#oooは大混乱に陥った。

その中で「注目を浴びているから仮面ライダーファンにOpenOffice.orgを知らしめようぜ」というような動きも出てきて、特に秀逸だったのが@tomokiwaによるこの発言だ(2010年9月6日13時42分)。

仮面ライダーOOO(オーズ)、もうみんな観たかな? ダウンロードはこちらから!! → http://ja.openoffice.org/ #ooo

この件は、世界的にすでに有名なOpenOfficeとの混乱を防ぐため、Avexが譲歩して「#KROOO」に変更することで決着がついた。何しろ、#OOOを含むツイートを公式サイトで流していたのだから、そういう紛らわしい名前を後から採用した方が分が悪いわけである。

両者ともに数が少ない場合は「共存」しやすいが、それなりに双方に投稿数が多くてややこしい場合、どちらかが折れて新しいハッシュタグに移行することが多いように思われる。そして、基本的には「力の強い方」(それまでの使用実績の長い方、常時使われている方)が優先されるという力学が働くようだ。もちろん、新参の方が圧倒的に数も多い場合は、ハッシュタグがあっさり乗っ取られる場合もある。

「御所の細道」

この状況は、京都の「御所の細道」を思い出す。私は大学に通うのに御所を自転車で突っ切っていったのだが、京都御所には玉砂利が敷き詰められている。だから普通に走ると自転車だと走りにくい。しかし、車も来ないし、信号もないし、何しろ近いので御所の中を通る人が後を絶たない。そうすると、御所の中でみんなが走るルートが自然とできていく。そこは玉砂利が避けられて、自転車のタイヤの幅で通り道ができているのだ。これが「御所の細道」である。

しかし、御所の細道はほとんど一本道である。だから、双方からやってきた自転車が正面衝突しそうになる。しかし、実際にはぶつかるまで譲り合わないようなことはありえない。必ず一定の距離をもって、どちらかが自主的に御所の細道から外れて玉砂利の中に退避するのである。どちらがよけるか。そこにルールはないが、どちらかが避けないと大変だというのはみんなわかって御所の細道を走っているので、自然と譲り合いが行なわれるようになっている。

悪意のない名前のかぶり、ハッシュタグ重複というのも、そういう「大人の対応」でやっていくしかないのではないか。

もちろん、このネット時代に事前に検索もしなかったという東根市は情報力に欠けすぎだと言えないこともない。むしろ、今の時代、店の名前やバンドの名前などを考えるに当たって、真っ先に「ドメイン名が取れるかどうか」「検索してトップが取れるか」を事前調査して当然である。公立小学校にそのあたりは心配ないかもしれないが、ネーミングにあたって候補を一応検索してみるくらいのことは必要ではないだろうか。

私自身は、山形の小学校なのだから「さくらんぼ小学校」でよいと思う。

大体、私の出身校は奈良県の斑鳩小学校だが、あるジャンルの人たちには斑鳩といえばシューティングゲームのタイトルあるいはBL(ボーイズラブ)小説家の名字としか思われていないので困る。困るけれども改名を望んだりはしない。

あとからわざと紛らわしい名前をつけて評判を落とそうとしているのなら、それは名誉毀損なりなんなりの悪事だと思う。あるいは、先行するものの名前の由来をねじ曲げて後発の方が僭称するなら、それも問題だと思う。しかし、悪意なくたまたまかぶった場合は(商標とかの場合は別として)共存してもいいのではないかと思う。

「ジャパネットたかた」ならぬ「ジャパネットはだか」が訴えられもせず大丈夫なのだから、「さくらんぼ小学校」も少々かぶったくらいいいじゃないかと思ったりもするのだが……。少なくとも「山形らしい」よいネーミングなので、それに代わるネーミングは難しいのではないかと思う。そして時間が経てば、そんなネーミングカブリ問題なんてほとんど忘れ去られているに違いない。

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2010年9月10日21:45| 記事内容分類:ウェブ社会, 日本時事ネタ| by 松永英明
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