TPPに関する素人考え

以下、TPPに関して、経済的にはまったく詳しくない一人の人間が報道とかの断片を見聞きして思った素人考えをメモしておく。現時点ではTPPそのものに賛成とも反対とも言えないが(メリットもデメリットもある)、現在の政府にTPPでの交渉能力はなく、現在のTPP議論は偏った議題に限定されているというのがわたしの考えだ。

2011年11月10日14:25| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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「アメリカンスタンダードを受け入れるか否か」しか議論されていない

TPPにおいて、賛成派にしろ反対派にしろ「TPP交渉に参加する」ということが、「アメリカンスタンダードに合わせる」か「アメリカンスタンダードに合わせない」かの二択として捉えられていることに疑問がある。

たとえば、TPPに参加すれば、著作権の保護期間をアメリカに合わせて70年にしなければならないとかいう話もある。保護期間延長に絶対反対(むしろゼロに近づけるべし)と考えるわたしにとってはそれだけでもTPPに反対していいようなものではあるが、問題はなぜか「アメリカに合わせるか、拒否するか」だけが選択肢になっていることだ。なぜ「ディズニーやピクサーを説き伏せて、アメリカの著作権保護期間を日本と同じ50年にさせよう」という方向性に行かないのか。

これは著作権だけの話ではない。交渉というのはアメリカほかの参加国に、日本基準を受け入れさせるという要素があってもしかるべきではないのか。なぜアメリカに合わせるか否かだけの議論なのか。そんなのは交渉ではない。営業マンが何か売り込みにやってきている、多少値切りくらいは打診するとしても部屋に入れてしまうのか、それとも部屋に入れないのか、という二択をやっているレベルだ、今のTPPの議論は。こちらからも売り込むものがある、相手の売り込みといかに駆け引きするか、という話になっていない。少なくとも、そのような「対等の交渉」をするつもりなのだという意図は伝わってこない。推進派の意見からは、多くの分野で利益があるから、不利益を被る少数の分野に泣いてもらおう、というだけのものにしか聞こえない。

単なる値切り交渉程度であれば、対等の交渉とは言わない。

日本の農業が保護されなくなり、安い海外の農産物が大量に入ってくるという最大のTPP反対要因に対して、日本国内の農業を保護するか、他の輸出産業の利益を大きくするために農業には泣いてもらう、という二択しか提示されていないが、なぜ賛成派から「もちろん代わりにTPP参加国に日本産の農作物をガンガン買ってもらいますよ。農業だって輸出で儲ける時代です」という攻めの戦略と具体的方策が示されないのか。

今のTPP議論を見ていると、どうしても「売り込まれているTPPという名の商品を買うか買わないか」という次元に議題設定されてしまっている。だが本来、TPPの交渉のテーブルとは、こちらからも売り込む場ではないのか。たとえば、これを機会に、あまりにも高機能すぎて世界標準から外れたガラケー(フィーチャーフォン)を逆に世界標準の一つにして海外市場を攻略しようという発言があったっていいじゃないか。

しかし、TPPでは受けの姿勢ばかりである。攻めの姿勢はどこにも見られない――反対派のみならず賛成派の間でも。

そんな状態でTPPのテーブルについたところで、食い物にされるカモがネギをしょっていくだけのものだと感じてしまうのである。少なくとも、アメリカンスタンダードとグローバルスタンダードは本来まったく異なるものであるということを忘れてはならない。

TPPでのヴィジョンが不鮮明

わたしは、普段は「国」という境界でものごとを考えることを毛嫌いしている人間であり、国益よりも世界益という考えには代わりはないが、その上で日本の国益を代表するはずの政府の交渉能力や戦略・戦術というものを見たとき、この首相はアメリカ様の利益を代弁してアメリカンスタンダードに日本を組み込むことだけが仕事なんじゃないか、と思えてきたのは事実である。

TPPに参加することで、参加国と不参加国がどのような未来になるのか、そのシミュレーションが伝わってこない。「開国しないといけないんだ」という必要論だけではだめだ。世界経済の規模で何がどう変わるのか、そのヴィジョンを精密かつ厳格に示す必要がある。

江戸幕府が開国したのは、端的に言えば西洋の軍事力・技術力にかなわないとの判断であった。そこに「開国したら物価が高騰する」などのシミュレーションは存在しなかった。その結果、経済は大混乱に陥り、結果として薩長などというやくざ連中に国を乗っ取られたわけである。

「TPPが開国だ」などというのは、たとえば司馬遼太郎ファンなどの明治維新近代化を盲目的に崇拝する人たちに感情的にアピールするだけの印象操作の言葉遣いであって、その開国によって具体的に何がどう変わり、どのような社会になるのか、その中で日本はどうなるのか、というヴィジョンを示し、そうでない未来と比較して何がよくなり何が悪くなるのかということをしっかりと示す必要がある。

急激な労働人口減少時代を控えて

そもそも、日本はここ数年のうちに急激に労働人口が減る。激変といっていい変化がすでに始まっており、攘夷派・嫌外派がいくら排他感情を振りかざそうとも、二、三年のうちには確実に「日本国内ほとんどすべての産業で外国人労働力がなければ成り立たない」時代がくることはデータからも明らかである。すでにコンビニ弁当の工場の労働力は外国人労働者が大半を占めているのだ。

2006年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」によれば、1995年ごろからゆるやかに減少してきた生産年齢人口が、ちょうど2011~2012年ごろ、実数・比率ともに減少の度合いを強める(曲線の角度が急になる)と示されている。

年齢三区分別の人口の推移 年齢三区分別人口割合の推移

(グラフの出典:日本の将来推計人口(平成18年12月 結果の概要 国立社会保障・人口問題研究所)より、p7の図3・図4)

このような状況の中で、外国人労働力をいかに受け入れていくかということは経団連も様々な勧告を行なっているとおりであるが、このような時代背景の中でTPPがどのようにメリット・デメリットをもたらすかについては、寡聞にして論じられているのを見たことがない。

いずれにせよ、TPP議論でよく見られるような「賛成するのはバカ」「知らないから反対するんだ」といった罵倒論ではなく、きちんとメリット・デメリットと将来の展望と「どう変わっていくべきなのか」の理念をもった上での議論が必要だと思う。

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