「ハチの巣ブログ」と「群れブログ」――ブロゴスフィアにおける戦い【全訳】

 Tom Maguire氏のブログに掲載されたJustOneMinute: Battle For The Blogosphere:という記事が、一部ブロガーの間で話題となっている。

 この記事が取り上げられたのは、2ちゃんねるでの抄訳がきっかけのようだが、原文に当たってみたところ、少々ニュアンスが違うように感じられる部分も多かったので、ひとまず全訳してみる。

2005年2月19日21:50| 記事内容分類:ブログ/ウェブログ| by 松永英明
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ブロゴスフィアの戦い:左派ブログはいかにすればブロゴスフィアを勝ち取り、政党を復活させ、我が国を救うことができるか(そしてそうしないだろうという理由)

2005年2月15日

 ブロゴスフィアにおける最近のドラマといえば、右派ブログがCNN取締役イーソン・ジョーダン(Eason Jordan)に辞職を迫ったように見え、一方、左派ブログは不適切に資格を得たホワイトハウス・ジャーナリスト「ジェフ・ギャノン(Jeff Gannon)」の辞任を強いた。これは「ブログはここからどこに行くのか」という識者の見解を大量に呼び起こすこととなった。

 ハワード・カーツ(Howard Kurtz=ワシントンポストのメディア評論家)はこの行動についてまとめている

 USNews & World Reportのマイケル・バロン(Michael Barone)はこのように意見を述べている。「左派ブロゴスフィアは民主党員を左に動かし、右派ブロゴスフィアは旧メディア内における共和党員の敵の威信を傷つけてきた。どちらの変化も、ブッシュと共和党員を助けている」

 ヨナ・ゴールドバーグ(Jonah Goldberg)はこのように見ている。ブロゴスフィアがメディアの監視人を演じるとき、「左派は完全に保守メディアに焦点を合わせなければならない。さもなくば、メインストリームのメディアとの癒着を避けることができるようにさらに左傾しなければならない。ニューヨークタイムスを抱きしめたままで叩くことはできないのだ。これまでのところ、その双方がなされている」

 そしてケビン・ドラムは心配のあまり手をもんでいる。「もし我々自身のやり方でいくつかの戦利品を獲ることに成功したとしても、自由主義者よりもはるかに多く、保守主義者は戦闘のブランドをプロモートすることから力を得ている。我々はこのゲームに参加することによってカモにされていなければいいのだが」

 さて。これは、左派がいくつかの興味深い利点を持っており、彼らが勝利できる戦いである。それを証明するのはあっという間だ。

 第一に、ブロゴスフィアの構造について短い余談。最大の左派ブログデイリー・コス(Daily Kos)である。そこに入るには登録しなければならない。メンバーはコメントを起こしたり、「日記」を書いたりすることができる。それはブログ内ブログとして機能している。多のブログに自分のコメントを残すだけでなく、メンバーは日記エントリーに投票することができる。こうして組織内でのランキングを変えて、他の人たちの注意を引くことができるのである。そのため、メンバーにとっては時間をゆったりとすごすことができ、Kos ワールドにはやることがいつもたくさんある。

 しかし、これは切り離された世界だ。ギャノン狩りの行動についてたまたま観察したことがあったが、彼らがとてつもないエネルギー、人的資源、才能を特定の作業に呼び集めることができるのは確かだ。しかし、集団思考に向かう傾向、そしてKosワールドの外にあるブログからの情報収集の弱さは、決定的な弱点であるが、これは経験によって克服することができると思う。自分たちの世界だけであまりにも多くの時間を過ごしていながら、重要なうなり声(読者・聴衆の興味)を生み出すことができるから、それを「ハチの巣」と呼んでもいいだろう。

 では、右側で彼らに立ち向かうのはだれか? 本質的に、ほとんど完全に混乱に陥った飢えたるブロガーたちは、インスタパンディット(InstaPundit)の超カフェイン中毒のグレン・レイノルズ(Glenn Reynolds)に率いられている。右派の人々はブログの投稿に人気投票をするだろうか? しない。調査作業を割り当てたり、プロジェクト・ボランティアを探したりするだろうか? しない。グレン・レイノルズはブログにリンクを載せる。Instalanche(InstaPunditからリンクされる)される結果、どんなメッセージでも広く拡散する。もちろん、トラフィックを導く大規模なブログはほかにもたくさんある。したがって、読者も考えも確かにグレンとは無関係に動いている。しかし、彼は主要なハブ(中枢)なのである。そして、グレンはコメント欄をつけていないので、彼のサイトの中にとどまる理由はない――人々は立ち寄っても、ブロゴスフィアの中に向かっていく。

 それでは、ハチの巣vs群れ――どちらの構造が国家的討論に影響を与えるのだろうか?

 右派にとって、その答えは重要だ。なぜなら、我々は有効なハチの巣を形成する気質も才能もどちらも示してこなかったからだ。

 けれども、左派は重要な利点を持っている。それはどちらかを選ばなくてもいいからだ――彼らの最大のブログが成功したハチの巣であったとしても、そこから出てきた数百の左派ブログは強力な一つの群れを構成できる。

 では、彼らはどのように進歩しうるだろうか? ここにはいくつかの仮定を示そう。

 主要な新しいハブが単純に出現するということはありそうもない。大きく、すでに確立された左派ブロガーの一人がグレンを打ちのめすためにグレンのようになろうと決心する必要があるだろう。アトリオス(Atrios)はすでに多量のリンクをしているから、彼をその役目に指名するとしよう。アトリオスは2つのことをするべきである。

(1)他のブログへひたすらリンク、リンク、リンク。そう、今よりもっとたくさんだ。そして、もしそれが目的だとすれば左派ブロゴスフィアにおける穏健な発言をプロモートする大きな機会となる(私はそうだと思うが、私は誰なのか?)。

(2)コメント欄をなくせ。それは多すぎて有用なものとなっていない。そしてもし読者がサイトにコメントしているなら、ブロゴスフィアの中に出ていくことはない。そうだよね? これらの読者を送り出して、新しい左派ブロガーに出会わせる。そして彼らにはそこでコメントさせる――新しいブログが育ち、新しい思考の経路が発展し、そしてさらに多くのアイデアが共有される。

 今、ケヴィン・ドラム(Kevin Drum)はメディア狩りは左派のための愚かなゲームであるといらついている。まあ、もし目の前の戦場で勝てないのだとしたら、別の戦場を選びなさい!

  • 新しい民主党の顔をプロモートせよ。フィリップ・ブリードセン(Philip Bredesen)は大統領候補に推されている。エリオット・スピッツァー(Eliot Spitzer)はニューヨーク知事に立候補してもいい。左派はどちらかというと、Guckertまたの名をGannonのことよりも、スピッツァーとブリードセンについて話すべきである。私がここで考えを口に出しているように。
  • 民主党の論点をプロモートせよ。左派ブロゴスフィアは、社会保障についての討論を促進させるというよい仕事をした。例えば、ケヴィン・ドラムの「危機? 何の危機か」というテーマは、ロサンゼルスタイムスに伝染し、今はCWに移っている。
  • 民主党の協議事項をプロモートせよ。ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)とハリー・リード(Harry Reid)は、今期国会で何を達成したいのか? 私は別に知りたくもないが、左派ブロガーたちは興味をそそられるかもしれない。
  • 新しい民主党の考えを促進しなさい。何かある? 左派シンクタンクかどこかの大学教授、左派ならだれにでも燃料を与えよ――ヨナ・ゴールドバーグの給料支払小切手とか最低賃金よりも面白い話をすべきだ。

 コメント欄を閉じること(そして他のいくつかの大規模ブログも同様にすべきだ)を除けば、これ以外のこともないし、難しいこともない。変更は強調されるだろう。その結果、もっと多くの議題をカバーして左派ブロゴスフィアが活気づくことが可能だ。

 では、右派は敗北スピーチを書き始めなければならないのだろうか? ほとんどその必要はない。第一に、私が述べた変更はなされまい――コメント欄を閉じるのは最初に必要なステップであり、その保守性を示した以上、彼らはそうできない。もしそうするなら、ジェフ・ゴールドスタインのサイトに行って、情け容赦なくあざ笑わせてもらうとしよう。

 我々は同じく、とにかく取るべき対策も持っている――手始めに、よくできているがあまり知られていない我々の陣営のブログをもっとプロモートするということをやれるだろう。

 そして、NRO(National Review Online)のキャスリン・ロペス(Kathryn Lopez)に特に負担があると信じている。私の考えはこうだ――素晴らしい個人的魅力、鞭の音、そして論説による命令を通してCorner Crewに対してもっと多くのブログを見てリンクせよと勧告していたならば、NROの読者を増やし、ブロゴスフィアを改善することができただろう。

 NROが勝利するだろうというのは、「この件についてはCorner欄に掲載された方がいい」とブロガーたちが考えるならば、NROの記事を読んでリンクすることをブロガーたちはもっとやるようになるだろう、と私は考えるからだ。伝説的なスティーヴン・デン・ベスト(Steven Den Beste)が、最初にブログしていたころにはCornerリンクが非常に役立った、と言っているのを思い出す。まあ、次のデン・ベストは今日、そこから出てくる! (左派は震える。何を待ってるんだ、K-Lo?)

 右派ブロゴスフィアが勝利するのは、NROの多くの目がK-LOをなだめるためにリンクできるようなブログを探すだろうからだ。頭のよい人たちは頭のよいブログを見つけるだろう。そして我々みなが利益を得るだろう。

 それで。もし左派ブロゴスフィアが中央に向かって進軍するように奮起したら、民主党において同様の直観がよみがえるだろう。それは、個人的な見解では、国にとってよいことだろう。

 あるいは、左派がもっと広範囲な問題に向かって結集するだけでも、我々右派は自分たちがなすべきことがもっとあると気付くことだろう。

 左派はこうすることができるだろうか? おそらくできない。誰がどう見ても、エネルギー、広告収入、読者は左に偏りすぎている。中央に進軍する左派は一人で行軍することになるだろう。

 しかし、右派はそれをやり続けられるのか? MSM(メインストリーム・メディア)をストーキングするのは何年もの価値と娯楽を提供してくれるだろう。だから、我々は乱闘しているのが大好きである。右派への私のアドバイス――謙虚であり続けよ、飢えていろ、そして「かかってこい」と言うときには微笑んでいろ。

参考リンク

二つのスタイルと、私が木村剛に絡んでいった理由

 さて、以下は訳した松永の感想と意見である。

 まず、私は右とか左とかいう政治的レッテルにはまったく興味がない。左の人は自分と意見の違う人を右と呼び、右の人は自分と意見の違う人を左と呼んでいるだけのことだと考えているので、どちらも同じ穴のムジナであり、右・左という分け方によって思考停止が起こり、問題を直視しない傾向が現われると考えている。また、アメリカでの右派・左派と日本の保守・革新は全然違うので、ここで右とか左とか論じても意味がない。左右については以上で終わり。

 さて、むなぐるまさんの命名「カルト形成型」か「リンク・ハブ型」かという表現は非常にわかりやすい。この二つのブログスタイルの対立――考えてみれば、私が執拗と思われるまでに週刊!木村剛を批判してきたのは、「カルト形成型/ハチの巣型」ブログの典型である週刊!木村剛に対して、「リンク・ハブ型/群れ型」ブログ的スタイルを自然なものと考える私の反発だったともいえよう。

 もちろん、この分け方は両極端であって、双方の要素をそれぞれ兼ね備えているのが一般的だろうし、そもそもこの絵文録ことのはもコメント欄を閉じてはいない。だが、木村剛氏はカルト型の要素を強めている。そして、上記翻訳記事でも指摘されているとおり、カルト型ブログは閉鎖的な、そして他のブログのネットワークから切り離された独自のブロゴスフィアに孤立してしまうことになる。そうなったら、ブログというスタイルを使う必要があるのか、ということにもなろう。Daily Kosはブログサイトというより左派コミュニティポータルサイトに近いものとなっている。週刊!木村剛も、「アンチマスコミの新メディア」を標榜していながら、実は「木村剛ファンクラブポータルサイト」になってしまっているのだ。

 木村剛については今回は例として挙げたが、私としては「以後、対手とせず」の心境である。「転載許可を得たブログからのみ転載と変更されたからいいじゃないか」と、木村剛批判を批判する人たちは口を揃えて言うが、肝心の「リンクも転載も同じ」「ネットのものは俺のモノ、だけど俺のものはネットのものじゃない」という思想がまったく変わっていない状態で小手先の方針変更をしたという段階で、「週刊!木村剛」は閉ざされた孤島、独りよがりの小コミュニティにとどまることが決定されたからだ。これまではブログ界全体に何らかの影響を与える可能性もあろうと評価していたが、今後、木村剛氏は手下を引き連れた大将ブロガーの一人という以上の存在にはなりそうにないので、どうでもいい存在になったと考えている。

 さて、今回の記事からのリンクやトラックバック先に興味深い記事があったので、それも追々訳して紹介するつもりである。というのも、今度のユリイカのブログ特集で「メタブログ」をテーマに書かせていただくことになったので、ちょっとその辺の話題はちゃんと押さえておきたいということもありまして。

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2005年2月19日21:50| 記事内容分類:ブログ/ウェブログ| by 松永英明
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