反射区理論(リフレクソロジー、ゾーンセラピー)の起源を探る(2)90年前アメリカで生まれた

 前回はリフレクソロジーと鍼灸・ツボの理論は別であること、そして中国に起源を求めることはできないことを検証した。

 今回は、リフレクソロジーの本当の起源を求めて、アメリカに上陸する。

2006年3月 7日00:03| 記事内容分類:世界史, 医療・健康| by 松永英明
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参考サイト

 英文サイトとしては以下のようなサイトを参考にした。どれも大体同じような内容を述べている。

 また、英語文献の翻訳書として、以下の書籍を参考にした。

ウィリアム・フィッツジェラルド博士

 さて、これらに共通する歴史としては、このように記載されている。

  • もともとエジプトやインドや中国でリフレクソロジーみたいなものがあったらしい。
  • 1582年、Adamus博士とA'tatis博士の本が出版された
  • そのすぐ後、Bell博士の本がライプツィヒで出版された
  • 1917年、アメリカのDr. William Henry Hope Fitzgerald(ウィリアム・ヘンリ・ホープ・フィッツジェラルド博士)が「Zone Therapy or Relieving Pain at Home」という書籍を発行。
  • 1938年と1945年、Eunice Ingham(ユーニス・イングハム)女史が「Stories the Feet Can Tell Thru Reflexology」「Stories the Feet Have Told Thru Reflexology」という2冊の本を出版し、足裏の反射区マップと、リフレクソロジーという名称を広める。
  • 1974年、Hanne Marquardt(ハンネ・マルカート女史)の「Reflex Zone Therapy of the Feet」がさらに詳細な反射区理論を公開。

 16世紀の内容はよくわからないし、リフレクソロジーの本でも歴史から省かれていることが多いので直接関係があるかどうかはわからない。

 要するに、リフレクソロジーの前身であるゾーンセラピーが最初の形を生み出したのは、20世紀初めの1917年(大正6年)であった。これはどのリフレクソロジー文献でも共通して認められているポイントである。これは「足心道」よりも10年ほど早い。

 このゾーンセラピーがやがてリフレクソロジーとなり、世界中に広まっていくわけである。

若石健康法

 リフレクソロジー(足裏健康法)は、アジアでは特に台湾で受け入れられているように思う。もともと台湾は怪しいものが大好きなごった煮の場所だから、起源など気にすることなくすぐに取り入れられたのだろう。

若石健康法は、1970年代後半に台湾の教会に布教の為に赴任していたスイス籍のジョセフ・オイグスター神父(漢名:呉若石)が自らの足を揉むことでリウマチによる膝痛を克服し、足の健康法の普及を始めたことに端を発します。

 これなども非常に新しい。そして、これが「東洋式リフレクソロジー」と認識されることもあるという。

英国式リフレクソロジー

 最近街中でよく見かけるようになったのが、「英国式リフレクソロジー」の看板だ。米国で始まったリフレクソロジーと、どう違うのだろうか?

 実は、これは英国式リフレクソロジーのオフィシャルサイト「株式会社RAJA」にきちんと書いてある。

藤田真規がはじめてリフレクソロジーを学びに行った国がイギリスということや、格調高いおしゃれなイメージから"英国式リフレクソロジー"と命名することになりました。

 西洋式リフレクソロジーを「日本人に合った究極のリフレクソロジー」にするために研究を重ねたのだという。このネーミングは1996年。それから約10年、「英国式」は街中で確かに「台湾式」とは違ったブランドイメージをもって広まっているように思われる。

 なお、「英国式」のサイトの記述は誇張が少ないように感じた。また、以下の書籍も読んでみたが、ここに書かれた歴史は正確である(この記事を書くための参考にもなった。つまり、事実を曲げるような誇張はなかったということだ)。書籍とサイトに書かれた内容はきわめて誠実かつ正確だと思われる。

リフレクソロジーは1917年アメリカに始まった

 というわけで、古代伝承や民間療法に原型はあるだろうが、きちんとした形でゾーンセラピーがまとめられたのが1917年アメリカ。その後、リフレクソロジーその他に名前を変えて、世界中に広まっていった。東洋ではあたかも鍼灸のような古い歴史があるかのごとき偽装を受けながらも、新しい癒しの方法として受け入れられつつある――というのがここまでのまとめである。

 つまり、リフレクソロジーは、まだ1世紀の歴史さえもない「新しい医療」なのである。

 もっとも、リフレクソロジーだけが新しいわけでなく、医療法としてはアロマテラピー(芳香療法)もけっこう新しい。精油の蒸留法は11世紀にさかのぼるが、アロマテラピーという言葉が初めて使われたのが1928年なのである。

補記

 今回の調査、つまり「リフレクソロジーの歴史」ということを知るには、Wikipedia日本語版の「リフレクソロジー」の項目はまるで役に立たなかった。リフレクソロジーの法的問題点についてばかり記載されており、リフレクソロジーとは何かという基本的な内容についてはほとんど記されていなかったからだ。

 もちろん、リフレクソロジーの法的問題点については、関係者のみならず、リフレクソロジーを利用する人も認識しておいていいことだと思うので、上記ページは一度目を通しておくべきだろう。

 しかし、Wikipediaつまり百科事典の記述としては、肝心要の記述が抜けていると言わざるを得ない。英語版の内容を翻訳して載せるだけでも全然違うのだが……。

 それから、今回の記事においては、リフレクソロジーあるいはゾーンセラピーの理論が「本当に効果があるのか」といった点についてはまったく関知していない。疑似科学か否かということもまったく関知しない。もちろん、おすすめするのでもなく、否定するのでもない。ただ、リフレクソロジーの一部が主張する歴史には誇張があること、実際には90年の歴史を持つ療法であることを証明しようと考えたものである。

おまけ:「英国式リフレクソロジー」について

 非常に高級感とセンスにあふれ、施術者も教育が行き届いている感のある英国式リフレクソロジーだが、リラクゼーションを提供するサービスとしては、日本でもトップクラスの内容を持っているのではないかと思う。

 しかし、いくつか気になることがあるので、メモしておく。

  • コース名について。プチリフレ、オイルリフレなどの比較的安価なコースが内容をそのまま反映させた名称であるのに対し、上級コースが「ムーコース」「アトランティスコース」「レムリアコース」と「失われた大陸」の名前となっている。
  • フットバス中にはセルフリフレ・セミナーなどの案内が載ったカタログを渡されて見ることになるが、その最後に、「オーラ・カメラ」を設置した店舗の紹介が載っている。

 ムー、アトランティス、レムリア、オーラというようにニューエイジ的な要素が混入し始めていることに少々懸念を感じる。純粋にフットバス、リフレ、アロマといった要素だけではいけないのだろうか?

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2006年3月 7日00:03| 記事内容分類:世界史, 医療・健康| by 松永英明
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エクステリア明日香:スタッフルーム - Web雑記:若石健康法、屋外での顔の認証技術 (2006年3月 7日 13:43)

こんどは、少しエクステリアに偏ったネタ。姉妹ブログのEXニュースで紹介するほどで 続きを読む

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コメント(4)

よく見かけるリフレクソロジーにもいろいろあるのですねぇ。

ところで「リフレクソロジーは1917年アメリカに始まった」の最後の文の「もっとも、リフレクソロジーだけが古いわけでなく、」→「もっとも、リフレクソロジーだけが新しいわけでなく、」なのかなと?

Tigerさん、そのとおりです。修正しました。

はじめまして。あさひと申します。
リフレクソロジーを仕事としてやっています。
とても興味深い記事で、一気に読み上げました。
私が以前勤めていた仕事場は、経営者が素人で、何も知識が無い状態だったため、看板やメニューなどには、マッサージという言葉を使っていました。
数ヶ月ほど経った日に、私服警官がやってきました(笑)
直ぐに看板や、メニューの表示を変更。結局は、無駄なお金だけが出ていった形です。
その後には、保健所もやってきました。。。
足裏は、衛生管理が厳しく、必ず消毒をしなくてはいけません。
エステに務めていたスタッフがいたので、そのへんの管理はなんとか出来ていたので、お咎めは無かったのですが、「知らない」で何かを始める怖さを実感しました。
そして、知識の無い上司のもとで、働く大変さも。。。
ある意味、良い経験となりました。
どんなことでも、お金が発生するのですから、知らないでは済まされない。始める前には勉強し、知識の仕入れをしなければいけないと学びました。

なんだか、長々とすみません。
ただ、ここまで調べ上げている方を始めて見たので、感心と納得。そして、尊敬を感じました。
これからも、記事を楽しみにしています。

はじめまして。「リフレクソロジー」についていろいろと調べていたのですが、こちらの記事を読んでようやく納得がいくようになりました。どうもありがとうございました。

自分のブログで記事を書く上で引用させていただいたので、トラックバックさせて頂きます。もし引用等、問題がありましたら即刻、削除するように致しますのでお知らせ下さい。よろしくお願いします。

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