「イスラム教徒出会いサイト」に潜入してみたら「美しすぎるイスラム美女」多数

muslima誤報アラブの出会い系サイトがスゴイ! ネットユーザー「誰が誰だかわかんねーよ!」 - ロケットニュース24(β)という記事が出たが、よく調べてみたら誤報だった。

アラブの出会い系サイトに登録している女性全員が宗教上のルールから覆面をしており、目しかわからない状態で顔写真を掲載しているのである。つまり、誰がどんな顔をしているのかわからない出会い系サイトなのだ。

と上記ニュースには書かれているのだが、実際にそのサイトを見てみたところ、「アラブの」ではなく「イスラムの」「まじめな結婚案内サイト」だった。しかも「全員が……覆面」というような事実はまったくなく、実際には多くがブルカやニカーブを着用しない顔出し状態だった。

ネットにこう書いてあったよ、というのを右から左へ流すだけの記事でお茶を濁すなら、ネットニュースサイトは有害無益だろう。

というわけで、実際にそのサイト「Muslima.com」に登録して中身をのぞいてみた。

2010年8月27日13:55| 記事内容分類:世界時事ネタ, 宗教・神話学| by 松永英明
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まずはサイトを見つける

ロケットニュースの記事で引用されている写真は、偽造されたものだった。中国の投稿サイトにアップされた画像の転載だが、左上に書かれている「shhongbang.com」は上海の実在する企業のURLであって、出会い系サイトなど運営していない。

そこで中国百度で検索したところ、見つかったのが次の画像だ。誰かが画像を改竄していたらしい。

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そこで判明した本当のサイト「Muslima.com - Muslim singles, dating and personals」にアクセスしてみた。タイトルは「ムスリマ(=イスラーム教徒女性)」であるが、全然顔を隠していない。少なくともこの時点で「女性全員が宗教上のルールから覆面」という記載は誤りであることがわかる。

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サイトの記述は「結婚相手を探したいムスリムのためのサイト」となっている。地域にもよるが、厳しく教えを守るイスラム教徒の場合、異教徒との結婚はありえない(妻が異教徒なら結婚のときにイスラムに改宗しなければならない)。だからこういうサイトのニーズはあるようだ。サイトの宣伝にはこう書かれている。

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登録

これだけでは中身がわからないので、ムスリマドットコムに登録してみた。プロフィールは多数の必須項目にかなり詳細に入力することが求められる。

最も特徴的なのは「Religion(宗教)」の項目で、選択肢が以下のようになっている。

  • Islam - Sunni(イスラム教スンナ派/スンニー派)
  • Islam - Shiite(イスラム教シーア派)
  • Islam - Sufism(イスラム教スーフィズム=イスラム神秘主義)
  • Islam - Ahmadiyya(イスラム教アフマディーヤ=イスラム改革派)
  • Islam - Other(イスラム教その他)
  • Willing to Revert(改宗可)
  • Other(その他)

イスラーム教徒同士の出会いの場なのだから当然と言えば当然なのだが、イスラーム内部ではこういう分け方が自然であるらしい。

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その次の項目が「Born/Reverted(生まれつき/改宗)」という、これまたイスラーム的な質問である。

  • Born a Muslim(生まれついてのムスリム)
  • Reverted to Muslim(ムスリムに改宗した)
  • Plan to revert to Muslim(ムスリムに改宗予定)

「改宗しない」という選択肢はない。生まれつきか、改宗したか、改宗するか。もちろん、イスラーム女性と結婚するには(厳格な場合は)男性はムスリムでなければならないので、当然と言えば当然の質問なのだが、もしかしたら「全人類がこの三つに分類されるべきだ」と考えているムスリムもいるのかもしれない。(追記。「イスラム法の厳格な適用が行われる中東では、男性のみならず女性も結婚に際しイスラムへの改宗を強制される」(イスラム教と他宗教との関係 - Wikipedia)。一方、私の身近にいる某バングラデシュ人は、日本人と結婚するのに神社で結婚式を挙げたし、ユダヤ教でもキリスト教でもない妻への改宗も一切求めなかったが、ハラルだけは律儀に守っているという例もある。どこからどこまで厳格にやるかは、それこそ多種多様。)

それ以外は「たばこを吸うか」「どこに住んでるか」といった質問に答えて登録完了である。なお、ログイン後はさらに追加プロフィールも選択可能だ。興味深いものをいくつか挙げてみよう。

  • 食習慣:常にハラル、できる限りハラル、特に制限なし(※ハラルはイスラーム律法にのっとった食事)
  • コーランを読む頻度:毎日、ときどき、ラマダン期間のみ、金曜日だけ、翻訳されたものを読む、全然読まない、無回答
  • 一夫多妻制:一夫多妻を受け入れる、たぶん受け入れられる、無理

文化的に興味深い項目だと思う。

実際に検索してみる

というわけで、サイトにログインして実際に写真付きメンバーを検索してみる。こんな感じ。

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グラサン率がやや高いようにも思われるが、「全員が覆面」などというのは偏見もいいところだろう。もっとも、地域別でいろいろ違いがあるかもしれない。そこで国別に調べてみた。

スンナ派のメッカ(というかメッカが存在する)サウジアラビア。顔を隠している人も確かにいるが、全員なんてことはなく、半分以下。中にはアラビアン・ナイトに出てきそうなお姫様っぽい化粧の人もいる。

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全然顔を隠さないこんな美人さんも。

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シーア派大国、ペルシア人(アラブ系ではなくインドヨーロッパ系)のイランだと全然雰囲気が違う。モデル並みの美女も。

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宗教的に保守的と思われるアフガニスタンでもやっとこんな感じ。シルクロード系美女もいる。

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「回族」すなわちイスラム教徒が民族として認定される中国にも登録者は結構いるが、「覆面率」ゼロ。

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宗教問題も絡んで紛争が繰り広げられたボスニア・ヘルツェゴビナでは、見かけは普通にヨーロッパ人だ。

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ロシアにはかなりそれっぽい覆面の人もいるが、やっぱりロシア風。

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エジプトではかぶり物はしていても顔は隠さない人が多数。

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リビアの人は写真に凝っている人が多い。

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東南アジア最大のイスラム教国インドネシア。アイドル顔の人もいる。

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ちなみに、日本在住の登録者は15人、日本国籍の登録者は全世界で11人いた。

というわけで結論

  1. ネットの情報を右から左に流すだけで「報道」を自称するのはそろそろやめませんか。
  2. その情報を鵜呑みにしてコメントするのもそろそろやめませんか。
  3. 「イスラームだったら出会い系サイトが覆面ばっかりでもありえる、むしろそれが当たり前」などと知ったかぶりのブクマも散見されたが、それは文化的偏見ではありませんか。
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2010年8月27日13:55| 記事内容分類:世界時事ネタ, 宗教・神話学| by 松永英明
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