YMO「過去の作品や音源は、ぼくたちの手を離れ、時にぼくたちの意図しない商品となって世に出ていくことがあります」

 権利の世界というのはややこしいもので、アーティストの過去の音源が他人によって勝手に商品化され、それを止めることもできないということがある。今回、その「被害」を受けたのはYMOだった。

 実はこのような事例は、すでに女子十二楽坊でも起こっている。

2005年3月19日15:52| 記事内容分類:著作権, 音楽| by 松永英明
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YMOの意図しない作品

YMOからのメッセージがネットで公開されている。

ごめんなさい  March 2005

過去の作品や音源は、ぼくたちの手を離れ、
時にぼくたちの意図しない商品となって
世に出ていくことがあります。それを目にして、
ぼくたちは心を痛めています。
しかし契約上、どうにもならない場合もあります。
今後もさまざまな形でそういうことがあるでしょう。
ファンのみなさま方には、商品を見極める目をもって
音楽を楽しんでいただきたいと思います。
また、過去の音源が再発されることで、
新たにぼくたちの音楽に出会う方がいれば、
大変うれしいことです。

細野晴臣 高橋幸宏 坂本龍一

 最後の1文はことを荒立てないための配慮だろうか。このメッセージが掲載されるに至った簡単な経緯は「μ memo: message from the three」に書かれている。

 問題となっている商品というのは、

L-R TRAX Live&Rare Tracks [LIMITED EDITION]
L-R TRAX Live&Rare Tracks [LIMITED EDITION]

である。

女子十二楽坊の場合

 女子十二楽坊でも同様の「意図しないアルバム」が発売されている。

 もともと、女子十二楽坊のマネージメント事務所はプロデューサー王暁京氏の北京星碟文化電播有限公司(Stardisk)である。

 中国デビューアルバム「魅力音楽会」は南京音像公司と契約したようであるが、その後、Stardiskは広東の企業「広東杰盛唱片有限公司/公安部華盛音像出版社」と契約し、2枚のアルバム(女子十二楽坊専輯奇蹟Live)を発行した。ここまでは問題がなかった。

 その後、Stardiscは日本のプラティア・エンタテインメントと契約し、ファーストアルバム女子十二楽坊~Beautiful Energy~を発売。これが200万部の大ヒットになったことはよく知られていることであろう。

女子十二楽坊~Beautiful Energy~

 この大ヒットでプラティア・エンタテインメントは「奇跡日本版」を発売した。これは中国版よりもはるかに音質をよくしたものである。

奇跡

広東杰盛唱片の背信

 ところが、ここで厄介なことが起こった。日本でのヒットに気をよくした広東杰盛唱片が、日本のジャケットを勝手に使用し、またタイトルも変えて「女子十二樂坊魅力音楽曾 自由」を発行してしまった。それどころか、「Beautiful Energy」の海賊版「東京愛情故事」というアルバムなども出してしまったのである。正規版を出していた会社が海賊版を出すのだからめちゃくちゃだ。

女子十二樂坊魅力音楽曾 自由 (中国大陸盤)←Amazonでは売り切れてます。

 さらに、広東杰盛唱片は日本のドレミ音楽出版に「奇跡Live版」の出版権を売り渡した。こうして発行されたのが「奇跡/女子十二楽坊コンサート〈完全版〉 DVD」である。カバー以外はすべて中国製で、音質も中国版レベルである。

 また、広東杰盛唱片は台湾の榮星國際傳播有限公司に「奇跡」台湾盤の販売権を売却。北京Stardiscの関与しない「奇跡」が日本・台湾で発売されることとなってしまったのである。

広東杰盛唱片との決別

 これに怒った北京Stardiskの王氏は、広東杰盛唱片と決別して香港Universal(環球)と契約することとなった。こうして、香港版「奇跡」ならびに「女子十二楽坊専輯」のリミックス版である「Red Hot Classics」が発売されたのである。

 また、その後日本のプラティア・エンタテインメントから発売された新アルバム「輝煌 ~Shining Energy~」と、最新アルバム「敦煌 ~Romantic Energy~」は、全世界版が香港EMI(百代)公司から発売されている(香港版輝煌香港版敦煌)。

輝煌 ~Shining Energy~敦煌 (DVD付)

 ちなみに、台湾榮星公司はこのトラブルによって販売を停止したようだが、今度は女子十二楽坊を完全にパクった「東方女子樂坊」をプロデュース、またもや北京Stardiskとの間にトラブルの種を蒔いている。

アメリカでの混乱

 さて、2004年8月17日に女子十二楽坊は全米デビューし、「Eastern Energy」はビルボード全米アルバムランキング初登場62位、RIAAワールドミュージック部門販売数トップ連続11週というアジア新記録を打ち立てた。これはプラティアUSAとNew River Musicから発売された。もちろん正規版だ。

Eastern Energy [Bonus DVD] [ENHANCED] [FROM US] [IMPORT]

 ところが、である。広東杰盛唱片は、かつて手に入れた旧版(魅力音楽会、専輯)のアメリカにおける販売権をNextor社に売却、北京Stardisk社も女子十二楽坊もまるで知らないところで「Freedom: Greatest Hits」が発売されたのだ。これは内容的には「魅力音楽会」と「専輯」の曲を収録し直しただけであり、新しい曲は入っていない(入れられるわけがない)。

 その後、このNextor版は日本でコロムビアから「自由(FREEDOM)Best Selection」として発売されることとなった。「女子十二楽坊が、2004年10月に全米で発表した2枚組アルバムに8曲をプラス、オリジナル・マスター音源を使用したベスト・セレクション盤。そのうち日本で未発表だった15曲を含む」という解説がAmazonについているが、「女子十二楽坊が、2004年10月に全米で発表した2枚組アルバム」というのはウソで、女子十二楽坊の昔の音源を勝手に使って全米で発売されたアルバムというのが正しい。(これは虚偽広告にならないのだろうか?)日本未発表というが、要するに過去の音源を片っ端から出してきましたよというだけのもので、たとえるならば、メジャーデビューしたバンドのインディーズ時代のマスター音源を使ってだれかが勝手に新譜として出したようなものだ。

 もちろん、女子十二楽坊はコロムビアに移籍もしていないし、女子十二楽坊・北京Stardiskとコロムビアの間にも直接の契約は存在していない。ただ、かつて一度は確かに広東杰盛唱片に発売権を与えてしまっていたがために、契約書上はこういうものも出せてしまうという苦い状況になっているわけである。

  • 北京Stardisk
    • 日本Platia Entertainment(正式契約)
    • 香港Universal(正式契約)
    • 香港EMI(正式契約)
  • 広東杰盛唱片(かつて正式契約、今は断絶。版権を北京と無関係に売却)
    • 日本ドレミ音楽出版
    • 榮星國際傳播有限公司(パクリバンド東方女子楽坊もプロデュース)
    • Nextor
    • 日本コロムビア

 かつて正式契約があったという点で海賊版とは断定できないが(海賊版も広東は出してるけども)YMOのいう「過去の作品や音源は、ぼくたちの手を離れ、時にぼくたちの意図しない商品となって世に出ていくことがあります」現象が起こっていることは理解していただけるであろう。「ファンのみなさま方には、商品を見極める目をもって音楽を楽しんでいただきたいと思います」とはまさにそのとおりである。

 もちろん、広東系のところから女子十二楽坊の「魅力音楽会」「専輯」「奇跡」に収録されていない曲目が発売されることは今後永久にない。過去の遺産を手を変え品を買え出すことしかできない。

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ポッドキャストで3/16にアップしたMP3ファイルを削除しました。 続きを読む

コメント(3)

私の迂闊な記述により、ご不快の念を感じられたことと思います。こちらでもお詫びさせて頂きます、誠に申し訳ありませんでした。

(以下は、上記のメッセージのオリジナルです)

ごめんなさい  March 2005

過去の作品や音源は、ぼくたちの手を離れ、
時にぼくたちの意図しない商品となって
世に出ていくことがあります。それを目にして、
ぼくたちは心を痛めています。
しかし契約上、どうにもならない場合もあります。
今後もさまざまな形でそういうことがあるでしょう。
ファンのみなさま方には、商品を見極める目をもって
音楽を楽しんでいただきたいと思います。

坂本龍一

また、過去の音源が再発されることで、
新たにぼくたちの音楽に出会う方がいれば、
大変うれしいことです。

細野晴臣 高橋幸宏

(ごめんなさい)

(以下は、上記のメッセージのオリジナルです)

ごめんなさい  March 2005

過去の作品や音源は、ぼくたちの手を離れ、
時にぼくたちの意図しない商品となって
世に出ていくことがあります。それを目にして、
ぼくたちは心を痛めています。
しかし契約上、どうにもならない場合もあります。
今後もさまざまな形でそういうことがあるでしょう。
ファンのみなさま方には、商品を見極める目をもって
音楽を楽しんでいただきたいと思います。

坂本龍一

また、過去の音源が再発されることで、
新たにぼくたちの音楽に出会う方がいれば、
大変うれしいことです。

細野晴臣 高橋幸宏

(ごめんなさい)

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