吉田アミ ささやきのパフォーマンスを聞く。ライブレポート(写真あり)

 栗原裕一郎さん@おまえにハートブレイク☆オーバードライブに引っ張られて、2005年4月22日、代々木オフサイトで開かれた『絶対アンテナ Vol. 35』に行ってきました。以下、そのライブレポートであり、加えて吉田アミちゃんを手放しで絶賛しつつ、一部のニッチな市場に激しく売り込みをかけまくろうという企てであります。

ami01.jpg

2005年4月27日10:44| 記事内容分類:ライブ| by 松永英明
この記事のリンク用URL| ≪ 前の記事 ≫ 次の記事
| コメント(2) | トラックバック(1)
twitterでこの記事をつぶやく (旧:

オフサイト

 実のところ、今回のライブハウスでどういうことが行なわれるのか、まったくわかっていなかった。ただ、ブログ界でよく名前が出てきて、自分もよく読んでいる“日日ノ日キ”の吉田アミちゃんは本来ヴォイス・パフォーマーとかミュージシャンであって、そちらの活動は全然知らなかったので、「それなら行きませんか」と栗原さんに誘われたので行ってみることにした、というのがほぼすべての予備知識である。

 午後7時半開場なので、少し前に代々木駅東口で栗原さんと待ち合わせ。これが初の顔合わせである(ユリイカで執筆依頼が来たというのに直接の面識はなかった)。自分は普通は道に迷わないのだが、今回ばかりは二人で迷いまくってしまった。普通の住宅を改造して作られており、20人も入れば満席らしい、とは栗原さんの弁。わかりにくくても仕方ないかもしれない。

 この辺かな、とi-mode版mapfanで住所を確認しつつ、何度も同じあたりを行きつ戻りつしていると、おにぎりを調達しに出てきた吉田アミちゃんに遭遇(これも初の顔合わせ。なお、アイドルなので敬称はちゃんで押し通すことにする)。教えてもらった場所は……さっき前を通ったところだ。扉が開いていなければごく普通の小さな2階建て住宅という場所である。これではまるでわからなくても仕方がない。

 以下、吉田アミちゃんとともに「astro twin」というユニットを組んでいるユタカワサキくんに教わったことを乱暴にまとめてみると、この住宅改造ライブハウスでは、大きな音、というか楽器の音はほとんど出せないらしい。で、ちょっと音が響くと、隣家の方が怒鳴り込んで来るというような話もあるようで……ってどんなライブハウスやねん! 致命的である。

 そんな「音の出せないライブハウス」での、ささやくような音のパフォーマンス3組。矛盾するようなテーマであるが、それが今回の「絶対アンテナ Vol.35」であった。実はオフサイトは今月いっぱいで閉鎖らしい。そのため、20人収容のライブハウスには人があふれかえり、立ち見も出る大盛況であった。30人くらいはいたのかな(笑)

蛍光灯と電磁力の夢

 最初の登場は、佐藤実さん+伊東篤宏さん。少し背より高いあたりに水平に三角形に張り渡された針金に、各辺3個所ずつの留め金がついている。その三角形の内側向かって右手に伊藤さんが座って、斜めに蛍光灯を抱える。電圧の変化とともに明滅する蛍光灯。

 合計9個所の留め金には、佐藤さんが一つずつ電線のついた小さな器具を順番にとりつけていく。あとで栗原さんが質問してわかったのだが、これは電流が通っていると金具に留まる仕組みになっているという。

 いつまで準備をやるんだろうと思っていたら、実はこれが「蛍光灯プレイ」というやつだったのだ。高く低く、小さなうなりを立てる蛍光灯と9つの留め金。微妙で繊細な光と音を逃すまいとすれば、意識を集中させねばならない。息を殺し、じっと耳を澄ます。

 やがて電圧のボリュームが絞られ、蛍光灯も消えていく……と同時に、一気に9つの器具が落下した。突然の幕切れに驚きながらも拍手が広がる。

 そうか、これはこういう世界だったのか、とようやくわかり始めた。稲垣足穂だったらこういう情景をもっと幻惑的に描くのだろうな。

ささやきの音の抽象画

 続いて、お目当てのastro twin (吉田アミ&ユタカワサキ)の登場である。

 舞台左手で横を向いてマイクを口に近づける吉田アミちゃんは、ジプシー風とでもたとえるのがよさそうなちょっとセクシーな衣装。「一体どこから声出してんねん!」と突っ込みたくなるような不思議な音が、マイクを通して、あるいはマイクなしで聞こえてくる。風のような、馬のいななきのような……いずれも具体的なモノとのつながりを欠いた「音」の響きだ。

 カワサキくんは舞台右手で座ってアナログ・シンセサイザーを操る。時折、アルミホイルがかざされたりして、ノイズと表現の微妙な境界線をくぐり抜けていく。聴衆は、張りつめた空気の中で何一つ聞き漏らすまいと、身じろぎもせずに固まっている。

 ささやくような音による抽象画の世界。それがastro twinだった。

電気工作のゆらめき

 大阪から来たという梅田哲也さん+堀尾寛太さん。くるくると回転する金属器械の横に風船を押さえ込んできしむ音が鳴る。風船には何種類かあり、それぞれの厚みなどの違いで音も変わるのだそうだ。もう一つは、白い道の上に黒マジックで書いたドットやラインを読み取る車。テーブルの上をゆっくり進み、リアルタイムで書かれるラインが映写機で壁に映し出される。ラインによって音も変わるようだ。電気器械が極めてアナログな音のゆらめきを搾り出す。

アヴァンギャルドとサブカルと

offsite01.jpgoffsite02.jpg

 最近一部でオタクの人が「サブカル扱いするな!ムキー!」と叫んでいるという騒動があるらしいが、そんなのは言葉の定義の個々人の違いによるイメージ以上でも以下でもないので無視するとして、この「オフサイト」というところはどう考えても「サブカル」の空間であった。『夜想』や『Wired』の系列の雑誌や本が並んでいる時点でそう断言してもいいだろう。

 3組のパフォーマンス終了後、2階でアミちゃん、カワサキくん、栗原さん、あとアミちゃんファンの20歳と一緒に、ネットの話とかなんたらかんたら濃い話をしたのだった。

 カワサキくんはクーロン黒沢とか「[k]」とかのアングラネット用語がセリフにバンバン飛び出すいい奴なので「素敵なネットジジイ仲間」認定(最大級の誉め言葉)。エアロフロートでモスクワ経由欧州遠征するそうだが、荷物盗まれんようにな(´ー`)y-~~

ami02.jpg

 アミちゃんはビールラッパ飲みで勢いをつけていたが、惚れ惚れするほどキュートでちょう可愛いので、吉田アミ後援会長栗原さんに続いて副会長を名乗ることにした(いずれも自称)。というわけで、アルファブロガーまつなが12歳×3は吉田アミを応援しています!

 しかし76年組って何か異様な力を持ってるなあ。69年組(tagさんとかテラヤマアニさんとか俺)も負けてられんな(笑)

カリフォルニアドールズ「Dragon, Tiger and Escargot」

 さてさて。その後もいろいろ濃い話はあったのだが、最後はアルバムの感想を書いておこう。吉田アミ+和田ちひろのユニット「カリフォルニアドールズ」(略称カリドル)のアルバム「Dragon, Tiger and Escargot」である。以下、このアルバムの感想。

Dragon, Tiger and Escargot

 一言で言えば、サルヴァドール・ダリの映画「アンダルシアの犬」だ。何が言いたいのかまるで意味不明だが、人によっては中毒になる。

 一度聴けばわかるが、このアルバムはだれにでも受け入れられるという音楽ではない。というより、メジャーには絶対なりえない世界である。しかし、かつての『夜想』バックナンバーを見ると思わず手に取ってしまうとか、そういう人たちにとってはたまらないものがあるんじゃないだろうか。

 大学のとき、アヴァンギャルドとか何とかいって演劇だの自主制作映画にはまっていた友人がいた、というか周囲にはそういう奴らばかりだった。連中が表現で何を言いたいのかはまったくわからなかったが、そういう連中は大好きだった。少なくとも「就職するために点数をきちんと取るのが大学生の仕事」みたいに義務的に授業に出てレポートを書くのが日課の連中よりは、ずっと話も合ったし、性にも合っていた。

 カリドルのアルバムを聴いた瞬間、10年以上ぶりに連中の空気を思い出した。

 個人的に1つ選ぶなら、#15「俺いい奴 俺悪い奴」の破壊力は異常。

吉田アミ関連リンク!

マイクロスケープ

追記。

(以下4/28追記)

この記事への反応

 そうか、こういうジャンルの音楽って「Improvised Music」というのか。あるいは「音響派」。

 「特に音響派の一定義を私は「観客と演奏者が同じ音を聴く」ということを重要視していた人たちのことじゃないのか、と思っている。」という吉田アミ定義は非常にわかりやすい。どういう音が出るのかな?と、音を出す方も聴くだけの方もそこにのみ関心があるというのかな。

音響派リンク

 吉田アミが英語版wikipediaで一項目になっているのに今気付いた。日本語版にはないようなので訳してのっけておく。

Ami Yoshida

From Wikipedia, the free encyclopedia.

 Ami Yoshida (吉田 アミ、1976年5月13日生まれ)は日本のミュージシャンである。

 吉田は楽器を演奏せず、自分自身の声で音楽を作る。慣習的な歌い方ではなく、様々な発声を作り出すが、その音は声で作られているのだとはまるで思えないようなほどのものであったりする。これらの音は、巧妙に電子的に変換されることもある。音を作り出す手段を本人は「ハウリングヴォイス(うなり声)」と表現する。

 レコードには、Ami Yoshida - Spiritual Voice(1997)や、13トラック、4分のEP(2002年に発表した名刺サイズCD)がある。2003年発表の"虎鶫(Tiger Thrush)"はImprovised Music from Japanレーベルから発表され、99の無題トラックが収録されている。

 多くの他のミュージシャンとコラボレーションしてきた。大友良英、Sachiko MとのデュオCosmos、ユタカワサキとのデュオAstro Twinなどである。

【広告】★文中キーワードによる自動生成アフィリエイトリンク
以下の広告はこの記事内のキーワードをもとに自動的に選ばれた書籍・音楽等へのリンクです。場合によっては本文内容と矛盾するもの、関係なさそうなものが表示されることもあります。
2005年4月27日10:44| 記事内容分類:ライブ| by 松永英明
この記事のリンク用URL| ≪ 前の記事 ≫ 次の記事
| コメント(2) | トラックバック(1)
twitterでこの記事をつぶやく (旧:

トラックバック(1)

http://kotonoha.main.jp/2005/04/27ami_yoshida.html と、いうことでことのはの松永さんがこのあいだのライブレポートを書いてくださったよ!自分の顔が気まずいのは毎度のことなので毎度、軽く落ち... 続きを読む

コメント(2)

69年組が女子を「ちゃん付け」するとものすごくいやらしいからゆーたらあかん! と思いました。

アニさんナイスツッコミ!

このブログ記事について

このページは、松永英明が2005年4月27日 10:44に書いたブログ記事です。
同じジャンルの記事は、ライブをご参照ください。

ひとつ前のブログ記事は「ボイスブログはじめりです!「詠聞録ことのはレイディオ」」です。

次のブログ記事は「天空から舞い降りる透き通った響き。森岡万貴ライブレポート」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。
過去に書かれたものは月別・カテゴリ別の過去記事ページで見られます。