結核文士の治療記(7)夏の入院環境

 いよいよ7月である。悪くはなっていないのだが、退院できる臨界点をなかなか突破してくれない。仕方がないので、ノートPCを借りるなど、生活環境を整えていってしまうのだった。

2006年9月12日11:30| 記事内容分類:闘病記| by 松永英明
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再縫合

 6月21日、かなり膿も減ってきたので、再縫合することになった。病室で、局部麻酔を背中の傷口に注射し、10針ほど縫ったのである。一部、麻酔が効いていなくて激痛だったが、無事縫合は終了。ストレプトマイシンも中止されることになった。

 それから、傷口は少しずつ快方に向かっていった。膿もだんだん少なくなっていき、日々改善されていく。熱も36度台から上がらなくなり、かなり状況は改善されてきた。

 しかし、膿がなくなったわけではなかった。なかなか縫合後の抜糸も決断されない状況が続いたのである。つまり、縫合してもきちんとひっついてはいないわけだ。

 6月27日、前回から10日ぶりに帰宅。駅でボーっと歩いていたら間違えて半蔵門線に乗ってしまったので、三件茶屋から世田谷線経由で自宅へ向かう。ポカポカと日差しの温かい日だったので、のんびり走る世田谷線が気持ちいい。荷物を置いて、振り込みをして、病院に帰った。

易占トリック

 6月29日、朝日選書の『易』が届いたので、コインで易占をやってみた。

 入院の経過は?→兌為沢の九二:吉。正しく行なうことで人を喜ばせるという象意なので、医師の指導に従うことで快癒と判断してみた。しかし、易に詳しい人から「傷が二つ重なっている形にも見えなくないので御用心を」とのアドバイスをもらった。

 今後の仕事→山沢損。変爻なし:吉。一時的に出費・負担があるが、これは必要なもので、将来に利益あり。要するに今は充電期であり、今後を心配しなくてよい。

 今年後半の収入→火水未済、六五・上九:不安定の時期はやがて終わる。それまで酒でも飲んでのんびりと時を待て。実力ある補佐を求めるもよし。……というわけで、今年後半の収入はないが、気にするなということらしい。

 株に手を出すのは→天水訟、九四:色気出すな。他人と競うのはやめとけ。本業に戻れ。

 なかなか面白い。タロットと同じで、卦にはすべて出るのだろう。あとは解読する人の読解力にかかっているのも、タロットと同じらしい。

6月末に買った本

治療は続く

 7月7日に治療方針を聞いた。再縫合から2週間経っているが、まだ抜糸に至らない。ここから1週間様子を見ることになった。その間に傷が閉じて、膿も出なくなれば、当然、退院。傷が閉じなければ、様子を見て、傷の表面を剥いで縫合し直す。その方が閉じやすくなるらしい。

 というわけで、普通なら考えられないほど、傷口が閉じてくれない。膿も減ってはきているのだが、なくなるわけではない。

 そこでまた占ってみた。傷自体は「乾」九五で着実に乾いてよくなる。ただし、今後一週間は「旅」九四で、まだ旅先=病院にいる。厚遇はされるが、望ましい環境には戻れない。

 このころ、占いに詳しい人から、占いの当たる条件をきいた。金、友人、寿命のどれかを削っていると占いが当たるという。入院中は金と寿命に難があるから、よく当たるらしい。逆に、占いで金と人気を得ている人は、寿命をすり減らしているのだそうだ。だから、占いは金儲けに使わないのが一番という話。

携帯のピンチ

 Amazonや楽天で購入するためにいろいろ見ているうちに、だんだん携帯の電池がヘタってきた。一晩充電しても、5分でアウト。コンセントをつないだままでも、起動さえしないことがある。接触部も悪くなっているようだが……おそらく、乾電池型充電器で無理をしたのでメモリー効果が出て充電できなくなっている上に、接触も悪くて充電できないのだろう。というわけで、7月4日、楽天経由で充電池を購入した。

 7月6日に電池到着。持ちが全然違う。しかし、充電の接続部も悪くなっているようで、これは修理しないとまずそうだ。

 7月9日、帰宅。今や「自宅に行って病院に帰宅」というほうが実感に合うようになってきた。

 病院→電車→駅前本屋

→自宅。病院で読みおわった本を部屋にぶちまける。本屋で買ってきたデスノート12巻読む。高額医療費免除申請を出す。入院・手術代はいくらかかっても、月約7万円以上かかった分は国保で返ってくるのでホッとした。それ以外に、去年の源泉徴収が30万ほど返ってきていた。当面の入院費は大丈夫。

→貯金を下ろしにATMへ。

→新宿のDoCoMoショップで修理の相談。10日から2週間、2000円かかる上に一部データも消えるというので、卓上ホルダーで済ますことにする。630円。とりあえず、これで携帯は普通に使えるようになった。

→マクドで一服

→電車→病院

 以上、4時間の行程であった。

ノートPC

 7月11日、見舞に来てくれた人が『ビジョメガネ〈2〉』をくれた。出ていることを知らなかった。一冊目に引き続き、若槻千夏のメガネ似合いっぷりは異常。小野真弓と堀北真希がいい感じ。吉岡美穂も。Tommy February6のインタビューがだるだる感満載でナイス。

 この日の新聞に文学フリマのことが載っていたので、申し込むことにした。本を作るのに今いくらくらいかかるかわからないが、6月末あたりから小説のネタが次々思い浮かんでいるので、書く内容には困らない、むしろ多すぎて困る。新しい路線も開拓してみよう。

 7月12日、読売新聞夕刊でしょこたんが2面ぶちぬきカラー掲載。もちろん保存。

 この日、某ブロガー氏からノートPCを借りた。DynaBook、つまりタブレットPC。とはいえ、プレゼンする相手もいない。それよりも大きな問題が二つあった。

  • CD/DVDドライブが一切ついていない。
  • 通信手段が一切ない。この病院にはLANもない。エアH゛のようなカネのかかるものは契約していない。というわけで、結局インターネットにはつながらない。

 まあ、ヘタにつながったら、それはそれですべてのことに対応しなければならないので、完治するまではつながらなくてもよかろう。とりあえず、家から持ってきたバックアップ用外付けHDDをUSBで接続して、必要なソフトとかデータを取り込む。そして、中断していた翻訳の続きを開始した。

 翻訳の合間には、シェアウェアゲームの「戦国史SE」の付属サンプルシナリオで遊んでいた。里見家や南部家といった弱い勢力で天下統一するのは楽しい。

 それから、これまでずっとノートにいろいろ書きためていたことを、データ化する作業も行なった。この治療記の6回目までをはじめとして、大学ノート1冊分くらい書いてしまっていたのだが、かなりの分量である。

吾輩が終わった

 7月14日、昼ドラ「吾輩は主婦である」が終わってしまった。この1か月ほどは、毎日昼に「吾輩」を見るのが日課であった。これだけは欠かさず見た。それ以外はほとんど何も見ていなかったのだが。

 斉藤由貴が「夏目漱石が乗り移った主婦」を演じていて、これが異様に面白い。竹下景子もいい味を出している。主題歌「家庭内デート」も覚えてしまった(この時点ではテレビ版だが)。クドカンのドラマって面白い。

 しかし、この「吾輩」が終わったら、平日に見るテレビはほとんどなくなってしまうではないか。

 このころ、土曜日には「ウルトラマン・メビウス」を見ていた。もちろん眼鏡のコノミ隊員がお目当てであることは言うまでもないが、昔のウルトラマンシリーズのネタが盛り込まれているのが楽しい。小さいころ、ウルトラマンは夢があるから見ていい、仮面ライダーはすぐに死ね死ねというからやめておこう、と親から言われていたのだが、ウルトラマンは今もほのぼのしていて、嬉しくなった。7月22日放映分が嬉しかったのは、コノミ隊員が眼鏡をやめてコンタクトにしてみたけど、やっぱり眼鏡に戻ることにしたという展開だった。と、また眼鏡の話に戻ったので、メビウスの話はこの辺にしておく。

7月に買った本

女子十二楽坊

 7月20日、傷がまだふさがってないけれども、再縫合から1か月半で抜糸した。普通は10日くらいで抜糸なんだが。この後、傷が閉じて膿がでなくなれば退院なのだが、夏の間に出れるだろうか、と不安になる。いくら何でも長すぎる。

 7月22日には、ウェブで連載しながら長い間中断していた「まぼろしの五色不動」の原稿を、ひとまず完結させた。退院したら少し取材追加する必要があるが、写真・地図入れて単行本だと240~256ページくらいの分量になってしまった。ちょっとくどいところがあるのでダウンサイジングする必要があるかもしれない。

 7月23日、外出許可をもらって、女子十二楽坊のコンサートに行ってきた。早く退院できればまだ日本ツアーは続いているのだが、もうこの日のうちに行っておかないと、と思って、とにかく行くことにした。昼の部があるチャンスもなかなかない。夜の外出は難しい。

 一度自宅に帰ってから、神宮前のNHKホールへ。当日券を買うと、2階最前列右手(C1-33)の席だった。案外、この辺のほうが全体が見えていい席なのだ。

 とにかく、行けてよかったコンサートだった。内容的にも、演奏的にも。ゲスト出演したヤンリン・ヤンチンもかわいくてナイス。よく知っているファンの人たちとも会って、いろいろと話が盛り上がった。先日の掲示板荒らしについては、みんな無視してくれているようで、それより早く復帰してspam投稿を弾いてくれと頼まれた。大体のspamは弾く設定にしてあったのだが、新型の前にはなすすべもないようだ。しかし、復帰しないことにはその辺りもいじれない。

 7月25日。「あと1か月くらい様子を見て、それでもふさがらなかったら通院にしましょう」と言われた。結構気落ち。8月も病院暮らしなのか。

 それでも、一日に原稿用紙換算で40枚くらいの小説原稿を書いてみたりもした。

滝本弁護士

 7月26日、一部原稿を書いた『Web2.0 キーワードブック』の見本が到着。4月に熱にうなされながら書いた原稿は、どうも詰めが甘くて悔しい。プロフィールの内容が古いが、入院したためにプロフィールを送れなかったのだから仕方がない。この本は、自分のやっていないところだが、図解がものすごくよくできていると思う。

 7月27日、滝本弁護士が見舞いに来てくれた。何かのついでということで慌ただしい来訪だったが。花なんか持ってきてもらえて、それはそれでありがたいのだが、後で思い切り煽られていたことに思い当たった。

「身の回りのこととかやってくれる彼女とかいないの?」

 余計なお世話だ。いねえよ。激しく煽られた! わらい。

 同日、文学フリマに申し込んだ。まだ原稿も仕上がっていないが、まあ何とかなるだろう。

 7月28日、神保町の東陽堂に行って、ちょっと高価な買い物をした。『大僧正天海』大正5年の本である。最近、風水都市江戸の仕掛人として有名になりつつある天海についての唯一の専門書。天海のみを扱った本は、世の中に小説が少しあるだけだから、本当に貴重な本だ。

 これは、すごい資料である。もうこの本一冊あれば、天海についての史実はすべてわかると言っても過言ではないくらい、内容が充実している。

 古書で3万5000円。しかし、値段相応の本だ。巻末の年表だけでも5000円以上の価値がある。これを読み込んで、調査すれば、すごいことになりそうだ。とりあえず読みながらデータ化することにした。天海の生年と血筋についての検証部分をデータ化したら、原稿用紙換算約50枚になったが、これは全体の中のおまけ部分にすぎない。ちなみに天海=明智光秀説は一言で否定されていた。吹いた。

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2006年9月12日11:30| 記事内容分類:闘病記| by 松永英明
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