株必勝法を実践してみる

 これまで株には手を出したことがない。以前、一冊だけ株についてのゴーストライターをやったことがあるが、著者の言葉をまとめただけで、しかも店頭株という特殊なものだったので、結局株を理解するには至らなかった。

 入院中、収入が途切れるのが心配で、株でちょっと儲けられないだろうか、と思って数冊の本を読んでみた。そして、株の必勝法とは、株に手を出さないことだということを理解した。

2006年10月24日11:24| 記事内容分類:経済・ビジネス| by 松永英明
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参考文献

 株について、まず基本中の基本から学びたいと考えて購入した本は以下の3冊。

一番売れてる株の雑誌ダイヤモンドザイが作った「株」入門
ダイヤモンド社
ダイヤモンド・ザイ編集部(著)
発売日:2005-09-29
おすすめ度:3.5
おすすめ度3 よくまとまっていて、時間を節約できる入門書として良書!
おすすめ度4 入門書はこれ一冊で
おすすめ度3 最初に読むならよいです。
おすすめ度4 本当に株入門だった
おすすめ度4 実用的な入門書
今日から儲かる株入門―「旬」の銘柄と買い時・売り時がズバリわかる!
PHP研究所
雨宮 京子(著)
発売日:2006-06
おすすめ度:4.0
おすすめ度4 儲けるための基本エッセンス
臆病者のための株入門
文藝春秋
橘 玲(著)
発売日:2006-04
おすすめ度:4.5
おすすめ度3 むしろ小説家として研鑽を続けて欲しい
おすすめ度5 金融リテラシーの勉強になる!
おすすめ度4 読む人によっては充実した内容だが………….....
おすすめ度4 全部理解できなかったけどおもしろかった
おすすめ度3 雑に書かれているけれど楽しい読み物

 この順に読んで正解だった。まず、ダイヤモンドZAiの株入門は、株の基本からわかりやすくカラーで説明してくれているので、株の知識ゼロの人でもこれで土台がわかる。次に雨宮さんの本は、基本から入って、具体的にどういう株はどういう買い方をしたらいいというところまでアドバイスしており、初心者が株の選定をする参考になるだろう。ただし、基本的な用語の解説があまり親切でないところがあり、知識ゼロの人にはわからないところがある。私もZAiの入門を読んでいなかったらわからなかっただろうというところがある。だから、この2冊はこの順に読んで正解だった。

 いずれも短期的なデイトレードやスイングトレードは否定し、中長期的な取引=投資を主に解説している。ZAiの方は「旦那道」として知られる竹田和平氏などを紹介している。

 さて、3冊目、橘さんの本は、株の世界についての身も蓋もない実態を教えてくれる。結局、確実に儲かると言えるのは世界市場そのものに投資することで、平均的にしか儲からないが、儲かる、というのである。

 これら3冊を読み終わった時点で、株の必勝法はほぼわかったように思う。それは、株に手を出さないことである。絶対に損をしたくなければ、株のようなギャンブルに手を出すものではない。損をする可能性があっても儲かる可能性があるならそこに賭ける、というギャンブラーの人はやってもいいと思うが、私はそういう人種ではない。

株はマイナスサムゲームである

 まず、絶対に明言しなければならないのは、「株はマイナスサムゲームである」ということだ。

 たとえば、宝くじの場合は、総売上の約半分を引いた上で、残りを当たりくじとして分配することになる。ということは、確率的には、宝くじを1000万円分買い続けたとしたら、当たりはずれを合計しておよそ500万円くらいになるということである。6億円ぐらい宝くじを買えば、合計3億円当たるかもしれない。これが夢のように素晴らしいことだと思える人は、たぶん資産運用には向いていないと思う。私は宝くじを買ったことはない。

 競馬の場合は2割5分がJRAに取られて、残り75%が的中者に分配される。つまり、何も考えずに100万円を競馬につぎ込んだら、平均して75万円くらいは返ってくるという計算だ。自分自身も競馬をやっていたときには、1万円かけて7500円返ってきたらトントン、1万円返ってきたら大勝利だと思っていた。一点買いで万馬券を当てたこともあるが、総収支では明らかにマイナスである。つまり、競馬は財産を殖やすのに向いていない。よく「パチンコにプロはいても競馬で家を建てた奴はいない」というが、これだけテラ銭を胴元に取られていたら、コンスタントに勝ち続けるのは無理だ。

 競馬の必勝法も存在しない。ネットで必勝法の情報商材を売っている人がバカ正直に自分の予想と結果を毎週メールマガジンで送っていたので、しばらく購読してみたのだが、見事にトータルでマイナスになっている。たまに「法則」に当てはまることがあるから、それはすごく当たっているように見えるのだが、当たっていないときのことを考慮すると、「全然儲からない」というのが実情だ。

 パチンコ・パチスロはやったことが一度もないので実情がよくわからないが、テラ銭はかなり低いようで、平均すると9割以上返ってくるらしい。いわゆるギャンブルの中ではまだましな方のようだ。

 いずれにしても、総投資額からいくらか引いた額を分配するわけだから、平均すると目減りしてしまうというのは数学的結論である。

 株も同様で、自分が買うときには同額で売る人がいなければならないし、自分が売るときには同額で買う人がいなければならない。つまり、他のギャンブルと同じく、一定のパイの中で勝ち負けが決まるわけである。さらに手数料と税金が引かれるわけだから、決して効率的なギャンブルとも言えない。

勝者と敗者

 だれかが株で儲けるということは、その人に安い価格で株を売って損した人がおり、また高い価格でその人から買って損した人がいるはずである。つまり、自分が得するためには、誰かを犠牲にしなければならない。自分が一億円儲けたとすれば、その一億円は他の投資家たちから奪っているわけである。1万人が1万円ずつ損しているかもしれないし、一人が1億円損しているかもしれないが、いずれにしてもだれかが自分の儲けた分だけ損している。

 このWIN-LOSEの関係が自分には気に入らない。

 たとえば商売であれば、1万円で商品を買った人は1万円損したかというと、決してそんなことはなくて、ある程度の利用価値を手にすることになるだろう。少なくとも、何らかの商品やサービスは手にできる。場合によっては買った金額以上の価値を手にする場合もある。10万円のパソコンを買った人は、もしかしたらそれを有効活用して10万円以上の価値あることを成し遂げることができるかもしれない。実際、私は8万円のPCを使って原稿を書き、原稿を書くための資料を集めて生計を立てているわけで、この買い物は決して「損」ではない。1500円の本を買った人は、1500円をドブに捨てるのではなく、それを生かしてネットショップで儲けたり、あるいは人生の糧としてお金に換算できない価値を手に入れるかもしれない。しかし、利用者が購入価格以上の価値を得たからといって、売った方が損をするわけではない。きちんと販売した分はプラスになっている。つまり、売った人も買った人も満足できる「WIN-WIN」の関係を作ることは不可能ではないし、少なくともそれを目指して生きていくことができる。

 しかし、株取引のようにお金の増減だけしか価値基準がない場合、確実にWIN-LOSEの関係になる。他人に損をさせなければ、自分は勝てないのである。他人を蹴落とすことが唯一の自分の利益になるのである。

 なんと殺伐とした世界だろうか。少なくとも私はそういう世界に自ら飛び込んでいきたいとは思わない。

「株は余剰資金でやるべきだ」の本当の意味

 株については「余剰資金でやるべきだ」と説かれる。つまり、財産を全部つぎ込んだりしてはいけない、余ったカネでやるべきだ、というのだ。貯金の1割ぐらいとも言われたりするようだ。

 しかし、株が確実な投資であれば、そんなことをわざわざアドバイスする必要はない。「余ったカネ」とは、要するに「なくなっても生活には影響しないカネ」ということである。そのカネでのみ株をやるべきだ、ということは、つまり、「株に投資する場合は、全部なくなってもいいカネでやれ」ということであり、投資資金が全部消えることを前提としているのである。

 株に投資するのは、カネをドブに捨てるのと同じ――というのが「株は余剰資金でやるべきだ」の本当の意味だと言ったら言い過ぎかもしれないが、余剰資金という言葉の意味をじっくり考える必要はあると思う。

 掛け捨てで何か楽しめるのであれば、それはそれでいいのではないか、とも思う。以前やっていた競馬では、好きな馬、勝つかなと思った馬に「投票する」ことそのものが楽しみだった(馬券の正式名称は「勝ち馬投票券」である)。勝とうが負けようが好きな馬に投票し続ける、という愛情の証であったりする。もちろん配当がつけばうれしいが、つかなくてもともと。競馬はそれでも楽しめる。株の場合もそんな気持ちで楽しめるのならいいのかもしれない。竹田和平氏の投資法は、着実に伸びそうないい会社を見つけて株を買い、基本的に売らないという方針だが、それは「応援」の気持ちだろうから、株価の些末な上下は気にしないのだろう。

 しかし、デイトレやスイングの場合、あくまでもお金を増やすことが目的である。ゲームとして楽しむ要素もあるのかもしれないが、それだったら実際の株価をもとにしたバーチャル投資ゲームをやっていれば安全に満足度が得られるだろう。「シム証券」みたいなゲームができたら案外ヒットするのではないか。実際の株価に連動すると、あまりにも勝てないので人気が出ないかもしれないけれども。

 株が怖いのは、100万円投資して、それをドブに捨てるだけでは済まない場合があるということである。大きく儲けることもできるが、出資金の何倍、何十倍といった金額を損することもある。全財産2000万、200万を投資したはずが2億円の損失を抱えるかもしれない。リターンと同じだけリスクがあるということは忘れがちなものである。

株と言っても一口には言えない

 株と言っても1つのやり方ではなく、いくつかの考え方があるということは、今回ようやく理解した。

 まず、短期的なものとして、デイトレやスイングトレードがある。数分、数時間、数日単位の取引で、これは単に「安くなっていれば買い、上がれば売る」という数字上のゲームである。株を発行している企業の業績などどうでもいい。これはまさに投機、あるいはギャンブルであって、ごく一部の勝利者と大多数の敗者を生み出すようである。自分はさいころを振って勝利者であり続ける自信がないので、この手の取引には参加したくない。友人のライターさんから聞いたところによると、デイトレで1億円儲けて取材なども受けていた人が、1億円の損失を出し、連絡が途絶えたという実話があるそうだ。この人の場合、差し引きゼロなら不幸中の幸いであろう。

 中期的なものとしては、チャートを読んでトレンドを把握するという株式投資法がある。これは企業の業績だとか成長の期待だとかを読んで、株価の上下を推測するという心理ゲームとなる。自分がどう思うかではなく、他の投資家たちが売りたがるか、買いたがるかを読んでいかなければならない。しかし、自分は「みんなが投票しそうなところに投票する」というクイズを当て続ける自信はないので、やはりこれも見送るしかない。「クイズ100人に聞きました」が得意な人には向いているかもしれないが。

 長期的なものとしては、バフェット氏や竹田氏のように、成長しそうな企業を見つけて、そして売らずにずっとその株を保有する。そして、配当や株主優待を手に入れ、企業が成長することをともに喜ぶ。これなら自分の性格には一番合っていそうである。しかし、問題はこれをやろうと思うなら「余剰資金」がかなり多くなければいけないということで、資産をほとんど持っていない自分には参加できないのが致命的である。

 リスクが極めて少ない投資方法として橘さんが推奨するのが、一社の株ではなく、市場全体に投資するという考え方。つまり、インデックス系のものに投資するということである。日経平均と連動するものなどであれば、市場が成長し続けるという期待のもと、かなりの確率で儲けられるという。

 しかし、橘さんの本の内容を詳細に読むなら、この方法も実は否定されていると言わざるを得ない。なぜなら、この方法は大儲けできない=リターンが少ないだけでなく、実はリスクもそれ相応にある。世界的に市場が成長し続けるという「信仰」のもとに成り立っているからだ。実際に、日本の日経平均は、バブル前の水準に戻っていない。つまり、バブル期に買っていたら、今ごろは大損しているわけである。成長する新興市場でも、東アジアの金融危機など、必ずしも市場は右肩上がりで成長しているわけではない。つまり、これも確実な投資法とは言えないのである。

想像力

 株に必勝法がないということは、橘さんの本で言い尽くされている。そして、株で儲ける人がいるということは、それと同じだけ株で損をした人がいるということだ。そこで自分が「負け組」になる可能性を思い浮かべることができる想像力があるか否かというのが重要なポイントだと思う。

 自分自身、今年前半を入院して過ごしたため、今年後半の収入が見込めなくなってしまった(実際の支払いは、本や雑誌が出てから数ヶ月~半年以上先になる)。そこで株か何かで何とかならないか、という色気を出して株のことを研究してみたのだった。つまり、株で儲けた場合のことだけを想定していたからこそ、株に手を出してみようかどうしようかと思い立ったわけだ。しかし、この3冊を読み終わったときには、儲けた自分だけではなく、負けた自分も想像することができた。そして、負けても何らかのメリットがあるとは思えなかった。だから、今後も株には手を出さない、という決心が固まったわけである。

 もし、負けた自分も何らかの価値を手にできると思うなら、それは人生を賭けてみてもいいだろう。

 つまり、「株の必勝法」は「株をやらない」ことである。「必」の字を使うなら、それ以外の結論はない。「株に勝つかもしれないが負けるかもしれない方法」ならいくらでもあるだろうが。

「額に汗する」論の弱点

 以下余談。株式取引などで儲けることに対して、「額に汗して儲けたわけではないからだめ」という批判が見られる。ライブドア事件のときなどによく聞かれた論調だ。しかし、この論理は弱いと思う。なぜなら、株で儲けている人たちも、儲けるために一日中株価の動向を調べたり、数多くの企業の内容を調べたり、つまり努力はしている、という反論が出てくるからだ。それを言ったら馬券師もパチプロも額に汗していないわけではないのだが。少なくとも投資するだけの資金はどこかで作っている。借金かもしれないが。

 少なくとも、このように批判するからには、「額に汗して働く」とは具体的にどのようなことをした場合に言える言葉なのか、きちんと定義する必要がある。証券会社に勤めて真面目に株式運用をしている会社員は、果たして額に汗しているのかどうなのか。そもそも商売というものは、商品を右から左に動かしてカネを手に入れるわけだから、額に汗しない業種だと考えられたこともあるが、それとの違いはどうなのか……という話になりかねないからだ。

 だから、額に汗して働いているのかどうかという話は批判とはなりえない。

 この点については、WIN-LOSE(勝ち負け)の関係でしか成り立たないやり方なのか、それともWIN-WINに持って行ける世界なのか、ということで判断するのがいいように思う。

 つまり、株も他のギャンブルも、一定のパイを取り合いするわけだから、自分が勝てば必ず他の人が負けている。詐欺というのも、相手に何らプラスになるものを代償として与えないわけだから同類だろう。spamメールやspamコメントも、いかに人を騙してアクセスを稼ぐかという話になるから、WIN-LOSEの世界のものといえる。

 一方、よい商品をお客様にお届けして満足を与える、というような発想であれば、これは一切問題がない。自分の金を一銭も使いたくないというドケチの人でなければ、買った商品を有効に使って満足することだろう。だからWIN-WINといえる。あるいは、同業者との競争があるとしても、市場規模そのものを大きくする形で同業者すべてがWIN-WINの関係になることが可能ならば、誰もが満足できるだろう。

 したがって、「他人から奪うだけで自分は与えない」世界と、「誰もが満足できるように考える」世界で分けて考えるといいのではないかと思う。

 株はWIN-LOSEの世界のバクチである。WIN-LOSEの関係で自分は儲けたいと思わない。したがって、自分は株をやらない。これが結論である。

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2006年10月24日11:24| 記事内容分類:経済・ビジネス| by 松永英明
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コメント(2)

こんにちは。
インデックスでも配当があるんで、市場が右肩上がりでなくても長期的に見ればプラスサムになるはずですよ?
余剰資金を積み立てるのであれば、定期預金や年金より良いかと思っています。

正論やね。

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