「パナソニック(Panasonic)」というブランド名の語源由来

2008年10月1日、松下電器産業株式会社が「パナソニック株式会社」に社名を変更し、これまで「松下」「ナショナル」「パナソニック」の3つの名称を使い分けてきたものを「パナソニック」一本に統一することとなった。

「パナソニック」というブランド名は、海外向けに1955年に作られたもので、すでに53年の歴史がある。このブランド名の語源・由来に関してつらつらと書いてみた。

2008年10月 2日00:07| 記事内容分類:日本時事ネタ, 言葉| by 松永英明
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パナソニック=「汎・音」

パナソニックは、1955年(昭和30年)、初めてスピーカーを輸出しようとした米国で既にナショナル名が商標登録されていたことから、新たに作ったブランドでした。PAN(汎く)とSONIC(音)からなる造語で、松下製品が生み出す音が世界に届いてほしいという願いをこめたものです。

「松下幸之助」の名を超えて -創業者由来の社名を変える苦汁の決断- (文芸春秋:2008年4月号掲載) | 社名変更/ブランド統一情報サイト | Panasonic

PAN

英語の「pan-」という接頭辞は、「all(すべての)」「whole(全体の)」「all-inclusive(すべてを含む)」「universal(総……)」といった意味を持つ。もともとはギリシア語の「pan-」に由来するが、これはpas(中性形:pan、男性形・中性属格:pantos)=「すべて」の結合形である。

ギリシア語では通常接頭辞として使われた。

  • panacea(ギリシア語:panákeia):PAN- + ákos(治療)→「万能薬」
  • pancreas(ギリシア語:págkreas):PAN- + kréas(肉)→「膵臓」
  • pandect(ギリシア語:pandéktēs):PAN- + dékhesthai(受け取る)→「法令全書」
  • panoply(ギリシア語:panoplíā):PAN- + hópla(武器)→「よろいかぶとの盛装」/「盛大な儀式」

近代では民族国家名と結びついて用いられることが多い。その最初の例と思われるものがPanslavism(汎スラヴ主義、1846)である。また、panislamic(汎イスラム主義の、1881)、pan-Amaerican(汎米主義の、1889)、pan-German(汎ドイツ主義の、1892)、pan-African(汎アフリカ主義の、1900)、pan-European(汎ヨーロッパ連合の、1901)、pan-Arabism(汎アラブ主義、1930)などが挙げられる。

パンアメリカン航空(Pan American World Airways)の設立は1927年。

「ナショナル」の商標がすでに使われていたことから、松下電器はパナソニックのブランド名を作り出したのだが、19世紀以降の用例において、panという言葉がナショナリズム(民族主義)と密接な関係を持っていることは、偶然の一致とはいえ興味深い。

ちなみに、英語の「pan-」の日本語訳としては「汎(はん)……」を使うことが多い。

【汎】は、音読み:漢音=ハン/呉音=ホン。現代中国語では「泛(汎)=fàn(ファン)」。訓読みは「ただよう」「うかぶ」「あまねし」「あまねく」「あふれる」である。「凡」は、広げた帆を描いた象形文字で、ふわふわと広がる意を含む。汎は「水+音符凡」で、広い水面がふわふわと広がること。意味は以下のとおり。

  1. (動詞・形容詞)ただよう。うかぶ。水面がふわふわと広がる。広い水面にふわふわとうかぶさま。
  2. (形容詞・副詞)あまねし。あまねく。平らに広がりわたっているさま。広く。
  3. (動詞)あふれる。水があるわくを越えてあふれ広がる。

この漢字の2番目の意味(あまねく)が「pan-」=「すべて」と似ており、また「パン」と「はん」の音が似ていることから、pan-の訳に「汎」の字が使われるようになったものと思われる。

sonic

英語の「sonic」は、「音(可聴音)の」「音波の」または「音速の」「音速に等しい」といった意味である。パナソニックの説明で単純に「音」と説明されているが、名詞ではなく形容詞であり(そういえば「ナショナル」も本来形容詞である)、普通の音というよりは「音波の」「音速の」といった特殊な用語である。

sonicという語の用例は、1923年ごろが初出とされており、実は歴史が1世紀にも満たない新しい言葉だ。「sonic boon(衝撃音)」という言葉は1952年が初出である。

「sonic」の語源は、ラテン語の「sonus」=「音」である。ちなみに、英語で普通に「音」を表わす「sound」も、もとをたどれば「sonus」であり、これが古英語で「son」となって、15世紀から「sound」と「d」がつくようになった。

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