「読めてしまう」文章ネタの起源と歴史

ひらがなばかりで書かれた文章なのだが、文字の順序がでたらめになっていても読めてしまうという現象が話題を呼んでいる。

このブログでは2003年9月にこの話題を扱っていた。

「英国ケンブリッジ大学の研究結果」というのは都市伝説である。また、「語の中の文字の順序を変えても読める」というのは言語学において実証された科学的発言ではないことに注意(それっぽい実例は作れるが、それが成立する条件やメカニズムについては論証されていない)。ここでは2003年の記事をもとに再編集して新情報を追加し、この「読めてしまう」文章の起源と歴史を改めて整理しておく。

2009年5月10日12:40| 記事内容分類:言葉| by 松永英明
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「読めてしまう」文章の起源と歴史

1976年

  • 1976年、ハンプシャー州オールダショット市のグラハム・ロウリンソン(Graham Rawlinson)氏は、ノッティンガム大学で学術論文「単語認識に置ける文字の位置の重要性(The significance of letter position in word recognition)」を書いた(UoN - Full View of Record)。この論文において、「単語の語中の文字をランダムにしたものは、文章を理解できる読者の読解能力にはほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさないことを示した。実際のところ、本当に速い読み手は、混乱した文章のA4サイズ1ページの文章のなかで、たった4つか5つの間違いにしか気づかなかった」と述べられている。

1999年

  • 1999年4月29日、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の教授とその元学生が、ねじれた話し言葉のパターンの脳での認識についての論文を共同執筆し、ネイチャー誌に掲載される。記事のタイトルは「逆になった話し言葉の認知の修復」というタイトルで、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の社会学教授デヴィッド・R・ペロー(David R. Perrott)と、カリフォルニア工科大学上級研究員コロシュ・サベリ(Kourosh Saberi)(1985年にカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校で心理学修士号を得、1989年からペローの指導のもとで博士号を得た)によって書かれた。ネイチャー誌の論文は、ゆがめられた話し言葉のパターンを処理・解釈するかについて、また発話の音を処理するために脳が拾い上げる「合図」とは何かについて扱っている。研究者たちは文章を取り上げてそれを同じ長さの部分に分割し、それから録音された断片を逆順に流した。それは一部分または一つながりの「逆発話」が同時に流された。「発話は多次元の刺激である。メッセージを引き出す異なった方法がある」とサベリは言う。その例として、耳の聞こえない若い読心術者が、会話のとまったときに「あなたはなまりがあるね?」と言った例を挙げる。今のところ、ゆがめられたり逆向きになった発話を理解・処理する能力としては、人間の脳の力はいかなる機械よりもすぐれている、とサベリは言う。(Nature magazine article
  • 1999年5月29日のニューサイエンティスト誌に、グラハム・ロウリンソン氏の投書が掲載される。これは、SaberiとPerriottのネイチャー誌論文についての短い記事に対する反応である。ここでロウリンソン氏は1976年に書いた論文に触れた。これが後述の「サベリ」を含む文章の出典となる。全文はこちら→Reibadailty - 29 May 1999 - New Scientist

You report that reversing 50-millisecond segments of recorded sound does not greatly affect listeners' ability to understand speech (In Brief, 1 May, p 27).

This reminds me of my PhD at Nottingham University (1976), which showed that randomising letters in the middle of words had little or no effect on the ability of skilled readers to understand the text. Indeed one rapid reader noticed only four or five errors in an A4 page of muddled text.

This is easy to denmtrasote. In a puiltacibon of New Scnieitst you could ramdinose all the letetrs, keipeng the first two and last two the same, and reibadailty would hadrly be aftcfeed. My ansaylis did not come to much beucase the thoery at the time was for shape and senqeuce retigcionon. Saberi's work sugsegts we may have some pofrweul palrlael prsooscers at work.

The resaon for this is suerly that idnetiyfing coentnt by paarllel prseocsing speeds up regnicoiton. We only need the first and last two letetrs to spot chganes in meniang.

This was not easy to type!

2003年

  • 2003年1月10日、エジンバラ大学Richard Shillcockとコヴェントリー大学Padraic Monaghanの「Sublexical units and the split fovea」という論文が発表された。現在はファイルが消えているが、Web Archiveで読める。概要を翻訳すると以下のとおり。

英単語の内部構造をどのように表わし、視覚的な単語認識と命名に関する数々の実行モデルに適用される解決法をどのように認識するかという問題を論じる。私たちは「split-fovea」モデルでの2つのシミュレーションを記述する。split-foveaモデルとは、単独の単語を読む際に遂行されるコネクショニズム的認知モデルであり、その構造は人間の(網膜の)中心窩(fovea)の正確な垂直線での分割に基づく。このモデルによって、語彙の競合が並行して起こることについての二つの効果から重大な人間のデータを取り込むことができることを示す。二つの効果とは、(a)置換文字効果。salt(塩)とslat(石板)、clam(ハマグリ)とcalm(穏やか)といった単語のペアにおいてプロセス中に相互作用するもの。(b)近隣効果。大きな語彙的近接物によって命名が容易になるもの。私たちは、split-foveaモデルと命名タスクの構造によって生成された粗い符号化に関する結果を論じる。最終的に、異なった言語・異なった正書法の処理について、また言語障害について、帰結的結論を少々考察する。

... randomising letters in the middle of words [has] little or no effect on the ability of skilled readers to understand the text. This is easy to denmtrasote. In a pubiltacion of New Scnieitst you could ramdinose all the letetrs, keipeng the first two and last two the same, and reibadailty would hadrly be aftcfeed. My ansaylis did not come to much beucase the thoery at the time was for shape and senqeuce retigcionon. Saberi's work sugsegts we may have some pofrweul palrlael prsooscers at work. The resaon for this is suerly that idnetiyfing coentnt by paarllel prseocsing speeds up regnicoiton. We only need the first and last two letetrs to spot chganes in meniang.

(この文章自体の語順がデタラメになっているので修正して訳:単語の語中の文字をランダムにしたものは、もとの文章を読める能力のある人にとっては理解力にほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさない。これをデトンスモレーションするのは簡単だ。ニューサイエンティストの出版物で、最初の2文字と最後の2文字だけを同じにして残りすべての文字をランダム化しても、可読性についてはほどんと影響を及ぼさない。私の分析はあまり大したことがなかった。当時の理論は形状と連続性についての理論だったからだ。Saberiの論文は、何らかの強力な並行処理が働いていることを示唆している。その理由は、並行処理による内容特定が認識速度をあげるからである。我々は、意味の変化を見ぬくのに、最初と最後の2文字しか必要としていない。)

  • 2003年9月12日、David Harris' Science & Literature(WebArchive)にて「Aoccdrnig」に始まる有名な英文が紹介される(が、これは実験のために改竄されたバージョンである。9月15日参照)。

Aoccdrnig to rsereach at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteres are in the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit a porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by istlef, but the wrod as a wlohe.

(順番を修正して訳:英国の大学の研究によると、ある単語の中の文字の順序がどうであるかは問題ではなく、唯一重要なのは最初と最後の文字が正しい位置にあることである。残りがすっかり混乱していてもやはり問題なく読める。これは、一文字一文字をすべて読んでいるのではなく、単語全体として読んでいるからなのだ。)

Aoccdrnig to a rscheearch at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer

in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is

taht frist and lsat ltteer is at the rghit pclae. The rset can be a toatl

mses and you can sitll raed it wouthit porbelm. Tihs is bcuseae we

do not raed ervey lteter by it slef but the wrod as a wlohe. ceehiro

  • 2003年9月13日、Languagehatブログの記事languagehat.com: RDIAENG.にて、上記Avva記事にリンクして「Aoccdrnig(ceehiro.版)」を紹介しつつ、字の順序がごちゃごちゃにされた英語の文章(ただし各単語の語頭と語尾は正しくなっているもの)は判読可能であると投稿。
  • 2003年9月14日、Uncle Jazzbeau's Gallimaufreyブログが記事「c-n y-- r--d th-s?」★で上記Languagehatの文章を紹介。
  • 2003年9月15日、Uncle Jazzbeau's Gallimaufreyブログが追記として、二つの変形を紹介。「一つは"Aoccdrnig to a rscheearch at an Elingsh uinervtisy"(あるイリギスの大学の研究によると)で始まるもので、第2は"Aoccdrnig to rscheearch at Cmabrigde Uinervtisy"(ケンリブッジ大学での研究によると)で始まるものだ」。2009年に日本で流れたひらがな版は、「Cmabrigde」版を下敷きにしていると考えられる。
  • 2003年9月15日、David Harris' Science & Literature(WebArchive)にて、「Aoccdrnig」に始まる文章についての種明かしをする。

私のミーム実験

今までに、皆さんはおそらく「Aoccdrnig to rsereach..」ミームがウェブ上にただよっているのを読んだことだろう。私はこの前の金曜日にそれについて話した。そのときから、このミームはウェブ上に広がり、今日さらにスラッシュドットでさらに広まった。

先日は言及しなかったのだが、これは私が非公式の実験として用いたのだった。私は金曜日に電子メールによって元の文章を受け取った。しかし、わたしはそれを自分のサイトに投稿するように変えた。私が受けとったオリジナル版はこうである。

Aoccdrnig to a rscheearch at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteer is at the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by it slef but the wrod as a wlohe. ceehiro.

しかし、私は金曜日にこのように変えた。

Aoccdrnig to rscheearch at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteer is at the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit a porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by it slef but the wrod as a wlohe.

月曜日の朝、私は以下のように投稿を変えた。

Aoccdrnig to rsereach at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteres are in the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit a porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by istlef, but the wrod as a wlohe.

オリジナルが若干の文法的な間違いとスペルミスを含んでいたが、そのことは別として、私はこのパラグラフがどのように異なった版でブロゴスフィアにおいて繁殖するかを見たかったのだ。

私が自分のバージョンを投稿する前、ウェブ上には「Aoccdrnig to rscheearch」で正確に始まるバージョンはまったくないことを確認した。また、第二の書き換え版をチェックし、それも存在しないことを確認した。今、私はグーグルを使って、私のバージョンがどのくらい速やかに広まったかを見ることができる。

執筆時点で、私の金曜日バージョンはグーグルで106サイトに見つかる。月曜日版は他のどこにも見つからない。それで基本的に、これはすなわち、私の金曜日版はウェブ上にまだ広まっていない時点ではブログスペースに迅速に広まったが、すでに飽和したウェブ上で一日しか経っていない最新バージョンは影響がなかった。すでにみんながそれについて知っているから、あるいはみんながコピーせずにリンクするだけになっているからだろう。

これは科学的な実験ではないが、ミームがどのように広まるかを見るのは楽しいことだ。

[更新:火曜日の朝。googleで今、私の金曜日の版が206件、月曜日版が8件見つかる。]

[更新:水曜日の夜。オリジナル版:569、私の金曜日版:396、私の月曜日版:35]

そういうわけで、「msesgae」(と今後呼ぶことにしたいもの)がある(※message=メッセージの並べ替え)。

"Aoccdrnig to a rscheearch at an Elingsh uinervtisy, it deosn't mttaer in waht oredr the ltteers in a wrod are, the olny iprmoetnt tihng is taht frist and lsat ltteer is at the rghit pclae. The rset can be a toatl mses and you can sitll raed it wouthit porbelm. Tihs is bcuseae we do not raed ervey lteter by it slef but the wrod as a wlohe".

たとえ奇妙であっても、この「msesgae」は不適切であり、極端な一般化であり、極めて還元されたヴィジョンを伝達する。さらに、これはそのままの形、つまり単純な幻想的作品や愉快な文章にとどまるべきであるにもかかわらず、厄介な形をとっている(我々はこれをメール、ウェブログ、チャットで見た。そこでは参加者は無条件に驚き、おもしろがるのだが、この「センセーショナルな発見」を持ち上げ、世界各地の友人たち(彼らも盛り上がっている)がそれを他の言語に転送した(どうやら、この「hoaxmeme」(一杯食わせるミーム)はウェブ中に広まりつつあるようだ)。

この話題を包囲することにしよう(傲慢にもったいぶってではなく、単に反・体制順応主義と反・単純化主義によって)。あなたがもしまじめな説明を探しているのなら、ここに「反・一杯食わせるミーム」があるわけだ。

はじめに。

読むことは、様々な性質・様々な複雑さを有する多くの知識を動員する複雑な活動だ(これは、さらに「書くこと」が複雑であるという事実にもよっている)。それは、認知過程を含むだけでなく、同時に、知覚過程も含む活動である。すなわち、読むこと、それは言葉を認知し、識別することなのである。

展開

多くの言語学者が、言葉の特定のメカニズムの発展を説明しようとしてきた。そして、現在、読むことについては多くの発展モデルがある。主要なモデルは、3種類の読み方から構成されている。これは、言語習得の3つの年代別段階に実際に対応している(この発表では、第2のものから始めるとしよう)。

◎アルファベット的読み方(第2段階)――この読み手は、書いたものについての口頭試験を受ける(つまり、この人は、文字と音の対応がどのようになっているのかを学ぶ。例えば、[k]という音が 'c'(cot)、'k'(kiss)、'ch'(chord)と書かれるというように)。音韻論的な調整をつけるこの段階では、符号訓練が行なわれる。学習者は、音韻論的な知識を増やして、それを新しい単語に当てはめる(それは自己訓練の形である)。この段階は「間接的な方法」と呼ばれる。読み手は、暗号解読のプロセスを経て単語を読むからである。

◎正字法的読み方(第3段階)――単語は正字法的な単位で解析される(正字法とは、ここでは単語を構成する文字の連続を意味する)。ここでは音韻論的な変換は行なわれない。言葉は、記憶された正字法的辞書を参照し、直接読まれて認識される。この段階は次第に(しかし完全にではなく)アルファベット的読み方に取って代わる。読み手は、それ以上解読の必要がない。単語を「直接的な方法」で認識するからである。

◎表語文字的読み方(実際には読み方訓練の第1段階である)――この段階では、読み手は単語を「読む」ために、様々な手がかり、特に言語街の環境によってもたらされる手がかりを用いる。文字の順序や、音韻論的な要素は考慮されず、視覚的な手がかりのみに頼る。この段階では、よく知っている単語(あるいはともかく「暗記」しているもの)の瞬間的な認識があり、視覚的な手がかりを伝える基礎に基づくふるいは、最初の完全な用語表を構成することとなる。視覚的な手がかりは、単に文字の長さ、あるいはその「シルエット(輪郭)」、場合によっては一文字だけということもありえる。この段階を説明する古典的な例としては、「Coca-Cola」という単語がある。そのロゴは5~6歳のほとんどすべての子供たちが簡単に特定する。もし我々が一文字だけを変えて「Coca-Coca」としたなら、子供たちは元々の単語との違いに気づかないだろう(いくつかの実験で証明されているとおり、大人でも気づかないことがある)。

賢明な読者はすでに理解されたかもしれない。我々が「msesgae」を読むときに実際に起こっていること、それは、我々=読み書きを教わってきて読み書き能力のある読み手が、長年にわたって読んできた経験のおかげで身に付き、自動化した能力を使っているのである、ということである。換言すれば、我々は読み方の「習癖」を身につけたわけだ。

絵的意味論システム(単語が画像ロゴのように扱われる)を通じて意味へのアクセスが直接行なわれるような表語文字的な読み方に我々が戻っている、というように、「msesgae」実験は思わせる。しかし、これは完全に正しいわけではない。

実際、我々は正字法的読み方システム(意味へのアクセスは話し言葉の意味システムを通じてもたらされる)を使い続けている。我々が"msesgae"をもっと厳密に見るなら、68語中34語(短くて一般的なもの)が正しくつづられていることがわかる(これは50%、本文の半分であり、そのほとんどは「文法的な単語」である)。単純で一般的な構文(「forma brevis」=短い形 の新聞雑誌的な言い方)に加えて、多かれ少なかれ経験を積んだ読み手による予想能力ならびに自動反射的修正で、多くの視覚的手がかりが与えられる!!!(使われているシステムは、「タイピングエラー」に近いものであり、とにかく、教師たちは綴り間違いだらけの我々のエッセイを極めて上手に読むことに成功する。言い換えれば、あなたは"waht"ではなく"what"だと指摘する文学教授である必要はないということだ) (さらに、音節的簡略化現象があるが、詳細は省略する)

結論

《msesgae》によって伝えられる理論は、完全に間違っているわけではないが、非常に短絡的なものであり、単語の最初の文字と最後にある文字だけで充分だと断言するのであれば完全に誤りである。実際、それは「シルエット」もかなり扱っている(それによって我々の(ほとんど標準的な)短縮形が作られている(もう一つの簡略化手がかり))。ももし我々が問題なく「msesgae」を読むことができるとしたら、それは正字法上・綴り上のあやまりがあっても簡単に文章を読むことのできる優れた読み手だからである。

それを証明するために、正しい綴りの語「acetoxybutynylbithiophene deacetylase」とか「carboxymethylenebutenolidase」を提示しよう。優れた読み手である皆さんは、これらの未知の単語に対して、 アルファベット的分析(第2段階)によって区分し直し、書き文字の音韻論的解読を行なうことだろう(あなたが薬屋、薬剤師、医師等であればこのような過程を踏まないと思う。その場合は失礼をお許しいただきたい ^^;)。

もう一つの反例。「msesgae」のときにやったように、以下の文章をできるだけ速く流暢に一見して読むことができるなら、私の理論的な解説は間違いということになる(か、さもなくばあなたは文字並び替えの生まれつきのチャンピオンだ!)

"Nreuuoms pmeeononnhs peossss uiapocmltecnd etaaoilxnpn; nwttdtsniinoahg, the pdseuo-snfiiiectc spssliiimtm is not snfiiiectc and eieecndvs are oetfn mdanleiisg"*.

Guillaume Fon Sing(ギヨーム・フォン・シン)

別名 GUITCHUS(ギッチュ)

guitchus@hotmail.com

言語学者

*"Numerous phenomenons possess uncomplicated explanation; notwithstanding, the pseudo-scientific simplistism is not scientific and evidences are often misleading"(おびただしい現象が簡単な説明を有している。にもかかわらず、疑似科学的な単純化は科学的ではなく、証拠はしばしば人を誤らせるものである)

2004年

  • 2004年11月24日、シリコンバレー地方版: なぜか読めちゃうにて、1年遅れでこの話題が取り上げられる。このコメント欄(日時不明)に、以下のようなコメントが投稿される。これが後にコピペの原型となったと思われる。

日本語版、長いの作ってみた。

こちにんは みさなん おんげき ですか?  わしたは げんき です。 この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか にんんげは たごんを にしんき する ときに その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。 どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?

2008年

  • 2008年9月18日、tumblrにてトリビアとして70941480が紹介される。

2009年

こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。

この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか

にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば

じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて

わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。

どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?

ちんゃと よためら はのんう よしろく

上記に示したとおり、「ケンブリッジ大学の研究」などというものは存在せず、英語版のコピペにあった内容を踏襲している。なお、この文章が何となく読めてしまうのはかな文字だけだからであり、漢字仮名混じり文では事情が変わってしまうことも指摘しておく必要があるだろう。

補記として考察

GUITCHUS氏の英語版へのコメントにあるのと同様の批判が日本語版でも通用するように思われる。すなわち、「単純で一般的な構文」であり、さらに短い、よく知られた単語のみが使われている。

また、2ちゃんねる版の文章で分かち書きごとに1単語とみなすと、すべてで56単語となる。そのうち、最初と最後の文字は固定となるから3文字以下の単語は変更がない(「ですか」「げんき」「です」「もじ」「さいご」「よめる」等々)。この変更のない単語は26か所(46%)で、そのうち多くの割合が助詞など文法的に重要な語である。一方、長い単語は6文字の「ケブンリッジ」「あいてっれば」「めくちゃゃ」の3か所。残りの変更された単語は5文字(9か所)か4文字(18か所)の非常に短い語である。4文字ということは、パターンとしては■AB□→■BA□しかない。5文字の場合は1語あたり最大6パターンありえるが、いずれにしても「誤字を推測して読める」範囲であろうということになる。

したがって、この程度の「誤字の極めて多い」文が「読めてしまう」のは、特に脳の機能などを持ち出す必要もなく、単に「通常の日本語を読むための基本能力」でカバーできる範囲だということになると思われる。

もし、これが「あまりなじみのない長い単語」がメインであったならば、こうはいかないはずである。たとえば、正しい綴りだが「みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん」「よねじまぐちあるびすよねじまてんまえ」といった駅名は上記の文章より難しいだろう。あるいは正しい綴りであっても「こうりにょうほるもんふてきごうぶんぴつしょうこうぐん」という言葉についてはかなり頭をひねらねばならないはずだ。わからなくても仕方がない。これは正しい綴りだが医学用語で「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群」である。

要するに、よく知っている短い単語ばかりの文章だから、誤字も瞬間的に補正できる――と、それだけの話であったりする。

では、最後に。以下の文章がすらすら読めるだろうか。もしこれがすらすら読めるとすれば「単語の最初と最後だけ合ってれば読める」と単純に言えることになるのだが、そうはいかないだろう。公正を期するために、実在の書籍の文章をテキストとする。

ぜゃううんみだのいどく は ちどゃゅうううだのみいく と ともに などいいうけゃみく の さんういぶゅしき から はまじる。この ぶんき は ほぼ ぜうっとしょんき の たかさ で、しうこさ と そょきとうくく の かげんき にある。

こたえ。前大脳動脈は中大脳動脈とともに内頸動脈の最終分岐から始まる。この分岐はほぼ前床突起の高さで、視交叉と側頭極の間隙にある。(医学書院『画像診断のための脳解剖と機能系』196ページより))

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2009年5月10日12:40| 記事内容分類:言葉| by 松永英明
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コメント(3)

面白い情報をありがとうございます。トラックバックをさせていただきました。

はじめまして。
興味深いエントリーですね。
トラックバックさせて頂きました。
自ブログからもリンクを貼らせて頂きました。
よろしくお願いします。

No.10のTBについて。「何故今更2chに書き込まれたのか」ということのヒントになるかと思います。わざわざ言う程の情報ではないかもしれませんが、本記事で今回の事例を時系列にならべて分かり易くまとめて下さっていたので、何かの足しになればとTBさせてもらいました。

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