高岡蒼甫氏も批判する不買運動――「相関図関連妄想陰謀論」の問題点

高岡蒼甫氏のツイッター発言から広まった「フジテレビの韓流ゴリ押し批判」運動が特にネットの一部などで展開している。その流れがどういうわけか、フジテレビの大手スポンサー(特に花王)の製品を買わないようにしようという動きとなり、花王不買運動が展開される事態となっている。

スポンサーだからカネは出しているのは確かだが、だからといってフジテレビのいわゆる「韓流ゴリ押し」をスポンサーが指示しているということにならないのは理の当然である。ところが、こういう出資関係や人間関係をまとめた「相関図」的なものを過剰に受け入れ、「何かつながりがあれば、そいつらは共同正犯として共謀している」というような関連妄想をたくましくする人たちがいる。それに基づく批判は、もはや陰謀論の一言で片付けられる域に達してしまうだろう。

一方で、ある意味不買運動のきっかけになったともいえる高岡蒼甫氏だが、ツイッターで「不買運動は勧めない」と明言している。「何かを脅すとか圧力をかけるとかだと何処かとやってることも変わらない」という発言もあり、これは「不買運動やってる連中は、韓流ゴリ押しの韓国側とまったく同じことをやっている」という意味となる。

たとえ仮に「意見」が正しかったとしても、やり方がまずければそれはすべてを台無しにしてしまう。「愛国無罪」は隣国なら醜悪で日本なら正しい、などということはない。どちらも醜悪でしかなく、その主張自体を傾聴する人を減らしてしまうのである。

2011年8月 3日12:44| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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高岡氏の関連ツイート

Twitter / @tkoksosk8228: 8月3日03:05AM

人それぞれ違う。右でも左でもない。そう思われるなら誤解を恐れずいうとありがたい。不買運動は勧めない。 RT @sekinukimiya: @tkoksosk8228 @munomainichiaaa 高岡さんが思う愛国心てどんなんですか?

Twitter / @tkoksosk8228: 8月3日11:14AM

自分の一考えです。何かを脅すとか圧力をかけるとかだと何処かとやってることも変わらないし相手もムキになるだけと思うので、各々が知識をつけ素直な気持ちから出る答えを導きだし反対だな賛成だなで行動出来たらと思うのです。 http://bit.ly/qIFUnGレスポンス嬉しかった☆

「不買運動は勧めない」「何かを脅すとか圧力をかけるとかだと何処かとやってることも変わらないし相手もムキになるだけと思うので、各々が知識をつけ素直な気持ちから出る答えを導きだし反対だな賛成だなで行動出来たら」というのは、まさに言論・主張・表現の自由を守る態度である。

私自身は正直なところ高岡氏の「韓流ゴリ押し批判」には賛同していないし、「事務所や妻の意に反する意見について、事務所や妻も同意見だと書いたこと」については、事務所からの解雇という厳しい処分を受けても仕方のないレベルの行動だと思っているが、しかし、高岡氏がこのように「言論における圧力行動」を批判したことは高く評価する。ちょっと見直した。

「相関図関連妄想陰謀論」の危険

「フジテレビの放送に関する姿勢が気に入らないからフジテレビを見ない」というのは、まだ理解できる。しかし、フジテレビ問題で花王不買運動に発展するというのは、わたしにとっては斜め上すぎる展開だった。

どうやら2ちゃんねるでもモンスター揃いで悪名高い「既婚女性板(鬼女板)」の住人が花王に「電凸(電話での詰問)」を行なったり、不買運動を呼びかけたりしたのがきっかけになったようだ。そして、それに一部の2ちゃんねらーが乗っかって、アマゾンの花王製品のレビューに正直意味不明なマイナスレビューを書き連ねるという「嫌がらせ」が大量に行なわれた。

何をどう考えてもおかしい。(決していいとは言わないが)フジテレビの韓流推し本のレビューに批判を寄せるならまだ話はつながっているが、「フジテレビのスポンサー」というだけの花王に嫌がらせをすることで日本を韓国のゴリ押しから守る愛国戦士気取りというのは、もはや人としておかしいレベルである。

そもそも、「(当事者ではなく)スポンサーに対して不買運動を行なって抗議の意を示す」という方法論自体がゆがんでいる。そのスポンサーが明確にフジテレビ支持の発言をしているのでなければ、批判の対象が根本的に間違っているとしか言いようがない。

東電関連でもこのような論が見られるが、「東電株を持っている」「東電が株主となっている」「東電の元社長が顧問」といったようなつながりがあったとしても、それをそのまま「脱原発に圧力をかけうる企業だ」と解釈する時点で論理の飛躍があり、陰謀論に堕してしまう。もちろん、九電やらせのように直接の関与があったら当然陰謀論ではない。このように明確な証拠があれば当然つながりがあったということになるが、株の関係があるとか顧問がいるというだけで「東電擁護派」「原発推進派」の枠に放り込んだり、あるいは「圧力をかけた容疑者」扱いするのは論理が飛躍しており、関連妄想にもとづく陰謀論にしかなりえない。

しかも今回の花王については電話での問い合わせに対して「それはフジテレビにきいてくれ」と言っているのである。フジテレビを否定しなかったから賛同者なのか?

関連妄想による陰謀論は「エア共謀」を脳内で生み出して戦っているにすぎない。株式情報にしろ役員の人事にしろスポンサー出資関係にしろ、それらは間接的な周辺状況にすぎない。直接的に「花王が会社の意志として韓流ゴリ押しを推進した」という根拠が(解釈としてではなく)明確に示せない限り、フジテレビの件で花王を叩くのは意図的な誤爆でしかない。

もちろん、彼らの意図は透けて見える。スポンサーを叩いて、スポンサーがフジテレビから逃げ出すように仕向けて、フジテレビに方向転換を迫ろうという実力行使だ。だが、それは卑怯な無差別テロ行為と同じ論理である。暴力によってゴリ押ししているのである。韓国エンタメ界がゴリ押ししたことをフジテレビが受け入れたことを批判しようとして、スポンサーへの不買によるゴリ押しを受け入れさせようとしている。

高岡氏が言うとおり、「何かを脅すとか圧力をかけるとかだと何処かとやってることも変わらない」になってしまう。同じことをやっても「何処か」は悪で不買は善というのは通用しない。目的は手段を正当化しない。

今回の不買運動は、「叩いても正当化される正義の口実」を振りかざして叩きやすい相手を叩きたい人たちが、恰好のネタを見つけただけ、というパターンに見事に当てはまっている。しかし、こういう行動が彼ら自身の発言そのものを胡散臭く見せてしまうことに気づくべきである。

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2011年8月 3日12:44| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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今回の件はyoutubeで知りましたが、唖然としてます。
ガチで頭イカレてる。少しは恥を知れと。
こういうまともな意見の方が少ないというのが、ネットの偏りの根深さを表してますね。

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