「新党きづな」のカナ表記問題と本当の語源

民主党から離党した衆院議員による新党の名称は、当初「新党きずな」を予定されていたが「新党きづな」に修正されることとなった。語源によるものだというのだが、この表記変更は無用のものである。また、本当の語源を言うのであれば昨年末、当ブログでも「今年の漢字」の「絆」の原義は「束縛」「しがらみ」[絵文録ことのは]2011/12/13記事で指摘したとおり、決して美しい言葉ではなく、否定的な意味合いを持ってしまう。

2012年1月 4日10:27| 記事内容分類:日本時事ネタ| by 松永英明
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報道内容

民主離党者:「新党きづな」に名称決定 - 毎日jp(毎日新聞)

絆という言葉の語源が「綱」や「つなぐ」だとの意見が複数のメンバーから出たことから修正した。

asahi.com(朝日新聞社):名称は「新党きづな」に 民主離党組「きずな」から変更 - 政治

「語源として『きづな』が正しい」との声が出たという。

変更理由を明記しているのはこの二紙が代表的なものだが、「絆の語源」による表記変更であるという点は共通している。しかし、この表記変更には問題がある。

現代仮名遣い

「きづな」はもちろん歴史的仮名遣いにおいては正しい。しかし、現代仮名遣いにおいては「きずな」が「正」で「きづな」は「許容」とされている。それは内閣告示によるものである。

現代仮名遣いは昭和21年内閣訓示第33号「現代かなづかい」(11月16日)で定められ、昭和61年内閣訓示第1号「現代仮名遣い」(7月1日)で改訂されたものである(実際の表記についてはほとんど変更はないが、昭和61年に許容範囲が認められ、基準がゆるやかになった)。つまり、約66年間にわたって公文書・法令・新聞・雑誌・放送や教育の現場においては、この仮名遣いに準拠してきた。

その是非は今回はまったく触れない。問題は江戸時代以来「四つ仮名」と呼ばれてきた「ジ・ヂ」「ズ・ヅ」の書き分けである。今回問題になる「ズ・ヅ」の使い分けについて、改訂版の「現代仮名遣い」ではこのように示されている。

5 次のような語は、「ぢ」「づ」を用いて書く。

(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」

例 ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまるつづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)

〔注意〕 「いちじく」「いちじるしい」は、この例にあたらない。

(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」

例 はなぢ(鼻血) そえぢ(添乳) もらいぢち そこぢから(底力)
ひぢりめん いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん
まぢか(間近) こぢんまり
ちかぢか(近々) ちりぢり
みかづき(三日月) たけづつ(竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら
おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包)  ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連)
かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける
ゆきづまる ねばりづよい
つねづね(常々) つくづく つれづれ

なお、次のような語については、現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし、「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。

例 せかいじゅう(世界中)
いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく
ひざまずく あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく うでずく くろずくめ ひとりずつ
ゆうずう(融通)

〔注意〕 次のような語の中の「じ」「ず」は、漢字の音読みでもともと濁っているものであって、上記(1)、(2)のいずれにもあたらず、「じ」「ず」を用いて書く。

例 じめん(地面) ぬのじ(布地)
ずが(図画) りゃくず(略図)

ここに例として「きずな(絆)」が明記されている。「「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし……「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする」ということで、本則:きずな、許容:きづな、ということになる(ちなみに「絆」は常用漢字外/人名用漢字)。なお、この「許容」は昭和61年の改訂によって認められたもので、昭和21年の「現代かなづかい」では排除されている。

したがって、歴史的仮名遣いでは「きづな」であったが、現代かなづかいでは「きずな」のみとなった。それから40年経って「きずな」も「きづな」もOKになったということである。それを「語源的には」という言葉を持ち出して「きづな」に訂正するのは、現代仮名遣いの歴史的経緯を踏まえていない発言と考えるしかない。

つまり、「現代かなづかい」を否定して歴史的仮名遣いのみを採用する、というところまで踏み込むのならそれはそれで一つの主張だと思うが、一つの言葉だけ「語源的にはこっちが正しい」というように取り沙汰するのは一知半解の姑息な見解であるように思われる(ここでの「姑息」は「卑怯」という意味ではなく、本来の「語源どおりの」意味である「一時のがれ/その場しのぎ」で用いている)。

そして本当に語源を探るなら

「絆という言葉の語源が「綱」や「つなぐ」だ」という意見が出たと報じられている。たしかに、絆は動物をつなぎとめる綱のことである。

しかし、語源を正確に述べれば「動物をしばる綱」であり、「束縛するもの」というネガティブなイメージの言葉であった。「今年の漢字」の「絆」の原義は「束縛」「しがらみ」[絵文録ことのは]2011/12/13でも述べたとおり、世間一般の美しいイメージとは裏腹に、束縛であり、縛り付けるものであり、しがらみであり、「人を束縛したり、自由に行動できなくしたりすること」が原義ということになる。つまり、それは断ち切るべきものなのである。

語源という言葉を持ち出さないのであれば、「人と人とのつながり」という近年のイメージである美しい「絆」と理解してもよかったかもしれない。だが、下手に「語源」という言葉を持ち出すなら、それは「しがらみに縛られる」という名称と解せざるを得なくなる。

民主党から離党した議員たちも、何らかの「しがらみに縛られ」て、自由に行動できず、身動きが取れなくなってしまうのだろうか……。

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