海から車を引き上げようとして一緒に落ちたクレーン車の話

 海に落ちた自動車を引き上げようとしたクレーン車が一緒に海に落ちてしまい、もう一台やってきたクレーン車も……という連続写真がある。おそらくは紺ガエルとの生活 日々雑感2005年1月の「リスク管理はしっかりと」という記事がきっかけとなって、ここ数日あちこちのサイトで取り上げられているようだ。だが、これは最後のオチの一枚が偽物という話。

 そこで実態を探ってみた。

2005年2月 4日00:31| 記事内容分類:世界時事ネタ| by 松永英明
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問題の写真

 サイトによって多少増減はあるが、とりあえずこの10枚。解説は不要だろう。

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都市伝説誕生の経緯

 実は「シナトラ千代子 - ミイラ取りがミニラになる」に詳細が書かれており、必要な情報はそこからのリンクでほぼ事足りた。

 この事故についての検証サイト(英語)がPictures Contributed by Brother Hiberniansであり、そこからリンクされた事故の模様を伝える記事がRoundstone Connemara County Galway Irelandだ。事故はアイルランドのゴールウェイ州コネマラ郡ラウンドストーン埠頭で起こったもの。最後のニュースは「コネマラニュース2004年9月6日号」とあって週刊らしく、そこで「シーズンの終わりの土曜日に」とあるから、おそらく事故が起こったのは2004年9月4日土曜日だろう。

 というわけで、上記検証サイトの内容を全訳してみる。その中には、コネマラニュースの記事も引用されているので、これで完璧に「ソース」に当たったということになるだろうと思う。

都市伝説 一連の不幸な出来事

伝説:自動車を引き上げようとしたクレーン車が一緒に水中に落ちている写真。

真偽:重層的。水に落ちた自動車を引き上げようとしたクレーン車が傾いて水中に落ちる写真は「本物」。2台目のクレーン車が最初のクレーン車を引き上げようとして傾き、水中に落ちる写真……嘘。

発端:このシリーズの写真の前半――海に落ちた自動車を引き上げようとしているクレーン、クレーンが傾いて海に落ちてしまう、そして第2のクレーンが2台とも海から引き上げる――は、2004年9月ごろ、アイルランドのゴールウェイ州コネマラ(Connemara)のラウンドストーン埠頭(Roundstone Pier)で起こったという事件の本当の写真のようだ(息切れするような段落くらいの長さの一文で報じられている)。以下、コネマラのラウンドストーンのウェブサイトより。

 だれかが村の壁から落ちてるんじゃないかってことで今年は村をあちこち見て回らなければいけなかったわけだけど、死ななかったのはありがたいことで、土曜日の朝の明けやらぬころ、一台の車が港に入っていき、若い男が運転してたんだが、その車がひっくり返ったもんで、ショーン・ド・コーキーに警告したのはたまたま寝ずの番をしていたメアリー・キング(※有名な馬術競技者)なんてことはないにしても、ショーンはこの男を車の外から引っ張るという離れ業を演じて、で車はほとんど波に沈みそうになってたんで安全なところに男を引き出し、そういうわけでショーンはその男の命を救ったんだが、それからもう一つ致命的な出来事があって、それについてはちょいとユーモラスな面があって怪我をした人にはちょっと失礼に当たるかもしれないんだが、自動車を引き上げるためにクレーン車が呼ばれて、さて引き上げる段になり、このクレーン車が自動車を引き上げようとすると転倒してしまってね、でも心配はいらない、人は乗ってなくてリモートコントロールされてたから、でもこの装置は車を引き上げるのに十分な重さがなくって、それで、ちゃんとした専門の機械が呼ばれて、それで作業は終わったんだが、人命は失われることなく、この作業を見るために集まった人の数を見たら何か社会的なイベントでもやってんじゃないかと思うくらいだったのがおかしかったね。

 もしガルダ(Garda=アイルランド警察)がいてくれたらこの事故は防げたんじゃないかとも思うんだけど、あるいは死傷者の出るような事故が起こって当局もガルダを特に7月から8月にかけて駐留させておくようにするんじゃないだろうかね、というのはこの時期こそ護らないといけないからだけど、でも地元の全体がこの重要な件について今この時期に強くインプットしなきゃならないと思うんだよ、もしこの村のイメージをよくしようとするのならね。ちょっとした大事件が起こるのは運命でもなければ悲しむべきことでもなく、観光客にとっても我々にとっても同様に喜ばしいことだ。

 観光客と地元民がこの夏経験したすべての出来事を、ポジティブに反映させていけばいいんだよ。

 ところで、最後の写真――2台目のクレーンも傾いて海に落ちようとしている――のおかげで読者の強い印象を誘ったわけだが、これは明らかに5枚目の写真をいじったものである(数々の目に見える痕跡はあるけど、クレーンの右側の野次馬が2つの写真でまったく同じ場所にいる。そして、写真の左手にある小さな白いボートは最後から2枚目の写真で見えなくなっているのに、最後のフレームで現われているのがあやしい)。

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2005年2月 4日00:31| 記事内容分類:世界時事ネタ| by 松永英明
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いきなり三村バリのツッコミが入ってしまいました。 以前引用した海に落ちるクレーン車の話、最後の一枚の写真は偽者であるというツッコミ。なるほど、なるほど・・・。 http://koton... 続きを読む

海に落ちた車を救出しようと呼んだクレーン車が・・・・・ 続きを読む

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最後の画像ですが、自動車関係の画像掲示板でコラージュ画像として貼られていたもので間違いありません。
その画像掲示板に出入りしている人によって作られたものです。

その掲示板でもすごくウケていた画像で、ぱっと見では解らないので、その掲示板にもたびたび貼られました。そのたびに「本当ですか?」「コラです」というレスがついていました。
あちこちに転載されまくっているようです。

とても面白い生地ですね。とすごくおそいレスなんですが。感想述べさせていただきます。 最後の写真が本当なら もうどうしようもないほど面白いですよね。でも残念ながら偽物のようですね。 証拠は白い船もそうだし後ろに並んでいる車なども一つ前の写真とは違い、2枚目のものをコラージュした証拠となっていますね。

これはクレーン作業では絶対にやってはいけない事故の典型例。3枚目の写真で解るとおりアウトリカーを出すのを端折ったために
右前サスが大きく沈んで転倒モーメントが
大きく作用しているのが解る。
これでは海に転げ落ちて当然である。

 最後の写真は波の立ち方や作業員の立ち位置から簡単に張りぼてであることが解る。
(と、書いてる漏れも始め騙されたけどね)

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