転向者――インターネットでの「金儲け」はいつから受け入れられるようになったか

 個人テキストサイトのパラダイムシフト(趣味のWebデザイン)で徳保さんの書かれていることにうなずけるものがあったので、反応してみる。

かつて私が好んでみていたテキストサイト界隈というのは、なぜか金儲けとアクセス稼ぎに批判的でした。しかも奇妙なことに、界隈の住人たちは、それが「ふつうの感覚」だと思ってた。

 ネット上における「お金儲け」についての感覚は、テキストサイト界隈に限らず、もう少し広い範囲で以前とは変わってきたような気がする。自分の場合は2001年ごろを境に変わったような印象がある。“「転向」したなら「私は転びました」って、ちゃんと書いたらいいと思う”という徳保さんの言葉を使えば、「私は転びました」である。

 「どっと外から「ふつうの人々」が入ってきて」ネットの空気が変わったという要素もあるのだろうが、以前からのユーザーもかなり「転向」していると思う。

 その辺の個人的な心理の変化を書いてみたいと思う。

2005年5月11日11:27| 記事内容分類:ウェブマーケティング| by 松永英明
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あのころ、個人はネットで金を使わなかった

 前世紀のインターネットは、学術研究インターネット時代はもちろん、マイホームページ時代にも「インターネットはただでものが手に入る場所」という意識があったと思う。無料サーバーが当然で、有料サーバーを使うというのはよほどの大手サイトか企業サイトという印象があったし、Geocities、Fortune City、Tripod、XOOM、Hypermart、Virtual Avenue、Prohosting、Angelfire等々の国内外の無料ページサービスを使うのが主流だった。Virtual AvenueやProhostingはCGIが使えるが、ちょっと転送量が増えるとあっさり削除されたりして、その辺の攻防もなかなか熾烈なものがあった。

 当然、そこには広告が表示される。その広告は自分で選べるわけではないし、たいていは一番目立つところに貼らなければ規約違反になるし、ということで非常に鬱陶しいものであった。

 ただ、この広告に対する意識は徳保さんが言うような「多分。自分にお金が入らないからムカついてただけなんです」ではなかったと思う。というのは、当時すでに「バナー広告」で小遣い稼ぎというサービスもあったのだが、そういうのを使うのは「バナクリ乞食」と呼ばれ(あるいは自称し)て一種の軽蔑の対象であったからだ。「バナクリしてくれ漏れ貧乏」と自虐ギャグネタになるくらい。宣伝で使っている企業はともかく、個人がネット上で「金のやりとり」をするというのには抵抗があったという印象がある。

 よくわかってないバナー広告会社が表示回数あたりで支払うことにしていて、それで契約した巨大サイトへの報酬が異常な金額になってしまい、もめた……というのは裏ニュースだったか侍魂だったか。

 ともあれ、プロバイダーと電話代(テレホ推奨)を除いてはほとんどネット上でお金を使わないというのが、あのころネットで一般的な空気だったのではないだろうか。テキストサイト界隈に限らず。もちろん、ネットショップはあったし「ネットショップで儲ける方法」という本だってあったと思うが、少なくとも自分にとってはネット内の別の領域での話だったし、それはビジネスホームページではなく個人サイトの人にとってはかなり共通した認識だったのではないだろうか。

金と女にはあまり興味ありません(^Д^)(^Д^)

少なくとも この世界を利用して手に入れようという気はありません

(あやしいわーるどでの名文句)

ネットショップから抵抗感が薄れてきた?

 この辺からはまるっきり個人的な感覚なのだが、2000年ごろを境に自分の「ネットでのお金の使用」についての意識が変わってきたように思う。

 自分の場合、きっかけはes-books(今のセブンアンドワイ)で書籍を購入してみたことだった。近所のコンビニで本を受け取れるというので、書店に在庫のない本を注文したのだが、これが便利だった。それまで「ネットでものを買う」ということ自体が「ありえない」ことだったが、実際に使ってみて意識が変わってきた。

 そのうち、周囲でもAmazonを使ってCDや本を買うということが当たり前になってきた。徳保さんの言葉を使えばまさに「転向」だ。

 2000年に日本のネットビジネスで話題になった出来事の一つに、アマゾンドットコムの進出がある。

 国内では、その時点ですでに有名店だけでも10近くのネット書店があったにもかかわらず、11月1日にオープンした日本語サイト"amazon.co.jp"は、いきなりインターネット視聴率の月間リーチ(意味は後の文中を参照)でネット書店のトップに踊り出た。「(実践サイバービジネス)

 自分では使っていなかったが、オークションサイトもその前後に伸び始めたように思う。

 日本では1998年7月に楽天スーパーオークションが始まりました。1999年9月にはYahoo!オークションがはじまり、現在のオークションブームに火をつけたのでした。(atmworld - ネットオークション・オークション代理出品)

 やはり2000年を過ぎたあたりから、日本でもAmazonその他のネットショップ、あるいはオークションが普及してきたような印象がある。もちろん、それ以前からネットショップは存在しているわけだが、「ネットでお金を使う」ことに対する抵抗感が全体に非常に薄れてきたように思う。

無料サーバーから格安サーバーへ

 tripodやGeocitiesでも有料版の提供はあったが、それほど利用されていたわけではなかった。それがやがて今のように「サイトを開設するスペースが必要なら格安レンタルサーバーを借りる」ということに抵抗感がなくなってきたのは、2003年ごろからの話ではないだろうか(個人的印象として)。

 そのきっかけは、ロリポップとXREAの2大格安サービスの登場だと思う。ロリポップのオープンは2001年11月、2003年04月にシステム、サイトを大幅リニューアルしている。また、無料サーバーで有名だったXREAが2002年9月に有料広告免除サービスを開始、新規登録は実質的に格安ながら有料へと移行した。どちらも月額数百円程度、「おこづかいで使えちゃう」(ロリポップ)という価格設定を見て、「これなら鬱陶しいバナーとか、規約違反で削除とか言われる無料サーバーを使うよりずっと気が楽だ」と思ったのだが、そういう人は案外多いんじゃないだろうか。それまでの月数千円とか万単位だと「そこまでいらない」という感じだが、数百円で無料サーバーの煩わしさを解消できるなら安いものである。

アソシエイト、アフィリエイトの定着

 今や個人がネットで収入を得るといえば、多くの人がアマゾンから入るように思うのだが、アマゾン・ジャパンがアソシエイト導入したのが2001年5月。ただ、最初のころは報酬1500円分から使えるアマゾン・ギフト券に換える程度――ほとんど収入になるとは思われていなかったのではないだろうか。というより、少し前までは「アマゾンで買うときに自分のリンクから貼って実質値引きしてもらう」という使い方が(こっそりと)多かったかもしれない。今はそれをやってもシステム的に拒否されることが判明しているので、そんな面倒なことをやる人はいなくなってきたようだけど。まあ、そういう使い方にしろ、じわじわと普及したように思われる。

 この2001年にはリンクシェアも上陸、一方でCYBER CLICKが撤退し「クリック保証型バナー広告は儲からない」という状況が裏付けられることになった。この年を日本のアフィリエイト元年という人もいる。

  • 1999年 バリューコマース
  • 2000年 A8.net
  • 2001年 アマゾンアソシエイト日本版、リンクシェア日本版
  • 2002年 電脳卸、楽天アフィリエイト

 格安レンタルサーバーならアフィリエイトをうまく使えばサーバー代くらいはカバーできる……一般的な個人ユーザーにとってはそんな感覚だろうか。いずれにせよ、今世紀に入ってからアフィリエイトは急成長している。

 そして2003年末、ココログの登場と同時期にGoogle AdSenseが登場、自分も含めて当時のブログ界での大きな話題になった。先進的なものを取り入れるのが好きで、当時はレンタルサーバーにMovableTypeを設置するのが主流だった日本のブロガーたちがアフィリエイトやアドセンスに飛びついたところから、「ブログとアフィリエイト」が結びついていったという要素はあるかもしれない。

アクセス稼ぎはそれほど悪印象ではなかった

 徳保さんは「金儲けとアクセス稼ぎに批判的」と書かれていて、金儲けとアクセス稼ぎをまったく同列に扱っているが、これは分けて考えた方がいいように思う。「アクセス向上指南サイトはネット黎明期から存在していた」というのは、もう言うまでもなく橋本大也さんの「アクセス向上委員会」を措いてほかにないが、金儲けはもう一切ダメみたいな雰囲気があったのに対し、アクセス数「向上」については適切な方法ならいいというイメージがあると思う。もちろん、露骨なやり方は嫌われていたし、アクセス乞食という言い方もあったわけだが、アクセスが増えること自体は歓迎されていた。「○万アクセス記念」は当然だったし、日記才人やReadMe!Japanで上位に表示されることは決して不名誉ではなく、むしろ多くのテキスト・日記サイトがアクセス向上を狙っていたはずだ。

 個人的には、ブログでアクセスランキングへのリンクをクリックお願いとか書かれているとそのブログ自体を見たくなくなったりするが、逆にかつての日記才人「読んだよ」ボタンなどは楽しんでクリックしていたような気がする。

 おそらく、今の「アクセス稼ぎ」は「銭儲け」(アフィリエイトのためのページビュー稼ぎ)とどうしても密接な関係があるような印象があるからじゃないか、とも思う。金儲けにつながらなかった以前のサイトなら単に数の問題だが、今はその人の銭儲けのための踏み台にされるわけで。

以前とネットに対する意識が変わった

 そういうわけで、何が言いたいかというと、新しい人が流入したからネットの雰囲気が変わったという要素だけではなく、むしろ、以前からネットを使っている人たちの中でも意識がずいぶん変わってきたのではないか、ということ。つまり「転向」だ。特にネットで買い物をすることが増えた人とか、オークションを使うようになった人たちは、有料版のサーバーを使い、そこに広告を貼るということにも心理的抵抗がなくなっていくと思う。

 「せっかく広告のないサーバを借りているのに、画面の3割も広告に費やしているデザインのサイト」というのは大げさとしても、でも、以前は有料サーバーなど見向きもせず、でも無料サーバーの広告を鬱陶しいと思っていた自分が、今はAdSenseやアマゾンその他のアフィリエイト広告を平然と使っている。「時代が変わったな」と思うが、それは単純に「自分にお金が入らないからムカついてた」というものではなく、むしろ自分の中の意識が変わったからなのだという気がする。

 おまけ。トラックバックの登場は自分にとってはありがたかった。アクセス稼ぎの人たちが「相互リンク依頼」してくるのが面倒で(メールに答えるのが面倒、リンクページに追加するのが面倒)相互リンク依頼というのを毛嫌いしていたのだが、勝手に相互リンクしてくれて、まあ気に入らなかったら削除すればいい、というのは楽だ、と思ったものである。もちろんトラックバックspamがうぜえという副作用はあるわけだが。あと、自分のところで書いた関連記事を相手に知らせる方法ができた=陰でこそこそ状態にならずに済む、というのもいいところだと思っている。

追記

そういえば下の記事ですでに「しかし、見事に「転向」したわけだ」とか書いてるな。自分で書いてすっかり忘れていた。

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2005年5月11日11:27| 記事内容分類:ウェブマーケティング| by 松永英明
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むかし、友達連中と「ネットで金儲けしてもいいんだよ!!」キャンペーンをしたことがあるのだが、そのときいちばん多く指摘され、また「それはもう問題ではない!!」と言って回っていたところのファクターが見事に丸っと抜けてるのが笑える。

↑まるっと抜けてるってのが何なのかわからない

色々なご時世です。ちょこっとだけ、失礼いたします。私は、自宅療養中の身です。おかげで、ネット社会万歳!って思っています。なぜって、外で働けない私がお金を稼げるのです。病院に行ったときに入金の通帳記入していますが~ご興味の方は、ぜひ、メールbnari@muf.biglobe.me.jp
まで、連絡してください~では、失礼しました!

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