アフィリエイトには、アクセスよりもクリック誘導と適切な商品が効果的

アフィリエイトについて「アクセス数も必要だけど、それだけ強調するのはどうか。むしろ数より質の傾向があるように思う」ということを「木村剛氏は「アフィリエイト」をわかっていない――ブログに向かないシステム」で書いたところ、ある有名ブログ(匿名希望なので仮にKとする)の方から「いや、AdSenseではやっぱりアクセスに比例しているのではないか」という反論をいただいた(こういう実のある議論は大歓迎である)。

そこで、当サイトのAdSenseとアマゾンの実績をグラフで示しつつ、そのあたりを検証してみることにしよう。

2004年4月22日17:04| 記事内容分類:ウェブマーケティング| by 松永英明
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まず、いただいたメールの内容を箇条書きにまとめると、以下のようになる。

・一通りのアフィリエイトに参加しているが、最も効率が良いのはAdSense。
・AdSenseでは「アクセス数ありき」の傾向があると思う。
・それなりのアクセス数のあるサイトのAdSenseのクリック率というのは、ある一定の値に収束していくと思われる。
・したがって、
 アクセス数が増える=クリック数が増える=収入が増える ・AdSesneではクリック率よりクリック数。10%のクリック率でクリック数10よりも、0.1%のクリック数でも1000クリックの方がよい。したがって、母数であるアクセス数を増やした方がよい
・つまり「Adsenseの表示回数(アクセス)と収入は比例する」 ・少ないアクセス数で売上を伸ばすならば、コンテンツの質よりもキーワードの選択ということになるが、限界もあるし、競合も多いので、誰でもできる簡単な方法としてはたくさんのアクセスを稼ぐこととなるだろう。
 これは正しいだろうか? 実態にもとづいて考えるための資料として、当サイトでの実際の数値をグラフ化してみよう。ただし、アドセンスの規約で詳細を公開することはできないので、縦軸の単位は省略してある。

 まずは、毎日の「アドセンスの広告表示回数(アクセス数)」と「収入」をプロットしてみたグラフである。横軸がアクセス数、縦軸が収入である。
200404adsense1.gif  数学の苦手な人のために簡単にいえば、「アクセス増に比例して収入も比例するのであれば、右上がりのグラフになるはず」なのであるが、そのような傾向は明確には見られない。通常の表示回数(4000~15000くらい)の範囲でいえば、○で囲んだように「アクセス数が増えても増えなくても一日の収入としてはあまり変わらない」という傾向が見られる。

 次に「アクセスが増えればクリック回数が増えるのかどうか」を調べるために、今度は縦軸にクリック回数をとってプロットしてみた。
200404adsense2.gif  これも先ほどのグラフとほぼ同じような傾向を示している。

 つまり、「アクセス増=クリック増=収入増」とは単純に言えないぞ、ということなのだ(少なくともうちのサイトでは)。

 ただし、Kブログ管理人さんからの指摘には重要な事実がある。それは「クリック数」だ。3つ目のグラフは、実際のクリック回数を横軸、収入を縦軸にしてみたものである。
200404adsense3.gif  これはきれいに「比例」の関係を示している。「クリック回数が増えれば収入も増える」というのは事実だ(キーワードによって同じクリック数でも高い・安いがあるのだが、それでも結果的にはほぼ比例関係を示しているのが興味深い)。
 ということは、結論として、「アクセス増」≠「クリック増=収入増」ということになる。これは、Kサイト管理人さんも納得する結論ではないだろうか。そして、私自身の感触も裏付けられていると考える。
 
 つまり、収入を増やすためには「クリック数」なのだ。ではクリック数を増やすにはどうするかということになるのだが、単純にアクセス数を増やしてもクリック率が下がる傾向がある。その結果、クリックの実数もさほど増えず、収入も増えないことになる。
 それよりは、「来訪者がクリックしたくなるような内容」、つまりニーズに合っているかどうかが重要ではないか、と考える。これが前回の趣旨でもある。木村氏が「アクセスを増やしてアフィリエイト収入増!」と発言したのに違和感を感じたのはこのためだ。

 ちなみに、最近はSEO(サーチエンジン最適化=アクセス増)だけでなく、SEM(サーチエンジン・マーケティング)、つまり「来訪者にいかにクリックさせ、購入させるか」というところまで必要だといわれるようになっている。今回のグラフは、SEOも重要だけどそれ以上にSEMも考えた方がいいのではないか、という私の考えを裏付けているように思う。【この段落少し修正】


 さて、前回の記事の論拠となったもう一つのデータを示しておこう。これは、アマゾン・アソシエイトの2004年第1四半期(つまり1月から3月)のデータである。ただ、これも規約上、細かい数字を公開することはできないので、縦軸の単位は隠してあることをご了承いただきたい。

 アマゾンのデータの性質上、「クリックされた数」と「実際の注文数」の関係をグラフ化している。青いラインがクリック数、ピンクのラインが注文数(実数を何十倍かして見やすくしている)。下の緑色のグラフは、クリック数に対する注文数の比率だ。
200404amazon.gif  当サイトのアマゾンの売り上げはほとんどが女子十二楽坊関連のCD・DVD・書籍などによっている。2月22日は「女子十二楽坊写真集」の発送開始日である。また、3月3日にはオリジナルセカンドアルバム「輝煌」が発売となった。
 これを踏まえて、グラフを3つの時期に分けて見ていただくと面白い傾向がわかる。

 まず第1期は1月から2月22日ごろまで。この時期は見事に「クリック回数」と「注文数」が比例している。1月2日の武道館コンサートの翌日にはメディア報道があり、アクセスが急増した。それにともなって注文も非常に多い。1月18日にはテレ朝特番「女子十二楽坊のすべて」が放映され、これでファンになったという人も多いのだが、この日もアクセス増=クリック増=注文に直結している。
 この傾向は写真集発送まで続く。

 第2期は2月22日から、「輝煌」発売の3月3日まで。この前半はクリック回数が増えても注文数が激減するという現象が見られる。これは、二つ原因がある。
 一つは、写真集の注文が一段落したこと。
 もう一つは、2月27日の朝日新聞の報道である。「曲を無断使用」という明白な誤報を流したがために、ネガティブ・アクセス、あるいは純粋に十二楽坊に関心があるわけではなく時事ネタとしての興味しかない人たちの来訪が多かったと思われる。こういう人たちは別にCDを買おうという動機がないので、アクセス増・クリック増になったとしても、注文には結びつかないわけである。
 ただ、これについては適切に反論したところ、販売直前の予約注文が復調し、3月に入ってからは第1期と同じく「輝煌」予約が順調に数を伸ばした。

 さて第3期は「輝煌」発売後の3月4日以降である。この時期には、クリック数が増えようとも、注文数がまったく伸びないという現象があらわれている(これは今も続いている)。テレビ出演があったときには多少伸びてはいるが、クリック数は第1期・第2期と比べても遜色のないほどなのに、注文数は明らかに半減している。
 つまり、何か買いたいと思って来ても、新しいCDや写真集などがないために購買に結びつかないわけだ(「全部持ってるなあ」という状態)。

 アマゾンの方はある程度「アクセス増=クリック増」という傾向があるかもしれない、とは思っているのだが、だとしても「クリック増」と「注文増」が結びついていないのである。

 アフィリエイトは、ある一定のアクセス数がなければ成り立たないけれど、アクセスに比例して売り上げが伸びるわけではなく、来訪者にいかにクリックしたい広告・購入したい商品を提供できるかが最重要ポイント、というのが私の結論である。

 もちろん、サイトによって傾向は違うところもあると思う。それは、サイトそのもの、運営方法そのものの違いによるところもあるだろう。それについてはぜひ紹介いただければ面白いと思う。これはあくまでも「ことのは」の現状による分析でしかない、というのも事実なのだ。


【追記】
Kウェブログでは「アクセス数によらず、クリック率がさほど変わらない」とのことである。これはかなり工夫をしているのだろう。自分の見聞の範囲ではアクセスが増えるとクリック率が下がる傾向にある。クリック率を維持するための工夫はまだまだ検討の余地がありそうだ。

 ところで、昨日の記事はコメント停止にした。どういうわけか「アクセス乞食」というような観点から嫌味を言うことしかできない人が湧いて出てきたのが理由である。そもそも、そういう小手先の手段によってアクセスを稼ごう、などというのがバカバカしいと思っていることは、本文を読んでもらえればわかると思ったのだが。

【関連記事】
アフィリエイト、理想と現実(あるいは「いかにして余はアフィリエイターになりしか」) 木村剛氏は「アフィリエイト」をわかっていない――ブログに向かないシステム

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俺と100冊の成功本 blog.自己啓発.com - アフィリエイトと松下幸之助 (2004年4月23日 09:08)

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blogって内容は薄っぺらい。このblogもご多分に漏れず。しかしこの内容の薄さがAdSense広告のCTRを効果的に上げるのに貢献していると思うのである。 今このblogを読んでいるあなた、暇人で... 続きを読む

留学とアフィリエイトに関する記事として面白いWEB PAGEを発見。 アフィリエイトについては以下を参照。(こちらから引用) アフィリエイトとは「提携する」「加盟する」という意味で... 続きを読む

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http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/20050206#p2 http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/20050206#p3 松永さんのところでやっている議論に便乗してみます。 松永さんの前提。 >> 「アクセス数が10倍になってもクリック... 続きを読む

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はじめまして。dragonfly's blogのそうといいます。
TBしましたが、blogの内容およびビジターの目的意識が薄いからこそ、
adsenseについてはクリックされる、ということはありえませんかね?
周りをみているとどうも高品質なコンテンツをそろえているサイトほど
クリックレートがひくい気がします。

なお、当方でもクリックレートは1~2%で各日のPVに関係なく安定してます。

うーん、そんなに行きますか。
うちは1%超えることはほとんどありませんよ。
それでも、いわゆるバナー広告のクリック率0.1~0.2%と比べればはるかにいい数字ですけどね。
確かにアドセンスは「あなたのページに情報を追加する」という趣旨で広告を提供しているので、その情報の価値が記事と比較してどの程度重要なものか、ということは関係してくるかもしれません。まあこれは広告の出稿が増えれば変わってくるかもしれませんね。

1%って低いですよね。
コンテンツと広告のマッチが弱いのかな?

自分のアフィリエートサイトを運営していますが、普通に4~6%くらいはいきますよ。更新もほとんどしませんが。。。

このウェブログの中のいろいろな記事をクリックして、どんなアドセンスが出るのか試してみたら、ほとんど同じような広告(主としてウェブログ関連)ばかりでした。
だから、クリック数が少ないのだと思います。
それと、もしかしたら松永さんの長文が災いしているのかも(笑

別の有名ブログでも試してみましたが、アドセンスをクリックしてそこの記事をちゃんと読んで元記事に戻ると、表示されるアドセンスが変わるんですよね。うーん、頭イイ!
ちなみに不正クリックなんかも見抜くらしいです。

「ウェブログ」で始まるサイト名がいけないのかもしれないですね。変えてみるかなあ。

このあいだは0.2%って日もありましたねえ……

アフィリエイトは売上げないとお金が入らないけど、アドセンスはクリックだけでお金が入ってくるわけだから、かなりおいしい仕組みですよね。

でもグーグルの為にウェブログやってるわけじゃないんだし、単にサイトのコンテンツとアドセンスの相性が悪いんだと思ってればいいのでは?

まあそれはそうなんですけど、タイトル変更については、ちょうどデザイン変えようと思ってたとこだし、「ウェブログ」でひっかかるのは「はじめてのウェブログ」だけでいいや、という気もしてるのでね。
つーか、今「ウェブログ」を看板に掲げてるのがちょっと恥ずかしいというか何というか(笑)

参考資料として挙げておきます。
ページランクの高いblogに、元記事と無関係な内容の記事を書いてトラックバックしてみたが、アクセス数もページランクも変わらなかったという実験。
ちなみに私も実験に参加してました、梅田さんのblogから(笑
トラックバックリターン結果発表
http://www.eurohope.com/kio/archives/000282.html

表示回数-収入、表示回数-クリック数の両グラフとも、キレイな正の相関関係にあると思います。つまり、kさんのメールを証明する資料に見えます。相関係数は計算されましたか?
この手のグラフの解釈は、個人の主観だけではマズいかと...

参考のために4/20の記事も読んだが、どうやら松永氏は、クッキーについてよく理解していないフシがある。Amazonはこの点特殊なマーチャントなのだが、この理解なくして、アクセス数と収入などに関して議論するのは片手落ちである。この点でもkさんの主張のほうが、正確で一般性があるのである。

とりあえず相関係数はよくわかってないですが、エクセルを使って12月から昨日までの結果で算出したところ、
表示回数-収入:0.415540
表示回数-クリック数:0.664345
クリック数-収入:0.61086
ということでした。
1.0≧|R|≧0.7 :高い相関がある
0.7≧|R|≧0.5 :かなり高い相関がある
0.5≧|R|≧0.4 :中程度の相関がある
0.4≧|R|≧0.3 :ある程度の相関がある
0.3≧|R|≧0.2 :弱い相関がある
0.2≧|R|≧0.0 :ほとんど相関がない
という資料があったのですが、表示回数とクリック数、クリック数と収入については相関があるのに対して、表示回数と収入については中程度の相関となっている、ということでいいのでしょうか。
そうすると、アクセスが増えてもあまり収入と連携していないように感じるという私の直感的感覚を多少は裏付けているようにも思います。
 
あと、クッキーについては、何を理解していないのか、はっきり指摘していただかないと気持ち悪いです。ここまでおっしゃるなら、具体的に説明してください。ただ、Amazonの売り上げが前期に比べて四分の一以下に落ち込んでいるのは事実です。

ちょっと面白いことに気づいたので。
5000回表示未満:31日
一万回表示未満:83日
一万回表示以上:41日
つまり、最もよく目にするのは5000回~1万回表示と言うことになります。
で、表示-収入、表示-クリック、クリック-収入のそれぞれの相関は、
表示5000回未満
0.230776874, 0.295925489, 0.516874789
表示5000回以上10000回未満
-0.062654027, 0.165960821, 0.407538801
表示10000回以上
0.427850088, 0.599498483, 0.65672529
となっていました。
つまり、表示が一万回を越えるときは相関関係が強いものの、それ以下、特に5000~1万回のときは、表示回数と収入に相関関係がほとんどみられないという結果が出ています。ただ、表示回数とクリック数にはやや相関関係があり、クリック数と収入についてはコンスタントに相関関係が見られるようです。

これは、私の印象と非常に近いものがあります。……というような分析は正しいかどうかわかりませんが、数字的には納得できるものがあります。

ほかのところ(つまり相関関係が強いという印象のあるサイト)だとどれくらいの数値になるんでしょうね?

具体的に何と何をどういう計算をしろと言っていただければ計算してみますのでよろしくお願いします。

ご自身で『数学の苦手な人のために簡単にいえば』と書かれているので、数学はよくご存知と思っていたのですが、違うようですね。
結論だけ申し上げますが、松永さんが計算されたように、「件のサンプル群が正の相関関係を持つ」という命題に対して、相関係数は中程度以上あったということです。つまり、『、「アクセス増に比例して収入も比例するのであれば、右上がりのグラフになるはず」なのであるが』とかかれている、まさにそのことをご自身で証明されたことになります。微分系で表現すればいっそうはっきりすると思いますが、本例ではそこまで厳密にする必要すらありません。
件のサンプル群(クラスタ)は、一目見てわかるように、丸で囲むより、長軸が右上方向に向いた楕円で囲むのが適切です。それをマルで囲んだ時点で、その後の議論は破綻しているのですよ。余計なことですが、このようなクラスタを「直感」で丸く囲む人を私は見たことがありません。出発点で間違ったために、その後は恣意的に理屈を重ねなければならなくなったものと推察しますが、これ以上の考察は、時間の無駄になりますから、みっちり考えるなら統計学の教科書でもご自分でご覧ください。簡単でいいのなら、Δxの変化で収入がどう動くか。つまりxとx+Δxの範囲のプロットの重心が、xの変化でどのようになるか、考えてみれば十分です。
クッキーの件ですが、アマゾンもアドセンスもクッキーを用いておりません。したがって松永さんはクッキーの効果を具体的にはご存じないはずなのです。議論するならそれを経験されてからでしょう。

ちょっと訂正、
Amazonはサイト内滞在中のみ有効なクッキーを用いています。私のいっていたクッキーは、当該サイト退出後も有効な最訪問日数がゼロでないクッキーをさしています。

このブログ記事について

このページは、松永英明が2004年4月22日 17:04に書いたブログ記事です。
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