ウェブの二つの文化圏の衝突【前編】無断リンク禁止問題にみるリンクする側・される側の論理

 いったい10年前から何回この話題はループしたら気が済むねん、という勢いで論争が繰り返されているのが、「無断リンク禁止」と「ネガティブリンクへの対応」の問題である。

 ここ数日、はてなブックマークで急に話題になっているのが、「日本一わかりやすいとまでは言えない「URL晒しがダメな理由」」というページで、このページ自体は2004年秋のものである。

 ブログでは外部ページへの参照が活発で、さらにトラックバック機能までついているため、従来の「ホームページ」よりも自由にリンクが張られる傾向にある。そんななか、「儀礼的無関心」問題に始まり、最近の「はてなブックマーク暴言問題」に至るまで、特に「否定的リンク」「観察的リンク」の是非が問われてきた。

 この辺の問題について、「リンクする側・される側」「批判する側・される側」の関係でとらえてみると整理できるんじゃないかと思って図を作ってみたのが今回のエントリーである。

 前編は「無断リンク」問題、後編は「ネガティブリンク」問題を扱う。

2006年1月 5日02:57| 記事内容分類:ウェブ社会| by 松永英明
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これは「文化衝突(カルチャーショック)」である

 図にして思ってみたのは、「リンクフリー」に代表されるウェブ的作法と、「無断リンク」に代表される日本社会的作法は、もうまるで「別の文化圏」、まったく違う文化の衝突なんだということがはっきり見えてきたかなということだ。誰もが気づいていたようなことなんだろうが、自分で図にしてみてくっきり鮮明になったというか。

 もちろん、そのことは2005年夏に急遽浮上してきた「モヒカン族」キーワードに示唆されていた。言葉遣いが違うだけだが、ネットの一種「殺伐」とした作法を、世紀末の荒野でハンドアックスを投げつけてくる「モヒカン族」のイメージに投影する一方、それに反する「一般社会のルールでネットを生きる思考」を「ムラ社会」と名付けていた。

 モヒカンVSムラ社会、それはまさに「別の文化圏の住人」であり、その衝突が「無断リンク禁止論争」や「URL晒しがだめな理由――への疑問」などを生み出してきたのである。

「無断リンク禁止」文化と「リンクフリー」文化の衝突

 まずは、図を見ていただきたい。

linkfree1.gif

 縦軸は「リンクする側」の考え方が開放的か閉鎖的か、横軸は「リンクされる側」の考え方が開放的か閉鎖的かという軸でとらえてある。人によって、また場合によってポイントは移動するだろうが、リンクする側・される側の考え方の違いによって、調和が生まれたり、不協和音が生じたりする。

 リンクについて開放的……とは、いわゆるリンクフリー主義者、ウェブのバリバリのユーザー的な発想である。もともとWWW(ワールドワイドウェブ)とは、アンカーリンクという機能によって成り立っているのだから、リンクは自由であって当然だし、ウェブに公開するということは全世界にさらされることなんだ――という、極めてウェブ的な考え方だ。そして、実際問題として、リンクされることそのものを防ぐことは難しいし、現実的ではない。つまり、「リンクは、リンクする側がすべて力を持っていて、リンクされる側は技術的なアクセスコントロールをする以外に防ぐ方法はない」という考え方だ。

 一方、リンクについて閉鎖的……とは、いわゆる日本の一般社会におけるルールを適用する考え方である。ホームページとはまさに文字通り「わたしのおうち」なのだから、勝手に土足で踏み込むようなことはやめていただきたい。リンクするなら事前に断るのが礼儀作法だし、また、玄関(トップページ)からではなく裏口(個々のページ)にいきなりたどり着くような誘導(ディープリンク)はまったくもって失礼だ。――というのが、この「無断リンク禁止」=「リンク許可制」あるいは「相互リンク」文化圏を象徴する考え方である。簡単に言い換えれば、「リンクは、リンクされる側がすべてコントロールすべきだ」ということだ。

 「リンクは何でもかんでも完全自由」と「リンクはされる側の許可を待ってから」を両極として、その間のどこかのポイントにすべての人がマッピングされるものと仮定して作ったのがこのグラフである。

同じ文化圏同士の人たちは調和する

 リンクフリー文化圏の人が、他のリンクフリー文化圏のページにリンクするとき、まったく問題は生まれない(当たり前だが)。勝手にリンクをし、また勝手にリンクされることを受け入れる。

 逆に、リンク許可文化圏の人が、他のリンク許可文化圏のサイトにリンクするときも、まったく問題は生まれない。事前にメールで「リンクさせていただいてよろしいでしょうか。また、できましたら相互リンクをお願いしたいと思います」と丁寧にメールでお願いをし、受けた側もその礼儀正しさを評価して、「こちらこそ喜んで」とリンクが成立する。

 つまり、リンクする側・される側の思考が同じ程度の開放度/閉鎖度を持っているとき(グラフの薄緑色のライン)、問題は起こりにくい。

違う文化圏同士だと発火する

 問題は、違う文化圏同士の衝突である。

 それでも、まだ「リンク許可文化圏の人」→「リンクフリー文化圏のページ」に向かうリンクの場合はそれほど問題にはならない。「リンクしてよろしいでしょうか」「勝手にすればぁ?」というふうに「いちいち事前に聞いてくるなよ、面倒くさい」という反発を生むかもしれないが、これが原因でネットでガタガタもめる例は聞かない。

 問題は、「リンクフリー文化圏の人」が「リンク許可文化圏のサイト」に対して「リンクフリー文化」のルールをもって無断リンクする場合である。これは、「リンク許可文化圏の人」が防御策として「無断リンク禁止」を掲げ、リンクフリー文化圏の人はそれを見て「無断リンク禁止なんてわけわかんないことやってる!」とさらにリンクしてしまったりする。

 これはもうどちらがいい悪いの問題ではない。文化の違いにいい悪いはないからだ。

 たとえば、日本人は「トイレはプライベートな空間」で仕切られているのが当然だが、中国の古いトイレにはドアがなく、うんこしながら友達同士しゃべってたりする。この二つの文化圏の人たちをいきなり混ぜたら混乱が起こるのは当然で、「なんで人がうんこしてるところ覗くんだよ!」「あんた何隠してるの?」とお互いのことを信じられなくなるかもしれない。しかし、これは単に「文化/慣習の違い」なのである。どちらが優れているとか劣っているとかいう問題ではない。

 リンクフリー文化圏は、ウェブという環境に最適化された発想だといえよう。一方、リンク許可文化圏は、日本社会をスムーズに動かすための根回しと気遣いの文化が土台にある。どちらの文化圏の人も、そうすることがよかれと思ってやっている。だからこそかえって問題の根は深いのである。

ブログと二つの文化圏

 ブログ界がもともと「リンクフリー文化圏」から生まれたものであることは言うまでもない。他のブログ記事やニュース記事への言及・引用・リンク、相手にリンクしたことを淡々と通知するトラックバック、いずれも「リンクは勝手にやるもの」という前提に成り立つサバサバ系システムだ。

 そして、ブログ初期のコアユーザー、つまりこんな目新しいウェブツールに飛びつくような人たちというのは、必然的にウェブ文化にどっぷり染まっているわけで、当然ながら「リンクフリー文化圏」の人が大半ということになる。

 ところが、ブログユーザーが増えると、どうしても「リンク許可文化圏」、言い換えれば一般社会ルールに基づいたユーザーが増えてくる。そうすると「トラックバックする前にはコメントするのが礼儀でしょ!」と言う人が出てきたり、「勝手にブログ記事にリンクしないでください」と言ってしまったり、あるいは「トラックバックありがとうございました。お礼が遅れてすみません」とかわざわざご挨拶しに行ったり(おかげでスパムブログが感謝されるという恐ろしい自体になっている)。また、見ればわかるのに「トラックバックさせていただきました」とコメント欄にわざわざ書きにいったりするような例がどんどん増えてくるわけである。

 筆者自身はリンクフリー文化圏の住人なので、こういった例は途方もなく気持ち悪いものに感じられる。しかし、リンク許可文化圏の住人からしてみれば、そういう緩衝材のない無断リンクが極めて「暴力的」なものに感じられるのだろう。

落としどころはどこにあるのか

 「無断リンク禁止」と「無断リンク禁止とか言ってるサイト晒し」という二つの動きは、したがって、二つの文化圏の激しい衝突のあらわれである。しかし、この衝突を回避する方法はあるのだろうか。これは難しい話だ。ここで思いついて何とかなるくらいなら、この10年間のどこかでとっくにカタがついている(笑)。

 もともと、ウェブの世界なのだから、ウェブに根ざしたリンクフリー文化圏がウェブの仕組みにはぴったり合っているといえる。しかし、ウェブの世界と一般社会がどんどん融合しつつある中、一般社会のルールもまた無視できなくなっている。

 いってみれば、ウェブ原住民の「リンクフリー文化」の根付いていた新大陸に、一般社会から「リンク許可文化」を背負った移民が続々と押し寄せているような状況である。「郷に入っては郷に従え」ともいえるし、「時代によって世の中は変わる」ともいえる。しかし、リンク許可文化はウェブという風土に合っていない部分があるのも事実。見通しの悪い島国から、だだっ広い大平原に移り住むようなものだから、一般社会のルールをそのまま通すのもまた無理なのだ。

 原住民的発想の一人としては、「新大陸はこういう風土だから、ちょっと頭を切り換えて原住民的なやり方にも馴染んでね」という啓蒙活動をやっていくしかないんだろうな、と思っている。まあ、そのうち新しい文化が自然と生まれていくんだろう。好むと好まざるとにかかわらず。

必見リンク

そして「批判」に対する態度へと続く

 以上、無断リンク禁止問題の根っこにある文化圏の違いを見てきた。

 もう一つ、ネットで今話題になっているのは「ネガティブリンク」に対する問題である。これは、今回取り上げた「リンクフリー文化」と「リンク許可文化」とは別の問題であるが、しかし、やはり同様の「文化衝突」の問題ともいえるように思う。

 後編「ネガティブリンクと批判する側・される側の論理」へと続く。

ウェブ文化圏シリーズ

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最後の続くで提示されているURLが間違っているようです。
×http://www.kotono8.com/2006/01/25negativelink.html
○http://www.kotono8.com/2006/01/05negativelink.html

後編「ネガティブリンクと批判する側・される側の論理」へのリンクが間違ってるようですが…
25でなくて05なのでは。

あ、間違いの指摘ありがとうございます。
修正しました。

初めまして、偶然辿り着きました。
リンクの考え方については、お互いのスタンスを尊重し合えば全て解決する話だと思います。ウェブ原理主義とローカル個人ルールは一般法・特別法の関係にあるとみて、当該サイト管理人の意思に従う、とすればよい。
ウェブも結局は人対人のコミュニケーションの一手段なのですから、マニアではないごく普通の人々が気軽に情報発信し始めた今、ウェブ原理主義者は個人ルールを無視すべきではありません。それは却って野暮というものです。

まだやっていたのですか、「無断リンク」問題。

Webサイトの公開は、書籍を自費出版するようなものです。だから書籍と同様、無断で参照・引用されるのは当然であり、議論の余地はありません。WWWは元々そう設計されているのですから、使う人の層がマニアだろうが一般人だろうが関係ありません。おともだちだけでサークルを作りたいのなら、別のメディアを考えるべきでしょう。

少なくとも私は、「無断リンク禁止」などという文言はいっさい無視します。「無断リンク禁止」の主張は、リンクする側の表現の自由への挑戦です。その主張を「尊重」してリンクをせずにいたら、表現の自由を自ら放棄したことになってしまいます。モメ事が嫌だからリンクを諦めた、などという泣き言は言いたくありません。

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