「リテラシー」と一致するもの

「マルモリはアイヌ語」デマはなぜ拡散したのか

芦田愛菜と鈴木福が歌ったドラマ主題歌「マルモのおきて」の歌詞について、「マルマルモリモリとはアイヌ語で「侵略者、侵略者、死を与えよ、死を与えよ」という意味」というデマが昨年師走、2011年12月9日にツイッターに投稿され、拡散されていった。投稿者は直後に「うそです」と記していたが、過去ログをたどりにくいツイッターの仕様も相まって、「マルモリはアイヌ語で怖い意味だ」という情報が広まっていった。

その後、アイヌ語研究者による否定ツイートも流れ、わたしもそれをtogetterでまとめた(「マルマルモリモリはアイヌ語」というデマと、アイヌ語の真実 - Togetter)。こちらも拡散されるようになって一応デマは鎮火した……かのように見えた。しかし、約2か月経った今、再びこのデマがツイッター上で見られるようになっている。

なぜ「マルモリはアイヌ語」デマがこんなに拡散し、一度否定されてもなぜまた再び拡散してしまうのか。それは、ツイッターの仕様やユーザーのリテラシーもさることながら、「幽霊アイヌ語」がいまだに放置されていること、そしてアイヌ文化・アイヌ語への無知、ひいてはアイヌへの「未開人」視があると思われる。

※ブクマコメントで「ラテン語だろ」「ラテン語というデマも2chで」と書かれているが、ラテン語についても最初から本文で書いてある。タイトルだけ読んで反応しないようにお願いしたい。

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「ステマ」が成立する理由と、ステマに振り回されない考え方

「ステマ」(ステルスマーケティング)という言葉がネットの一部で話題になっている。宣伝とはわからないように宣伝行為を行なうことであり、ネットでは特に「利害関係のない第三者のクチコミであるかのように偽って、宣伝行為を行なうクチコミサイト上の書き込みやブログ記事」がステマとして批判されている。

ステマが批判されるのは「やらせ」や「サクラ」の延長上にあると見なされるからだろう。そして、わたしもステマを倫理的および戦略的に否定する。

しかし、一方で、なぜステマというものが成り立つのか(あるいはなぜステマだとばれると批判されるのか)、という根本的な部分があまり考察されていないように思う。この点を突き詰めれれば、仮にステマが使われたとしてもそれに振り回されないで済むようになるだろう。

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「もし○○が本当だったら許せない」メソッドのリテラシー不足:沖縄防衛局長「犯す」発言問題

防衛省の田中聡沖縄防衛局長が「(女性を)犯すときに『これから犯しますよ』と言うか」という趣旨の発言をしたとして更迭される事態になった。

しかし、この報道を見ていてわたしはこわいと思った。なぜなら、この発言は「報道陣との酒席での、報道を前提としない非公式発言」と報じられている。つまり、マスメディア関係者しかいない密室での発言である。このような難しい状況での発言について、テレビのニュースなどでも「本当にその発言はあったのか」「あったとして、その正確な表現は何だったのか」「前後のやりとりはどういうものだったのか」「誘導はなかったか」というような検証がまったく抜け落ちている。

それどころか「こういう発言があったということなんですが、どう思われますか」「許せませんね」という街頭インタビューを行なっている。「もし○○が本当だったら許せない」という先取り批判メソッドは、リテラシーの観点からいっても決して行なうべきではないと確信する。

もちろん、基地移転の準備段階となるステップの時期を明言しない理由を述べるのに、わざわざ「犯すときに「これから犯しますよ」と言いますか」というような言葉遣いをするのは適切ではない。それは当然の前提だ。だが、それが事実であると確定するまえに批判するのは先走りである。

そういえば先日も「記者への非公式発言」を理由に辞めた後に「そんなことは言ってなかった」と報じられた大臣がいたはずだ。

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金沢「モスク計画に住人反対」記事読み比べ

石川県金沢市若松町に県内初のモスクが建設される計画について、住人が反対しているというニュースが各紙によって報道されている。しかし、その記事のニュアンスが紙面ごとにかなり異なる。

そこで、今回は各紙の記事を読み比べてみることとした。もちろん、それだけで何か真実がわかるというわけではなく、実際に取材しなければ真相はわからない。これはその前段階としてメディアリテラシーの実践として受け止めていただければ幸いである。

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「島田紳助」さん、お疲れさまでした。人情に篤いヤンキー気質の光と影

島田紳助さんが暴力団関係者との交際を理由に、後輩に対してこのルール破りは大問題であると教えるために自ら最も重い罰を科すとして、芸能界からの全面的な引退を表明した。記者会見の模様も見たが、「紳助さんらしいなあ」という感想を持った。

わたし自身は紳助さんと会ったことはない。テレビの画面を通してのみである。リアルタイムで「ひょうきん族」ブームに遭遇して紳助竜介の漫才を大笑いして見たのが最初だったと思う。その後、紳助さんは漫才を捨て、特に司会やタレント弄りで活躍してきた。現在に至るまで全国区で活躍し続けてきたその実力は間違いないと思う。

個人的な印象の範囲だが、紳助さんはよくも悪くも「ヤンキー」気質だった。特に、恩を感じた相手は絶対に裏切りたくないという気持ちが強いように感じられた。その義理人情に篤い性格から特に後輩には絶大な支持を受け、また今回の引退につながるような人脈についても手のひらを返して絶縁することができず裏目に出たのだろうと思う。世間では毀誉褒貶も好き嫌いも激しいが、多くの芸能人からこんなに「慕われる」人も珍しいだろう。

今回、紳助さんはきっぱりとけじめをつけた。今後は私人の長谷川さんとして「紳助」の看板なしに事業などを行なうことになるのだろうが、応援していきたいと思う。

以下、すべてわたしの個人的感想である。

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「報道表現能力検定」開始!記者クラブ解体後の記者会見参加資格に採用【4/1】

現在、マスメディアやネットメディアの「質」が問われる一方、フリーランスやネットメディアの記者会見参加などが課題となっている状況があります。そんな中、「報道表現能力検定協会」が結成され、「報道表現能力検定試験」を実施、その合格級数に応じて記者会見の参加資格が決定されるという画期的な試みが始まります。

たとえば「今回の官房長官記者会見には、報道表現能力検定準一級以上の合格者が参加できます」「東電記者会見は同二級以上」「広く開かれた記者会見なので四級以上なら可」などと指定することで、会見に参加する記者の「質」を主催側がコントロールし、一方で記者の側も所属にかかわらず実力によって参加できるというメリットが生じます。

この報道表現能力検定の詳細を以下、公開します。

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入試カンニング擁護論を批判する。カンニングは自分自身をおとしめる行為だ

ついに入試問題カンニング学生が「逮捕」つまり刑事事件化するという発展を見せた。愉快犯説も多かった中、私は当初からそうではなく本気で大学に合格したかったのだとツイッター等でも述べてきたが、おそらく私の見方は正しかったように思われる。もっとも、複数による携帯を使わない手法という私の憶測は外れているかもしれない。

その中で「カンニングすることは問題ではない。逆に公正な手段だ。むしろ失敗したことが問題」というようなコメントが当方のブログに寄せられた。私はそのような見方には一切与さない。論点は3つ。

1)本来学力を問われる試験において、学力や問題回答力ではなくズルをするというテクニックによって問題を回避するのは、たとえどのような理由があろうとも、会社の利益のために脱法行為をするのと同じく、適正なことではない。

2)目先の短期的な利益を実現するという結果を得ることが最大の価値であって、手法などはどうでもよい、という考え方そのものが根底的に人生観として誤っている。少なくとも私には採用できない生き様である。

3)そもそも、四年制大学あるいは一流大学に入ることがその後の人生の成功に必要不可欠と考える風潮(新卒の就職活動も含む)そのものが根本的におかしい。この学生も大学に入る以外の選択肢が与えられなかったことから追い詰められたと考えられる。したがって、この学歴前提の社会通念を根底からぶっ壊す必要がある。

以下、詳細に述べる。

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京大入試を知恵袋で訊いた受験生の手口をプロファイルする

京大をはじめとする入試大学の問題を試験時間中に「Yahoo!知恵袋」に投稿して回答を募っていた事件について、京都大学は被害届を提出すると報じられた。約20年前に2回目の受験でやっと京大に入学できた自分としては、こういうことをするのが結局は自分自身のためにならないことを自覚してほしいと思う。

今回は犯人と手口を推理してみる。私の推理としては、共犯がいる。いくら何でも、会場で問題をサイトに投稿するような不審なことをしていれば、試験監督以外の一般受験者からも発見されるはずだ。

したがって、受験者が「超小型カメラなどの手段で撮影した試験問題を外部へ送信」し、それを協力者(家族の可能性もある)が入力してaicezukiのidでYahoo!知恵袋に投稿(入力はPCの可能性もある)、その回答を何らかの手段で受験者に伝えたと考える。

試験会場にて携帯で知恵袋を見るのはリスクが高いので、メールで送信したかもしれない。だが、そういうものを見ること自体がリスクだ。イヤホンも無理。となると、憶測をたくましくすれば、モールス信号を振動で伝える手段などを使って、外部にはほぼわからない状態で回答を得たのかもしれないとも考えられる。いずれにしても、会場で携帯を使っていたとは言い切れない。

そして、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトの「回答の精度」についても最後に述べる。ネット丸写しの誤答によって犯人はすぐ割り出されるだろう。

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【書評】『日本人が知らないウィキリークス』:サイバースペースvs主権国家の闘争

知っている人が書いているというのもあって、『日本人が知らないウィキリークス』を購入して読んだ。ネット上の感想では7人の共著者のうち一部に称賛が集まっているようだが、私にとってはどの章も興味深かった。以下、章ごとに簡単に感想を述べてみたい。

日本人が知らないウィキリークス (新書y)
「日本人が知らないウィキリークス (新書y)」
 [新書]
 著者:小林 恭子,白井 聡,塚越 健司,津田 大介,八田 真行,浜野 喬士,孫崎 享
 出版:洋泉社
 発売日:2011-02-05
 by ええもん屋.com

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「ウィキリークス創設者アサンジの「強姦」原告者がCIA工作員とつながっていた」との報道

ウィキリークス創設者アサンジの「強姦」原告者が、テロ行為で有罪判決を受けたこともあるCIA工作員とつながりがあった、という記事が「Raw Story」に掲載されていたので、こちらも訳しておく。

Anna Ardin

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