ブログサーチエンジンはブログすることについての調査を行い、2003年12月1日に締め切った。 610人の調査回答者は、主にブログサーチ・エンジン(登録ブログ数2800以上)に登録しているブログオーナーだが、他の経路から連絡のとれたブログオーナーたちもいる。 以下、調査結果である。
要約:ブロガーは非常に活発にオンライン活動をしている。全ブロガーの52.8%が少なくとも一日1回はブログを更新しているという調査結果になった。調査されたブロガーの86.4%が週1回以上、ブログしたりブログを更新したりしている。
要約:職場でのみブログするというブロガーはほとんどいない(わずか4.8%だけである)が、ブロガーの53%は職場でブログしているという調査結果だった(「職場だけ」+「家と職場両方」)。
要約:たいていのブロガーがただ1つのブログだけを所有しているが、43.8%もの人が複数のブログを所有している。全ブロガーのうち21%は3つ以上のブログを有しているという調査結果だった。
要約:ブロガーのうちわずか13.4%のみが広告を出しているという結果だった。 最近、BlogAds、GoogleのAdSense(個人ブログは不可)、Skoobieといった大規模な広告ネットワークが、小さなウェブサイトやブログに載せられるようになっている。
要約:広告をブログに載せていないブロガーの58.5%は、広告を載せたくないからとか、広告はブログに馴染まないから、と答えている。調査された全ブロガーの50.6%はブログに広告を載せる可能性がない。10.1%はブログホストの障壁に阻まれているが、それでもブログ記事内にアフィリエイトリンクを張ることは可能なのである。
広告を載せないその他の理由には以下のようなものがあった。
「私のブログの質を高めるかどうかわからない」
「それで利益をもたらしてくれるほど読者は多くないし、読者をいらだたせるだけだろう」
「考えたこともない」
要約:90.7%という圧倒的多数のブロガーは、企業や組織から製品やサービスの情報をブログに載せるよう依頼されたことがない。 これは、広告業界がブロガーたちに照準を合わせていないからかもしれない。
要約:大多数のブロガーはまだ、製品やサービスと関係のある情報をブログするように企業や組織から接触を受けていないのだが、全ブロガーの73.9%はそのような情報を受け入れ、ブログする可能性がある。これは、調査された全ブロガーの29.4%だけしか広告を載せない(広告を載せている、または載せたい)というのとは非常に対照的だ。しかし、ブロガーの41.8%はPRとの接触を受け入れるかもしれないが、その製品を気に入らなければブログに否定的な批評を公表しようと考えている。広告業界はブロガーを非常に注意深く扱わなければならない。最初にその記事を読み、好き嫌いを調べて、それから、製品やサービスの情報をそのブロガーに合わせた形で売り込まなければならない。ブロガーたちは、広告を載せるよりも広報努力の対象として向いている。
要約:調査されたブロガーの多数にあたる52.3%は、グーグルのBloggerをブログするプラットフォームとして選んでいる。 加えて、調査された全ブロガーの52.7%以上が blogspot、blog-city、tblog、TypePadというブログレンタルサービスを使っている。
その他のブログプラットフォームとして挙げられたのは、RadioLand、Salon、MoBlog、Xanga、LiveJournalである。
その他は、新聞、テレビ、雑誌、生活上の経験、宇宙からの電波。
7月26日、ヒューストン・クロニクル紙のベテラン・ジャーナリストが、ウェブログ、つまりオンライン日誌を運営していたために解雇された。
スティーブ・オラフソン(Steve Olafson)はテキサス州ブラゾリア郡を担当地域としていたが、一方――上司に話すことなく――匿名のバンジョー・ジョーンズ(Banjo Jones)を使って個人的な意見と考えをブラゾスポーツ・ニュース(Brazosport News)というウェブログ上に投稿した。
オラフソンはウェブログは単に「創造的なはけ口」だったと告白した。しかし、記事のいくつかはライバル紙をけなしたり、地元の政治かをからかったりしており、クロニクル紙の編集者ジェフ・コーエン(Jeff Cohen)の怒りを買って、オラフソンを即座に解雇してしまった。
この事件は、勤務時間中と時間外の両方で従業員に期待されることについての興味深い議論を生み出した。
電子メール、インスタント・メッセージ、チャット、ウェブサーフィン、テキスト・メッセージが個人のものと仕事のものとの間の境界を曖昧にさせている世界に、新しいメディア、つまりウェブログが参入してきた。
「ウェブログ」あるいは「ブログ」は、新しいものが上に来るようにニュース、リンク、個人的意見を投稿するウェブサイトである。それは通常頻繁に更新され、ブログ読者からのすばやいフィードバックが行なわれる。
テキサス州オースティン在住のニュージーランド人アニ・モラー(Ani Moller)は、自分の名前を付けたウェブサイトanimoller.comを5年間運営していたが、彼女のウェブログは明らかに「勤務時間後のもの」であった。
「経営者を喜ばせないことをウェブサイトに書いてクビになりたくないわ。でも、私の仕事は私のものではない。だから、それについて書くことは意味がない」
モラーは、インターネットはやはり「完全な現実逃避」であると語る。
「なりたい人なら誰にでもなれるし、言いたいことは何でも言える。でも、面と向かってだったら言わないはずなのに、公開掲示板でだったら誰かの悪口を言ったらどうなるか、ということをみんな理解する必要がある」
モラーは、ウェブログの最もよい部分は、すぐにフィードバックが得られる子御、新しい友達ができたことだと言う。
「私はみんなを笑わせることが好き。ウェブサイトを持てばそうできるということで、私は気持ちよくなれるし、続けようと思うわけ。ときどき、あまりよくないフィードバックもあるけど、それほど悩んだりしない。いい人たちが悪い奴より大事だから」
賞を獲得したオンラインの文章職人で「ロビンの秘密旅行(Robyn's Secret Passage)」を運営しているロビン・ギャラガー(Robyn Gallagher)は、ブログを維持することは私生活と仕事生活の境界線を曖昧にするかもしれないけれども、そういう公私混同はこれまでもあった、と指摘する。
ギャラガーは過去の2つの勤務先がインターネット会社だったが、勤務中のアクセスについては意見が違ったという。
「最初の会社は、スタッフがウェブサイトにアクセスし、ネットワークでチャットすることを認めていたのに、社長は、みんなが仕事に集中していないように感じたので、電子メールや会社のイントラネットへのアクセスを制限し始めたんです。2つ目の会社は仕事中に社員がウェブサイトを見たりチャットをすることには構わなかったようだけど、もしみんなの業績が落ちたらどうなっていたかわからないわ」
ギャラガーは、ウェブログは、たいていのオンラインのツールと同様、他の人々とつながることがすべてである、と述べた。
「これは、人がなすべきことです。ウェブログを運営するのは、自分の人生に入ってくるものすべてを分類し、そして日誌のように非常に個人的に得ることができる方法なんです」
合衆国では、イントラネットやウェブサイトにウェブログの能力を溶け込ませている会社もあり、ウェブログはすでに企業の飾りとなっているのである。その背後にある原理は、会議室でのブレーンストーミングでの会話につながっていく。
Paul Bausch、Matthew Haughey、Meg Hourihan著『We Blog : Publishing Online With Weblogs』では、知識(Knowledge)管理に特化されたイントラネット・ウェブログである知識ログ(k-log)の構築を提案している。知識ログでは、社員は洞察、見地、資料・重要文書・電子メールへのリンクを注釈付きで公開し、それが蓄積・検索・閲覧できるイントラネット上で他の人が考えることができる。
著者たちは、低コストで、使いやすく、ダイナミックで打ち解けたウェブログの性質は、複雑な知識管理システムよりもずっと現在の企業環境にマッチしている、と論じている。
ウェブログは、ますます非人間的に仕切られた息の詰まる仕事場に「人間の声」を取り戻すことになるかもしれない。
しかし、知識ログは、個人が仕事場でどのように接続すべきか、どこにラインを引っ張るかをあなたは知っているのだろうか、という問題を提起する。
『ウェブログ・ハンドブック』の著者レベッカ・ブラッド(Rebecca Blood)は、自分の雇用者や仕事に関する機密情報・重要情報を公開する危険を指摘している。
「オラフソンさんの場合は、自分が公開した記事に当てはめていいはずのプロの基準を当てはめないことを選ぼうとしたというまずい判断の結果にすぎません」
ごく普通の方法で、公開された言葉が自分自身にどうふりかかるかわかっているなら別だが、ブロガーは仕事についてウェブログで話すべきではない、とブラッドは書籍の中でアドバイスしている。
ウェブログRebecca's Pocketを運営し、1998年からブログしているブラッドだが、我々はウェブログによってもう一つの「パンフレット書きの大いなる時代」に突入しているのかもしれない、という。
「ウェブログは、人民の声であり、デスクトップ放送であり、ウェブの海賊ラジオです。ウェブブラウザとインターネット接続できる誰でも、ウェブは今や双方向メディアとなっています。それは重要なことです」
批評家は、ブログ現象など一時的流行であり、結局はウェブ上で衰退した何千というひどいデザインの内容のない旧式のホームページと同じ道をたどるだろう、と言う。ブラッドはそれに対して、ウェブログは今のようにずっと最新流行であり続けるわけではないだろうが、消えはしないだろうと述べる。
「それはどこにでもあるもの(ユビキタス)になるだろうと信じています。ウェブログを更新するのは非常に簡単なことになりました。だから、誰でもコード技能を持っていなくてもウェブ表現ができるようになったのです。新着順で並べられて頻繁に更新される形式は、実用的な目的のためにますます使われるようになるでしょう。結婚式の計画、友人や家族との交流、企業イントラネットのトップページとして」
情報を選別し、迅速に新着記事を読者に示すために頻繁に更新される情報を整理し、詳細な情報源へのリンクを保ちながら複雑な話を要約するのに最も適したものとして、ウェブログは5年のうちに定常的に使われるようになるだろう、とブラッドは予言する。
ブラッドはこう結論づける。「ウェブログは、人々が自分の見解を、他の誰かを喜ばせる必要なく表現できるようにする土台です。私はこれは面白く、重要な前進だと思います。今わかっているだけでも、思いがけない結果がいくつか出ています。しかし、話題にのぼるどんなツールでも同じことですが、私たちは適切な限界とは何であるか、この種の頑固な個人出版の成り行きについてまだ学びつつあるところなのです」
なぜ3分でわかるかというと、Flashが3分で終わるからだ!(笑)
なぜこんな登場人物なのかについてはこちらを参照。
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
Flash作成:松永英明(Matsunaga Hideaki)@ことのは編集室
音楽:Shira Kammen "Music of Waters"よりUnconformity(CCライセンスに基づき使用)
2003年12月10日 version 1.0公開
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]]>訳語について:「Movable Typeの中の人」と訳したが、原文は "the people behind Movable Type" "the people who brought you Movable Type"とある。何で名前を書いてないのかは不明。
]]> これはウェブログサービスの父祖である。Bloggerがウェブログの流行を始めたわけではないかもしれないが、その火に油を注ぐ以上の役目は果たした。ドットコムブームの最高潮の時期に設立され、共同創設者エヴァン・ウィリアムズによって完成されたBloggerは、最終的に、2003年2月に検索大手Googleによって買収されて未来を保証された。
その時から拡張され、長らく待望されていた新しい外見のインターフェースを提供し、信頼性が高まった。ただ、その中心には、数十万人の初期のブロガーを引きつきたのと同じ機能が残っている。まず、TypePadやRadioとは違って無料だ。第2に、簡単に使える。特にBlogSpotでウェブログをホスティングするときには、出来合いのテンプレートが使えるし、FTPを触る必要がない。
しかし、Bloggerで一番いいのは、その柔軟性だ。もし自分のサーバーでウェブログを開いたり、自分のテンプレートを作りたいなら、Bloggerはそれを許してくれる。
かつて、それは何よりもまずBloggerをおすすめするための大きな根拠となっていた――そして、私たちは実際にそうした。しかし、2002年にはブログ界でいくつかの興味深い発展があり、しばらく低迷した後、新しい機能が導入されず、Bloggerはもはや切り札を持っていない。
TypePadの基本バージョンは、ブロガーよりも大きな自由度と機能を提供している――料金は払わなければいけないが。LiveJournal と 20Six といった類似サービスは強力なコミュニティーを有しており、初心者にとってもっと面白い機能がついている。
Movable type――あるいはType Padの最も高価なものでも――Bloggerをはるかにしのいでいる。MTは技術的専門知識が必要だし、TypePadは月額料金を払わなければいけないのだが。
ブログの最初期の遺産として以外に、Blogger.comが現在に適合しているとみることは難しい。(by Neil McIntosh)
Typepadはウェブログブロックの新人だが、2003年夏に公開されてからは大好評だ。登録は無料ではなく、他のサービスと比べても安くはない。しかし、ウェブログ界ではそれに見合ったものを手に入れられそうだ。毎月の料金(3.50ポンド、6.40ポンド、10.70ポンド)で、ウェブスペースと、強力・優雅なウェブログ構築ツールが手にはいるのである。高いコースになるほど使える機能も増える。
基本的な特徴は、他のシステムと比較して印象的だ。最低価格の契約であっても、カテゴリー(スポーツ、政治その他あなたが決めた分野に投稿を整理できる)、コメント(読者がいいたいことをいえる)、パスワード保護(誰がサイトを見るかを制限できる)がある。
人気が高い機能の多くは、中間の価格の契約で手に入る。フォトアルバム機能は有用で、追加ソフト(や他の登録サービス)なしに写真を紹介するアルバムを簡単に作れる。また、あなたのドメイン名をTypepadサイトに「割り当て」る機能もある(つまり、あなたのサイトがyoursite.typepad.comではなくwww.yoursite.comにすることができる)。最高額の契約では、あなたのサイトのHTMLを自分の手でいじることができるようになり、これで多くの技術的な達人ブロガーにはうれしいことだろう。しかし、提供されているテンプレートはほとんどいじらなくても大丈夫だ。
しかし、おそらく、最も魅力的なのは、見栄えのいいウェブログを設置するのが簡単だということだろう。もちろん、他のTypepadウェブログと同じように見えるかもしれない(標準として提供されているHTMLをいじらないなら)。しかし、他の人とコミュニケートすることが容易になる。それはブログのすべてともいえる。あなたは1時間で、スタイルはともあれ、設置・稼働し始められる。
もし完全な制御をしたいなら、Movable Type(これもSix Apart制)が最善だろう。しかし、上級者ブロガーではない大半のレベルのユーザーにとっては、利便性に対して支払うことをいとわない限り、Typepadは最善の策のようである。(by Neil McIntosh)
技術的ブログコミュニティを代表するウェブログソフトがあるとするなら、Movable Typeであろう。サーバーとドメイン名が必要で、さらにFTPを使い、Unixをそこにインストールするだけの頑丈な心が必要となるだろう(※訳註:レンタルサーバーでも可能です) 。しかし、それを構築したならば、これまでに作られた中で最も強力な個人ウェブ発行ソフトを手に入れることになる。
TypePadを運営しているSix Apartによって作られたMovable Typeのウリは、使いやすさや安定した機能だけでなく、開発主任ベン・トロットによって設計されたインターフェースによるものでもある。その結果、大量の追加機能がダウンロード・インストールでき、あなたのシステムから最高のものを得るための大量の文書があり、喜んで助けたいと思っている開発者たちの気持ちのよいコミュニティが生まれている。
MTは非営利使用では無料だが、サーバーと、ドメイン名が必要だろう(※独自サーバー、独自ドメイン名がなくてもレンタルサーバーで大丈夫です)。サーバー代として月約10ポンド、ドメイン名の価格は異なるが、.comアドレスは最初の1年で30ポンドくらい。もしインストールが難しそうなら、Six Apartが40ドル(23ポンド)で代行設置してくれる。一度稼働すれば、現時点で稼働している最も強力で最適化されたウェブログシステムを手に入れることになる。しかし、多少基本的な技術力が必要となるだろう(あるいはそれを学びたいと思うことだろう)。(by Ben Hammersley)
ブログソフトの最大の問題は、その多くが初心者ウェブユーザーには難しすぎるという単純な点にある――プログラミング技術や、htmlの知識が充分にない上級コンピューター・ユーザーも含めて。
UserlandのRadioブログソフトで、技術音痴でも基本的できれいにデザインされたブログを立ち上げて稼働させることがすぐにできる。私は、BloggerとMovable Typeは、それを使うにはつまらないと感じていた。これらを理解しようとして時間を費やすには、人生は短すぎる。しかし、Radioは私を楽しませ、設定は楽であった。もちろん、あなたが私よりもコンピューター技能を持っているなら、そしてあなたのブログのいじりかたについてもっとよく知っているなら、あなたのサイトはもっとよくできる。
年に39.95ドル(23ポンド)でこのソフトとホスティングと広範なブログデザイン・テンプレートが手に入る。登録記事を公表するのにRadioは非常に単純なインターフェースを有している――箱に記入してブログに送るだけだ。 Radioのアグリゲーター機能はすばらしく、数百のサイトを登録して、それから1クリックでそこから記事を投稿することができる。Radioの欠点は、望まない読者コメントを編集したり削除したりできず、解説は非公式であり、FAQや使い方については技術的なことについてよく知っている人を想定してしまっているということである。(by Karlin Lillington)
LiveJournalはブログシステムの中で最もコミュニティ指向である。コメントを完全にオフにしてしまったり、投稿できる人を制限したりはできるけれども、デフォルト設定ではだれもがあなたの投稿にコメントをつけることができ、多くの人が投稿するコミュニティ・ジャーナルが存在する。
LiveJournalには「友人」システムがあって、多くのLiveJournalアカウントや興味のあるRSS配給サイトを選択すると、一つのページに集めてきて読むことができる。友達システムを使って、特定の投稿を読んだり投稿したりする人を制限することもできる。
LiveJournalは中心サイトから稼働していて、そこであなたの日記に投稿したり、スタイルをカスタマイズしたり、自分のどの情報を公開するかという選択を管理する。あなたの日記は、他のシステムを使っている人のためのRSS出力があり、これを自分のウェブサイトに埋め込むことができる(http://www.sandm.co.uk/mary/comjournm/comjournm.htmlはその一例)。ウェブサイトから投稿するだけでなく、Windows、Mac、PDA、携帯電話用のLiveJournalソフトがある。電子メールからでも投稿できるし、音声投稿では電話からでも可能だ(今のところは合衆国電話番号のみ)。
http://www.livejournal.com/create.bml に行けばアカウントを作成できる。機能の少ない無料アカウントと、年間25ドル(15ポンド)の有料アカウントがある。LiveJournalでは、投稿をカテゴリー分けするにはあまり選択肢がなく、時系列順でしか見ることができない。しかし、これは単純明快で、他のブロガーとすぐにつながることができる。(by Mary Branscombe)
20Sixは最近市場に登場したBloggerライクなものの一つである。技術的には、これは非常に進んでいる。決め手となる機能としては、SMS(ショート・メッセージ・サービス)やMMS(マルチメディア・メッセージ・サービス)によって携帯電話から写真を送れるというものがある。また、ホスティングとして10メガバイト使えるが、テキストブログには多いくらいだろう。
現在サービスは無料であるが、ずっとというわけではないという。「現時点では20 sixのすべてのサービスは無料です。しかし、ずっとということはありません。いつ、どのサービスがいくらの料金制になるかは未定です。今のところ、できるだけ多くの人たちをブログの世界に導き入れることに専念しています」
機能はよく、その結果できるウェブログは完全に機能する。しかし、何かが欠けている。特に実際にエントリーを造ろうとするときに、サイトデザインがわかりづらく、個人発行システムとしてよく考えられたものというよりは、子供向けにカッコイイものとして全体が見える。(あつかましいティーンエージャーのクリップアート写真は、銀行の学生向け広告のように見える)
にもかかわらず、ここにはいくつかの本当に素敵な機能もあるし、ちゃんとしたサービスを提供するために充分な比率となるスタッフがいる。注目する価値があり、多分、使う価値もあるだろう。(by Ben Hammersley)
b2とWordpressの難解さは困るほどである。このシステムを使っているウェブログは千前後しかなく(Wordpressはbsの後継)、それは有名なソフトウェアの数としてはあまりにも少ない。
Movable Typeのように、Wordpressは自分のサーバーが必要である。それはPHPとMySQLがインストールされていなければならないが、これは嬉しいことに通常は標準だ(※日本ではまだ標準的ではない)。そして、このためにおそらく、本当に必要としている人たちのためだけのものといえる。しかし、一旦小さなハードルを越えると、ユーザーに対して非常にきれいでプロフェッショナルなシステムを提供してくれる。
WordPressと他の類似の上級ユーザーシステムのあいだで最も違っているのは、Wordpressは読者が必要とする時に直接ページを生成するということである。通常、ブログツールは新しいエントリーを登録されると、サーバーに固定ファイルとしてページを保存する。しかし、Wordpressはデータベースからその場その場でページを作る。
これは、全サイトを再構築しなくてもテンプレートを変更するとすぐに見られるということである。もしあなたのウェブログが数千に及ぶ記事を有しているなら、ものすごく有用な機能となるだろう。
それ以外に、TypePad のように、Wordpressは美しい標準準拠コードを生成する。ダウンロードと使用は無料で、活発な開発グループがある。Movable Typeプラグイン提供のような機能はないが、一見の価値はある。(by Ben Hammersley)
もしウェブログ・アプリケーションが宗教的指導者だったら、Blosxom(ブロッサムと発音してください)は仏陀であろう。技術的純正主義者のためのものであるBlosxomは、Perlで150行以下で書かれており、データベースとしてサーバーのファイルシステムを使い、静的・動的生成をこなし、完全なプラグインAPIを提供している。
もしこの文の意味がわからなかったら、Blosxomはおそらくあなたのためのものではない。もしわかるようなら、一見に値する。お好みのテキストエディタを使って投稿を書き、タイトルを1行目に載せておく。それからサーバーにアップロードすれば、Blosxomスクリプトがそれを整形してブログに表示してくれる。FTPかWebDAVかSSHでサーバーにアップロードすればいいし、それはコマンドラインからできる。Blosxomはテキストファイルがどのようにして送られてこようと気にしない。
それだけ? そう。もちろん、自分のサーバーは必要だし、Perlがセットアップされていなければならない。Movable Typeと同様、Blosxomはプラグイン構造であり、追加機能はどんどん増え続けている。
Blosxomは、あなたがプログラムオタクならすばらしいだろう。しかし、平均的なユーザーにとってはあまりにもミニマリストすぎるように思えるだろう。もっとも、Perlスクリプトで遊ぶのが楽しい人なら、これはいいものだ。(by Ben Hammersley)
洗練されていて如才ないが、iBlogがマックユーザーだけのものであることは明々白々である。ほとんどのブログツールと違って、iBlogはデスクトップで稼働し、大規模に、勇ましく、美しく、Apple標準のiAppsに統合されている。
すべてをなめらかに行なうのが好きなブロガーにとって、iBlogはいいものだ。自分のサーバーもいらない。Appleのリモートストレージ&バックアップサービスである「.Mac」に登録するのは悪い考えではない。実際、.Mac が11月24日までは無料でやっていた。
だから、洗練されていて、統合化されており、使いやすい。オーケー、では何が良くないのか? まあ、 iBlog の結果としてできたサイトは非常にきれいであるが、サーバーベースの製品と同じ機能がない。他の第3者のサービスを使わなければコメントもトラックバックもできないし、テンプレートをカスタマイズすることもできない。サーバー上でスクリプトを走らせる必要がある機能は搭載できないし、長ったらしい迂回がなければ、ブログでのあなた自身のurlを示すこともできない。
また、これは非常に高い。単独ユーザーライセンスは19.99ドル(12ポンド)で、.Macには年額68.99ポンド必要である。それはMovable Typeのためのサーバースペースを借りたり、TypePad基本コースに入るのと変わらない。(by Ben Hammersley)
「パソコンは苦手だけどホームページって面白そう」という人にぜひ読んでほしいウェブログの超・入門書。簡単に更新ができて、多くの人に読んでもらえるウェブログの基本的なしくみから運営の基本マナーまで、これ一冊であなたもブロガーになれる!
2004年6月10日発売
このページでは『ウェブログ超入門!』の内容を紹介します。
]]> ウェブログ超入門!サポートページでは、正誤表など載せていきたいと思います。内容についてのお問い合わせもそちらでお願いします(発売後に開設します)。目次
そう考えているあなたには、ぜひウェブログを導入することをおすすめします。
ウェブログ、ブログという言葉が、インターネットでは広く知られるようになってきました。ただ、それはわかりづらい言葉でもあります。
乱暴にいえば、
「ウェブ日記や個人ニュースサイトやテキストサイトや掲示板をすべて一つにまとめて、コミュニケーション機能を強化したもの」
とでも言うしかないでしょう。ウェブログは日記や掲示板などのすべての要素を含んでいますし、またその中のどの機能を抽出して使うかも自由です。非常に曖昧ですが、それだけに包容力のある仕組みだともいえます。
そして現在、ウェブログは日々着実に増えつつあります。
ウェブログサービスはごく当たり前のものとして定着しつつあります。また、これまで存在していた掲示板やウェブ日記サービスでもウェブログ的機能を盛り込んだり、ウェブログになってしまったりする傾向が見られます。あるいは、今までウェブ日記や個人ニュースサイトをやってきた人がウェブログに乗り換える例も増えてきました。
今、「ホームページ」や「インターネットの掲示板」や「電子メール」といった言葉は、新聞などでもほとんど説明なしに使われるようになりつつあります。やがて、「ウェブログ」「ブログ」という言葉は、これらと同じように、ごく普通の基礎的な言葉として認識されるようになっていくでしょう。
本書は、筆者自身がウェブログサイトを運営してきた経験を踏まえて、ウェブログを使って効果的に情報発信する方法についてまとめたものです。まったくの初心者にも、あるいはウェブログをすでに運営している人にも参考になる内容を盛り込みました。
ただし、本書では技術的なことはほとんど扱いません。自分でウェブログツールを設置したり、改造したりする方法については、すでに優れた本が何冊も出版されていますし、あるいはネット上で検索すれば多くの情報が手に入るはずです。
本書で扱っているのは、
「ウェブログでは具体的に、何をどのように発表すればいいのか」
ということです。ウェブログの中身をいかに充実させ、どのように興味深いウェブログを作っていくか、あるいはどのように運営すればいいのか、トラブルを避けるにはどうしたらいいのか、ということです。
つまり、ウェブログという「車」に乗ってどこへドライブしに行くか、あるいは必要なドライビング・テクニックとは何か、守った方がいいルールとは何か、という部分に焦点を当てました。
この本を読めば「ウェブログを設置できた。でも、何を書けばいいのだろう。何をどうすればいいのだろう」と悩むことはなくなるはずです。みなさんの自由な発想の中から、興味深いウェブログ、あるいはウェブログの枠を超えた素晴らしいサイトが生まれるならば、それは筆者にとっても一番嬉しいことです。
そのために必要なノウハウは惜しみなく公開しました。ぜひじっくりと読み取ってみてください。
2004年5月 松永英明
正誤表、訂正など載せていきます。ご質問があればこちらで。
]]> ■【初版訂正・補足】ここでは、もとの原稿をそのまま掲載することにします。まあそういうわけなので、ネット初心者の方には意味不明かもしれません。また、縦書きを想定した表記をしているので、数字などが漢数字になっていたり、アルファベットが全角だったりするのはご容赦を。
]]> ■■掲示板という名のコミュニティ――日本のウェブログ史1インターネットが広まる以前、日本で主流だったのは「パソコン通信」というシステムです。インターネットは全世界がつながっていますが、パソコン通信は特定のサービスごとに閉じたサービスです。一九八〇年代から「商用」あるいは個人運用の「草の根BBS」が展開してきました。その中心となったのが電子メールと会議室(掲示板)です。特に大手商用パソコン通信サービスにおける掲示板コミュニティ(フォーラム)は、インターネットの普及以前に、ある程度成熟したものとなっていました。
インターネットが登場した初期のユーザーの大半は、学生・研究者・IT技術者でした。そして、議論の場としては「ネットニュース」と呼ばれる仕組みが主流でした。その日本語版がfjです。ここでは実名主義が当然のように受け入れられていました。
しかし、九六年ごろから、ホームページと同じ感覚で閲覧・投稿できる無料掲示板レンタルサービスが始まりました。また、簡易BBSスクリプトが公開され、自分でサーバー上に掲示板を設置することも可能になったのです。
ここで二つの流れが出てきました。一つは、個人のホームページに、読者が感想や意見などを投稿するための掲示板を設置する方法です。個人向けサービスとしては、T-CUP無料掲示板などが人気を集め、また各種のスクリプトも用意されました。
もう一つは、掲示板を主体にし、多くのユーザーが集う掲示板コミュニティの成立です。最初に大規模なコミュニティを形成したのは「あやしいわーるど」掲示板でした。九六年にしば氏が開設したアンダーグラウンド/サブカル系情報掲示板です。投稿者名の欄はたいてい空白のままで、誰が誰だかわからない状況の中、ほとんどチャットに近い投稿が毎日のように怒濤のように押し寄せていったのです。
しかし、しば氏による「あやしいわーるど」は九八年にトラブルから閉鎖されました。そこで注目を集めたのは、あめぞう氏が開設した「あめぞうリンク」でした。最初は掲示板コミュニティへのリンク集でしたが、自ら掲示板を設置するようになって、ユーザーを集めるようになります。この「あめぞう掲示板」のころから、掲示板コミュニティはアンダーグラウンドから表舞台へと姿を現わすようになりました。
「あやしいわーるど」では新着の書込みがページの上に積み上げられるスタイルでしたが、これは連続した話題を追いかけにくいという欠点があります。一方、ツリー表示型の掲示板は、関連する話題をまとめて読むには不便です。そこで、あめぞう氏は個々の話題のまとまり(スレッド)が、新しい投稿のある順番に上に上がる形式を編み出したのです。また、話題ごとに掲示板をいくつも設置し、それをまとめて一つのコミュニティとしたのも画期的なことでした。この「あめぞう型」のスタイルは、現在も掲示板コミュニティの多くで受け継がれています。
やがて、この「あめぞう掲示板」も閉鎖されますが、その混乱の最中、九九年五月に西村博之(ひろゆき)氏が開設したのが「2ちゃんねる掲示板」です。スタイル的にはあめぞう型をそのまま真似、さらにいくつかの機能を追加したものでした。「2ちゃんねる」には、ひろゆき氏の飄々としたキャラクターや、独特の運営スタイルもあって多くのユーザーが集まり、やがて日本のインターネット上の情報コミュニティとして最大規模を誇るようになります。
これらの匿名掲示板は、良くも悪くも、匿名なるがゆえの「本音が吹き出る」メディアとして機能しているようです。犯行予告なども載る一方で、匿名同士が協力して作品を作り上げるといった動きもあり、独特の人間関係やコミュニティを作り上げています。
現在の典型的なウェブログは、コメント欄が記事ごとについているため、話題ごとに一つのスレッドができる「あめぞう型」掲示板と似たところがあります。筆者が開設した「女子十二楽坊資料館」サイトでは、個々の記事に投稿できるウェブログスタイルを、来訪者が掲示板として認識してしまった経緯があります。コメントが数十、数百とついてしまうと、ウェブログなのか掲示板なのか、もう区別はつきません。
また、海外では不特定多数参加型のグループウェブログと見なされる「スラッシュドット」も、日本では掲示板コミュニティとして受け入れられています。日本のニュース掲示板「街の灯」は、数人のメンバーがニュース記事を投稿し、読者がコメントをつけるスタイルですが、これもグループウェブログといえるスタイルです。
ウェブログでは、新規記事作成も、掲示板に書き込みを投稿する感覚で行なえます。これはネットの初心者でも始めやすいポイントになっているようです。
ウェブログと掲示板との違いとしては、個々の話題を提示するのが、特定のサイト管理人(ブロガー)なのか、不特定多数なのか、という点が挙げられます。また、過去ログ処理やページ分割については、ウェブログ・ツールはまだ対応し切れていません。
インターネットにウェブブラウザが登場し、ホームページというものが現われたとき、「新着・更新情報(What's New)」というコーナーができるのは必然だったといえます。そのサイト内の更新情報をまとめたページには、やがてそれ以外の情報も書き込まれるようになります。それがウェブ上の小さな日記となるには、さほど時間がかかりませんでした。これがウェブ日記、あるいはハイパーダイアリーと呼ばれるものの誕生でした。
その誕生から考えても、個人的な内緒の日記をウェブで書き始めたというよりは、もともと自分以外の人に見られることを意識していたといえます。もっとも、それは数人、数十人くらいにしか見られないと思っていたのかもしれませんが。
学生や技術者が中心だった初期のインターネットで、最初にウェブ日記へのリンク集をまとめ上げたのは、津田優さんによる「日記リンクス」でした。一九九五年五月十八日に始まった日記リンクスは、ランキングを取り入れるようになって急激に拡大し、六百の日記を集めるようになりました。このころはちょうど、学術・研究関係以外の一般の人たちがインターネットにやってくるようになった時期にも当たります。
また、パソコン通信上でしたが、ニフティサーブで多くの人たちの日記を百日間集めてみようというプロジェクト「メガ日記」が同年十一月一日に始まりました。こうして、ネットワーク上で日記を公開するということはごく普通の行為となり、個人サイトでも重要なコンテンツの一つとして認識されるようになっていったのです。
その一方で、あちこちのウェブ日記の更新情報を取得するシステムも開発されていきました。「べんりくン」「朝日奈アンテナ」といったツールによって、更新されたページを要領よく読むことができる環境が整っていったのです。これもウェブ日記の増加に貢献したものでした。
やがて、ウェブ日記は日記リンクスを中心にコミュニティとして発展していきます。その中で、他の日記についての批評を中心にした「日記読み日記」というスタイルの日記が登場しました。これは他の人に読まれるウェブ日記ならではの存在といえるでしょう。
その中で、ランキング上位のウェブ日記への攻撃によって注目を集めようという日記が登場してトラブルが発生しました。九六年六月、津田日記リンクスはアクセスランキングを停止し、トラブルの原因となった「ばうわう」氏の日記を削除します。日記ランキングを求めていたユーザーたちはばうわう氏の「日記猿人」に移行しますが、ここでもランキング操作などを巡ってトラブルが発生してしまいます。
日記リンク集の方は後に「日記才人」と改名しました。現在もウェブ日記ランキングとしては最大規模を誇ります。このほかにも日記圏などのリンク集が存在しています。
これらの個人日記リンク集とは別に、無料日記レンタルサービスも登場しました。「日記鯖」(九七年)、「大塚日記プロジェクト」(九八年、後にライコス・ダイアリーに統合。後継としてDIDOがある)「さるさる日記」(九九年六月)「エンピツ」(二〇〇〇年八月八日)などのサービスは、それぞれのサービス内でコミュニティを作っていったのです。このレンタルサービスが日本のウェブ日記人口を支えている側面もあります。
その一方で、独自のウェブ日記用ツールも開発されています。初期のウェブ日記ツールは掲示板CGIを改造したものから始まりましたが、やがて「hns―ハイパー日記システム」(一九九八年)、「a-Nikki」(二〇〇〇年)、「tDiary」(二〇〇一年)といった高機能な日記ツールが登場していったのです。それは、英米でのウェブログツールとは独自に発展していった日本のウェブ日記文化の土壌の上に成り立ったものでした。
このように、日本のウェブ日記には「他人に見られることを意識する」「他の日記への言及がある」「ランキングサイト、更新情報を中心としたウェブ日記コミュニティがある」「レンタルサービス内では独自のコミュニティが存在している」といった特徴があります。それは単純に個人が日記帳に書き記してきた秘密の日記とは根本的に違い、むしろ、ウェブログと似ていると言えるでしょう。高機能なウェブ日記ツールはウェブログツールとしても充分に使えるものです。中には「ウェブログ=ウェブ日記」と言い切る人もいるくらいです。
では、伝統的な日本のウェブ日記文化とウェブログは何が違うのでしょうか。あえて違いを探してみるならば、日記には基本的に掲示板的機能がついていないことが挙げられます。日記にコメントしたい人は、同じサイトの別の場所に設置された掲示板に書き込みに行かなければなりませんでした(tDiaryはその二つを融合させたという点で非常に画期的なものです)。その結果、日記間の相互言及は頻繁になされるものの、ウェブログに比べるとはるかに「つながり」が少ないようです。他の人からコメントを付けられることを望まない人はウェブ日記、気にしない人はウェブログという傾向も見られます。
英米のウェブログは、フィルターと呼ばれる形式から始まりました。これはウェブ上で見つけた面白いページを紹介するものです。これとよく似た形式のサイトは、日本でも独自に発展してきました。それが「個人ニュースサイト」と呼ばれるものです。
単に「ニュースサイト」という場合は新聞社などの報道サイトのことを指しますが、「個人ニュースサイト」は少し違っています。基本的に運営者の関心のあるサイトへのリンクを紹介し、そこにコメントをつける場合もあるというスタイルが基本です。これはまさにフィルター型ウェブログそのものであるといえます。また、特定のゲームやソフトの新情報をいち早く伝える限定的な情報型と、とにかくネット上の面白そうな話題は何でも集めるタイプの双方が存在しています。
一九九七年開設の「あ!ネット」など、かなり早い時期から個人ニュースサイトはいくつか立ち上がっていましたが、九八年ごろからじわじわと影響力の大きなサイトが登場しています。同年十月八日開設の「smallnews!」は「自分がインターネットでいくつものサイトを巡回するので、他の人も巡回してるのではないか?と考え、巡回しなくても良いように幾つものニュースサイトを巡回して、目に付いた面白いニュースを掲載するようにした」と書いています。これはまさにギブスンが「他の人のために前もってネットサーフィンする」人たちが登場すると予言したスタイルそのものでした。このサイトはゲーム関連からアイドル情報、コンビニのお菓子まで幅広く取り上げ、その後の個人ニュースサイトに大きな影響を与えています。
同じく十月二十八日開設の「セキュリティーホールmemo」はインターネットのセキュリティーに関する情報を集め続けて今も更新されています。
九九年に入って、大手となる個人ニュースサイトが次々と開設されています。アニメゲーム系情報「変人窟」。食品への異物混入や、ガラスが割られたというニュースに軽妙なコメントをつける「ムーノーローカル」の「どーでもいいトピックス」。オタク系情報「J-oの日記」、ゲーム系情報「TECHSIDE.NET」といった大手サイトは、いずれも一月に個人ニュースサイトとしての情報提供を開始しました。「変人窟」からリンクされたサイトには大量のアクセスが流れ込むために「変人窟効果」という言葉が生まれたり、一日だけムーノーローカルのデザインをまねる「ムーノーデー」が行なわれたりするなど、個人ニュースサイト・コミュニティはこのころから独自に発展していきました。
同年五月八日開始の「ポケットニュース」は一行リンクにコメントという簡潔なスタイルで情報量が勝負。
また、同月にはフリーウェア・シェアウェアなどのツールに関する情報サイト「裏ニュース!」が開設されました。このサイトでは単にリンクするだけでなく、ちょっとしたコラム風に読めることで人気を集めました。この運営者の一人吉野健太郎氏は現在「連邦」というサイトで同様のサイトを続けています。同じころ、「itoya_laboratory*net_news」も始まり、コラム風の記事を公開し続けています。これらのコラム型個人ニュースサイトは、まさにウェブログと呼んでもまったく違和感のないスタイルといえるでしょう。
七月に始まったゲームオタク情報サイト「sawadaspecial.com」は、現在ムーヴァブル・タイプを使ったウェブログに移行していますが、これも個人ニュースサイトとウェブログの親和性を物語っているようです。
二〇〇〇年に入るころにはすでに個人ニュースサイトは定着していました。一月二十日開始の「百式」は毎日一つずつ海外のサイトを紹介するコラムを書き続けています。
同年の末には「俺ニュース」が登場。他の個人ニュースサイトで引用されたサイトをさらに孫引きして掲載する「孫ニュースサイト」の先駆けとなりました。
その後、「Tentative Name」「カトゆー家断絶」「音楽配信メモ」といった影響力の大きい個人ニュースサイトが次々と生まれ、現在もその流れを保っています。
このように見てきますと、特にコメントの長いコラム型個人ニュースサイトは、日本独自で生まれながらまさにウェブログ的であると言うことができます。また、実際にウェブログへの移行も多く見られるようです。
個人ニュースサイトと典型的なウェブログの違いとしては、ウェブログではコメントが個々の記事に直接付けられることでしょう。しかし、英米のウェブログでもコメント機能は最近になって登場したものです。起源はまったく違うものの、英米と日本で同時発生的に同じようなサイトが生まれたことは興味深い現象といえるでしょう。
なお、孫ニュースの伝統として、自分が紹介するURLの情報を知ったサイトの名前を「紹介したいURL(情報元:カトゆー家断絶)」というように書いて、情報元サイトに感謝の意を示しますが、これは日本のウェブログでも受け継がれているようです。
津田日記リンクスの停止から間もない一九九六年七月、「ReadMe!」というランキング型リンク集が開設されました。これは日記ではなく読み物系のページの登録サイトとして展開されていきます。
テキストサイトとウェブ日記の境界線はそれほど明確ではありません。ただ、ウェブ日記は身辺雑記の傾向が強く、日付を強く意識しているのに対し、テキストサイトは一つひとつの文章の独立性が高い傾向にあるといえます。一九九九年一月二十一日開設の「ろじっくぱらだいす」、同年六月開設の「斬鉄剣」などが人気を集めていきました。
空前のテキストサイトブームを巻き起こしたのは、二〇〇一年三月三日に発表された一つのテキストでした。サイトの名前は「侍魂」、その運営者「健さん」が自信を持って発表した「最先端ロボット技術」という文章が「侍魂以前・以後」とさえ言われるほどのムーブメントを引き起こしたのです。
中華人民共和国で最先端ロボット技術として発表された二足歩行ロボット「先行者」をテーマにした軽妙な語り口調の文章は、たちまちネット中から注目を集めました。この文章は文中の文字のサイズや色を巧妙に変え、行間をうまく空けることによって、上手なお笑い芸人や落語家のような笑いの「間」を作り出していました。
笑えるネタを、さらに笑える文字スタイルで表現した「侍魂」の「先行者」テキスト。これは「フォント弄り系」と呼ばれる模倣サイトを続々生み出すことになります。
こうして新しく生まれたテキスト系サイトは、こぞって「ReadMe!」に参加し、アクセス数を競うようになっていきました。「侍魂」以前と以後では参加サイト数は倍増しています。
この後、「侍魂」からリンクされた先行するテキストサイトにもアクセスが増えるようになります。その過程で、サイト間の馴れ合いや抗争も起こっていきました。ちなみに、ウェブ日記に日記読み日記があったように、「ReadMe!」にも「テキストサイトレビュー」が生まれ、これもまた物議を醸しています。
なお、フォント弄りにはかなりのセンスが必要です。「侍魂」は適切な加工によって笑いを誘っていたのですが、スタイルだけを真似してもまったく面白くなく、逆に読みづらくなってしまいます。そのためか、フォント弄り系はすっかり廃れてしまいました。
「侍魂」とほぼ時を同じくして開設されたのが二〇〇一年二月十四日スタートの「バーチャルネットアイドル・ちゆ12歳」です。これはサイトの内容としてはテキスト的でもあり、日記的でもあり、個人ニュースサイト的かもしれません。むしろ、そのサイトのスタイルが大きな注目を集めました。タイトルどおり、サイトの運営者はちゆちゃん(十二歳)という架空のアイドル。可愛らしいイラストを添え、ピンク色の背景色でありながら、ちゆちゃんの書く文章は毒と皮肉に満ちたオタクネタ。そして文末には「バーチャルネットアイドル・ちゆは○○を応援しています」と嫌味にしか見えないコメントが添えられるという強烈なインパクトを持っていました。
ひたすらオタク層のツボを突いたこのサイトは、「侍魂」と並ぶテキストサイト界の超巨大サイトに急成長し、同様のバーチャルネットアイドル(VNI)サイトを生み出す原動力となったのです。
ちなみに、「ちゆ12歳」を有名にしたのが、個人ニュースサイトの「裏ニュース!」と「19歳日記」からのリンクだったことは興味深いことです。
大手VNIサイトとしては「ちゆ12歳」に加えて「ウロンのひとりごと」「米(おこめ)」「777's Loop Lights Loom」が「VNI四天王」と呼ばれ、今も続いています。単なる模倣にすぎなかった多くのVNIサイトは自然消滅していきましたが、「バーチャルネット法律娘真紀奈」など今も続く優良サイトもあります。
テキストサイト・VNIサイトと、ウェブ日記・個人ニュースサイトの境界線は非常に曖昧なものです。有名テキストサイトの一つ「ろじっくぱらだいす」は、そのメイン記事を「日想」として、つまり日記スタイルで書いています。「ちゆ12歳」も同様ですが、内容的にはむしろコラム型個人ニュースサイトと呼んだ方がわかりやすいかもしれません。一方、「侍魂」では、日記とメインのテキストを完全に分離していました。
テキストサイトとウェブ日記を分けて考える発想は、英米での「日記かウェブログか」という論争を思い出させます。ウェブログは個人の日常などを書くのではなく、もっときちんとしたテキストを読ませるものだ、という英米の古参ブロガーの見解に基づけば、テキストサイトは極めてウェブログに近いものということができるでしょう。
実際、「ウェブログはテキストサイトを更新しやすくしたもの」と考えている人もいるほどです。それもまた一つの真実と言えるでしょう。
日本のメディアで「ウェブログ」が初めて取り上げられたのは、二〇〇〇年二月二十三日にオンラインマガジン「HotWired Japan」に掲載された「人気急上昇中の「ウェブログ」とは」という記事です。しかし、この時点ではまだほとんど注目されませんでした。日本国内では、掲示板や日記、個人ニュースサイトといった独自のコミュニティがすでに定着しており、それと似て非なるサービスに対して関心が持たれなかったのも当然と言えば当然かもしれません。
二〇〇一年八月二十四日、個人ニュースサイト「百式」で、レンタルサービスの「ブロガー」が紹介されています。「海外では既に無数のWEBLOGが設置されており、WEBLOGランキングみたいなサイトまで出てくるぐらい定着している。なぜ日本でこういったシステムが流行らないのか不思議なくらいである」と「百式」は首をかしげていますが、実際に日本で流行るにはまだ一、二年の時間が必要でした。
9・11テロ事件によって英米ではウェブログが注目されたものの、日本での反応はまだまだ鈍いものでした。個人ニュースサイトでよく取り上げられている記事をランキングする「ばるぼらアンテナ」は、英米ウェブログの同様のシステム「blogdex」をまねて作られたものです。URLも「blogdex.tripod.co.jp」と「ブログ」の文字が含まれていますが、紹介文には「個人ニュースサイトからのリンクが多い順に並んでいます」と書かれていました。まだまだウェブログは認知されていなかったのです。
二〇〇二年に入って「HotWired Japan」などで数回のウェブログ関連記事が掲載され、伊藤穣一氏などのIT関係者や、学生、研究者たちが少しずつウェブログを導入していきました。そんな中、十月二十三日、一つのウェブログ記事が波紋を呼びます。mesh(東大大学院メディア環境学研究室)の明神光浩さんが書いたこの一文が物議を醸したのです。
「blogが一般的になったときに、「mesh抜きでは日本におけるblog草創期を語れない」と言われるようなサイトにしていきたいですね。(言いすぎ?)」
これに対して「日本におけるウェブログの草創期はすでに終わっている」という反論があちこちから押し寄せました。つまり、個人ニュースサイトやウェブ日記といった日本独自のコミュニティにおいて、ウェブログの土台はすでにできあがっている、という反応です。「ウェブログとはまったく新しいもの」と考えていたmeshの人たちと、「ウェブログは日本にもすでにある」というネットの住人たちの認識のずれが明確になったのでした。
ただ、この騒動によって「ウェブログ(ブログ)」というものがあるのだ、ということはネット中に広く知られることになります。ウェブログの定義とは何か、今までの日本のネットコミュニティと何が違うのか、ということがしきりに論議されますが、じわじわとウェブログという言葉は広がり、ウェブログを導入する人も増えていったのです。
二〇〇三年夏にはいくつかのウェブログ入門書が出版され、ブロガーたちも増えていきます。ただ、このころの中心的なブロガーは、プログラマーやウェブ技術者などのIT関係者、大学の情報技術研究者や学生、そしてネットに強いライターなどでした。つまり、ウェブログはこのような技術を試したいという専門的な人たちのものだったのです。
しかし、その流れが変わったのはその年の末のことでした。十二月二日にニフティがレンタルサービス「ココログ」を開始したのです。パソコン通信時代以来の「フォーラム」で鍛えられた猛者を擁するニフティがウェブログ界に参入したことで、文章を書いて表現したい人、コミュニティを運営したい人たちがウェブログを使い始めるようになりました。それまでは技術的関心に偏っていたウェブログが、一般のネットワーカーのための表現ツールに化けたのです。
ニフティのユーザーでも、フォーラム以来の古参ネットワーカーは確かにごく一部です。しかし、このごく一部のユーザーがココログ上で派手に記事を書き、コメントし、トラックバックしたことで、どういう風に使えばいいのかが多くの人にわかりやすくなりました。もともと、フォーラムは「他人の書いた文章にツッコミを入れる」ものと言えます。そのため、コミュニケーション機能が充実したウェブログは、フォーラム出身者にとってまさに理想的なツールだったのではないでしょうか。
同月にはアメリカの有名なブロガー、レベッカ・ブラッドの『ウェブログ・ハンドブック』も翻訳出版されました。これはウェブログのコミュニティについて論じた本であり、それまでの技術書とは一線を画していました。これも「技術者から一般のユーザーへ」という流れを象徴するもののように思われます。
今後、ウェブログという言葉は特別なものではなくなるでしょう。「ウェブ日記」や「掲示板」や「チャット」や「メールマガジン」と同列の普通名詞として「ウェブログ」が語られる日は、そう遠くないのではないでしょうか。
]]>英米圏のウェブログが爆発的な人気を得たきっかけが、9・11事件後のウォーブログであったため、「ウェブログは既存のマスメディアに取って代わるのではないか」といった論調も出ています。あるいは、「ウェブログによって今までのジャーナリズムが大きく変化する」とか「次世代ジャーナリズムである」という見方もあるようです。
ウェブログ型の情報発信は、既成のマスメディアとどのように違うのでしょうか。これについて、二〇〇三年十月十六日、メディア評論家ジェイ・ローゼンはウェブログ上で「ジャーナリズムにおけるウェブログ形式は何が急進的なのか?」という記事を発表しました。また、それを受けてメディア・コンサルティング&デザイン工房「HypergeneMedia」のウェブログでも補足意見が述べられています。
ここで挙げられた項目をもとに、ウェブログと今までのジャーナリズムの違いをまとめてみましょう。
○旧来のジャーナリズムはプロの領域であり、素人はお客様である。。
ウェブログは素人の領域であり、プロはお客様である。
○旧来のジャーナリズムは、参入への障壁が高い。
ウェブログでは、参入への障壁が低い。資本はほとんど必要ない。
この二項目は、一般の人がジャーナリズムに参入しやすいシステムこそがウェブログであると述べています。つまり、だれもがジャーナリストになれる手段としてウェブログがある、という見方です。
○旧来のジャーナリズムは書き手と読み手が分かれている。
ウェブログでは、読者は同時に書き手でもある。他の書き手のために書く。
○旧来のジャーナリズムでは、担当編集者が読者の代理を務めた。
ウェブログでは、読者が編集者の代理を務めてくれる。
○旧来のジャーナリズムは、内容を作成するときに読者が関与しない。
ウェブログでは、読者が関与して記事を作るので、読者との緊密な関係が作られる。
○旧来のジャーナリズムでは、読者は受動的にニュースを消費するだけ。
ウェブログでは、読者と共同作業・会話して記事を作るため、有意義な経験をもたらす。
○旧来のジャーナリズムでは、双方向コミュニケーションを提供しない。
ウェブログでは、対話性があり、読者参加が可能であるため、若者を引きつける。また、読者の意見を取り入れ、協力することで、正確で興味深い記事を生み出すことができる。
この五項目は、「ウェブログでは情報の発信者と受け手の区別がなくなり、共同作業が行なわれる」というようにまとめることができます。一方的な情報発信ではなく、多数の人の共同作業によって情報が組み立てられるのがウェブログというわけです。つまり、「新聞は講義であり、ウェブログは会話である」というふうにまとめることができるでしょう。
しかし、「ウェブログ」対「旧来のジャーナリズム/マスメディア」といった対立には疑問を示すブロガーも少なくありません。「ウェブログがマスメディアに取って代わる」というのはあまりにも極端な話です。むしろ、ウェブログとマスメディアはお互いに補い合うようになるという見方が妥当ではないでしょうか。
実際には、ウェブログとマスメディアの融合も始まっています。たとえば、現在、まだ少数ではありますが、ジャーナリスト自身がマスメディアのサイト内でウェブログを始めているところがあります。英国の進歩系新聞ガーディアンのサイトや、日本のIT系ニュースを伝えるCNETでは、記者によるウェブログが開設され、効果的に話題を掘り下げて伝えています。
その一方で、少数のブロガーがアマチュア・ジャーナリストといえるような情報を独自に収集して伝えるようになっています。たとえばブロガーのイベントがあれば、翌日には参加者による詳細なレポートがいくつも読めるのは、その一例と言えるでしょう。
また、マスメディアの報じない独自ニュースを掘り起こして伝える人たちもいます。カリフォルニア大学バークリー校のケルヴィン・ディーニハンは「カルスタッフ」というウェブログで、学校やバークリー市のローカルニュースを独自に流してきました。それは地元新聞などに取り上げられることもしばしばありましたが、大学入試問題に関するトラブルについてのウェブログ記事は、世界的にも有名な大新聞「ロサンゼルス・タイムス」に引用されたのです。
そこまで行かなくても、マスメディアの情報に対して批判や補足を加えたり、意見を述べるという意味で、ウェブログはマスメディアを補う役目を果たしていると言えます。
ウェブログの世界にも、食物連鎖の構造がある――ウェブログとマスメディア、ブロガーとジャーナリストの関係を、生態系システムにたとえたブロガーがいます。「マイクロコンテント・ニュース」を運営するジョン・ヒラーがその人です。そして、「ブロゴスフィア」=「ブログ」+「バイオスフィア(生物圏)」という言葉を使ってこの概念を表現しました(もともとブロゴスフィアは「ロゴス(議論)」+「スフィア(圏)」というダジャレだったのですが)。
ブロゴスフィアには、他の生態系と同じように、肉食動物と餌動物、進化と創発、自然淘汰と適応といった現象が見られる、とヒラーは指摘します。
まず、その食物連鎖の土台に来るのが「草の根ジャーナリズム」としてのウェブログです。ここには二つのスタイルがあります。
まず「目撃者ウェブログ」、つまり自分自身の実体験を書くウェブログがあります。これは9・11事件のときに多くのニューヨーカーが自分の体験をウェブログとして公開した現象に見られるように、マスメディア以上に生々しい直接体験を報じるものです。
もう一つは「専門分野ウェブログ」です。自分が詳しいジャンルについて(マニアックに)詳細な情報を提供するものです。これは、その専門分野については一般紙の記者も及ばない情報を与えてくれるでしょう。
これらの大量の個人ウェブログの記事をすべて読むことは、さすがに誰にもできません。そのため、記事をつまみ食いする「あんちょこ」サイトが存在しています。日本ではブログマップなどが該当します。また人気のある話題については「反応リンク集」が作られることもあります。これは、膨大な個人ウェブログを「捕食」している存在ともいえます。
これらの個人的なウェブログ以外に、人々が共同して情報を持ち寄る「グループブログ」が存在しています。もっとも、日本では今までこの役割を掲示板コミュニティが担ってきたかもしれません。英米ではクロージンやスラッシュドット、メタフィルターといったコミュニティ型の共同ウェブログが大きな役割を果たしています。
英米では、これらの「草の根ウェブログ」で示された情報をマスメディアが報じたり、記者がウェブログを参照したりする現象が現われています。
ここに「ウェブログ」→「マスメディア」という食物連鎖が見られます。
しかし、ウェブログは捕食されるだけではありません。逆にマスメディアを捕食することもあります。現在はむしろこのタイプの方が多いかもしれません。
一つは「適者生存」の法則を再現するかのような「フィルターとしてのウェブログ」です。ブロガーは興味を持った記事を自分のウェブログからリンクします。このブロガーによるランキングによって、どの記事が評価されたかが一目瞭然となります。
もう一つは、メディア報道をチェックする機能です。マスメディアに誤報や偏りがあると感じたとき、ブロガーはそれを多くの人に知らせることが可能です。
この一連の流れをまとめると、以下のようになります。
1)ウェブログによる草の根報道
2)あんちょこサイトによるウェブログ記事の選別
3)マスメディアによる報道
4)ウェブログによるフィルターと事実チェック
このサイクルは何度も繰り返されていきます。これがヒラーによる「ブロゴスフィア」の全体像なのです。
ヒラーの語るブロゴスフィアの食物連鎖は、実際には日本ではまだそれほど機能していないようです。というのは、ウェブログが独自に報じた内容をマスメディアが後追いするような状況にはなっていないからです。それは、独自記事を流すだけのウェブログが少ないこともあるでしょうし、またマスメディアの側がウェブログを情報源にしたがらないという要素もあると思われます。
となると、現在のウェブログはニュース的な内容に関してはマスメディアに従属する位置にあるといえます。
このことをデータから検証するために、実際に「ウェブログで言及されたページ」を調べてみました。日本のウェブログからリンクされた記事をランキング表示している「ブログマップ」で集められた二〇〇四年二月、三月の月間ランキング上位二〇〇ページが情報源です。今回は、「ニュース記事」と「ウェブログ」と「その他」に分けてみました。ニュース記事は企業運営の報道サイトによるニュース、ウェブログには個人ニュースサイトも含みます。その結果は以下のとおり。
二月 ニュース記事 九一ページ(四五・五%)五九一八ポイント(四五・一%)
ウェブログ 三六ページ(一八%) 二二一四ポイント(一六・九%)
その他 七三ページ(三六・五%)五〇〇一ポイント(三八・一%)
三月 ニュース記事 九〇ページ(四五%) 六二一八ポイント(四一・九%)
ウェブログ 四〇ページ(二〇%) 三二六六ポイント(二二・〇%)
その他 七〇ページ(三五%) 五三五七ポイント(三六・一%)
ポイントは様々なウェブログからリンクされた数の合計です。
この数値を見ると、マスメディアによるニュース記事が四割強、ウェブログ同士が二割、それ以外の話題のサイトへのリンクが四割足らずという傾向が見られます。つまり、ウェブログ記事へのリンクより、マスメディアのニュースの方が情報源として二倍以上活用されているわけです。ウェブログにはマスメディアの報道が欠かせない状態にある、といえるでしょう。
このようにメディア報道が重視されている場合、それをどのように解釈するかという問題が出てきます。つまり「メディア・リテラシー」の問題です。
メディア・リテラシーという言葉について、吉見俊哉氏は『情報文化の学校』(NTT出版)の「メディア・リテラシーの実践」でこのように述べています。
「メディア・リテラシーとは、私たちの身のまわりのメディアにおいて語られたり、表現されたりしている言説やイメージが、いったいどのような文脈のもとで、いかなる意図や方法によって編集されたものであるのかを批判的に読み、そこから対話的なコミュニケーションを作り出していく能力のことで、発信能力でも情報処理能力でもない」
しかし、ウェブログでもよく見られるのは、ニュース報道された記事をリンクし、それについてほとんど、あるいはまったくコメントを付けずに紹介するものです。中には見出ししか読んでいないのではないかと思われる場合も少なくありません。
たとえば「ウェブログの三分の二は三日坊主」という見出しの記事が多くのウェブログで参照されたことがありました。このとき、少なからぬウェブログが「三日坊主で終わらないように続けるにはどうすればいいか」という観点でコメントしていました。しかし、実際は「レンタルウェブログでは、登録されたうちの三分の二が放置されている」、つまり「お試し登録をしたものの、結局使わなかった人が三分の二」という統計結果の報道だったのです。つまり、特にブロガーが飽きっぽいというわけではありません。これは、実際に記事を読んだり、あるいは元の統計に当たれば間違わずに済んだはずなのです。
「わたしたちはプロのジャーナリストと違って、取材する能力がない。だから、マスコミの情報を信じるしかない」と言う人がいます。しかし、インターネットという手段がある現在、それは言い訳になりません。
たとえば、ネット上では新聞やテレビのニュースサイトがいくつもあります。ここで、同じ話題についての各社の報道を対比検証することによって、一つのメディアでは隠されていたことが明らかになったり、ニュアンスの違いがはっきりしてきたりします。
また、場合によっては当事者自身の発表を手に入れることができるかもしれません。会社のプレスリリース、科学者の論文、芸能人のウェブ日記(最近はウェブログに移行しつつあります)などの一次情報を手に入れ、それを検証することもできるのです。
手間を惜しまず、ニュースソースに当たること。これが重要なポイントなのです。
色々なウェブログを見ていると、一つの記事についても様々な情報があることがわかります。これはメディア・リテラシーを高める練習に使えるかもしれません。また、あなた自身がウェブログを運営していく上で、報道された記事をどのように扱うかということは非常に大切なことになってきます。たとえ独自の情報源を持たないとしても、マスメディアの報道をうまく「料理」することによって、意味のある記事を公開することが可能になります。
二〇〇三年十月、中国初の有人宇宙飛行船「神舟五号」が打ち上げられ、パイロットの楊利偉氏が無事地上に帰還しました。この件について、日本のマスメディアでは「中国に追い越された」というような論調が目立ち、この件についての詳細な情報はあまり手に入らない状況でした。
しかし、中国情報に関心のあるウェブログが、「アジア初の有人宇宙飛行」について、詳細な情報を追いかけ始めたのです。情報源は主にインターネット。特集を組んでいた中国語ニュースサイト「新浪網」を中心にして情報を集め、「BLOG::TIAO」やわたしのウェブログなどで、大手メディアよりも早く、充実した内容を伝えることができたのです。
もちろん、中国のメディアからの情報でしかありませんから、現地で直接取材というわけにはいきませんし、また国家統制されている可能性もありましたが、それでも「そのように報道されている」という事実は一つのデータとして有用なものとなります。
当初は伏せられていた宇宙飛行士の氏名も、ウェブログの方が日本メディアより先に伝えました。パイロットの詳しい経歴や、宇宙食が月餅という話題なども同様です。さらに、関連情報を掲載するウェブログがコメントやトラックバックでつながることで、必要な情報がまとまった形で手に入るようになりました。このとき、ウェブログはマスメディア報道を「補完」したのです。
ナレッジマネジメントは「知識管理」「知識経営」とも訳されます。組織の中にいる個人が一人ひとり持っている知識や、経験に基づいたノウハウなどを共有・交換し、創造的なものを生み出していくことです。また、そのための仕組みや手法もナレッジマネジメントと言われます。
日本では、野中郁次郎教授・竹内弘高教授の『The Knowledge-Creating Company』が一九九五年に発表されてから有名になりました。特に野中教授の「SECI(セキ)モデル」は人間の知的創造活動をモデル化したものの一つです。
SECIモデルを理解するには、まず「暗黙知」と「形式知」という用語を理解しておく必要があるでしょう。「暗黙知」はハンガリーの物理化学者・社会科学者のマイケル・ポラニーが提唱した概念で、「形式知」は野中教授が提唱したものです。野中教授の共著『知識創造の方法論』によると、
・暗黙知......知っていても言葉には変換できない経験的、身体的なアナログの知
思い(信念)、視点、熟練、ノウハウなど
・形式知......暗黙知を言葉や体系にした、デジタルで共有可能な知
とまとめることができます。
これらの二つの「知」が相互に変換されることによって、新たな知識が生まれてくるのです。「暗黙知」を言葉で表現して「形式知」に変え、「形式知」を分析・検索することで新たな「形式知」が生まれ、その「形式知」を消化すると個人の「暗黙知」に変わります。このプロセスを解明したのがSECIモデルなのです。
SECIモデルは以下の四つのプロセスをたどります。
(1)Socialization(共同化)......暗黙知→暗黙知
経験のある人から、経験のない人へ、共通の経験を共有することによって、言葉ではなく体験によって知識を伝えるプロセス。顧客との共体験も含まれます。
これを促進する空間が「創出場」で、自由なふれあいと交流が特徴です。
(2)Externalization(表出化)......暗黙知→形式知
個人が覚えた知識を、言葉や図表の形に表現していくプロセス。また、言葉を磨いて、新たな観点を持つ概念を生み出していきます。
これを促進する空間が「対話場」で、発言の権限が与えられている必要があります。
(3)Combination(連結化)......形式知→形式知
すでにある形式知を体系的に結びつけ、新たな形式知を生み出すプロセス。表現された概念を分析・結合して再構成していくプロセスでもあります。
これを促進する空間が「システム場」で、IT技術の活躍する場所です。
(4)Internalization(内面化)......形式知→暗黙知
行動し、実践することによって、得られた形式知を自分自身のものとして身体的に取り入れるプロセス。これはまた(1)の共同化プロセスへとつながっていきます。
これを促進する空間が「実践場」で、実践によって知識につなげる空間です。
では、このSECIモデルをウェブログ・コミュニティに当てはめてみましょう。ただし、ウェブログ自体が文字を主体としているので、多少拡大解釈が必要かもしれません。
(1)S:共同化......暗黙知→暗黙知
自分の実体験、他の人のウェブログやニュース記事を読むこと、掲示板での肩肘張らないやりとり、メールやメーリングリストによる意見の交換などによって暗黙知を広げていきます。これはまとまった形では表現されていない状態であり、「創出場」の自由な空間に当てはまると思います。
(2)E:表出化......暗黙知→形式知
自分の頭の中でまとまったことを、一つのウェブログ記事としてまとめ、発表します。そして、新たなアイデアを作り出すことになります。「対話場」では、誰もが臆せず主張できる権限を持っている必要がありますが、ウェブログは、誰でも遠慮なく記事を公開できます。
(3)C:連結化......形式知→形式知
ここがウェブログの本領発揮です。数多くのウェブログ記事の中から、関連する記事がトラックバックやコメントによって結びつけられていきます。また、ブログマップや「反応リンク集」などによって話題となっているキーワードがピックアップされます。そこから触発されて、また新たなウェブログ記事が作られていきます。こうして、様々な意見がまとめられていきます。
これはまさに「システム場」にふさわしい環境といえるでしょう。
(4)I:内面化......形式知→暗黙知
連結されたウェブログ記事の数々を読むことによって、自分なりの解釈や納得が生まれ、定着します。この「実践場」で知識をいかに「自分のもの」とするかは、それぞれの人の思索と実践にかかっているといえます。
また、この「内面化」のためには「物語」が重要な方法だといいます。「物語」とは、自分自身の経験(主観的事実)を語ったり、他の人の物語を聞いたりするものです。
そして、これはまた新たなSECIサイクルへと入っていくわけです。
このように見てみると、SECIモデルはウェブログ界での知識創造のプロセスをよく表現しているように思われます。ただし、SECIモデルは社内など限られた空間を想定されているのに対し、ウェブログ界は境界がないところが大きな違いだといえます。会社という枠組みを超えて、ネットワークに参加できるすべての人が作り上げる知識創造のプロセスがウェブログ型SECIモデルといえるのではないでしょうか。
(※SECIならびにウェブログ型SECIモデルについての解説図版を入れる予定でした)
]]> ログといえば丸太だが、なぜそれが「日誌」の意味で使われるようになったのか。それは航海の世界と深い関係がある。
この単語はいろいろと比喩的な意味で使われるが、特に航海における「測程儀」――船の速度を測る装置のことを指す。この意味で使われるようになったのは、綱のついた木片が海中に投げられて「丸太」のようにその場所にとどまって動かず、決まった時間にどれだけの長さの綱が伸びるかによって船の速度を測定した、という事実に基づいている。これはcommon logという。この言葉は現代のpatent log(曳航測程器、パテント・ログ)やcontinuous logにも使われているが、今はまるで違う方法で測定されている。
通常の測程儀は、測程板(log-chipまたはlog-ship。これだけでlogと呼ばれることもある)と測程線(log line)でできている。測程板は半径5~6インチの薄い木製の扇形(四分円)で、弧の部分に鉛を付けて、垂直に立つようになっている。これは角と円弧の両端で測程線と結ばれている。測程線は7フィート3インチ(約14.4m)ごとの結節(ノット)で等間隔に分割されている。測程砂時計(log glass)の28秒間にどれだけ進むかで、時速何海里の速度であるかがわかるようになっている。測程線は測程リール(log reel)で巻き上げられていて、測程時には自由に伸びるようになっている。測程儀が海に投げられるとき、測程板は水面にとどまって固定され、測程線が後方に伸びる。28秒間にどれだけの結節分だけ進んだかによって船の速度がわかる。例えば28秒で3つの結節分の長さだけ進んだら、時速3海里というわけである。測程儀はその後改良され、まったく違う機構のものも登場したが、logという言葉はそのまま受け継がれた。
こうして測程儀=ログによって測定された船の速度の記録、あるいは日々の船の航行状況の記録を総じて「ログ」というようになった。また、船の巡航・航海の航海記録すべてもログと呼ばれる。ログブックは航海日誌である。
さらに、蒸気船その他の機械のエンジンやボイラーの稼働状況についての記録や表もログというようになった。
現在は航海日誌だけでなく航空日誌もログブックと呼ばれる。コンピューターの世界では、データの変更などコンピューターの使用に関するさまざまな時間推移記録が「ログ」と呼ばれる。
そういうわけで、ウェブログ(蜘蛛の巣丸太)は「ウェブにおける記録」という意味を持つようになったのである。日本でいえば以前からウェブ日記やニュースサイトの伝統があるが、これらすべて広義のウェブログに当たることはいうまでもない。ただ、限定的には、MovableTypeなどの「いわゆるブログツール」を使っていて書き手がブログと意識しているもの、を指す言葉として使われているようだ。
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パネルディスカッションでは時間切れでカットになってしまいましたが、実は「ウェブログ&アフィリエイトで便利なツール」を紹介する資料も用意していました。以下、簡単に紹介しておきます。