「復興」と一致するもの

震災一年目に読み直してみた鴨長明『方丈記』の地震記述

あの大地震から一年。復興はまだこれからの段階である一方、「一つになろうニッポン」のかけ声とは裏腹に新たな対立と罵り合いが繰り広げられた一年であったと思うが、少なくとも多くの人たちが「今まで考えていなかったこと」を考える契機になったとは思う。

わたし自身は昨年6月の文学フリマで『東日本大震災でわたしも考えた』を発表したが、基本的にはわたしのスタンスは「我が身を守ることに汲々とするより、今、ここでできる範囲の無理のない貢献」ということで、ささやかながらできることをやってきたつもりである。たとえば、震災後に買った米は今まで一年間ずっと福島県産である。もちろん昨年秋の収穫分についても、放射線量が厳重にチェックされた会津喜多方産を購入しているため、放射性物質に関してはまったく心配していない。

そんな中、ふと読み直してみたいと思ったのが鴨長明『方丈記』だった。ここには、大地震を含めていくつかの天変地異や遷都という大きな変化をきっかけに、鴨長明が強い無常感を抱くことが記されている。震災をきっかけにいろいろと考えることになったという点に限ってではあるが、現代のわたしたちとも共通しているところがあると思う。

今回は、方丈記の冒頭および元暦大地震関連の記載部分を改めて訳し直してみた。

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DeNA参入で変わる歴代プロ野球親会社「業種」勢力図

一部にはいまだ反発などもあるものの、横浜ベイスターズが2012年度から横浜DeNAベイスターズになることがほぼ確定したようである。DeNAもIT系の企業と見なすならば、現在のプロ野球オーナー企業の中ではSoftbank・楽天と合わせて三社がIT系ということになる。

7年前、東北楽天ゴールデンイーグルス誕生時(Softbank参入前)に、わたしはこのような一覧をまとめていた。

このとき、わたしは書いた。「IT系企業がプロ野球球団のオーナーになるというのは、時代を反映しているような気がする。……ということは、歴代のプロ野球の親会社の業種を見れば、世相が浮かび上がってくるだろうか? と思い立って、ごく簡単ながら、これまでのプロ野球オーナー会社の業種をまとめてみた」。

今回の勢力図の変化もやはり世相を表わしているように思われる。楽天・SoftbankというIT系2社の参入以来、西武ライオンズのオーナーが関連企業内で変化した以外には大きな変化はなかったが、DeNA参入で勢力図がまた少々塗り変わったようだ。

そこで、前回の集計を修正した上で、今回は新たに視覚的に一覧できる塗り分け図を作成してみた。

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松本復興大臣の発言の一番の問題点は「中央が上・地方が下」意識

宮城県庁を訪れた松本龍復興大臣の発言が波紋を呼んでいる。村井知事が大臣より後に入ってきたことに対して怒りを表明し、さらに「今の最後の言葉はオフレコです。絶対欠いたらその社は終わりだから」とも付け加えた。

しかし、この発言を東北放送(TBC)がニュースで報じたことから発言が拡散し、全国メディアでは一部の局しか報じなかったこともあって批判が起こっている。

この松本大臣の発言にはいろいろとツッコミどころがあると思われるが、その中でも一番の問題点は「中央が上、地方が下」という中央集権的意識ではないかと思う。

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第12回文学フリマ【エ-01】ことのは(@kotono8)『東日本大震災でわたしも考えた』ほか告知 #bunfree

 6月12日日曜日に京急蒲田・大田区産業プラザPiOで開催される第十二回文学フリマに出展します。ブース・サークル名は(小展示ホール)【エ-01】「ことのは(@kotono8)」です。今回はお隣【エ-02】「奇刊クリルタイ」との合体配置です。

 今回は「第十二回文学フリマ・スタンプラリー(無料/非公式)」を開催することになりました(詳細はこちらの紹介記事をご覧ください)。

東日本大震災でわたしも考えた 表紙

 新刊は『東日本大震災でわたしも考えた』(表紙込み108ページ、1000円)。前回の文フリで好評だったA2判『三菱東京UFJ銀行に合流した全銀行系統図年表2010』も増刷、前回の600円から大幅値下げして400円で販売します。その他の既刊も在庫限り販売いたします。

 また、【エ-02】奇刊クリルタイの新刊「dorj Vol2」にエッセイ「涙の陸上部」を寄稿、【U-20】Stardustrainさんの「文学フリマお試し企画」にも参加しています。

 会場に来られる方はぜひ「2階小展示ホール入り口正面」の当ブースにもお立ち寄りください!

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東日本大震災は「電気文明」と「高層緑化型都市計画」が見直される時代の始まり

少々スパンの長い話をしたい。東日本大震災は「電気文明」と「高層&緑化を主眼とした都市計画」を見直す時代のきっかけになると考えている。つまり、20世紀文明の再検討だ。

ただし、誤解してほしくないが、私が「電気文明の見直し」というとき、単純な「昔に戻れ」とか「電気を捨てろ」とか「自然との共生が云々」ということを言いたいのではない。たとえば「さすがにオール電化だと停電時に身動き取れないから代替手段が必要だよね」ということから始まって、電気でなくてもよいことも電気に頼ろうとしている今の文明を問い直すことになるのではないか、ということだ。

また、これより規模は小さいものの、「建物を高層化して空いたスペースを緑化することで防災にもなる」という建築・都市計画思想についても、災害時の根本的な脆弱性が露呈した。これは建物自体の耐震性がいくら大きくなろうとも、「高さ」自体が脆弱性となるという問題点である。

もちろん大震災でいろいろなものが見直されることになるとは思うが、現時点でわたしが特に思うことをまとめておきたい。

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震災後、「今わたしにできること」なので、「今わたしがやっていること」「これからやりたいこと」

大震災から3週間が経ち、いろいろと混乱も起こっているが、その中で自分のやれることを淡々とやることが大事だと思う。やれることをやらないのも、やれないことをやろうとして無理するのも、どちらもよろしくないだろう。

一方で、「自分には何もできない」と非力感に陥っても仕方がない。たとえ小さくても、間接的でも、何かやれることはきっとある。

自分の場合はどうなのか、本当に小さなことばかりではあるが、もしかしたら何かの参考になるかもしれないと考え、「わたしが実際にやっていること」「これからやろうと思っていること」を書いてみたいと思う。

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石原都知事の「花見自粛」には従うな。ひと工夫して「2011震災を乗り越えよう花見」をやろう!

石原都知事が「桜が咲いたからって一杯飲んで歓談するような状況じゃないと思いますよ。少なくとも夜間、明かりをつけての花見なんて自粛すべきだと思っております」と発言した(【東日本大震災】石原知事"花見禁止令" 戦争時の「連帯感は美しい」 - SankeiBiz(サンケイビズ)asahi.com(朝日新聞社):首都圏、花見宴会自粛...一方で「東北の酒飲んで支援」も - 社会)。都知事は「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感ができてくる」「戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」と述べたという。

だが、私は「経済を回せ」と言われている今だからこそ、花見をすべきだと思う。みんながしょんぼりするような連帯感など、この状況でかえって害悪だ。

もちろん、都内の仮設トイレや警察官が被災地に出払っているという状況はある。その状況を踏まえた上で、今の状況にふさわしい花見の仕方だってあるはずではないか。「不謹慎だから自粛して連帯しろ」というような気持ち悪い都知事命令にはあえて逆らって、「がんばろう日本」を配慮ある花見で盛り上げ、東北産品の売り上げにも貢献することを呼びかけたい。以下、私の考える「2011震災を乗り越えよう花見」の提案である。

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大震災復興への気分を変えるために「災異改元」はいかが?

ツイッターの私のTLで「災異改元をしてはどうか」という声がちらほら上がっていた。「災異改元」とは、天変地異、疫病、兵乱などの災害が起こったときに、その影響を除くために改元するものである。もちろん、現在は一世一元の制となっているので天皇の代替わり以外に改元されることはないということになっているが、歴史上、災異改元は非常に多い。

元号そのものに対する賛成・反対はさておき、元号というのが日本人の意識に与える影響は非常に大きいように思われる。また、今回の大震災がこれからの時代を大きく変えるのではないかと予感している人も多い。

歴史的には一世一元ということになってからわずか150年ばかりのことでもあるし、思い切って災異改元してみるのも、人々の気分が変わって「日本復興」の一助になるかもしれないと思う。

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石原"不謹"慎太郎の「津波は天罰」という妄言を批判する

東京都知事・石原慎太郎が「津波をうまく利用して我欲を洗い落とす必要があるね。積年たまった心の垢をね。これはやっぱり天罰だと思う。被災者の方々、かわいそうですよ」と発言した。これはありとあらゆる意味で誤った発言であると思う。

石原都知事が言いたかったことを最大限好意的に推測するとしても、ここで天罰という言葉を使う必要は全くないし、完全に不適切な発言である。この失言一つだけでも辞職してしかるべき大失言だ。そして、このような言葉づかいしかできないというのでは、作家としても都知事としても不適格であるのみならず、人間としても失格である。

今日になって「石原知事は、東日本大震災に関して「天罰だ」との発言内容を撤回、被災者に陳謝」と報じられたが、そもそもこの発言の何がどのように問題だったのか、きちんと整理しておきたい。

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鳩山由起夫論文『私の政治哲学』の英訳を原文と比較

第93代内閣総理大臣となる鳩山由起夫氏の論文「私の政治哲学」(いわゆる「鳩山論文」)が、英米にて抄訳されて「反米的」とされているという。このブログでは、その内容についてはさておき、実際に「ニューヨーク・タイムス」ウェブサイトに掲載された抄訳をもう一度日本語に戻し、どの部分が紹介され、どの部分が紹介されなかったのか、あるいはどのように改変されていたのかを検証してみたい。

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