《松永英明のゲニウス・ロキ探索――「場所の記憶」「都市の歴史」を歩く、考える 》はまぐまぐで発行されているメールマガジンです。

No.111:「グリーンライン下北沢」とグリーンサークル

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前号に引き続き、グリーンライン下北沢について考えていきます。

小田急線の東北沢駅・下北沢駅・世田谷代田駅の三駅区間が地下化することにともなって、その地上部(あとち)の利用について「グリーンライン下北沢」を中心に議論が高まっています。

前号の最後で、ケヴィン・リンチによる都市の五つの要素を取り上げました。

  • 移動路=パス
  • 境界=エッジ
  • 地区=ディストリクト
  • 結節点=ノード
  • 目標=ランドマーク

線路はパスでもあり、同時にエッジでもあります。線路の進行方向に向かっては当然パス=移動路ですが、それを横切ろうとする瞬間、線路はエッジ=境界となってしまいます。

そのエッジが、あとちになることでエッジとしての性質を弱めます。それは地域のつながり方を変えることにもなるでしょう。

ニューヨークのハイライン

グリーンライン下北沢第1回セミナーで高橋ユリカさんが発表された「ニューヨークハイラインレポート」のPDFが公開されています。

http://www.greenline-shimokitazawa.org/111110highlineREPORT.pdf

ハイラインは高架跡地をそのまま公園にしたもので、下北沢とは事情が異なる面もありますが、ほぼ同じくらいの距離の計画として非常に注目すべきものです。

詳しくはPDFをじっくりお読みください。

このハイラインのようなものをそのまま下北沢にも、というわけではありません。当然、場所に合った計画というのはまったく異なるはずです。しかし、ハイラインの事例を参考にするとき、学ぶべきことは多々あります。その中でも最も重要なのは、「数多くのアイデアが寄せられた」というところにあります。

下北沢のあとち利用のデザイン案については、公募が行なわれていません。グリーンライン下北沢が中心となって計画案を募集しようという動きもありますが、実際に決定権を持つ小田急電鉄と世田谷区にもその動きを取り入れてもらう必要があります。

市民案を検討することは、区は当然として、小田急にとっても利益こそあれデメリットはないと思われます。少なくとも市民・住民・利用者その他興味を持つ人たちの意見に「耳を傾ける企業」であるというアピールは決してマイナスではありませんし、社会と企業がともに作り上げる事例を打ち立てるのはむしろよいプロモーションにもなると思います。

このメルマガでしばらくあとち利用について集中して書いてみようと思っているのも、自分なりのアイデアをまとめたいという思いがあるからです。

グリーンラインとグリーンサークル、グリーントライアングル

グリーンラインというのはあくまでも仮称で、横浜地下鉄と名称がかぶるというような指摘もありますが、「緑の帯」ができることには違いがありません。グリーンベルトでも何でもいいとは思います。

ただ、このグリーンラインを地図上に置いてみたとき、一つのことに気づきました。下北沢周辺には、これからできるグリーンライン以外にも緑が多くあります。

有名なのは北沢川緑道です。これはもともと北沢川・北沢上水を一旦暗渠(地下水路)にし、その上に改めて浄水済みの水を流しているものです。

世田谷区 北沢川緑道

特に環七から烏山川緑道・目黒川緑道との合流点までは下北沢地域南部の美しいせせらぎとして、地元の人たちも誇りに思っているすばらしい緑道です。これは松沢病院の敷地内に水源があり、小田急線沿いに東へ流れ、梅ヶ丘駅からやや南に折れて東へと流れていきます。この支流として、下北沢駅東側を南北に流れて茶沢通り沿いに進む森厳寺川緑道もあります。

また、梅ヶ丘駅の名称のもとになった羽根木公園は、梅の木で有名な丘です。

こういった緑地をイメージしたところ、グリーンラインと合わせるとぐるりとめぐるグリーンサークルになるんじゃないかと思いつきました。そこで作ってみた地図がこちらです。


より大きな地図で 下北沢グリーンサークル を表示

こうやって見ますと、二つのイメージが見えてきます。

仮に「グリーン・トライアングル」と「グリーン・サークル」と名付けてみましょうか。

グリーン・トライアングルは下北沢南口から南・南西方向に伸びる形となります。小田急線あとち・(梅ヶ丘駅または代田八幡)・北沢川緑道・(森厳寺・代沢八幡)・森厳寺川緑道で囲まれた三角形です。

もしあとちが緑化されて安心して歩ける空間になるのであれば、一周六キロくらいの周遊路ができることになります。徒歩で回遊できる緑のルートが都会にできるとすればすばらしいでしょう。また、都市デザインにおいては「回遊性」、すなわちぐるりと回ることのできるルートは非常に重視されます。

下北沢の街の賑わいと、それにすぐ接する回遊性グリーン・トライアングル。そう書いてみただけでもワクワクしてきます。

もう一つは、広域下北沢地域をぐるりと囲む緑の環、グリーン・サークルです。

グリーン・サークルはもう一回り大きくなります。西の端は羽根木公園、南の端は北沢川緑道、東の端は東大駒場IIキャンパスの西端の急斜面の緑、北の端は下北沢北部のランドマークとして有名な五本のヒマラヤ杉を想定しましょう。これをぐるりと囲んだ範囲が下北沢グリーン・サークルです。

一般的に広域の下北沢居住圏と比べると、北が少し欠け、西にはみ出している感じになります。もう一回り大きく北に拡大すると玉川上水の緑道や宇田川の水源近辺も含まれるのですが、さすがにそこまで拡大すると遠いようにも思われます。このサークルがおおよそ下北沢圏のイメージにも合っていると思います。

(下北沢の範囲については藤谷治さんの小説『下北沢』でも不毛な議論として扱われていますが、このサークルのイメージは共通理解に近いと思います)

地図には公園・寺社などの公共空間を中心にマッピングしましたが、これ以外に学校や小公園、そして個人宅の緑なども加えると、緑の多い空間がイメージされます。その中で、サークルを斜めに横切るグリーンラインは、グリーン・サークルの中軸として大きな意味を持つことになるでしょう。

長さ約2km、幅約40メートルの「線」としてとらえるだけでなく、トライアングルの一辺でもあり、サークルの直径でもあると見て、広い視野からグリーンラインの意味を見直すことも必要だろうと思われます。

また、この地図で浮かび上がるのは、森厳寺川の緑道が現在南北で分断されていることです。井の頭線・小田急線で分断されており、その一部は駐輪場になっています。

ところが、井の頭線は斜面の法面を削って高架に変える計画もあり、もちろん小田急も地下化するわけですから、これをつなぐこともできるのではないかと妄想します。少なくともかつての川の名残としての細道がつながるだけでも、地域の記憶をよりよく伝承できるようになるのではないでしょうか。


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