「日本語」と一致するもの

誤解を招きやすい「全ての言語はトルコに通ず」記事を正確に読む

「全ての言語はトルコに通ず」?英語もヒンディー語もルーツは同じ、国際研究 国際ニュース : AFPBB Newsという報道が流れたが、これは非常に誤解を招きやすい。本文を詳細に読めばわかるようにはなっているが、見出しだけで誤解している人も実際にブクマコメント等で見られる。

第1点。「全ての言語」ではなく「すべての印欧語」と書くべきである。

第2点。「トルコ」といってもトルコ語は関係ない、現トルコ共和国のアナトリア地域(小アジア)起源という説の紹介。つまり、ここでの「トルコ」は言語でも民族でも国家でもなく場所のみを指すが、言語の話なので紛らわしい。

以下、詳細に述べる。

続きを読む: 誤解を招きやすい「全ての言語はトルコに通ず」記事を正確に読む

レッドブルとアップル「直訳CM」の致命的欠陥(「授ける」と「させる」の言語機能の解析)

最近、海外商品について直訳のメッセージで宣伝するCMがいくつか見受けられるが、それを見聞きするたびに気持ち悪さを感じていた。その筆頭がアップルとレッドブルである。

その気持ち悪さについて、日本語学的に分析すると非常に興味深いことがわかる。それはこの二つのCMの言葉が、英語の単語をそのまま日本語に置き換えているがゆえに意味が変わってしまっているということである。特に「授ける」と「させる」という日本語の「機能」に無頓着であることが致命的な欠陥となっている。

前回のブログ記事(木村カエラCMのエセ関西弁が気持ち悪い理由[絵文録ことのは]2012/02/29)に引き続き、今回もCMの言葉を解析してみた。

続きを読む: レッドブルとアップル「直訳CM」の致命的欠陥(「授ける」と「させる」の言語機能の解析)

木村カエラCMのエセ関西弁が気持ち悪い理由

木村カエラのキシリッシュCMのエセ関西弁がとにかく気持ち悪い(→CM GALLERY(CMギャラリー)|XYLISH (キシリッシュ)|株式会社 明治)。少なくとも京阪式アクセントで生まれ育った人間にとって、これは「バカにしとんのか」と生理的嫌悪感を抱かずにはいられないレベルである。中途半端に似せているがゆえに、違うところがあまりにも気持ち悪く、「ほかのガム噛んだらあかんで」と言われてもかえって「キシリッシュだけは金輪際噛んでたまるか、一生噛まんわ」と思ってしまうほどである。

なぜ中途半端なエセ関西弁が気持ち悪いのか。言語学的な分析からその理由をまとめておきたい。

続きを読む: 木村カエラCMのエセ関西弁が気持ち悪い理由

「マルモリはアイヌ語」デマはなぜ拡散したのか

芦田愛菜と鈴木福が歌ったドラマ主題歌「マルモのおきて」の歌詞について、「マルマルモリモリとはアイヌ語で「侵略者、侵略者、死を与えよ、死を与えよ」という意味」というデマが昨年師走、2011年12月9日にツイッターに投稿され、拡散されていった。投稿者は直後に「うそです」と記していたが、過去ログをたどりにくいツイッターの仕様も相まって、「マルモリはアイヌ語で怖い意味だ」という情報が広まっていった。

その後、アイヌ語研究者による否定ツイートも流れ、わたしもそれをtogetterでまとめた(「マルマルモリモリはアイヌ語」というデマと、アイヌ語の真実 - Togetter)。こちらも拡散されるようになって一応デマは鎮火した……かのように見えた。しかし、約2か月経った今、再びこのデマがツイッター上で見られるようになっている。

なぜ「マルモリはアイヌ語」デマがこんなに拡散し、一度否定されてもなぜまた再び拡散してしまうのか。それは、ツイッターの仕様やユーザーのリテラシーもさることながら、「幽霊アイヌ語」がいまだに放置されていること、そしてアイヌ文化・アイヌ語への無知、ひいてはアイヌへの「未開人」視があると思われる。

※ブクマコメントで「ラテン語だろ」「ラテン語というデマも2chで」と書かれているが、ラテン語についても最初から本文で書いてある。タイトルだけ読んで反応しないようにお願いしたい。

続きを読む: 「マルモリはアイヌ語」デマはなぜ拡散したのか

DeNA参入で変わる歴代プロ野球親会社「業種」勢力図

一部にはいまだ反発などもあるものの、横浜ベイスターズが2012年度から横浜DeNAベイスターズになることがほぼ確定したようである。DeNAもIT系の企業と見なすならば、現在のプロ野球オーナー企業の中ではSoftbank・楽天と合わせて三社がIT系ということになる。

7年前、東北楽天ゴールデンイーグルス誕生時(Softbank参入前)に、わたしはこのような一覧をまとめていた。

このとき、わたしは書いた。「IT系企業がプロ野球球団のオーナーになるというのは、時代を反映しているような気がする。……ということは、歴代のプロ野球の親会社の業種を見れば、世相が浮かび上がってくるだろうか? と思い立って、ごく簡単ながら、これまでのプロ野球オーナー会社の業種をまとめてみた」。

今回の勢力図の変化もやはり世相を表わしているように思われる。楽天・SoftbankというIT系2社の参入以来、西武ライオンズのオーナーが関連企業内で変化した以外には大きな変化はなかったが、DeNA参入で勢力図がまた少々塗り変わったようだ。

そこで、前回の集計を修正した上で、今回は新たに視覚的に一覧できる塗り分け図を作成してみた。

続きを読む: DeNA参入で変わる歴代プロ野球親会社「業種」勢力図

ツイッターの日本語ハッシュタグはなぜ大喜利化するのか(序説)

ツイッターではこれまで、#のあとに半角英数をつけると「ハッシュタグ」として認識され、それをクリックすると同じ話題のツイートが一覧できるようになっていた。たとえばPerfumeの話題なら #prfm というようにある程度決まっている。また、「仮面ライダーOOO」がうっかり#oooを使おうとしたらそれ以前からOpenOffice.orgで使われていたので変更したというような小事件もあった。

2011年7月13日、日本語ハッシュタグが使えるようになった(Twitterブログ: #日本語ハッシュタグ)。ハッシュタグの前後には空白または句読点を入れれば、日本語で書いた「#地震」がハッシュタグとして認識される。

ところが、おそらく誰も想定していなかった事態だろうが、それ以来、日本語ハッシュタグが大喜利ネタになるという現象がみられた。人によってはタイムラインが日本語ハッシュタグ大喜利に埋め尽くされている場合もあるようだ。「#名作のタイトルに団地妻をつけるとロマンポルノになる」など、ついつい大喜利に参加したくなるネタが続出している。

では、なぜ日本語ハッシュタグは大喜利化するのか。それを言語的な観点から考察してみた。ただし、まだ研究のとっかかりであるため、「序説」とした。

続きを読む: ツイッターの日本語ハッシュタグはなぜ大喜利化するのか(序説)

【書評】鈴木妄想『新大久保とK-POP』★★★★★

鈴木妄想著『新大久保とK-POP』(毎日コミュニケーションズ/マイコミ新書)を編集部から献本いただいた。非常に興味深い内容で、最後まで一気に読み切った。

本書はタイトルどおりK-POPから入って、新しいタイプのコリアンタウン化している新大久保を題材に扱っている。私自身がライフワーク的なテーマとして関わっている「アジアンポップス」と「場所論」と「多文化共生」が存分に盛り込まれていることもあって、まさにこういう本を待っていましたという内容である。

ここ数日の「フジテレビ韓流ゴリ押し」問題とも絡み合うという意味ではタイムリーとも言えるが、それ以上に新大久保・K-POPを論ずるときに欠かせない一冊として長く参照されることになるはずである。ちょうど森川嘉一郎『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』がアキバ論で必須の文献となっているように。

以下、自分の興味に引き寄せての感想である。

続きを読む: 【書評】鈴木妄想『新大久保とK-POP』★★★★★

日本市場へ売り込むK-POP&韓流、売り込まないC-POP&華流

「フジテレビの韓流推し」が話題になっているが、逆の視点から見てみたい。それは「売り込む側の論理」である。

わたしは以前から中華圏(台湾・香港・大陸)の音楽、いわゆるC-POPのファンである。日本でも知名度の高いビビアン・スーも好きだが、GLAYとも共演した実力派ロックバンド五月天(MAYDAY)、女性ロック歌手としては日本含むアジア全域のトップクラスと断じたい張惠妹(Amei、音楽劇トゥーランドット主演)、トップアイドルユニットとしては台湾のS.H.Eと香港のTwins、さらに王心凌(シンディ・ワン)やガールズバンド櫻桃幫(Cherry Boom)、そして日本で活躍するalan(レッドクリフの主題歌で有名)などを聴いている。

といっても日本では、上記に挙げた中ではビビアン・スーとalan以外は知らないという人が大半だろう。だが、中華圏でこれらの名前を知らない音楽ファンはいない。日本で中華圏の歌手の名前が出てくるとしたら、テレサ・テンと欧陽菲菲と王菲くらいで、崔健やケリー・チャンまで知っている人はかなり詳しい部類に入ってしまう。韓流に対して「華流」という言葉も一応あるのだが、ファン以外には通じないのが現状だ。

一方でK-POP・韓流は「多すぎる」と非難されるほどメディア展開が進んでいる。CとKの違いは何か。それは、日本市場を市場と見ているかどうかということである。

続きを読む: 日本市場へ売り込むK-POP&韓流、売り込まないC-POP&華流

【書評】かじいたかし 『僕の妹は漢字が読める』:「自虐的メタラノベ」の金字塔?

書評サイト【Book Japan】に寄稿した書評を、こちらでも掲載しておく。

僕の妹は漢字が読める (HJ文庫)
「僕の妹は漢字が読める (HJ文庫)」
 [文庫]
 著者:かじいたかし
 出版:ホビージャパン
 発売日:2011-06-30
 by ええもん屋.com

続きを読む: 【書評】かじいたかし 『僕の妹は漢字が読める』:「自虐的メタラノベ」の金字塔?

「災害ユートピア」と「震災ナショナリズム」

「災害時にも沈着冷静で礼儀正しい日本人」――それは実は、全世界の被災地で普遍的に見られる現象だった。

6月12日の文学フリマに合わせて作った個人誌『東日本大震災でわたしも考えた』では、ブログに掲載した記事をさらに拡張・加筆修正を加えただけでなく、いくつかの書き下ろしも入っている。その一つが『「災害ユートピア」と「震災ナショナリズム』」という文章である。

ここでは、その前半部分をそのまま掲載する(一部囲み記事や図版は省略)。

続きを読む: 「災害ユートピア」と「震災ナショナリズム」
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18  

アーカイブ

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。
過去に書かれたものは月別・カテゴリ別の過去記事ページで見られます。